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第四章:謎を解く
第四章:謎を解く 23
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ジリッ……と僅かににじり寄るような動作で西山さんへ近づこうとする沢岸さんを見て、岩瀬さんが素早く反応し立ち上がる。
「やめておくんだ。これ以上罪を重ねたところで、沢岸さんも亡くなった家族も報われることは一つもない。とてつもなく辛い思いをしたのはわかるが、もうここまでにしよう」
西山さんと沢岸さんの間へ立ち塞がるかたちで移動した岩瀬さんは、説得するような優しい口調でそう呼びかけた。
岩瀬さんと沢岸さん。お互いの体格を比較すれば、力関係でどちらが上かは一目瞭然。
まして、側にはオーナーや千谷真さんもいる。
ここでいくら沢岸さんが暴れたりしても、きっと西山さんを襲う前に取り押さえられるのはほぼ確実の結果となるだろう。
沢岸さん本人も、それは理解はしているのだろう。
岩瀬さんの背後で怯える西山さんを暫し睨み、やがて諦めたように肩の力を抜くと項垂れるようにして俯いてしまった。
「……困ったものだな、本当に。家族が大切だなんて言いながら誰一人守れず、敵を取ることすら中途半端な結末なんて。情けない息子だ……情けない兄ちゃんだ、僕は」
この場にいる全員が返答に困る呟きを放り、力なく立ち尽くす沢岸さんは、首だけを動かしてオーナーへ振り返る。
「オーナー、その機械が言った通り、僕の部屋にあるベッドの下に電波を妨害する装置があります。それと、空き部屋にも二つ。スイッチを切ればスマホは使えるようになりますから、それで救助を呼んでください。除雪の業者は、いくら待っても来ませんから」
「沢岸くん……」
自虐的に告げた沢岸さんの言葉に、複雑な表情を浮かべたオーナーだったが、言葉を飲み込むように口を引き結ぶと、すぐに客室へ続く廊下へ駆け出し姿を消した。
「……それにしても、まさかこんなことになるなんてね。最後までばれない自信はあったんだけど、とんだ名探偵が紛れ込んでたな。ひょっとしたら、僕くらいじゃないか? 人間以外に犯行を見抜かれた犯罪者は」
オーナーの背中を見送りあたしの方へ身体を向けた沢岸さんは、苦笑混じりにそう言った。
「あなたの話を聞いていて、まだいくつかわからないことがあるのだけれど、質問をしても良いかしら?」
「何だい? 今更隠し事をするつもりはないから、好きに訊いて構わないよ」
慣れたか、それとももはやどうでも良くなったか、沢岸さんはイデアから声をかけられることに、特に抵抗を感じる素振りを窺わせることもなくなり、自然に言葉を返してきた。
「まず、自殺した二人。あなたの父親と妹は、どうして自殺する必要が生じたのかしら? 話を聞いた限りでは、父親は立ち退きに対して反対の意思を強く持っていた印象を受けたわ。それが僅か数週間で死に追い込まれるほどまで憔悴するのは、違和感がある気がするけれど。そして、妹の瀬里夏さんも。両親が亡くなったショックだけで、自殺をしたということなの?」
コトリと小首を傾げ問いかけるイデアを見ながら、あたしも確かにと胸中で頷く。
なかなかに大変な境遇へ追い詰められていたのはわかるけれど、それで一気に自殺までしてしまうのはどうかというのも一理ある。
もっとも、失恋や数百万円の借金をしても平気で生きられる人と自殺してしまう人、両方が存在するのだから、最終的には個人の精神力や性格に左右されるだろうけれど。
「やめておくんだ。これ以上罪を重ねたところで、沢岸さんも亡くなった家族も報われることは一つもない。とてつもなく辛い思いをしたのはわかるが、もうここまでにしよう」
西山さんと沢岸さんの間へ立ち塞がるかたちで移動した岩瀬さんは、説得するような優しい口調でそう呼びかけた。
岩瀬さんと沢岸さん。お互いの体格を比較すれば、力関係でどちらが上かは一目瞭然。
まして、側にはオーナーや千谷真さんもいる。
ここでいくら沢岸さんが暴れたりしても、きっと西山さんを襲う前に取り押さえられるのはほぼ確実の結果となるだろう。
沢岸さん本人も、それは理解はしているのだろう。
岩瀬さんの背後で怯える西山さんを暫し睨み、やがて諦めたように肩の力を抜くと項垂れるようにして俯いてしまった。
「……困ったものだな、本当に。家族が大切だなんて言いながら誰一人守れず、敵を取ることすら中途半端な結末なんて。情けない息子だ……情けない兄ちゃんだ、僕は」
この場にいる全員が返答に困る呟きを放り、力なく立ち尽くす沢岸さんは、首だけを動かしてオーナーへ振り返る。
「オーナー、その機械が言った通り、僕の部屋にあるベッドの下に電波を妨害する装置があります。それと、空き部屋にも二つ。スイッチを切ればスマホは使えるようになりますから、それで救助を呼んでください。除雪の業者は、いくら待っても来ませんから」
「沢岸くん……」
自虐的に告げた沢岸さんの言葉に、複雑な表情を浮かべたオーナーだったが、言葉を飲み込むように口を引き結ぶと、すぐに客室へ続く廊下へ駆け出し姿を消した。
「……それにしても、まさかこんなことになるなんてね。最後までばれない自信はあったんだけど、とんだ名探偵が紛れ込んでたな。ひょっとしたら、僕くらいじゃないか? 人間以外に犯行を見抜かれた犯罪者は」
オーナーの背中を見送りあたしの方へ身体を向けた沢岸さんは、苦笑混じりにそう言った。
「あなたの話を聞いていて、まだいくつかわからないことがあるのだけれど、質問をしても良いかしら?」
「何だい? 今更隠し事をするつもりはないから、好きに訊いて構わないよ」
慣れたか、それとももはやどうでも良くなったか、沢岸さんはイデアから声をかけられることに、特に抵抗を感じる素振りを窺わせることもなくなり、自然に言葉を返してきた。
「まず、自殺した二人。あなたの父親と妹は、どうして自殺する必要が生じたのかしら? 話を聞いた限りでは、父親は立ち退きに対して反対の意思を強く持っていた印象を受けたわ。それが僅か数週間で死に追い込まれるほどまで憔悴するのは、違和感がある気がするけれど。そして、妹の瀬里夏さんも。両親が亡くなったショックだけで、自殺をしたということなの?」
コトリと小首を傾げ問いかけるイデアを見ながら、あたしも確かにと胸中で頷く。
なかなかに大変な境遇へ追い詰められていたのはわかるけれど、それで一気に自殺までしてしまうのはどうかというのも一理ある。
もっとも、失恋や数百万円の借金をしても平気で生きられる人と自殺してしまう人、両方が存在するのだから、最終的には個人の精神力や性格に左右されるだろうけれど。
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