病み憑き

第二章:秋本夢美――②

秋本夢美――②

　　　　　　　　　７

　六月二十五日、土曜日。午後十一時五十七分。

　静まり返った部屋の中、あたしは明かりを点けることなくジッとお姉ちゃんの眠る小さな箱を見つめていた。

　ほんの二十日前、三週間程度前までは生きた人間としてその姿を留めていたお姉ちゃんは、今ではこんな小さく質素な箱の中。

「…………」

　大昔に天水田で執り行われていた禁忌の儀式、病み移し。

　あの伝承が本当で、あたしが確認したことがそれを証明しているのならば、お姉ちゃんを殺したあの連中をこの世から消せることになる。

　あまりにもあっけないくらいに事が進み、何だか視えない力にでも動かされているような気分が込み上げてくるけれど、それでも、この計画は試すだけの価値があるとあたしは自分の中で判断した。

　夕方、家に戻ってきてからずっと考えていた。

　ここから先の行動。天水田の儀式を利用するかどうか、その最終判断を。