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第三章:風岡夏純――①
風岡夏純――①
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いつまで経っても出世せず、安月給しか取ってこない夫に愛想を尽かし始めたのは何年くらい前からだったか。
家の中で交わす会話は職場の愚痴かくだらない武勇伝ばかり。
いつの間にか、そこへ加齢臭も加わり出会った頃に感じたはずの魅力はどこにも見出だせなくなってしまっていた。
「それにしたって、こんな時間まで姿見せないなんて普段なかっただろ。具合悪くして寝込んでるんじゃないのか?」
一ヵ所に集めた爪をティッシュにくるんで捨てながら、夫は話を止めることなく続いてくる。
「そんないつまでも子供じゃないんだから、下りてこないくらいで心配し過ぎよ。昨夜だって普通にしてたでしょ」
くだらないことを言うなと内心イライラしながら、すみれは告げる。
最近は感情の起伏が激しくなってきている自覚があるが、ついに更年期障害というものにかかってしまったのではと不安がよぎる。
「そうは言ったって、いつもならとっくに腹空かして姿見せてる時間だろ。もし万が――お? 守、愛のやつ何やってるんだ? まだ起きてないのか?」
家の中で交わす会話は職場の愚痴かくだらない武勇伝ばかり。
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「それにしたって、こんな時間まで姿見せないなんて普段なかっただろ。具合悪くして寝込んでるんじゃないのか?」
一ヵ所に集めた爪をティッシュにくるんで捨てながら、夫は話を止めることなく続いてくる。
「そんないつまでも子供じゃないんだから、下りてこないくらいで心配し過ぎよ。昨夜だって普通にしてたでしょ」
くだらないことを言うなと内心イライラしながら、すみれは告げる。
最近は感情の起伏が激しくなってきている自覚があるが、ついに更年期障害というものにかかってしまったのではと不安がよぎる。
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