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第一章:殺戮の序曲
殺戮の序曲
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十一月三日、水曜日。午後四時半。
一日の行程が終了し、クラスメイトのほとんどがいなくなった教室で、湖月芽愛は苦笑いを浮かべながら立ち尽くしていた。
今いる場所は三年C組。
湖月が所属するのは隣のB組であるため、ここは自分のクラスではないのだけれど、既に授業もホームルームも終わった放課後に、そんなことをいちいち注意してくる真面目な存在など周囲にはいない。
窓際から二列目の、後ろから二番目に当たる席。
その席に座り、地球の終わりを目前にでも控えたかのように頭を抱えてため息をつき続けている友人を、湖月は呆れと同情の入り混じった表情で見下ろしていた。
「……幸子、大丈夫? 気が滅入ってるのはわかるけど、帰ろうよいい加減。外、暗くなっちゃうよ?」
チラリと見やる窓の外は、寒々しい夕暮れの赤に染まっている。あと三十分もすれば、太陽の光はバイバイをして山の向こうへ去ってしまう。
「……帰りたくないんだよね、本当に。警察とかマスコミとか来てたら嫌だし、親はカリカリしながら心配もしてて少し情緒不安定だしさ」
「ん? ふぅん?」
カリカリしながら心配もしているとは、果たしてどういう感じなのだろうか。
友人が吐き出す言葉へ僅かだけ首を傾げながら、湖月は曖昧な返事をしてしまう。
「何かさぁ、わたしが狙われるんじゃないかって、勝手に思い込んでるみたいなんだよね。特にお父さんが」
「狙われてるって、まさか犯人に?」
「そう。一応、死体の第一発見者でしょ? それで、目をつけられるんじゃないかってさ。昨日も今日も、暫く学校休めとか、せめて午前中だけにして帰ってこいとかうるさいのなんのって。はぁ……」
「……うん、まぁ、お父さんたちの気持ちもわからないでもないけど」
二日前の早朝、幸子は日課としているランニングの途中で、事件に巻き込まれたものと思われる死体を発見してしまっていた。
海の近くに架かる大橋の近く。季節を問わず普段からほとんど人が立ち寄ることもなさそうな草むらの中に、無残な姿で捨てられていたらしい他殺体。
詳しい死因等の情報は出回っていないためわからないものの、その死体が三週間くらい前から行方不明になっていた、隣町の高校に通う二年生の女子だとは聞いている。
「彩月ちゃんは? 何も言わないの?」
「別に普段通りだよ。興味ないみたい。むしろ、彩月の反応が一番有難く感じるわ。あの子と接する瞬間だけホッとする感じ」
彩月と言うのは、幸子にとって双子の妹である布施彩月のこと。
約五年前。中学二年生のときにいじめを理由に引きこもってしまい、以来ずっと自分の部屋へ閉じこもる生活を続けているらしい。
湖月自身、最後に会ったのは五年前の春だったと記憶している。
双子と言うだけあり、容姿は姉の幸子と瓜二つと言えるくらい似通っていて、声すらも区別をつけるのが難しかった。
十一月三日、水曜日。午後四時半。
一日の行程が終了し、クラスメイトのほとんどがいなくなった教室で、湖月芽愛は苦笑いを浮かべながら立ち尽くしていた。
今いる場所は三年C組。
湖月が所属するのは隣のB組であるため、ここは自分のクラスではないのだけれど、既に授業もホームルームも終わった放課後に、そんなことをいちいち注意してくる真面目な存在など周囲にはいない。
窓際から二列目の、後ろから二番目に当たる席。
その席に座り、地球の終わりを目前にでも控えたかのように頭を抱えてため息をつき続けている友人を、湖月は呆れと同情の入り混じった表情で見下ろしていた。
「……幸子、大丈夫? 気が滅入ってるのはわかるけど、帰ろうよいい加減。外、暗くなっちゃうよ?」
チラリと見やる窓の外は、寒々しい夕暮れの赤に染まっている。あと三十分もすれば、太陽の光はバイバイをして山の向こうへ去ってしまう。
「……帰りたくないんだよね、本当に。警察とかマスコミとか来てたら嫌だし、親はカリカリしながら心配もしてて少し情緒不安定だしさ」
「ん? ふぅん?」
カリカリしながら心配もしているとは、果たしてどういう感じなのだろうか。
友人が吐き出す言葉へ僅かだけ首を傾げながら、湖月は曖昧な返事をしてしまう。
「何かさぁ、わたしが狙われるんじゃないかって、勝手に思い込んでるみたいなんだよね。特にお父さんが」
「狙われてるって、まさか犯人に?」
「そう。一応、死体の第一発見者でしょ? それで、目をつけられるんじゃないかってさ。昨日も今日も、暫く学校休めとか、せめて午前中だけにして帰ってこいとかうるさいのなんのって。はぁ……」
「……うん、まぁ、お父さんたちの気持ちもわからないでもないけど」
二日前の早朝、幸子は日課としているランニングの途中で、事件に巻き込まれたものと思われる死体を発見してしまっていた。
海の近くに架かる大橋の近く。季節を問わず普段からほとんど人が立ち寄ることもなさそうな草むらの中に、無残な姿で捨てられていたらしい他殺体。
詳しい死因等の情報は出回っていないためわからないものの、その死体が三週間くらい前から行方不明になっていた、隣町の高校に通う二年生の女子だとは聞いている。
「彩月ちゃんは? 何も言わないの?」
「別に普段通りだよ。興味ないみたい。むしろ、彩月の反応が一番有難く感じるわ。あの子と接する瞬間だけホッとする感じ」
彩月と言うのは、幸子にとって双子の妹である布施彩月のこと。
約五年前。中学二年生のときにいじめを理由に引きこもってしまい、以来ずっと自分の部屋へ閉じこもる生活を続けているらしい。
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