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第一章:殺戮の序曲
殺戮の序曲
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実の両親ですらひと目で区別をつけるのが難しいらしく、服装や髪型で見分けるようにすることもあるというのだからなかなかのものだ。
「彩月ちゃん、幸子とだけは普通に話しできるんだもんね。心の中じゃ、案外心配してるかもしれないよ?」
「どうかな。結構、そういうとこは無頓着な性格だからね。家の外で起きてることなんて、どうでも良いって思ってるんじゃない? 仮に、今日から日本で戦争が始まったとしても、自分と引きこもる家が無事なら、騒ぐことも悲観することもなさそうなくらいだし」
ぐぐぅ……っと伸びをしながらそう言うと、幸子は気怠そうなため息を吐いて立ち上がった。
「仕方ない……。帰るかぁ」
今にも欠伸をしそうな間延びした声でぼやき鞄を掴む幸子を、湖月は呆れたように見つめて苦笑する。
「幸子さ、絶対心臓に毛が生えてるよね」
「え? 何で……?」
パチリと瞬きをして、幸子は湖月を見つめ返す。
「何でって……。ほんの二日前に本物の死体見たばっかりで、もうそんなにケロッとしてるんだもん。普通あり得ないでしょ?」
「そう? まぁ……見た瞬間はね、頭の中が点になるって言うか、その、え? 本物これ? ってな感じで呆然となったりしたけどさ、時間にしたら一分も見てなかったと思うよ。スマホのライトだけで、まだ周りは暗かったし」
「いや、スマホのライトだけで十分だし、夜が明けてない暗い中で一人きりでしょ? 想像するだけで普通に怖いよ。ましてや、死体の手足は切り取られてたんでしょう? そんな死体発見なんかしたら、私絶対その場で吐くし悲鳴上げると思う。……あぁ、リアルに考えたら胃の辺りがムカムカしてきちゃった」
不快感を訴えだす身体を擦りながら、湖月は歩きだす幸子と並んで教室を出る。
「そうそう。手足がね、この、膝と肘の辺りからかな。決断されてて、頭の上に並べられてたの。綺麗に一列にさ。どうしてそんなことしたのかはわかんないけど、犯人は絶対几帳面な性格だとわたしは推理するわ」
「どうでも良いよ、犯人の性格なんて。とにかく、早く捕まってほしい。ニュースでも言ってたけど、今回の事件は猟奇殺人ってやつなんだよね。犯人は完全に普通じゃないタイプ。サイコパスとかそういうの。あー、もう夜にコンビニすら行けない」
人気のない廊下に、湖月の情けない声が大きくなって反響する。
窓の外、グラウンドへ視線をやれば、運動部の部活熱心な生徒たちが走り回っているのが見渡せた。その平和な喧騒が校舎の中へ滑り込み、たゆたうように広がり消えていく。
「気にしすぎ気にしすぎ」
弱ったような顔になってしまっていた湖月の顔を横目で見やり、幸子はおかしそうに口角を上げた。
「犯人だってさ、きっと馬鹿じゃないはずだし。そんな簡単にホイホイ人を殺したりしないって。いくらテレビで言ってるような異常者だとしても、警察に捕まったりはしたくないだろうし」
「彩月ちゃん、幸子とだけは普通に話しできるんだもんね。心の中じゃ、案外心配してるかもしれないよ?」
「どうかな。結構、そういうとこは無頓着な性格だからね。家の外で起きてることなんて、どうでも良いって思ってるんじゃない? 仮に、今日から日本で戦争が始まったとしても、自分と引きこもる家が無事なら、騒ぐことも悲観することもなさそうなくらいだし」
ぐぐぅ……っと伸びをしながらそう言うと、幸子は気怠そうなため息を吐いて立ち上がった。
「仕方ない……。帰るかぁ」
今にも欠伸をしそうな間延びした声でぼやき鞄を掴む幸子を、湖月は呆れたように見つめて苦笑する。
「幸子さ、絶対心臓に毛が生えてるよね」
「え? 何で……?」
パチリと瞬きをして、幸子は湖月を見つめ返す。
「何でって……。ほんの二日前に本物の死体見たばっかりで、もうそんなにケロッとしてるんだもん。普通あり得ないでしょ?」
「そう? まぁ……見た瞬間はね、頭の中が点になるって言うか、その、え? 本物これ? ってな感じで呆然となったりしたけどさ、時間にしたら一分も見てなかったと思うよ。スマホのライトだけで、まだ周りは暗かったし」
「いや、スマホのライトだけで十分だし、夜が明けてない暗い中で一人きりでしょ? 想像するだけで普通に怖いよ。ましてや、死体の手足は切り取られてたんでしょう? そんな死体発見なんかしたら、私絶対その場で吐くし悲鳴上げると思う。……あぁ、リアルに考えたら胃の辺りがムカムカしてきちゃった」
不快感を訴えだす身体を擦りながら、湖月は歩きだす幸子と並んで教室を出る。
「そうそう。手足がね、この、膝と肘の辺りからかな。決断されてて、頭の上に並べられてたの。綺麗に一列にさ。どうしてそんなことしたのかはわかんないけど、犯人は絶対几帳面な性格だとわたしは推理するわ」
「どうでも良いよ、犯人の性格なんて。とにかく、早く捕まってほしい。ニュースでも言ってたけど、今回の事件は猟奇殺人ってやつなんだよね。犯人は完全に普通じゃないタイプ。サイコパスとかそういうの。あー、もう夜にコンビニすら行けない」
人気のない廊下に、湖月の情けない声が大きくなって反響する。
窓の外、グラウンドへ視線をやれば、運動部の部活熱心な生徒たちが走り回っているのが見渡せた。その平和な喧騒が校舎の中へ滑り込み、たゆたうように広がり消えていく。
「気にしすぎ気にしすぎ」
弱ったような顔になってしまっていた湖月の顔を横目で見やり、幸子はおかしそうに口角を上げた。
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