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出会い
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「すまほっていうのは知らないけど、あたしが住んでる世界の名前はハデス。こことは接しない別の世界で……」
と、そこまで言ってから少女はハッとしたように一度話すのを止めた。そして、何事かを逡巡するような間を空けてから言葉を言い換えてくる。
「ああ、そっか。ごめんなさい、始めからちゃんと説明しなきゃわからないよね」
「いや、説明されてもわからない気配しかしないんだけど……」
即答で返しながら俺は頭の中で聞いた言葉をリプレイさせる。
“あたしが住んでる世界の名前はハデス。こことは接しない別の世界で”
――これは、浮浪者の方がまだ話が通じたかもしれねぇな。
相手の脳内は完全におかしい。何がハデスだよ、と突っ込みたくなったが、たぶん何も良いことはなさそうだ。
「あのね、あたしは別の異世界からこの世界に来たの。名前は、サクラ=クラウン=ケフェリウス。デモンっていう種族に属してて、記憶や知識を司る力があるわ」
「……」
こちらの心情など構うことなく、勝手に話を進める少女。
「でも、情けない話だけど、こっちの世界に転移してきた時に記憶の一部が消えちゃったみたいで、自分がどうしてこの世界に来なきゃいけなかったのか、元の世界に戻るにはどうすれば良いのか、その辺りの記憶や知識が綺麗さっぱり頭から無くなっちゃってるみたいなの」
そこで一度、少女はため息をつく。
「助けを求めるにも、仲間はいないしこの世界の言葉やルールみたいなのもわからないしで、ずっとここに隠れて途方に暮れていたってわけ。だから、あたしはあなたに助けてほしいの」
月明かりで青白く光る通路を背に、サクラとか名乗った少女はじっと俺を見つめる。
「いや、助けてほしいとか言われてもなぁ……。つか、この世界の言葉がわからないとか言いながら、普通に喋ってんじゃん」
急所をつくような反論をすればとりあえず何とか凌げるか。そう思いつつ言葉を吐くと、少女は怯む様子もなくこちらへ近づき、また俺の頭に手を当ててきた。
「ちょっ……、何だよ?」
相手の意図が掴めず、必然的に困惑した声を出してしまう。
先程と同様、異様に熱を帯びた体温が頭の中に伝わってきた。
「……長沢雄治。十七歳。男。父、母、姉との四人暮らしで、二年前からペットに犬を飼い始めた。犬の名前はポテマヨ。これは姉がつけた名前」
「――は?」
突然、無表情に淡々と話し出した少女の台詞。それは、紛れもなく自分の個人的な情報だった。
「嫌いな食べ物は梅干しとひじき。理由は、どっちも小さい頃に食べて嘔吐したことがあるから」
「ちょ、ちょい待った! 何できみがそんなこと知ってんだよ? 俺たち初対面だよな?」
頭に触れる手を咄嗟に払いのけ、俺は戸惑いながらもう一度少女の姿をまじまじと眺める。
すると彼女は目を細めながらニヤリと笑い、たった今払いのけた手を目の前で広げてみせた。
「あなたの記憶を直接読んだだけよ。これがあたしの能力。この世界の言葉も、さっきあなたを引き倒したときに記憶をコピーさせてもらっただけ」
「コピー? 俺の記憶から言葉を覚えたってのか?」
「そういうこと。あ、でも安心して。余計な副作用とかは一切ないし、読み取った記憶も必要最低限の内容だけだから」
と、そこまで言ってから少女はハッとしたように一度話すのを止めた。そして、何事かを逡巡するような間を空けてから言葉を言い換えてくる。
「ああ、そっか。ごめんなさい、始めからちゃんと説明しなきゃわからないよね」
「いや、説明されてもわからない気配しかしないんだけど……」
即答で返しながら俺は頭の中で聞いた言葉をリプレイさせる。
“あたしが住んでる世界の名前はハデス。こことは接しない別の世界で”
――これは、浮浪者の方がまだ話が通じたかもしれねぇな。
相手の脳内は完全におかしい。何がハデスだよ、と突っ込みたくなったが、たぶん何も良いことはなさそうだ。
「あのね、あたしは別の異世界からこの世界に来たの。名前は、サクラ=クラウン=ケフェリウス。デモンっていう種族に属してて、記憶や知識を司る力があるわ」
「……」
こちらの心情など構うことなく、勝手に話を進める少女。
「でも、情けない話だけど、こっちの世界に転移してきた時に記憶の一部が消えちゃったみたいで、自分がどうしてこの世界に来なきゃいけなかったのか、元の世界に戻るにはどうすれば良いのか、その辺りの記憶や知識が綺麗さっぱり頭から無くなっちゃってるみたいなの」
そこで一度、少女はため息をつく。
「助けを求めるにも、仲間はいないしこの世界の言葉やルールみたいなのもわからないしで、ずっとここに隠れて途方に暮れていたってわけ。だから、あたしはあなたに助けてほしいの」
月明かりで青白く光る通路を背に、サクラとか名乗った少女はじっと俺を見つめる。
「いや、助けてほしいとか言われてもなぁ……。つか、この世界の言葉がわからないとか言いながら、普通に喋ってんじゃん」
急所をつくような反論をすればとりあえず何とか凌げるか。そう思いつつ言葉を吐くと、少女は怯む様子もなくこちらへ近づき、また俺の頭に手を当ててきた。
「ちょっ……、何だよ?」
相手の意図が掴めず、必然的に困惑した声を出してしまう。
先程と同様、異様に熱を帯びた体温が頭の中に伝わってきた。
「……長沢雄治。十七歳。男。父、母、姉との四人暮らしで、二年前からペットに犬を飼い始めた。犬の名前はポテマヨ。これは姉がつけた名前」
「――は?」
突然、無表情に淡々と話し出した少女の台詞。それは、紛れもなく自分の個人的な情報だった。
「嫌いな食べ物は梅干しとひじき。理由は、どっちも小さい頃に食べて嘔吐したことがあるから」
「ちょ、ちょい待った! 何できみがそんなこと知ってんだよ? 俺たち初対面だよな?」
頭に触れる手を咄嗟に払いのけ、俺は戸惑いながらもう一度少女の姿をまじまじと眺める。
すると彼女は目を細めながらニヤリと笑い、たった今払いのけた手を目の前で広げてみせた。
「あなたの記憶を直接読んだだけよ。これがあたしの能力。この世界の言葉も、さっきあなたを引き倒したときに記憶をコピーさせてもらっただけ」
「コピー? 俺の記憶から言葉を覚えたってのか?」
「そういうこと。あ、でも安心して。余計な副作用とかは一切ないし、読み取った記憶も必要最低限の内容だけだから」
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