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絶望の死闘へ
絶望の死闘へ
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夜の山に広がる暗闇は、全ての感覚を麻痺させてくれた。方向を正確に定められず、足元の安全性も認識できない。
数メートル先がどうなっているのか。それすらも運と勘に頼るしかないくらいに、全てが闇に包まれている。
――馬鹿みたいに開いた距離じゃない! すぐに追いつけるはずだ。
かき分ける草木の音に混じって、自分の喘ぐ声が聞こえる。
ガーディアンの姿はどこに潜んでいるのか。隠れているわけでもないだろうが、夜目の利かない自分には位置を把握することは困難だった。
それ故に、大声で桜の名前を呼ぼうにも、それでガーディアンにまでお互いの位置がばれたらゲームオーバー。
「ちくしょう……」
じくじくと痛む耳からは、出血が続く。
おそらく、着ている服も肩口は真っ赤になっていることだろう。
「どこだ……どこにいる桜」
手近な木に手をついて、息を整える。
頼りない目測でしかないが、桜が落ちたであろう付近まで辿り着いるはず。
静かだった。
聞こえるのは虫の鳴き声と風に揺れる枝葉のざわめき、そしてよくわからない鳥の声。方向感覚が完全に狂いかけてしまいそうな、そんな焦燥感が膨れ上がる。
「早く……見つけねぇと」
ガーディアンに先を越される前に。
闇雲に足を進ませ、目を凝らす。
地面と上方に広がる木々の間。その両方に注意をして、気配を探る。
――せめて、ライトがあれば……。
スマホの明かり程度ではなく、もう少しまともな。
そんな愚痴を胸の中で磨り潰し、さらに歩く。ガサガサという、自分が立てる葉擦れの音が不快に響く。
ガーディアンは果たして、どこを移動しているのか。音どころか、動き回る気配すら掴めないのが薄気味悪い。
「――?」
何の前触れもなく、耳に呻き声のようなものが届いた。
いや、届いたような気がした、というべきか。動きを止め、耳を澄ます。
「……」
聞き逃してしまいそうなほど小さな物音が、今度はしっかりと確認することができた。
小枝を折るような、乾いた音。それと一緒に聞こえたのは……。
音源に目星をつけ、警戒しながら近づく。さらに大きく、落ち葉が擦れる音が聞こえた。
すぐ近く、ほんの数メートル先に誰かの気配。その正体には、呻き声でもう検討がついていた。
「……桜?」
目立たぬよう配慮して、囁くように呼びかけてみる。それに反応してか、僅かに音が大きくなった。
「ゆ……うじ?」
間違いないと、はっきり確信する。一気に距離を詰め、声の出所に屈み込む。
「……お前、生きてんのか?」
倒れた状態の桜に手を伸ばす。そっと頭に触れると、モゾリと動き応えてきた。
「生きてるよ。……でも、翼が片方やられちゃった」
「翼?」
息をつきながら言ってくる彼女の言葉を確かめるように、俺はそっと背後に手を回す。
「あ……」
背中に生える、二枚の黒翼。そのうちの片方、左側に生える翼が付け根から千切れかけている。
まさに薄皮一枚、と言った感じか。少し力を込めて引っ張れば簡単にもぎ取れるのではないかというくらい、酷い状態だった。
「身体は? 刺されただろ?」
翼の切り口から漏れる血が手に付くが、今更もう気にもならない。
「え? 切られたのは翼だけだよ。それで、飛べなくなって落っこちて……」
夜の山に広がる暗闇は、全ての感覚を麻痺させてくれた。方向を正確に定められず、足元の安全性も認識できない。
数メートル先がどうなっているのか。それすらも運と勘に頼るしかないくらいに、全てが闇に包まれている。
――馬鹿みたいに開いた距離じゃない! すぐに追いつけるはずだ。
かき分ける草木の音に混じって、自分の喘ぐ声が聞こえる。
ガーディアンの姿はどこに潜んでいるのか。隠れているわけでもないだろうが、夜目の利かない自分には位置を把握することは困難だった。
それ故に、大声で桜の名前を呼ぼうにも、それでガーディアンにまでお互いの位置がばれたらゲームオーバー。
「ちくしょう……」
じくじくと痛む耳からは、出血が続く。
おそらく、着ている服も肩口は真っ赤になっていることだろう。
「どこだ……どこにいる桜」
手近な木に手をついて、息を整える。
頼りない目測でしかないが、桜が落ちたであろう付近まで辿り着いるはず。
静かだった。
聞こえるのは虫の鳴き声と風に揺れる枝葉のざわめき、そしてよくわからない鳥の声。方向感覚が完全に狂いかけてしまいそうな、そんな焦燥感が膨れ上がる。
「早く……見つけねぇと」
ガーディアンに先を越される前に。
闇雲に足を進ませ、目を凝らす。
地面と上方に広がる木々の間。その両方に注意をして、気配を探る。
――せめて、ライトがあれば……。
スマホの明かり程度ではなく、もう少しまともな。
そんな愚痴を胸の中で磨り潰し、さらに歩く。ガサガサという、自分が立てる葉擦れの音が不快に響く。
ガーディアンは果たして、どこを移動しているのか。音どころか、動き回る気配すら掴めないのが薄気味悪い。
「――?」
何の前触れもなく、耳に呻き声のようなものが届いた。
いや、届いたような気がした、というべきか。動きを止め、耳を澄ます。
「……」
聞き逃してしまいそうなほど小さな物音が、今度はしっかりと確認することができた。
小枝を折るような、乾いた音。それと一緒に聞こえたのは……。
音源に目星をつけ、警戒しながら近づく。さらに大きく、落ち葉が擦れる音が聞こえた。
すぐ近く、ほんの数メートル先に誰かの気配。その正体には、呻き声でもう検討がついていた。
「……桜?」
目立たぬよう配慮して、囁くように呼びかけてみる。それに反応してか、僅かに音が大きくなった。
「ゆ……うじ?」
間違いないと、はっきり確信する。一気に距離を詰め、声の出所に屈み込む。
「……お前、生きてんのか?」
倒れた状態の桜に手を伸ばす。そっと頭に触れると、モゾリと動き応えてきた。
「生きてるよ。……でも、翼が片方やられちゃった」
「翼?」
息をつきながら言ってくる彼女の言葉を確かめるように、俺はそっと背後に手を回す。
「あ……」
背中に生える、二枚の黒翼。そのうちの片方、左側に生える翼が付け根から千切れかけている。
まさに薄皮一枚、と言った感じか。少し力を込めて引っ張れば簡単にもぎ取れるのではないかというくらい、酷い状態だった。
「身体は? 刺されただろ?」
翼の切り口から漏れる血が手に付くが、今更もう気にもならない。
「え? 切られたのは翼だけだよ。それで、飛べなくなって落っこちて……」
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