ルカくん

ゆん

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ルカくん➊ぜんぶがはじめて

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クラスのルカくんは妖艶だ。


窓際の一番後ろに座ってるルカくんは、授業中に頬杖ついて校庭をじーっとみている。
一体なにをみているのか。

休み時間はいつも本を読んでいて、どんな本を読んでいるか気になるけどルカくんのことだから、私が読むような恋愛の本は読んでないだろう。

お昼の時間にはお母さんが作ってくれているであろうお弁当を食べる。
友達らしき人と食べてるみたいだけど、ルカくんが1番かっこいい。
そんなことを思ってしまう。
そしていつも牛乳を飲んでいて、私もそんなルカくんの真似をして毎日飲むようになった。
なぜなら、購買に牛乳を買いに行くと、ルカくんも買いに来るから。すれ違うときに香る、フゼアの香水の香り。
それはキツすぎず、ふわっと香って来て、私の胸をドキドキさせる。

午後の授業は私を眠りに誘うけど、
夕方になるとオレンジ色の太陽の光がルカくんの顔を照らすから楽しみで、そのルカくんはいつもより増してカッコよくて見とれてしまう。



ルカくんはなにを考えているのかわからない。



放課後はいつも一番に帰ってしまう。

でも今日は違った。

下校時間になってもルカくんは自分の席で授業中みたいに外を眺めていた。
今日はなんか用事があるのかと友達が聞いても
「なんもないよ」
とだけ答える。

知りたい。
ルカくんがいつも早く帰ってる理由も、今残って校庭を眺めてる理由も知りたくて私もみんながいなくなった教室に残ることにした。
ただ携帯をいじってるだけじゃ不自然すぎるから、
私の好きな本を読んで待つことにする。

この本の主人公の人柄に憧れて、この本を読むのはこれで5回目くらいだろうか。
そのくらいお気に入りの本で。





本を読むのに夢中で結構時間が過ぎていたことに気づく。
目的のルカくんは席にいなくて。
あー、やってしまった、と自分を責めて、でも帰らないと親が心配するから帰ることにした。
荷物をまとめて席を立つ。

人がいない教室はこんなに静かでこんなに本を読むのが進むのか。

一人の教室もなんかいいなと思いながら席を立とうとすると、



「〇〇ちゃん、起きたの?」




私が好きなこの声。
空気はもう夜だからか、少しひんやりしてて、
ルカくんの甘い声が響いてよく聞こえる。


ルカくんに名前を覚えてもらえていたことに驚きつつもその言葉の返事を必死に考える。

何を言ったらいいのか、

でも先に言葉を発したのはルカくんで。

「その本。そんなに面白いの?」






私が本に集中しきっていたからか、

それとも本だけに興味を持ったのか。

私に興味を持ってくれたのか。


初めて会話するのにハードルが高すぎる。予想もしていなかった事態に鼓動が速くなるのがわかる。
ドアから少しずつ歩いて近づいてくるルカくんの顔を見つめることしかできずにいると私の隣の席に腰をかける。今まで見ていることしかしていなかったから緊張しすぎて顔が熱くなるのがわかる。




「もう帰らなくっちゃ、悪い子みたいだよ」




ルカくんに初めて話しかけられたことに驚きつつ、
「悪い子」
と言われてしまったことに反省する。

変な人と思われないようにと声を絞り出して

『うん』

とだけ答える。


起こる全てのことが初めてで呼吸の仕方も分からなくなる。学校の靴箱に向かうともう外は真っ暗で風もとても冷たくなっている。どんだけ本に集中していたのか。またルカくんはよくこんな時間まで教室にいたなと不思議に思う。


二人並んで歩くわりにずっと沈黙が続く。こんなチャンスはないと話しかけようとするけどどんな言葉をかけることが正解なのか、私にはその答えがわからなかった。

するとまた沈黙を破るのはルカくんで、

「〇〇ちゃんは、僕のこと嫌い?」





『そ、そんなことはないです。』


突然言われるから心の準備ができずにそっけない言葉でしか返すことができない。


するとルカくんは突然止まって私の腕を引く。
向き合うようになり、瞬間的に目が合う。恥ずかしくなり、顔があまり見られないように目をそらすと


「じゃあ、なんでそんなに目をそらすの、やっぱり嫌?」

『ちが、、ちが「ちがくない。普段なら?僕のことばっか見てるのに」

「僕が気づいてないと思う?」



そんなルカくんの顔はいつもの優しい顔ではなく、少し怒ったような、困ったような寂しい顔で、何がルカくんをこんな顔にさせているのか。それは紛れもなくこの私で。そんな関係でもないのに少し頬が緩んでしまう。


「なんで笑ってるの」

『ルカくんも怒ったような顔するんだなって思って』


ルカくんに引かれた腕はまだ離してくれなくて、握られている部分が熱を帯びていく


「僕を見てたことは否定しないんだね」



たしかに授業中も休み時間もお昼もルカくんのする行動に目がいってしまっていたことは事実で、ルカくんのその質問に答えられない。
さっきとは変わって少し口角を上げてニヤッとするとやっと腕を離してくれた。



「帰ろうか」


『うん』










ルカくんと初めて会話してから2週間くらいたった。
あれから何にもなくて、あの日のことが夢のように思える。実は夢で起こったんじゃないかと。


最近何もすることがなくて暇してた私は本を借りにいくことにした。ルカくん話をした日、誰もいない教室は居心地が良くて癖になった。いつも同じ本を読んでいるからあたらしく借りにいくことに。

一日の授業が終わり、みんなが教室から出ていくのを見届ける。そこから放課後の図書館に向かう。
図書館には図書館の先生以外誰もいなくてとても落ち着いていた。私の好きな本の作者さんから始めようと探してみる。

どの本も面白そうで全然決められずに立ち尽くしていると他に生徒が図書館に入ってくる音が聞こえる。
私と同じような考えの人がいるもんなんだなあと感心していると


「気が合うね、ぼくたち。」


声にハッとして後ろを振り向くと、いつものような優しい顔をしたルカくんが立っていた。

『ルカくん、、、』



「なんか本探してるの?」

『うん、この作者さんのやつなんだけど』

「これ、この前ずっと読んでたやつ?」

ああ、やっぱりずっと読んでたことを気付かれてたなんて恥ずかしくなる。

『そう、この本好きなの。』

「ぼくは恋愛ものは読んだことないからわからないけど、、、」

『そうだよね、こんな本は読「だからこれぼくに貸して、」

『え?「ぼく読みたい」

「だめかな?」

畳み掛けるように聞いてくるから、断れずに

『ううん、いいよ』
と答える。むしろこんな本でいいのかなと思っていると


「ありがとう 。  それと。この本、読んでほしい、面白いから」


『これって、、』

「うん。ぼくのお気に入り。」

『いいの?』

「うん。感想、聞かせてほしいな」

ルカくんがいつも読んでいるであろう本を私の好きな本と交換すると図書館を後にした。
ルカくんの本を持っていると不思議な気持ちになった。すごく嬉しくて、普通に会話している自分が素直にすごいと思った。





このあいだは返事すらも、まともにできなかったのに。













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