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異世界編
01-012 焼き討ち
北西35キロに戸数50ほどの比較的大きな村がある。南北と東西を結ぶ幹線が交わることから、宿屋や飯屋が建ち並ぶ。
南北を結ぶ街道は、王都には直接到らないため、現下の状況ではヴァロワ人が使える唯一の主要街道でもあった。ここには、唯一残されたアリエ川を跨ぐ橋がある。
東西街道は、やや南側だがアリエ川南岸と並行している。
このシノルーワ村は宿場でもあるが、同時に農産物を他の地域へ輸送するための集荷場でもある。地域では重要な村だ。
現在は、北から南へ避難するヴァロワ人の主要ルート上にあり、中継地になっている。
この村が焼き討ちされた。
犯行はダルリアダ軍ではなく、ヴァロワ人を憎むダルリアダからの入植者だ。彼らはヴァロワ王国がダルリアダ王国の領土となったと信じており、立ち退かないヴァロワ人は不法占拠だと主張している。
この主張はダルリアダ王家の見解と一致していて、ダルリアダ国王もヴァロワ王国はダルリアダ王国の領土に編入されたと考えている。
実際にはヴァロワ王国は存続しており、ヴァロワ国王をダルリアダ国王が兼務しているだけ。
ダルリアダ国王の識字能力は低く、条約文を読解できていない。また、軍人・軍務官僚を厚遇し、政務官僚を軽視するので、条約文そのものを読んでいない、読み聞かされていなかった。
ヴァロワ王家とダルリアダ王家が縁戚で、ヴァロワ王家が後継者を出せなかったことから、縁戚にある周辺諸国王家の総意で、ダルリアダ国王が兼務することになった。
領土の編入や割譲はない。
ダルリアダ国王は、この事実を理解できないのだ。理解できない上に、都合よく曲解している。
シノルーワ村はどこにでもある宿場だが、交通の要衝であり、同時に農産物や工業製品の集積地でもあったから、村人は他村に知古が多かった。
犯行を知って、知人の安否を確かめにやって来たり、犯行の実態を調べるために他の村が調査隊を派遣するなど、犯行直後から村の周辺は騒然となった。
コルマール村でもピエンベニダを隊長とする調査隊を派遣する。
犯行の3日後、すべてが焼かれたシノルーワ村には、500人ものヴァロワ人が集まった。
犯罪者は、自分の行為が自分に返ると恐怖する。村を焼き討ちしたダルリアダ人も同じだった。
ヴァロワ人の報復を恐れた。
そして、王都に救援を求める。
こうして、シノルーワ村の戦いが始まった。
王都の総督府は、これを好機と捉えた。シノルーワ村に集まっているヴァロワ人を反乱者と断定して殲滅すれば、明確に彼我の力の差を示せると。
戦うことが無益とわかれば、立ち去るか、奴隷になるしかないと理解するはず、と。
総督はそう単純には考えていないが、総督府監督官は絶好の機会にほくそ笑んだ。
この時期、ヴァロワの王都レイディから南に派遣できる兵力は2000ほど。総督府監督官は全兵力を投入することを決する。
総督は反対しなかった。ヴァロワの民衆が簡単に屈するとは思えないが、王命に従う総督府監督官に反対はできないのだ。
シノルーワ村焼き討ち事件から5日後、ダルリアダ軍が王都を発したとの知らせが、同村に集まるヴァロワ人各勢力のもたらされる。
北からの避難民は、パニック状態に陥り、さらに南への逃避を始める。
同時に、シノルーワ村を目指して、各勢力が増援を送る。
レーヴィ・キュトラと対峙するコンウィ城に余力はなく、ヘルガ・オーケルは城兵副隊長と部下10人の派遣が眼界だった。
北からの避難民への対応に忙殺されるコルマール村のレベッカ・エスコラにも余裕がなく、シノルーワ村にいるピエンベニダには数人の増援しか送れなかった。
西からやって来たロイバス男爵の軍勢がシノルーワ村に到着したのは、焼き討ちから6日後だった。
ロイバス男爵はヴァロワの軍団を率いていた生粋の軍人で、ヴァロワの爵位が廃止されて以降も他の元貴族同様“男爵”を名乗っている。
ヴァロワ正規軍の一部を継承しており、西部国境付近一帯を事実上支配している。中部の西側に領地を割り当てられた一部のダルリアダ貴族を駆逐してもいた。
ごく一部ではあるが、ダルリアダの支配が及ばない地域を作り上げている。
彼の手勢は当初は200程度だったが、ダルリアダ軍南下の知らせを受けて、増援800を呼び寄せる。
ヴァロワ人にとっては頼もしい限りだが、ロイバス男爵の思惑がどこにあるのかはっきりしていない。
ロイバス家は旧王家とも姻戚であったとされ、王位継承を主張する可能性もある。
こういった情報はヘルガが詳しく、細大に関わらずレベッカに伝えていた。
レベッカの苦悩は大きかった。
いつものターフの下は重苦しい空気に満たされている。
「ピエンベニダに撤退を命じましょうか?」
翔太は考える。
「それはまずいよ。
ロイバス男爵の兵が1000、それ以外に1500集まるなら勝ち目がないわけじゃない。
今後のアリエ川以南の行方を決するかもしれない戦いを避けるのは、判断としてどうかな?」
「ショウ様、でも出せる人数には限りがあります」
「人が出せないなら、知恵を出すしかないよ」
「知恵ですか?」
「あぁ、装甲車は出せる。
あと何か、強力な武器があれば……。
少し考える。
何かできるはずだ」
翔太は、見かけは立派なロケット弾だが、実際はロケット花火と大差ない兵器を作っていた。
弾頭は黒色火薬、信管は打撃、推進剤も黒色火薬。
推進剤の燃焼は花火同様瞬時に終わるが、レールから発射された全長1メートルのロケットは、45度の角度で発射すると1000メートル飛翔して、30キロの炸薬を爆発させる性能を持っている。
安定翼は矩形の4枚。直径は100ミリ。弾頭のフェアリングはペットボトル。推進剤は紙に包まれていて、原理と構造はロケット花火と同じ。
キャリアダンプの荷台に水平に5本の鉄製レールを設置。仰角はダンプの荷台を上げ下げし、旋回は車体を回す。キャリアダンプなので、履帯で旋回しなくても、車体が360度回転できる。
急造の多連装ロケット発射機を作ったのだ。実験では上手く飛んだし、地面が固ければ着弾時の激発も確実。ただ、水に落ちたり、地面が極端に軟弱だと爆発しない。
そこで、時限信管も作った。100均のタイマーと単3電池で作るごく簡単な時限発火装置だ。
発射台に架装後5分で爆発するよう設定する。
はっきり言って、いい加減な兵器だ。
キャビンとエンジンルームの周囲には5ミリ厚の鉄板を被せる。防弾のためだが、これもがっちりと取り付けてはいるが、造作は荒っぽい。
ロケット自体は何度もテストしているが、キャリアダンプの発射機はまさに急造だ。
装甲運搬車は、もっとマシな兵器だ。いすゞの4気筒5.2リットルディーゼルにターボチャージャーを組み合わせて、210馬力を発揮し、車体側面と後部を垂直の鋼板で囲み、前方はやや傾斜した鋼板で防御する。
見かけは、第二次世界大戦期のドイツ軍自走榴弾砲フンメルに似ている。
小さなフンメルだ。
砲は当初計画通り四一式山砲を使う。幸運にも榴弾20発を見つけている。
車体後部に乗降ドアを備える。乗員は4。車長、操縦手、砲手、装填手。
小さすぎて砲弾を10発しか搭載できないため、弾薬運搬車兼砲兵指揮車が随伴する。
自走山砲とキャリアダンプ、2トントラックが出発したのは、焼き討ちから7日後のことだった。
現在、シノルーワ村の支配者はロイバス男爵だ。彼は嫡子を同行させており、あたかもヴァロワの新王のように振る舞っている。
1000の元ヴァロワ軍正規兵は装備がよく、確かに精強だ。
退役兵、農民、商人、職人、下級貴族で編制された合計1500の雑多な部隊など、歯牙にもかけていない。
ある意味、当然だ。
翔太たちがシノルーワ村に到着しても、ロイバス男爵の尊顔を拝することはできなかった。
ロイバス男爵は自身が全軍の司令官であると、態度で示している。
それに異を唱えるものは誰もいない。
作戦会議で彼が示したのは、実に簡単な命令だった。
「南下してくるダルリアダ軍主力は、我々が迎え撃つ。
アリエ川に沿って西進してくる敵に対しては、貴殿たち雑兵があたられよ。貴殿たちが逃げなければ、この戦いに勝てる」
おおよそこんな感じで、何事についても棘があるし、マウンティングなのか見下す表現が言葉の端々にある。
だが、意外と“雑兵”たちは気にしていない。
「へ!
こっちには戦車があるんだぞ!
それも2輌もだ!
へっぽこ貴族に負けるもんか!」
農民の若者が、聞こえないように啖呵を切る。
現地で、2トントラックの正面に8ミリ厚の鉄板が取り付けられた。
これで、インチキ戦車は3輌。ピエンベニダたちの2トントラックの正面にも鉄板を取り付ける。
これで、4輌。
ロケット弾を撃ち込み、簡易装甲を施した車輌を先頭に全員で突撃する。
これが、翔太たちの“作戦”だった。
ダルリアダ軍は戦列歩兵戦を仕掛けてくるが、それには乗らない。村の東側を守るヴァロワ部隊は、後方に1000を残し、500が散開して進む。
後方の800はロイバス男爵軍が崩れた際の西側の守りにつく。200は東側の戦力予備。
翔太はロイバス男爵の自信満々な態度に、危険を感じていた。
ロイバス男爵軍と総督府監督官軍は、アリエ川を渡ったシノルーワ村の北、疎林が点在する草原で激突する。ここは本来ならば麦畑だが、数年間耕作が放棄されている。
ロイバス男爵軍はヴァロワ軍の装備を引き継いでおり、兵の士気も高い。砲を欠いてはいるが、射程が短く、命中精度も低い滑腔砲がなくとも、大きく劣勢ではない。
しかし、騎兵を欠いていることは、明らかに不利だ。指揮官クラスは馬に乗るが、騎兵はいない。
ヴァロワ王家断絶後、ヴァロワ人部隊が他国軍と初めて行う正規戦であるが、ロイバス男爵軍将兵1000は勝利を疑っていなかった。
翔太はこの戦いを重視している。ヴァロワの地形は全土が平坦で、地形的な障害が少ない。
そのなかで唯一、アリエ川は南北を隔てる大きな障害だ。川幅が広く、水量が多く、総じて深い。徒歩で渡ることはほぼ不可能。
アリエ川は、ヴァロワの東部国境付近に源流がある。最上流部は南から北に流れ、上流に入ると流れを西に変え、ヴァロワを北と南に分割する。流れは西の国境を越える。
南から北に流れる最上流部は、東の隣国との国境になっている。
つまり、ヴァロワ南部を攻略するには、アリエ川を渡らなければならない。東西の隣国の領土を通過したとしても、渡河はしなければならない。
翔太は、アリエ川以南をヴァロワ人が抑えることができれば、この戦いは膠着すると考えていた。
ヴァロワの領土は、ダルリアダ王国と接する北の国境からアリエ川北岸までが3分の1、アリエ川南岸からヴォルカン高地北縁までが3分の1、ヴォルカン高地北縁から南の海までが3分の1に区分できる。
高地は農業には向かない。高地の南には海があり、南部沿岸は高地以北とは文化が違う。
南部沿岸の街や村は、ダルリアダ海軍に襲撃されたが、撃退したという噂がある。情報が錯綜しているが、占領下にないことは事実だ。
アリエ川以南をヴァロワ人勢力が確保できれば、ダルリアダはヴァロワ全土を掌握することは不可能になる。
シノルーワ村はアリエ川以南への入口にある。この戦いに負けると、自動的にヴァロワ領土の3分の2が再度奪われる。
総督府監督官の作戦は明白だ。北から迫る主力に謀殺されている間に、東から側面攻撃を仕掛けて戦列を瓦解させる。
数ではヴァロワ側が多いが、半分以上は兵士ではない。軍事訓練は皆無。
ダルリアダ軍は知らないが、ロイバス男爵軍にも問題があり、古参の下士官がほとんどいない。
実戦における軍の基幹は、下級将校と下士官の能力による。ロイバス男爵軍の下級将校は血の気の多い下級貴族の次男や三男で、実戦経験がない。機を見るに敏な古参の下士官は、どうもロイバス男爵には与しなかったようだ。
ロイバス男爵軍の東側面を守る軍は、農民、商人、職人、元兵士、下級貴族、医師、看護師、娼婦、大道芸人、学者、政治家、元官吏など、あらゆる職業の男女で編制されている。
ロイバス男爵が本来の意味ではない蔑称として使った“雑兵”は間違いじゃない。
だが、彼らは何かを守るために集まってきた。明確な個人的目的があるのだ。強兵ではないが、弱兵でもない。
ロレーヌ準男爵が翔太を見つける。
「ショウ殿、待たれよ」
翔太が振り向く。オリバ準男爵もいる。
「どのように戦う気だ?
この軍には包丁を握しめただけの娼婦までいる。実際に戦えそうなのは500ほどだぞ」
オリバ準男爵が前に出る。
「ロイバス男爵が抜かれたら、一気に瓦解するぞ」
フラン曹長が走ってくる。
「各々方、ここにおられたか。
軍の経験があるもの、下士官・兵を集めたが少ないぞ。
指揮官もいない」
翔太もどうすべきか考えていた。
「俺たちは、東から迫る敵を迎え撃つ。
フラン曹長が歩兵を指揮してくれないか。
全軍の指揮は、ここの地理に詳しいオリバ準男爵。
西の守り、我々の背後はロレーヌ準男爵に任せられれば安心なのだが……」
オリバ準男爵が「心得た」と即答すると、他の2人も頷く。
翔太が14歳の女の子を紹介する。
「オリバ準男爵、彼女は役に立つ。
あなたの指揮下で使ってくれ」
オリバ男爵が慌てる。
「この子が……?」
「必ず役に立つ。
それは請け合う」
2人の準男爵は、ノートパソコンの画面に釘付けだ。
オリバ準男爵が「どのような仕掛けだ」と呟き、ロレーヌ準男爵が「戦場が一望できる。これなら、勝利は間違いない」と興奮する。
ビルギット・ベーンが「鳥瞰魔法と呼んでいるけど、魔法ではなく、科学というものだ」と説明する。
オリバ準男爵が次男を呼ぶ。
「そなたの生命に替えて、この子を守れ。必ず守れ。それと、鳥瞰魔法の存在を知られるな」
ロレーヌ準男爵は、森から手頃な丸太を切り出して、防護柵を作る。この防護柵はアリエ川南岸から設置される。
敵が絶対的に優勢な騎兵を防ぐためだ。騎兵の突撃を防ぐには、間断ない銃の発射が必要。その方法は考えた。2人が弾込、銃手が発射。
これならば、銃の不足と兵の練度の不足を補える。
短時間で森から丸太を切り出すには、秘密兵器があった。ロレーヌ準男爵は、4基のチェーンソーを使ったのだ。
翔太はこの戦いのあとのことを考えていた。現状のヴァロワでは、軍事力でダルリアダには対抗できない。
しかも、ダルリアダには国際世論の批判は、効果が限定的。力を信奉するダルリアダは、軍事力がすべてだからだ。
「守る力が必要だ」
翔太は、戦いを前に自走山砲の操向レバーを握りながら、そう呟いた。
胸まである草丈の草原に、ヴァロワの勢力が身を隠す。数人ずつ固まっているが、総じて分散している。
ダルリアダの西進部隊は、見事な戦列を作る。彼らから見えるのは、4つの鉄の箱だけ。
ダルリアダの砲兵が発射し、その直後に戦列が前進を始める。
ヴァロワ勢力も前進を始める。
自走山砲や急増装甲車の後方に列ができる。車輌を遮蔽物にして進む。
騎兵が突撃を開始するが、目標が判然としない。ヴァロワの臆病者は、身を隠したままで戦列を作らないからだ。
騎兵100が4輌の戦車モドキに襲いかかる。
後装銃と1挺の短機関銃は、圧倒的な威力を示す。
大陸最強と謳われるダルリアダの胸甲騎兵“キュラシェーア”が数挺の後装銃と1挺の短機関銃によって、撃ち倒されていく。
マスケット兵も発射する。胸甲騎兵恐るるに足らず、となれば誰も逃げない。
負傷した胸甲騎兵には死しかない。とどめが刺され、武器が奪われる。ウマが生きていれば奪われる。
恐怖の対象は恐怖の原因を失えば、憎しみしか残らない。憎しみの発露として、当然のように殺される。彼らが当然のように殺してきたように。
砲兵はどうにかして、自走山砲に命中させようと必死だった。ダルリアダの砲には照準器がないので、カンで撃つしかない。
それでも卓越した操砲術で、距離100メートルで命中させた。
自走山砲が止まる。
翔太は舌を噛んでしまった。ひどく傷む。だが、ここで前進を止めることはできない。エンストはしていない。咄嗟にクラッチを踏んだ。トランスミッションを確認し、アクセルを踏み、クラッチをつなぐ。
自走山砲が前進する。いまは山砲としての役に立っていない。まるで、突撃砲だ。
砲兵隊長は砲弾の直撃を受けた鉄箱が、何事もなかったように動き始めたことに衝撃を受ける。
砲兵は動揺し、浮き足立つ。
「もう1発あてろ!」
騎砲は4門。軽量にするため野砲に比べて口径が細いが、軽い分、機動性が高い。
方向射界がゼロなので、砲自体を旋回して戦車に砲口を向ける。
ピエンベニダは砲兵に向けて小銃を発射する。
砲兵は逃げたが、砲兵隊長は砲を発射する。2発目は自走山砲の戦闘室上部左角命中して、外板を変形させた。だが、走行には影響ない。
この時点で、ダルリアダの戦列は瓦解していた。身体に草を巻き付けたみすぼらしい格好の兵が、深紅のジャケットを身につけた立派な軍装の兵を蹴散らしていく。
「砲4、銃多数、鹵獲。
深追いはしなかった」
貴族の若い子弟の報告にオリバ準男爵が肯定する。
「いい判断だ。とりあえず追い払えばいい。
ロレーヌ殿が西に迫ったダルリアダ兵を追い払った。
ロイバス男爵は、はるか西に後退した。
潰走したわけではなく、整然と後退した。
ダルリアダ軍も潰走したわけではない。十分な戦力を残して、北に退いた。
明日、再度攻撃してくるだろう」
翔太は、希望を伝える。
「諦めて、帰ってほしいんだが……」
オリバ準男爵も同意だ。
「そうであってほしいが、どうだろうね。
しかし、鳥瞰魔法がなければ、負けていた。で、鳥瞰魔法は夜でも使えるのか?
まさかな……」
少女が微笑む。
「限定的だけど、見えるよ。
暗視カメラを装備しているから。昼間ほどではないけどね、ある程度見えるよ」
オリバ準男爵が少女を見る。
「自分のつま先さえ見えない濃霧の中でも見えるなんて言わないでくれ」
「あっ、でも赤外線カメラを装備すれば見れるはずだよ」
オリバ準男爵が頭を抱える。
「こいつは、根本から戦い方を考え直さないとダメだな。
どちらにしても、今次会戦の英雄はきみだ」
少女は恥ずかしそうに微笑んだ。
ビルギット・ベーンは、ヴァロワの“市民軍”が精強なダルリアダ正規軍を破り、砲4門を無傷で鹵獲した、との記事と写真を送る。
彼女の仲間は、その記事と写真をカラーレーザープリンタでトナーが切れるまで印刷し、西と東の隣国と各地の同胞に送る。
ヴァロワ中部では、村や街に掲示した。
このとき、初めて“市民軍”という言葉が使われる。
にらみ合ったまま、4日が過ぎた。
ダルリアダ国王は激怒していた。無敵であるべきダルリアダ軍が、寄せ集めの民兵に敗れただけでなく、砲4門を奪われたからだ。
実際は、ダルリアダ軍は敗れてはいない。ロイバス男爵軍を後退させたし、市民軍は防戦するだけで精一杯。攻勢は無理だった。東から攻め込んだ部隊がわずかな打撃を受けただけだ。
しかし、王家の紋章が刻まれた砲を奪われ、それが周辺諸国に知れ渡った。
これは、由々しき問題だ。
総督府監督官は、ダルリアダの王都に召喚された。彼は責任を問われ、よくて解任、国王の腹の虫次第で斬首もあり得る。
ドローンの映像は、ダルリアダ軍が北に向かって撤収していく様子を映している。
フラン曹長が「信じられねぇ」と吐くと、ロレーヌ準男爵が「まったくだ」と同意する。
シノルーワ村焼き討ち事件に始まる、ダルリアダ正規軍のアリエ川以南侵攻は終わった。
ヴァロワ市民軍は、アリエ川以南に植民していたダルリアダ人に対して、奴隷の無条件解放を命じる。
国王の権勢が及ばない地でのダルリアダ人は、単なる野蛮人でしかない。豪華な服を着ていても、人間を家畜にするなど野蛮人の行為だ。
彼らはレーヴィ・キュトラにキュトラ伯爵家による領主としての責務である庇護を求めたが、ヘルガがレーヴィに「身1つで立ち去るなら危害は加えぬ」と伝えると、彼は剣を捨ててさっさと逃げた。
キュトラ伯爵は、ダルリアダ国王から与えられた広大な領地の支配を諦めてはいないが、現実はすでにキュトラ伯爵家の手には余る状況だった。
ダルリアダ王国はヴァロワ王国を戦わずに手に入れたが、アリエ川以南の支配を失った。
アリエ川以南において、支配をどうにか成功させかけていたダルリアダ貴族からは、キュトラ伯爵の愚かな統治を糾弾する声が上がった。
彼らは新領地に代官を置いていたが、その多くは身内だった。シノルーワ村の戦い以降、生命の危険があることから、代官とその家族は撤収を余儀なくされた。
シノルーワ村焼き討ちと、その後の展開によって、ヴァロワの民衆に親和政策で臨んだダルリアダ貴族の努力は水泡に帰した。
アリエ川以南からヴォルカン高地北縁までのヴァロワ中部は、西はロイバス男爵が、東は有志による共同統治が行われることになった。
なお、東部国境付近のダルリアダ植民農園主は、多数が残って農園経営を継続している。
コルマール村で行われた合同会議は、コンウィ城をどうするかで紛糾する。
コンウィ城の主はヘルガ・オーケルだが、彼女はキュトラ伯爵の娘であり、コンウィ城は前城主から奪ったもの。だが、彼女はキュトラ伯爵と対立しており、ダルリアダ人農園主の追放では重要な役割を担っている。
また、キュトラ伯爵の三男を幽閉しており、事実上の人質でもある。ヴァロワ人に対する非道の数々は、死亡した四男と幽閉されている三男によるものであることも調査で判明している。
ヘルガの私兵のうち半分はヴァロワ人で、その他は周辺諸国の出身。ダルリアダ人は1人。隊長のベングト・バーリだけ。
ベングトの祖母は、ヴァロワ人だと本人は主張している。
ヘルガはヴァロワに残ることを希望している。それを認めるか否かで、賛否が拮抗している。
この賛否表明については、レベッカは態度を明かさないと宣言した。反対であることは確実であり、その理由はキュトラ伯爵家に対する私怨からだ。
一領具足の虐殺には、ヘルガは関わっていないことも知っていた。
コンウィ城の処遇が決まらないまま、小麦の収穫になった。
麗林梢は、嶺林翔太を働かせることは諦めた。インド製の旧型ロングシャーシジムニーを仕入れて、販売を始める。
売れ行きは悪くない。ピックアップと5ドアがよく売れる。
ランクルもFJ40系だけでなく、人気のあるFJ70系も扱うようにする。
嶺林翔太は新潟にいた。
表向きは、ロシア製四駆車UAZハンターを国内販売するためにサンプルを受け取りに来た。
実際は、旧ユーゴスラビアから銃身製造用工作機械を密輸するためだ。薬莢を大量生産する専用機械と金型も入手し、発射薬の製造装置も入手する。
工作機械はかなり旧式だが、現用の機械でもある。これらを新潟で受け取る。
代金は異世界での利益で得た金貨を使った。金貨を溶かして金塊にし、15キロを支払いにあてる。こんなアナログな取り引きのほうが、足がつかない。
利益が大きいから、密輸業者側も乗り気だ。
麗林梢は、20年落ち以上の同型ピックアップトラックを6輌仕入れ、コルマール村に送る。一部は無可動車で、すべて個人の所有者から格安で買い取った。
車体を外し、半装軌化した上で装甲車体を架装する予定だ。
地下無酸素空間には、高祖父が残したガトリング砲が収められていた。
どう考えても小藩の武器ではないが、長岡藩が持っていたのだから代金次第で入手が不可能だったわけではないのだろう。
ガトリング砲をコルマール村に移動すると、大勢の見物人を集める。高祖父が入手した兵器の中では、四斥砲に次ぐ大重量物だ。
アネルマが「兄上、これは何ですか!」と驚く。レベッカは興味津々。
翔太はどう説明するか事前に考えていた。
「ガトリング砲という、機械式の多銃身機関銃だ。銃身が回転して、連射ができる。
極初期の機関銃の仕組みなのだが、仕組み自体は長く使われている。
この機械式機関銃を使えるようにする。
その機関銃をピックアップに載せる。ガトリング砲があれば、ダルリアダの胸甲騎兵は怖くない」
嶺林翔太の高祖父が残したガトリング砲は、来孫によって魔改造されていく。
ガトリング砲の欠点は、発射薬に黒色火薬を使うため、煤の固着から連射が妨げられることだ。それと、自由に俯仰旋回ができないので、集団を作らない散兵には対応できない。
銃本体だけで80キロ近くあるので、軽快性もない。
そこで、JM61-Mバルカン砲に範を採った銃架を作る。銃架の俯仰旋回と射撃は、人力操作となる。
ガトリング砲の作動は手動ではなく、電動に変更する。銃身の回転はいくらでも速くできるが、ガトリング砲の発射速度は1分間に200発なので、それに合わせる。徐々に発射速度を上げ、1分間に300から400発の発射をテストする。最適値を求め、高発射速度の重機関銃に仕上げる。
口径は14.7ミリ。スナイドル銃と同じ弾を使う。ただし、火薬はニトロセルロースによるシングルベースの無煙火薬に変更する。
この新型弾薬は、スナイドル銃やトラップドアにも使われる。
ガトリング砲を搭載する装甲車の製造に取りかかる。
シャーシ、エンジンを含む動力系はピックアップトラックのままで、後輪におむすび型の履帯(クローラー)を取り付ける。後輪の車高が上がるので、それに合わせて前輪サスペンションを嵩上げする。前輪はマッドタイヤにして、路外走行性能を確保する。
車体は新造で、厚さ8ミリの圧延鋼板で構成する。
荷台部分がオープントップの戦闘室になり、ガトリング砲は戦闘室の中心に備える。
部品、コンポーネントは、可能な限り、改造車のものを再利用する。
ピックアップトラックの装甲車への改造は、時間をかけてじっくりと取り組むことができなかった。
春まき小麦の作付けが終われば、ダルリアダはまた攻めてくる。
それまでに、準備すべきことがたくさんある。
しかし、それまでは平和を享受できる。
翔太の祖父は、小量の9ミリ拳銃弾を残している。この弾を使う銃は見つけていない。どちらにしても、中国の国民党政府軍から鹵獲したものだろうが、弾には刻印が何もない。
刻印はないが、ドイツ軍制式9ミリパラベラム弾であることは確か。
パラベラム=平和を欲するならば戦争に備えよ。
この世界で農業を続けることを望む翔太は、戦争に備えなければならなかった。
南北を結ぶ街道は、王都には直接到らないため、現下の状況ではヴァロワ人が使える唯一の主要街道でもあった。ここには、唯一残されたアリエ川を跨ぐ橋がある。
東西街道は、やや南側だがアリエ川南岸と並行している。
このシノルーワ村は宿場でもあるが、同時に農産物を他の地域へ輸送するための集荷場でもある。地域では重要な村だ。
現在は、北から南へ避難するヴァロワ人の主要ルート上にあり、中継地になっている。
この村が焼き討ちされた。
犯行はダルリアダ軍ではなく、ヴァロワ人を憎むダルリアダからの入植者だ。彼らはヴァロワ王国がダルリアダ王国の領土となったと信じており、立ち退かないヴァロワ人は不法占拠だと主張している。
この主張はダルリアダ王家の見解と一致していて、ダルリアダ国王もヴァロワ王国はダルリアダ王国の領土に編入されたと考えている。
実際にはヴァロワ王国は存続しており、ヴァロワ国王をダルリアダ国王が兼務しているだけ。
ダルリアダ国王の識字能力は低く、条約文を読解できていない。また、軍人・軍務官僚を厚遇し、政務官僚を軽視するので、条約文そのものを読んでいない、読み聞かされていなかった。
ヴァロワ王家とダルリアダ王家が縁戚で、ヴァロワ王家が後継者を出せなかったことから、縁戚にある周辺諸国王家の総意で、ダルリアダ国王が兼務することになった。
領土の編入や割譲はない。
ダルリアダ国王は、この事実を理解できないのだ。理解できない上に、都合よく曲解している。
シノルーワ村はどこにでもある宿場だが、交通の要衝であり、同時に農産物や工業製品の集積地でもあったから、村人は他村に知古が多かった。
犯行を知って、知人の安否を確かめにやって来たり、犯行の実態を調べるために他の村が調査隊を派遣するなど、犯行直後から村の周辺は騒然となった。
コルマール村でもピエンベニダを隊長とする調査隊を派遣する。
犯行の3日後、すべてが焼かれたシノルーワ村には、500人ものヴァロワ人が集まった。
犯罪者は、自分の行為が自分に返ると恐怖する。村を焼き討ちしたダルリアダ人も同じだった。
ヴァロワ人の報復を恐れた。
そして、王都に救援を求める。
こうして、シノルーワ村の戦いが始まった。
王都の総督府は、これを好機と捉えた。シノルーワ村に集まっているヴァロワ人を反乱者と断定して殲滅すれば、明確に彼我の力の差を示せると。
戦うことが無益とわかれば、立ち去るか、奴隷になるしかないと理解するはず、と。
総督はそう単純には考えていないが、総督府監督官は絶好の機会にほくそ笑んだ。
この時期、ヴァロワの王都レイディから南に派遣できる兵力は2000ほど。総督府監督官は全兵力を投入することを決する。
総督は反対しなかった。ヴァロワの民衆が簡単に屈するとは思えないが、王命に従う総督府監督官に反対はできないのだ。
シノルーワ村焼き討ち事件から5日後、ダルリアダ軍が王都を発したとの知らせが、同村に集まるヴァロワ人各勢力のもたらされる。
北からの避難民は、パニック状態に陥り、さらに南への逃避を始める。
同時に、シノルーワ村を目指して、各勢力が増援を送る。
レーヴィ・キュトラと対峙するコンウィ城に余力はなく、ヘルガ・オーケルは城兵副隊長と部下10人の派遣が眼界だった。
北からの避難民への対応に忙殺されるコルマール村のレベッカ・エスコラにも余裕がなく、シノルーワ村にいるピエンベニダには数人の増援しか送れなかった。
西からやって来たロイバス男爵の軍勢がシノルーワ村に到着したのは、焼き討ちから6日後だった。
ロイバス男爵はヴァロワの軍団を率いていた生粋の軍人で、ヴァロワの爵位が廃止されて以降も他の元貴族同様“男爵”を名乗っている。
ヴァロワ正規軍の一部を継承しており、西部国境付近一帯を事実上支配している。中部の西側に領地を割り当てられた一部のダルリアダ貴族を駆逐してもいた。
ごく一部ではあるが、ダルリアダの支配が及ばない地域を作り上げている。
彼の手勢は当初は200程度だったが、ダルリアダ軍南下の知らせを受けて、増援800を呼び寄せる。
ヴァロワ人にとっては頼もしい限りだが、ロイバス男爵の思惑がどこにあるのかはっきりしていない。
ロイバス家は旧王家とも姻戚であったとされ、王位継承を主張する可能性もある。
こういった情報はヘルガが詳しく、細大に関わらずレベッカに伝えていた。
レベッカの苦悩は大きかった。
いつものターフの下は重苦しい空気に満たされている。
「ピエンベニダに撤退を命じましょうか?」
翔太は考える。
「それはまずいよ。
ロイバス男爵の兵が1000、それ以外に1500集まるなら勝ち目がないわけじゃない。
今後のアリエ川以南の行方を決するかもしれない戦いを避けるのは、判断としてどうかな?」
「ショウ様、でも出せる人数には限りがあります」
「人が出せないなら、知恵を出すしかないよ」
「知恵ですか?」
「あぁ、装甲車は出せる。
あと何か、強力な武器があれば……。
少し考える。
何かできるはずだ」
翔太は、見かけは立派なロケット弾だが、実際はロケット花火と大差ない兵器を作っていた。
弾頭は黒色火薬、信管は打撃、推進剤も黒色火薬。
推進剤の燃焼は花火同様瞬時に終わるが、レールから発射された全長1メートルのロケットは、45度の角度で発射すると1000メートル飛翔して、30キロの炸薬を爆発させる性能を持っている。
安定翼は矩形の4枚。直径は100ミリ。弾頭のフェアリングはペットボトル。推進剤は紙に包まれていて、原理と構造はロケット花火と同じ。
キャリアダンプの荷台に水平に5本の鉄製レールを設置。仰角はダンプの荷台を上げ下げし、旋回は車体を回す。キャリアダンプなので、履帯で旋回しなくても、車体が360度回転できる。
急造の多連装ロケット発射機を作ったのだ。実験では上手く飛んだし、地面が固ければ着弾時の激発も確実。ただ、水に落ちたり、地面が極端に軟弱だと爆発しない。
そこで、時限信管も作った。100均のタイマーと単3電池で作るごく簡単な時限発火装置だ。
発射台に架装後5分で爆発するよう設定する。
はっきり言って、いい加減な兵器だ。
キャビンとエンジンルームの周囲には5ミリ厚の鉄板を被せる。防弾のためだが、これもがっちりと取り付けてはいるが、造作は荒っぽい。
ロケット自体は何度もテストしているが、キャリアダンプの発射機はまさに急造だ。
装甲運搬車は、もっとマシな兵器だ。いすゞの4気筒5.2リットルディーゼルにターボチャージャーを組み合わせて、210馬力を発揮し、車体側面と後部を垂直の鋼板で囲み、前方はやや傾斜した鋼板で防御する。
見かけは、第二次世界大戦期のドイツ軍自走榴弾砲フンメルに似ている。
小さなフンメルだ。
砲は当初計画通り四一式山砲を使う。幸運にも榴弾20発を見つけている。
車体後部に乗降ドアを備える。乗員は4。車長、操縦手、砲手、装填手。
小さすぎて砲弾を10発しか搭載できないため、弾薬運搬車兼砲兵指揮車が随伴する。
自走山砲とキャリアダンプ、2トントラックが出発したのは、焼き討ちから7日後のことだった。
現在、シノルーワ村の支配者はロイバス男爵だ。彼は嫡子を同行させており、あたかもヴァロワの新王のように振る舞っている。
1000の元ヴァロワ軍正規兵は装備がよく、確かに精強だ。
退役兵、農民、商人、職人、下級貴族で編制された合計1500の雑多な部隊など、歯牙にもかけていない。
ある意味、当然だ。
翔太たちがシノルーワ村に到着しても、ロイバス男爵の尊顔を拝することはできなかった。
ロイバス男爵は自身が全軍の司令官であると、態度で示している。
それに異を唱えるものは誰もいない。
作戦会議で彼が示したのは、実に簡単な命令だった。
「南下してくるダルリアダ軍主力は、我々が迎え撃つ。
アリエ川に沿って西進してくる敵に対しては、貴殿たち雑兵があたられよ。貴殿たちが逃げなければ、この戦いに勝てる」
おおよそこんな感じで、何事についても棘があるし、マウンティングなのか見下す表現が言葉の端々にある。
だが、意外と“雑兵”たちは気にしていない。
「へ!
こっちには戦車があるんだぞ!
それも2輌もだ!
へっぽこ貴族に負けるもんか!」
農民の若者が、聞こえないように啖呵を切る。
現地で、2トントラックの正面に8ミリ厚の鉄板が取り付けられた。
これで、インチキ戦車は3輌。ピエンベニダたちの2トントラックの正面にも鉄板を取り付ける。
これで、4輌。
ロケット弾を撃ち込み、簡易装甲を施した車輌を先頭に全員で突撃する。
これが、翔太たちの“作戦”だった。
ダルリアダ軍は戦列歩兵戦を仕掛けてくるが、それには乗らない。村の東側を守るヴァロワ部隊は、後方に1000を残し、500が散開して進む。
後方の800はロイバス男爵軍が崩れた際の西側の守りにつく。200は東側の戦力予備。
翔太はロイバス男爵の自信満々な態度に、危険を感じていた。
ロイバス男爵軍と総督府監督官軍は、アリエ川を渡ったシノルーワ村の北、疎林が点在する草原で激突する。ここは本来ならば麦畑だが、数年間耕作が放棄されている。
ロイバス男爵軍はヴァロワ軍の装備を引き継いでおり、兵の士気も高い。砲を欠いてはいるが、射程が短く、命中精度も低い滑腔砲がなくとも、大きく劣勢ではない。
しかし、騎兵を欠いていることは、明らかに不利だ。指揮官クラスは馬に乗るが、騎兵はいない。
ヴァロワ王家断絶後、ヴァロワ人部隊が他国軍と初めて行う正規戦であるが、ロイバス男爵軍将兵1000は勝利を疑っていなかった。
翔太はこの戦いを重視している。ヴァロワの地形は全土が平坦で、地形的な障害が少ない。
そのなかで唯一、アリエ川は南北を隔てる大きな障害だ。川幅が広く、水量が多く、総じて深い。徒歩で渡ることはほぼ不可能。
アリエ川は、ヴァロワの東部国境付近に源流がある。最上流部は南から北に流れ、上流に入ると流れを西に変え、ヴァロワを北と南に分割する。流れは西の国境を越える。
南から北に流れる最上流部は、東の隣国との国境になっている。
つまり、ヴァロワ南部を攻略するには、アリエ川を渡らなければならない。東西の隣国の領土を通過したとしても、渡河はしなければならない。
翔太は、アリエ川以南をヴァロワ人が抑えることができれば、この戦いは膠着すると考えていた。
ヴァロワの領土は、ダルリアダ王国と接する北の国境からアリエ川北岸までが3分の1、アリエ川南岸からヴォルカン高地北縁までが3分の1、ヴォルカン高地北縁から南の海までが3分の1に区分できる。
高地は農業には向かない。高地の南には海があり、南部沿岸は高地以北とは文化が違う。
南部沿岸の街や村は、ダルリアダ海軍に襲撃されたが、撃退したという噂がある。情報が錯綜しているが、占領下にないことは事実だ。
アリエ川以南をヴァロワ人勢力が確保できれば、ダルリアダはヴァロワ全土を掌握することは不可能になる。
シノルーワ村はアリエ川以南への入口にある。この戦いに負けると、自動的にヴァロワ領土の3分の2が再度奪われる。
総督府監督官の作戦は明白だ。北から迫る主力に謀殺されている間に、東から側面攻撃を仕掛けて戦列を瓦解させる。
数ではヴァロワ側が多いが、半分以上は兵士ではない。軍事訓練は皆無。
ダルリアダ軍は知らないが、ロイバス男爵軍にも問題があり、古参の下士官がほとんどいない。
実戦における軍の基幹は、下級将校と下士官の能力による。ロイバス男爵軍の下級将校は血の気の多い下級貴族の次男や三男で、実戦経験がない。機を見るに敏な古参の下士官は、どうもロイバス男爵には与しなかったようだ。
ロイバス男爵軍の東側面を守る軍は、農民、商人、職人、元兵士、下級貴族、医師、看護師、娼婦、大道芸人、学者、政治家、元官吏など、あらゆる職業の男女で編制されている。
ロイバス男爵が本来の意味ではない蔑称として使った“雑兵”は間違いじゃない。
だが、彼らは何かを守るために集まってきた。明確な個人的目的があるのだ。強兵ではないが、弱兵でもない。
ロレーヌ準男爵が翔太を見つける。
「ショウ殿、待たれよ」
翔太が振り向く。オリバ準男爵もいる。
「どのように戦う気だ?
この軍には包丁を握しめただけの娼婦までいる。実際に戦えそうなのは500ほどだぞ」
オリバ準男爵が前に出る。
「ロイバス男爵が抜かれたら、一気に瓦解するぞ」
フラン曹長が走ってくる。
「各々方、ここにおられたか。
軍の経験があるもの、下士官・兵を集めたが少ないぞ。
指揮官もいない」
翔太もどうすべきか考えていた。
「俺たちは、東から迫る敵を迎え撃つ。
フラン曹長が歩兵を指揮してくれないか。
全軍の指揮は、ここの地理に詳しいオリバ準男爵。
西の守り、我々の背後はロレーヌ準男爵に任せられれば安心なのだが……」
オリバ準男爵が「心得た」と即答すると、他の2人も頷く。
翔太が14歳の女の子を紹介する。
「オリバ準男爵、彼女は役に立つ。
あなたの指揮下で使ってくれ」
オリバ男爵が慌てる。
「この子が……?」
「必ず役に立つ。
それは請け合う」
2人の準男爵は、ノートパソコンの画面に釘付けだ。
オリバ準男爵が「どのような仕掛けだ」と呟き、ロレーヌ準男爵が「戦場が一望できる。これなら、勝利は間違いない」と興奮する。
ビルギット・ベーンが「鳥瞰魔法と呼んでいるけど、魔法ではなく、科学というものだ」と説明する。
オリバ準男爵が次男を呼ぶ。
「そなたの生命に替えて、この子を守れ。必ず守れ。それと、鳥瞰魔法の存在を知られるな」
ロレーヌ準男爵は、森から手頃な丸太を切り出して、防護柵を作る。この防護柵はアリエ川南岸から設置される。
敵が絶対的に優勢な騎兵を防ぐためだ。騎兵の突撃を防ぐには、間断ない銃の発射が必要。その方法は考えた。2人が弾込、銃手が発射。
これならば、銃の不足と兵の練度の不足を補える。
短時間で森から丸太を切り出すには、秘密兵器があった。ロレーヌ準男爵は、4基のチェーンソーを使ったのだ。
翔太はこの戦いのあとのことを考えていた。現状のヴァロワでは、軍事力でダルリアダには対抗できない。
しかも、ダルリアダには国際世論の批判は、効果が限定的。力を信奉するダルリアダは、軍事力がすべてだからだ。
「守る力が必要だ」
翔太は、戦いを前に自走山砲の操向レバーを握りながら、そう呟いた。
胸まである草丈の草原に、ヴァロワの勢力が身を隠す。数人ずつ固まっているが、総じて分散している。
ダルリアダの西進部隊は、見事な戦列を作る。彼らから見えるのは、4つの鉄の箱だけ。
ダルリアダの砲兵が発射し、その直後に戦列が前進を始める。
ヴァロワ勢力も前進を始める。
自走山砲や急増装甲車の後方に列ができる。車輌を遮蔽物にして進む。
騎兵が突撃を開始するが、目標が判然としない。ヴァロワの臆病者は、身を隠したままで戦列を作らないからだ。
騎兵100が4輌の戦車モドキに襲いかかる。
後装銃と1挺の短機関銃は、圧倒的な威力を示す。
大陸最強と謳われるダルリアダの胸甲騎兵“キュラシェーア”が数挺の後装銃と1挺の短機関銃によって、撃ち倒されていく。
マスケット兵も発射する。胸甲騎兵恐るるに足らず、となれば誰も逃げない。
負傷した胸甲騎兵には死しかない。とどめが刺され、武器が奪われる。ウマが生きていれば奪われる。
恐怖の対象は恐怖の原因を失えば、憎しみしか残らない。憎しみの発露として、当然のように殺される。彼らが当然のように殺してきたように。
砲兵はどうにかして、自走山砲に命中させようと必死だった。ダルリアダの砲には照準器がないので、カンで撃つしかない。
それでも卓越した操砲術で、距離100メートルで命中させた。
自走山砲が止まる。
翔太は舌を噛んでしまった。ひどく傷む。だが、ここで前進を止めることはできない。エンストはしていない。咄嗟にクラッチを踏んだ。トランスミッションを確認し、アクセルを踏み、クラッチをつなぐ。
自走山砲が前進する。いまは山砲としての役に立っていない。まるで、突撃砲だ。
砲兵隊長は砲弾の直撃を受けた鉄箱が、何事もなかったように動き始めたことに衝撃を受ける。
砲兵は動揺し、浮き足立つ。
「もう1発あてろ!」
騎砲は4門。軽量にするため野砲に比べて口径が細いが、軽い分、機動性が高い。
方向射界がゼロなので、砲自体を旋回して戦車に砲口を向ける。
ピエンベニダは砲兵に向けて小銃を発射する。
砲兵は逃げたが、砲兵隊長は砲を発射する。2発目は自走山砲の戦闘室上部左角命中して、外板を変形させた。だが、走行には影響ない。
この時点で、ダルリアダの戦列は瓦解していた。身体に草を巻き付けたみすぼらしい格好の兵が、深紅のジャケットを身につけた立派な軍装の兵を蹴散らしていく。
「砲4、銃多数、鹵獲。
深追いはしなかった」
貴族の若い子弟の報告にオリバ準男爵が肯定する。
「いい判断だ。とりあえず追い払えばいい。
ロレーヌ殿が西に迫ったダルリアダ兵を追い払った。
ロイバス男爵は、はるか西に後退した。
潰走したわけではなく、整然と後退した。
ダルリアダ軍も潰走したわけではない。十分な戦力を残して、北に退いた。
明日、再度攻撃してくるだろう」
翔太は、希望を伝える。
「諦めて、帰ってほしいんだが……」
オリバ準男爵も同意だ。
「そうであってほしいが、どうだろうね。
しかし、鳥瞰魔法がなければ、負けていた。で、鳥瞰魔法は夜でも使えるのか?
まさかな……」
少女が微笑む。
「限定的だけど、見えるよ。
暗視カメラを装備しているから。昼間ほどではないけどね、ある程度見えるよ」
オリバ準男爵が少女を見る。
「自分のつま先さえ見えない濃霧の中でも見えるなんて言わないでくれ」
「あっ、でも赤外線カメラを装備すれば見れるはずだよ」
オリバ準男爵が頭を抱える。
「こいつは、根本から戦い方を考え直さないとダメだな。
どちらにしても、今次会戦の英雄はきみだ」
少女は恥ずかしそうに微笑んだ。
ビルギット・ベーンは、ヴァロワの“市民軍”が精強なダルリアダ正規軍を破り、砲4門を無傷で鹵獲した、との記事と写真を送る。
彼女の仲間は、その記事と写真をカラーレーザープリンタでトナーが切れるまで印刷し、西と東の隣国と各地の同胞に送る。
ヴァロワ中部では、村や街に掲示した。
このとき、初めて“市民軍”という言葉が使われる。
にらみ合ったまま、4日が過ぎた。
ダルリアダ国王は激怒していた。無敵であるべきダルリアダ軍が、寄せ集めの民兵に敗れただけでなく、砲4門を奪われたからだ。
実際は、ダルリアダ軍は敗れてはいない。ロイバス男爵軍を後退させたし、市民軍は防戦するだけで精一杯。攻勢は無理だった。東から攻め込んだ部隊がわずかな打撃を受けただけだ。
しかし、王家の紋章が刻まれた砲を奪われ、それが周辺諸国に知れ渡った。
これは、由々しき問題だ。
総督府監督官は、ダルリアダの王都に召喚された。彼は責任を問われ、よくて解任、国王の腹の虫次第で斬首もあり得る。
ドローンの映像は、ダルリアダ軍が北に向かって撤収していく様子を映している。
フラン曹長が「信じられねぇ」と吐くと、ロレーヌ準男爵が「まったくだ」と同意する。
シノルーワ村焼き討ち事件に始まる、ダルリアダ正規軍のアリエ川以南侵攻は終わった。
ヴァロワ市民軍は、アリエ川以南に植民していたダルリアダ人に対して、奴隷の無条件解放を命じる。
国王の権勢が及ばない地でのダルリアダ人は、単なる野蛮人でしかない。豪華な服を着ていても、人間を家畜にするなど野蛮人の行為だ。
彼らはレーヴィ・キュトラにキュトラ伯爵家による領主としての責務である庇護を求めたが、ヘルガがレーヴィに「身1つで立ち去るなら危害は加えぬ」と伝えると、彼は剣を捨ててさっさと逃げた。
キュトラ伯爵は、ダルリアダ国王から与えられた広大な領地の支配を諦めてはいないが、現実はすでにキュトラ伯爵家の手には余る状況だった。
ダルリアダ王国はヴァロワ王国を戦わずに手に入れたが、アリエ川以南の支配を失った。
アリエ川以南において、支配をどうにか成功させかけていたダルリアダ貴族からは、キュトラ伯爵の愚かな統治を糾弾する声が上がった。
彼らは新領地に代官を置いていたが、その多くは身内だった。シノルーワ村の戦い以降、生命の危険があることから、代官とその家族は撤収を余儀なくされた。
シノルーワ村焼き討ちと、その後の展開によって、ヴァロワの民衆に親和政策で臨んだダルリアダ貴族の努力は水泡に帰した。
アリエ川以南からヴォルカン高地北縁までのヴァロワ中部は、西はロイバス男爵が、東は有志による共同統治が行われることになった。
なお、東部国境付近のダルリアダ植民農園主は、多数が残って農園経営を継続している。
コルマール村で行われた合同会議は、コンウィ城をどうするかで紛糾する。
コンウィ城の主はヘルガ・オーケルだが、彼女はキュトラ伯爵の娘であり、コンウィ城は前城主から奪ったもの。だが、彼女はキュトラ伯爵と対立しており、ダルリアダ人農園主の追放では重要な役割を担っている。
また、キュトラ伯爵の三男を幽閉しており、事実上の人質でもある。ヴァロワ人に対する非道の数々は、死亡した四男と幽閉されている三男によるものであることも調査で判明している。
ヘルガの私兵のうち半分はヴァロワ人で、その他は周辺諸国の出身。ダルリアダ人は1人。隊長のベングト・バーリだけ。
ベングトの祖母は、ヴァロワ人だと本人は主張している。
ヘルガはヴァロワに残ることを希望している。それを認めるか否かで、賛否が拮抗している。
この賛否表明については、レベッカは態度を明かさないと宣言した。反対であることは確実であり、その理由はキュトラ伯爵家に対する私怨からだ。
一領具足の虐殺には、ヘルガは関わっていないことも知っていた。
コンウィ城の処遇が決まらないまま、小麦の収穫になった。
麗林梢は、嶺林翔太を働かせることは諦めた。インド製の旧型ロングシャーシジムニーを仕入れて、販売を始める。
売れ行きは悪くない。ピックアップと5ドアがよく売れる。
ランクルもFJ40系だけでなく、人気のあるFJ70系も扱うようにする。
嶺林翔太は新潟にいた。
表向きは、ロシア製四駆車UAZハンターを国内販売するためにサンプルを受け取りに来た。
実際は、旧ユーゴスラビアから銃身製造用工作機械を密輸するためだ。薬莢を大量生産する専用機械と金型も入手し、発射薬の製造装置も入手する。
工作機械はかなり旧式だが、現用の機械でもある。これらを新潟で受け取る。
代金は異世界での利益で得た金貨を使った。金貨を溶かして金塊にし、15キロを支払いにあてる。こんなアナログな取り引きのほうが、足がつかない。
利益が大きいから、密輸業者側も乗り気だ。
麗林梢は、20年落ち以上の同型ピックアップトラックを6輌仕入れ、コルマール村に送る。一部は無可動車で、すべて個人の所有者から格安で買い取った。
車体を外し、半装軌化した上で装甲車体を架装する予定だ。
地下無酸素空間には、高祖父が残したガトリング砲が収められていた。
どう考えても小藩の武器ではないが、長岡藩が持っていたのだから代金次第で入手が不可能だったわけではないのだろう。
ガトリング砲をコルマール村に移動すると、大勢の見物人を集める。高祖父が入手した兵器の中では、四斥砲に次ぐ大重量物だ。
アネルマが「兄上、これは何ですか!」と驚く。レベッカは興味津々。
翔太はどう説明するか事前に考えていた。
「ガトリング砲という、機械式の多銃身機関銃だ。銃身が回転して、連射ができる。
極初期の機関銃の仕組みなのだが、仕組み自体は長く使われている。
この機械式機関銃を使えるようにする。
その機関銃をピックアップに載せる。ガトリング砲があれば、ダルリアダの胸甲騎兵は怖くない」
嶺林翔太の高祖父が残したガトリング砲は、来孫によって魔改造されていく。
ガトリング砲の欠点は、発射薬に黒色火薬を使うため、煤の固着から連射が妨げられることだ。それと、自由に俯仰旋回ができないので、集団を作らない散兵には対応できない。
銃本体だけで80キロ近くあるので、軽快性もない。
そこで、JM61-Mバルカン砲に範を採った銃架を作る。銃架の俯仰旋回と射撃は、人力操作となる。
ガトリング砲の作動は手動ではなく、電動に変更する。銃身の回転はいくらでも速くできるが、ガトリング砲の発射速度は1分間に200発なので、それに合わせる。徐々に発射速度を上げ、1分間に300から400発の発射をテストする。最適値を求め、高発射速度の重機関銃に仕上げる。
口径は14.7ミリ。スナイドル銃と同じ弾を使う。ただし、火薬はニトロセルロースによるシングルベースの無煙火薬に変更する。
この新型弾薬は、スナイドル銃やトラップドアにも使われる。
ガトリング砲を搭載する装甲車の製造に取りかかる。
シャーシ、エンジンを含む動力系はピックアップトラックのままで、後輪におむすび型の履帯(クローラー)を取り付ける。後輪の車高が上がるので、それに合わせて前輪サスペンションを嵩上げする。前輪はマッドタイヤにして、路外走行性能を確保する。
車体は新造で、厚さ8ミリの圧延鋼板で構成する。
荷台部分がオープントップの戦闘室になり、ガトリング砲は戦闘室の中心に備える。
部品、コンポーネントは、可能な限り、改造車のものを再利用する。
ピックアップトラックの装甲車への改造は、時間をかけてじっくりと取り組むことができなかった。
春まき小麦の作付けが終われば、ダルリアダはまた攻めてくる。
それまでに、準備すべきことがたくさんある。
しかし、それまでは平和を享受できる。
翔太の祖父は、小量の9ミリ拳銃弾を残している。この弾を使う銃は見つけていない。どちらにしても、中国の国民党政府軍から鹵獲したものだろうが、弾には刻印が何もない。
刻印はないが、ドイツ軍制式9ミリパラベラム弾であることは確か。
パラベラム=平和を欲するならば戦争に備えよ。
この世界で農業を続けることを望む翔太は、戦争に備えなければならなかった。
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『おぉ、勇者達よ! 良くぞ来てくれた‼︎』
見知らぬ城の中、床には魔法陣、王族の服装は中世の時代を感じさせる衣装…
俺こと不知火 朔夜(しらぬい さくや)は、クラスメートの4人と一緒に異世界に召喚された。
突然の事で戸惑うクラスメート達…
だが俺はうんざりした顔で深い溜息を吐いた。
「またか…」
王族達の話では、定番中の定番の魔王が世界を支配しているから倒してくれという話だ。
そして儀式により…イケメンの正義は【勇者】を、ギャルっぽい美紅は【聖戦士】を、クラス委員長の真美は【聖女】を、秀才の悠斗は【賢者】になった。
そして俺はというと…?
『おぉ、伝承にある通り…異世界から召喚された者には、素晴らしい加護が与えられた!』
「それよりも不知火君は何を得たんだ?」
イケメンの正義は爽やかな笑顔で聞いてきた。
俺は儀式の札を見ると、【アンノウン】と書かれていた。
その場にいた者達は、俺の加護を見ると…
「正体不明で気味が悪い」とか、「得体が知れない」とか好き放題言っていた。
『ふむ…朔夜殿だけ分からずじまいか。だが、異世界から来た者達よ、期待しておるぞ!』
王族も前の4人が上位のジョブを引いた物だから、俺の事はどうでも良いらしい。
まぁ、その方が気楽で良い。
そして正義は、リーダーとして皆に言った。
「魔王を倒して元の世界に帰ろう!」
正義の言葉に3人は頷いたが、俺は正義に言った。
「魔王を倒すという志は立派だが、まずは魔物と戦って勝利をしてから言え!」
「僕達には素晴らしい加護の恩恵があるから…」
「肩書きがどんなに立派でも、魔物を前にしたら思う様には動けないんだ。現実を知れ!」
「何よ偉そうに…アンタだったら出来るというの?」
「良いか…殴り合いの喧嘩もしたことがない奴が、いきなり魔物に勝てる訳が無いんだ。お前達は、ゲーム感覚でいるみたいだが現実はそんなに甘く無いぞ!」
「ずいぶん知ったような口を聞くね。不知火は経験があるのか?」
「あるよ、異世界召喚は今回が初めてでは無いからな…」
俺は右手を上げると、頭上から光に照らされて黄金の甲冑と二振の聖剣を手にした。
「その…鎧と剣は?」
「これが証拠だ。この鎧と剣は、今迄の世界を救った報酬として貰った。」
「今迄って…今回が2回目では無いのか?」
「今回で7回目だ!マジでいい加減にして欲しいよ。」
俺はうんざりしながら答えた。
そう…今回の異世界召喚で7回目なのだ。
いずれの世界も救って来た。
そして今度の世界は…?
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(https://kakuyomu.jp/works/16818023211703153243)
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そんな折、現代日本に迷宮と魔物が出現。それらは拓斗が異世界で散々見てきたものだった。
そして3年後、ついに迷宮で活動する国家資格を手にした拓斗は、安定も平穏も捨てて、自分のすべてを活かせるはずの迷宮へ赴く。
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やがて拓斗はフィリアと共に、魔物の倒し方や、迷宮探索のコツ、魔法の使い方などを、時に直接売り、時に動画配信してお金に変えていく。
さらには迷宮探索に有用なアイテムや、冒険者の能力を可視化する「ステータスカード」を発明する。
そんな彼らの活動は、ダンジョン黎明期の日本において重要なものとなっていき、公的機関に発展していく――。