200万年後 軽トラで未来にやってきた勇者たち

半道海豚

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第6章

06-160 カリブ海

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 ベルーガのメンバーは、落ち着いていた。
ただ、数十メートル先にある砂浜に上陸したいとは思わない。
 花山健昭、花山千夏、加賀谷哲平の10歳以下は、絶賛大興奮中だ。
 年長者は、驚嘆していた。
「香野木さん、あれ恐竜ですよね?」
 奥宮要介陸士長の問いに、香野木は「あ、あぁ~」と返事するのだけで精一杯だ。
 加賀谷真梨が車輌甲板の後端にやって来た。
「本当だ。
 恐竜ね。
 一昨日は体長12メートルの巨大トカゲ、昨日は体長15メートルの巨大ヘビ、そして今日は体長7メートルと“小型”だがティラノサウルスみたいな動物。
 これじゃ上陸なんて無理!」
 海にもいる。四肢がヒレに進化した大型のトカゲ。同じく四肢がヒレ化した海棲ワニ。
 10メートルから15メートル級を頻繁に目撃する。
 水陸ともに大型爬虫類が多い。しかし、よく見ると小型の爬虫類もいる。鳥は多いが、哺乳類は見かけない。ダチョウのような肉食の走鳥類もいる。肉食走鳥類は総じて大型で、小型の爬虫類を補食している。
 コロンビアの太平洋側海岸地帯は、肉食走鳥類が上位捕食動物の地位にある。
 ティラノサウルスのような爬虫類は、その姿とは異なり草食性だった。肉食性走鳥類に補食される二足歩行爬虫類を目撃している。
 南アメリカの一部は、肉食性走鳥類を食物連鎖の頂点とする爬虫類の世界になっている。

 これは、彼らの生存可能性に直結した情報だ。
 香野木は200万年後の世界における、ヒトの居住可能地域は少ないのかもしれないと不安に思い始めていた。

 子供たちが“恐竜”に夢中になっていた頃、花山真弓元1等陸尉、里崎杏2等海上保安正、畠野史子3等陸曹の3人は、パナマ海峡通過とカリブ海突破の作戦を立案していた。
 香野木恵一郎は、3人のミーティングに立ち会ったが、言葉を挟む余地など皆無だ。もう1人の“兵隊さん”は、逃げてしまった。
 奥宮要介陸士長は、高知市にいた2年間、北関東からの移住者“雁隅巣(ガンスミス)”から銃器の改造の仕方、設計方法を学んでいた。
 未整備、未改造の保有銃器の利用方法を模索している。

 里崎の方針は、いつものことながら強気だ。
「パナマ海峡は突破できます。おそらく、南アメリカ側は無防備に近いでしょう。
 前回接近した際、太平洋側海峡の水深は935メートルもありました。周囲の水深が200メートルから300メートルくらいですから、一気に深くなっています。
 カリブ海側が浅いとしても、300メートル以上あるでしょう。沖を選べば、暗礁の心配は低いと推測します。
 海峡の南側を高速で通過すれば、海流は大西洋側から太平洋側に向かっていますが流れは緩い……。38ノットならば3時間で突破できます。
 飛行船の哨戒は警戒すべきですが、動きは鈍重ですから、振り切れるでしょう」
 畠野は懸念していた。
「狭い海峡で飛行船に捕捉されたら、行動に制約があるので、逃げ切れないのでは?」
 里崎には成算があった。
「畠野さんの心配はわかりますが、海峡は200キロの幅があります。対馬と壱岐の間の4倍です。朝鮮半島と九州よりも距離がありますから、十分に機動できます」
 花山は納田と名乗る女性の計画は、成功の確率が低いように感じていた。
「南アメリカの沿岸を航行して、キュラソー島に向かう案は?」
「花山さんは、どう思います?」
「愚策だろうね。
 海のことはわからないけど、機動戦をするならば広いほうがいい。好き好んで、部屋の隅っこに行く必要はないよ。
 相手が船なら、南に回り込まれないようにする効果はあるだろうけど、相手は飛行船だ。
 こちらは南側が塞がれ、相手に制限はないから、不利になるだけ。
 里崎さんの意見は?」
「同じです。
 カリブ海の真ん中を高速で突破しましょう」
 香野木は聞き役に徹するつもりだったが、納田からの情報の価値は確認したかった。
「カリブ海なんだが……。
 納田さんからの情報だと、ホンジュラス、ニカラグアからジャマイカまでが陸地になっていて、ハイチとの間に狭い海峡があるそうだ。
 キューバからハイチ、プエルトリコ、グレナダまで、弧状の陸地になっている。
 フロリダ半島とユカタン半島の陸地が拡大していて、メキシコ湾は狭い海峡で大西洋とつながる。
 北から、メキシコ海、ホンジュラスとニカラグアから延びる陸地とキューバに囲まれたケイマン海、その南のカリブ海。
 この海域は、狭い内海が3つある。
 東西南北すべてが囲まれている。
 四面楚歌というわけだ。
 ここを突破できると?
 里崎さん?」
 3人には共通の認識があり、こういう事態への対策は以前から立案されていた。
「香野木さんの心配は最もです。
 ヘリ甲板に75AWを上げます。
 車輌甲板後端には、40AWを配置します。
 20ミリと合わせて、相応の対空戦闘能力があります。200万年前の戦闘機が相手では貧弱ですが、あの飛行船が相手ならどうにかなります」
 自走75ミリ高射砲をヘリコプター甲板に配置すれば前方180度の射界があり、自走40ミリ連装機関砲を車輌甲板後端で後方を守る。
 これならば、確かに全周の防御ができる。
 不安はあるが、納得するしかない。
 里崎船長は、余裕のある準備のために3日後の出港と決めた。

 子供たちは毎日、車輌甲板後端で“プール”遊びを楽しんでいた。
 発端は客室に椅子や仕切りが一切ないこと。大人たちは高知市内で入手したカーテンなどを使って、ささやかなプライベートスペースを作った。花山健昭と加賀谷沙英が“秘密基地”を有村沙織に強請る。
 彼女は必要以上に装備されているゴム製救命筏を膨らませて、これを客室最前部に置く。
 正八角形でテントのような覆いがあり、2人が求める“秘密基地”にうって付けだった。
 テントのようなものだが、相応に快適で、花山千夏と畠野綾乃も「私も!」と言い出し、2艇に増える。
 少しお兄さんの加賀谷哲平が「海の水を入れたらプールになる」と発案。上部覆いを取り払って、車輌甲板後端に置いてプールにした。
 ただし、海水ではなく、高性能な淡水化装置で得られる真水を使った。
 気温は十分に高く、日差しは適度に遮られ、10歳以下の子供たちの遊び場になった。
 自走40ミリ連装機関砲を配置するため、プールが撤去されることになり、子供たちの元気がなくなる。

 香野木はパナマへの出航前日、納田との交信において「明日、パナマに向かう。バルバドスに到着するまで、連絡できなくなる」と伝えた。
 納田は、疑問に思わなかった。

 納田優奈は、後ろめたさを感じていた。香野木と彼の仲間は、パナマ海峡突破は無理だろうし、仮にカリブ海に入ったとしても四方八方から飛行船に攻撃されて、間違いなく沈む。10歳に満たない子供が何人かいるらしいが、愚かな大人の判断で海に沈む。
 そう思うと、気持ちは穏やかでなかった。

 翌早朝、バンジェル島第1埠頭2号岸壁にコーカレイの小型武装船デアフリンガーが入港する。
 船長はゴットフリート。金髪・碧眼・長身の35歳男性。クラウスの原初的グループの1人だ。幼少期に移住した第1世代。
 全長50メートルの小型武装船だが、兵装は76.2ミリ単装砲と6銃身20ミリ機関砲2基と強力だ。最高速度は44ノット。乗員は18。
 この船に、半田千早、納田優奈、キュッラの3人が便乗する。
 目的は、200万年前からやって来たという船の捜索。
 その船がバルバドスにたどり着いたなら、2隻の僚船とともにバンジェル島を出航する。僚船は800トン型武装貨物船だ。30ノットまで出せる。
 補給物資を積み、バルバドスまで同行する。

 香野木には、強い不安があった。彼は納田に「ヒトではない、二足歩行の動物が200万年後に渡った。それを追ってきた」と告げたとき、彼女は驚きもせず「白魔族、黒魔族、手長族、半龍族、精霊族、鬼神族は、ヒトではないヒトに似た動物だ。この世界では、珍しくない」と答えた。
 香野木は納田の説明に、上手に反応できなかった。

 18時にコロンビアの太平洋側入り江を抜錨したベルーガは、高速でパナマ海峡を目指す。海峡入り口まで600キロ。航海速度で11時間後の早朝5時に海峡に突入する。
 前回は飛行船に驚いたが、今回は準備を整えている。自走75ミリ高射砲は、ラフテレーンクレーンでヘリコプター甲板に上げた。ここにはC-1輸送機が繋止されている。船上での難しい作業を、加賀谷真梨は完璧にやり遂げた。

「雨が降ってきたね」
 香野木は、緊張が支配する船橋で、間抜けを承知で見たままを言った。
「熱帯性気候ですから」
 里崎船長は「当然でしょ」とでも言いたげな返しをしたが、同時に「いい傾向です。雨が我々を隠してくれます」と加えた。
 香野木は、雨により船体が隠されることよりも、視界が遮られ、高速を発揮できなくなることを恐れた。
 ベルーガ最大の武器は、速度だ。その武器が視界不良で妨げられることを恐れた。
 航海レーダーと捜索レーダー、曳航ソナーによって水上、水中、空中を監視する。捜索レーダーが目標を捕らえたら、追尾レーダーを即座に作動する。
 全員が戦闘配置についている。10歳以下は、船橋の一画に固まっている。
 幼くても、これから何が始まるのかを知っている。大災厄と大消滅を生き抜いた子たちは、危険を感じる感性が鋭い。常に死と隣り合わせだからだ。

 1時間でパナマ海峡を抜けると、雨雲は去り、太陽が顔を出す。200万年前のパナマは、日本並みに年間2000ミリから3000ミリの降雨があった。
 だが、地峡がなくなり、広い海峡で太平洋と大西洋がつながった200万年後は、雨が少ないようだ。コロンビアの入り江では、まったく降られなかった。
 陸上は密林ではなく、草原に疎林が点在するサバンナに似た風景だった。
 200万年後は、200万年前の情報は意味をなさない。

 海峡突入前からディーゼルエンジン4基を稼働して航海速力を発揮し、太陽が昇ると太陽光パネルを展張して、主機を2基停止する。これでも、航海速力30ノットを発揮できる。

 カリブ海は、カリブの海賊の時代そのものだ。照りつける太陽、穏やかな海、そよぐ風。
 異なる点は、海上に帆船はなく、空中に飛行船が航行することだ。
 10時までは発見されなかった。
 動力のない帆走する飛行船に発見されるが、この船は軍用船でなかったらしく、攻撃は受けなかった。
 納田からの情報では、セロは無線・有線を問わず、通信技術を持たない。
 帆走飛行船が港に着き、知らせるまで、もう少し時間がある。
 14時を過ぎると、北から動力飛行船の追撃を視認する。
 西からの追撃はない。飛行船では、ベルーガに追い付くには何十時間もかかるからだ。
 里崎船長が「全主機稼働、最大船速」を命じる。太陽光パネルが収納され、装甲カバーが閉じる。
 ベルーガの船体に装甲はないが、虎の子の電力を生み出す太陽光パネルの収納庫にだけは、6ミリの鋼板と炭素繊維強化プラスチック製の複合装甲板が覆うようになっていた。

 ベルーガは海峡突破後、10時間で700キロを航行していた。カリブ海のど真ん中だ。
 南からも飛行船が迫ってくるが、速度差が小さいため、容易には追い付けない。
 ここで進路を真東に変える。

 17時には追撃してくる飛行船は10隻を超える。闇が近付いているが、暗視装置で夜間でも航行は可能。灯光する灯台、電波灯台、GPSはないから、有視界での航行になる。

 危険を避けたいが、船を隠す島や環礁はない。最大水深は7000メートルを超える。
 カリブ海は島が多い印象があるが、それはフロリダ半島沖からトリニダードドバゴまでのキューバ島とイスパニョーラ島(ハイチ、ドミニカ)を含む西インド諸島に限られる。
 200万年前は、小島、岩礁、珊瑚礁を含むと7000の島があった。
 200万年後は、多くが地続きになっており、大西洋に抜ける狭い海峡が何か所かある。
 特にプエルトリコからグレナダまでは、弧状の陸地になっている。200万年前と異なり、閉じた海域だ。
 バルバドスに至るには、グレナダとトリニダードドバゴの間にある狭い海峡を突破しなければならない。

 10隻の飛行船は、日没前にはベルーガの後方にいた。軍用飛行船は、250メートル級、200メートル級、100メートル級、50メートル級など、各種あるらしいが、航続力のためか50メートル級は短時間で後退する。
 250メートル級と200メートル級は鈍重・低速で、最大船速のベルーガには追い付けない。結局、100メートル級だけが追ってくる。
 幸運にも風は東から西に吹いており、ベルーガよりも優速であるはずの100メートル級飛行船は向かい風のために距離を詰められない。

 海峡突破から13時間で日没を迎える。
 飛行船は団子状態で追ってくるが、2隻が空中で接触して以降、集団はばらけた。彼我の距離は1キロを保っている。
 完全に太陽光がなくなると、飛行船は減速する。
 ベルーガは航海速力を維持する。距離が縮まると船速を上げていたが、その必要はなくなった。
 飛行船は、ベルーガに対して投光器を照射していたが、その光は強く1キロ先にも容易に達した。
 光芒に捕らえられたベルーガは、終夜捕捉され続ける。

 太陽が地平線に現れるまでに、さらに700キロ進む。キュラソー島のはるか沖を航行し、一気にグレナダ沖に至る海峡を目指す。
 納田の説明が正しいならば、ここに大西洋に抜ける海峡がある。
 ただ、納田の説明が間違っている、あるいは欺される事態も考慮している。

 夜明けとともに追撃に加わる新たな飛行船を警戒したが、それはなかった。100メートル級が10隻が、そのまま追撃している。
 風はやや弱まったが、昨日と同様に東から西に吹く向かい風だ。ベルーガには不利だが、浮体の大きい飛行船はもっと不利だ。
 ベルーガが船速を上げると、飛行船を引き離していく。
 飛行船が爆弾を投棄する。重量を減らして、速度を上げようとしているが、風の影響のほうが大きい。

 東から回り込んでくる飛行船の船隊をレーダーが捕らえる。200キロ離れている。
 そして、1時間50分後に10キロまで迫ると完全に視認できた。100メートル級が5隻。5隻ともプロペラが4基だ。追撃してくる飛行船は大直系プロペラ付きの2基なので、型式が異なる。
 それと、東から回り込んでくる飛行船の浮体に描かれたマークが違う。追撃船は○に+だが、前方船はマルタクロスに似ている。
 マークの色も違う。○に+は緑、マルタクロスは黄色に黒ブチ。
 里崎船長と花山は「国籍標識が違う」と言い合っている。

 奥宮陸士長は、東側から回り込み反航戦の体勢をとりつつある先頭の飛行船に照準を定めた。
 発射の命令はすでに下っている。
 距離5000メートルで発射。右側の爆弾架を狙ったが、狙い通りに命中し、爆弾架の爆弾3発が誘爆。飛行船が炎に包まれ、離脱していく。
 奥宮陸士長は次々と発射し、先頭から2隻目も大破させ、最後尾も中破離脱する。
 2隻は、真東から相対時速150キロ以上で通過しようとしている。
 だが、2隻の飛行船にとって、ベルーガを追撃している飛行船が進路を邪魔している。
 追撃する飛行船は進路を開けない。
 こういった情報は、逐一、船橋に報告される。
 結果、反航してくる飛行船は速度を落とさなくてはならなかった。
 これは、ある意味、反航してくる飛行船にとっても利があった。速度が落ちれば、爆撃精度が高まるからだ。
 完全に正対していなかった反航の後続船が75ミリ高射砲弾の直撃を受ける。ゴンドラの後部3分の1が吹き飛び、プロペラ2基を失う。推進機を失った飛行船は、不規則に揺れながら、ゆっくりと着水する。
 1隻となった反航の飛行船は、ベルーガの上空を通過する際、6発の爆弾を落としたが、ベルーガが急遽最大船速を発揮したため、船尾側50メートル付近で爆発する。
 至近弾ではあったが、ベルーガは無傷だった。
 飛行船が上空を通過する際、3銃身20ミリ機関砲弾をゴンドラと浮体に命中させた。
 被弾した飛行船は、薄い煙を吐きながら、フラフラと西に飛んでいく。
 着水してしまった飛行船は浮揚を試みるが、空中に浮かんだ姿には、ゴンドラと推進機がなくなっていた。
 浮体だけが、風に流されて、西に向かっていく。

 この日の日没前、ベルーガはグレナダ南端沖を通過し、大西洋に入った。
 カリブ海の追撃戦をどうにか乗り切ったが、追尾している10隻の飛行船は、諦める気配を見せない。
 反航戦を行った船隊の轍を踏まぬよう、一定の距離を保って追ってくる。
 厄介な相手だ。

 里崎船長は、闇に紛れてバルバドスに逃げ込む算段を始める。まもなく暗夜になる。飛行船が発する光芒は、サーチライトのように広がりがない。
 今夜は新月、広い海で闇に姿を隠せば、全長90メートルのベルーガでも簡単には見つけられない。

 大西洋に入ったベルーガは変針せず、西に向かう。大西洋沖を目指しているように、欺瞞する。航海速度で6時間航行し、日付が変わると同時に南に変針。
 バルバドスに向かうために左回りの半円弧を描いて、北に進路をとる。
 ウォータジェットの特長を生かし、小さな弧を描いきながらも速度を落とさないで、進路を変えた。
 突然、光芒の先から消えたベルーガを探して、飛行船はその空域に留まった。ベルーガは追撃を振り切り、4時間後には200キロ北のバルバドスの海岸に投錨する。

 ここで、ベルーガは誰からも姿を消す。
 納田と約束した「バルバドスに着いたら無線を送る」という約束も反故にする。
 また、納田からの呼びかけにも応答しなかった。

 バルバドスの東岸(大西洋側)にはカルペッパー島という小島がある入り江があり、ここにベルーガは隠れた。
 入り江の周囲は岩場だが、少し北に長い砂浜がある。バルバドスは佐渡島の半分ほどの面積で、良港となる入り江が少ない。
 島の多くは樹木に覆われているが、海岸近くの一部に草原がある。海岸は、岩場と砂浜が混在している。
 大型の動物は見ないが、クマに似た大型犬ほどの草食性哺乳動物がいる。この島も爬虫類が多いが、大型の種はいない。最大でも30センチほど。
 たわわに実るグレープフルーツが島のどこにでもある。

 丸1日、カルペッパー島とバルバドスの間に停泊し、様子を見た。
 夜が明けていく。
 里崎船長が「上陸しましょう」と言い、花山が頷く。
 上陸用舟艇とテンダーボートを海面に降ろす。舟艇にトレーラーを取り外した装甲貨物輸送車を積み、砂浜を目指す。
 砂浜に向かって、海は白波を立てている。波に乗って海岸に近付き、初めてのビーチングを行った。
 舟艇はランプドアを降ろし、装甲貨物輸送車が上陸する。
 テンダーボートは、バルバドス全周を調べるため、北に向かった。

 香野木は、ブーツでバルバドスの土を踏んだ。続いて、装甲貨物輸送車が上陸する。
 舟艇が後進し、浜辺から離れていく。
 バルバドスの調査を始める。
 この島に住むつもりはないが、数週間程度、ここを拠点にする。

 陸上に拠点の設営を始めると同時に、今後の行動計画が立案しにくくなっていた。
 子供たちは、客室で休むようになったが、上陸した数人を除いて、10歳以上は船橋に集まっていた。
 香野木は、以後の行動を説明しなければならなかったが、あてがあるわけでもなかったし、情報は決定的に不足している。
「現在、カリブ海最東端のバルバドスにいる。ここから東で、一番近い陸地はカーボベルデのバルラヴェント諸島サント・アンタン島だ。距離は3700キロ。
 大西洋は太平洋と異なり、島が少ない。島伝いに、西アフリカに接近することができない。
 一気に接近することになる。
 いきなり、相手の内懐に入る行為は、危険が大きい。一部が接触し、安全と判断したら、全員が合流する。
 もし、接触したメンバーが拘束された場合、救出はしない。
 その人的余裕は我々にはない」
 船橋がざわめく。特に若年のメンバーは、不満顔だ。
 これは香野木が提案したのだが、花山と里崎船長は了解している。
「不満かもしれないが、安全を確認できなければ、残ったメンバーで今後を決めて欲しい。
 どうやって、西アフリカに接近するかだが……。
 カーボベルデまで船で全員で行くか、船はバルバドスに留まるか。
 輸送機ならばバルバドスから西アフリカまで飛行できるが、燃料の余裕はない。
 カーボベルデまで船で行けば、燃料の余裕は十分だ。
 だが、カーボベルデには、この世界の知的生物の拠点がある可能性が高い。ヒトの拠点かどうかも不明だ。
 どういう行動が安全なのか、みんなと相談したい」
 金平彩華には案があった。
「葉村くんとも話していたんだけど……。
 モーリタニア沿岸で、入り江を探して、隠れたらどうかな?
 強い電波は、ジブラルタル、カナリア諸島、ベルデ岬諸島、ギニアビザウ付近から出ています。
 アフリカの深部、サハラ南部からも電波が出ていますが、大陸海岸部からはギニアビザウだけです。
 他は、無人地帯なんだと思います。
 ならば、西サハラからモーリタニアにかけての海岸線のどこかに、隠れることができるんじゃないかって……」
 里崎船長が「西サハラの南、モーリタニアの北あたりなら、隠れ場所がある。
 滑走路を造れば、空から偵察もできる」
 土井将馬が賛成する。
「燃料には限りがありますからね。
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 私は賛成だ!
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「どうする。
 バルバドスにしばらくととどまるか、それともすぐに出航するか?」
 全員が出航を選んだ。
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