200万年後 軽トラで未来にやってきた勇者たち

半道海豚

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第9章

09-218 東アフリカ情勢

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 海斗たちは、マハジャンガのヒトたちが何者なのか探ろうとしていた。
 使命感からではなく、好奇心から。
 ただ、この時点では新たな時渡りがあったとは考えていなかった。ヒトによる最後の時渡りは70年も前で、それ以後、知られている限りない。
 ギガスはもちろん、オークが成功した形跡もない。
 アフリカの事情を知らない様子であることから、ヒトの存在が推測されているニューギニアとオーストラリアが合体したサフルランドか、ニュージーランドをコアとした7番目の大陸ジーランディアからやって来たのではないかと推測していた。
 海斗は科学者ではないが、未知のヒトであってほしいと考えていた。ヒトの仲間は、1人でも多いほうがいい。

 海斗は梨々香に話しかける。飛行機には近付くな、とされているが、触らなければいいだろうと。
「あの高射砲だけど、セロ対策?」
 梨々香はセロを知らない。同時に恐ろしい推理が働く。
「セロ?
 穴居人のこと?」
 海斗は、ケッキョジンを知らない。だが、瞬時にドラキュロのことだと悟る。
「いや、噛みつき、ヒト食い、いろいろな呼び方があるけど、あの恐ろしい生き物のことじゃない」
 梨々香の顔は、明らかに青ざめていた。
「いるの?
 ヒトに似ていて、ヒトじゃなくて、ヒトを食べる生き物が……」
「アフリカにはいないよ。
 ユーラシアから離れているから。
 だけど、ユーラシアにはたくさんいる。
 セロは噛みつきとは違う。
 ヒトに似ているけど、ヒトとは違う。飛行船で攻めてくる連中のことだけど……。
 知らないの?」
 梨々香はオークのことではないか、と考えた。
「オークのことね」
 だが、海斗が即座に否定する。
「オーク?
 白魔族のことじゃない。
 白魔族は、北アフリカの戦いに敗れて、サハラ以南に移動したけど、不死の軍団の領域に踏み入れて、ほぼ全滅してしまった。
 少数が生き残ったようだけど、かつての勢いはないよ。
 黒魔族と半龍族がヒトの味方になって以降、白魔族がヒトを襲うことはない」
 梨々香には理解しがたい内容だが、200万年後の勢力図が複雑であることは確実だった。
 それをまったく知らない8500人の移住者は、危険な状態にあるのかもしれないと考えた。

 海斗は科学者たちから離れているので、少しまずいかなと感じ始める。
 だが、集団でいる科学者たちも、会話がなり立たず困惑している。
 マハジャンガのヒトたちは、オークやギガスを知っているし、ドラキュロも知っているようなのだが、精霊族、鬼神族、丸耳族をまったく知らない。
 彼らがヒト属の地域固有種であることから、アフリカを知らないなら理解できる。それは同時に、マハジャンガのヒトがアフリカを知らないことになる。

 海斗は、何となく「たいへんなことになった」と感じていた。
 梨々香に「セロは危険だ。セロはヒトを駆除したいんだ。飛行船を見たら無条件に攻撃しないと」と告げる。
 だが、梨々香の反応は冷たい。好戦的だと思われたようだ。
 セロの生息域は、北アメリカのフロリダ付近からメキシコ海沿岸に限られることがわかっている。
 南アメリカには生息していない。北アメリカは、五大湖は氷河湖になっている。この付近まで厚い氷床に覆われている。太平洋岸はわからないが、少なくともロッキー山脈は氷河に覆われているはず。
 セロの世界は、メキシコ海、ケイマン海、カリブ海の各沿岸だけだ。
 西アフリカに進出してきたが、撃退している。現在は、大西洋の覇権をめぐってヒトと争っている。

 この街のヒトは、街をマハジャンガと呼んでいる。そんな街の名は、海斗は過去に聞いたことがない。
 自身の知識の浅さかとも思うが、探検船キヌエティに乗船している地理学者さえ「マハジャンガ?」と反応しているのだから、誰も知らない街と判断していい。
 海斗は、純粋な好奇心からマハジャンガの正体を知りたくなっていた。

 マハジャンガでは、たった数人ではあるが200万年後のヒトが現れたことで、ある意味安堵し、ある意味警戒している。
 安堵する最大の理由が、航空機用燃料確保の可能性だった。航空ガソリンは、時渡り以前から枯渇に近い状況で、時渡り後はかき集めてどうにかしている状態だった。
 加えて、ケロシン系のJET A-1がないのだ。成分は家庭用灯油とほとんど変わらないし、灯油と軽油は近似だから、植物由来のディーゼル燃料でも使えるのだが、低温の高空ではどうなのかなど環境の変化を気にしている。
 だから、危険を冒して使おうとは思わない。上空でエンジンが止まれば、乗員は死に、機体は失われる。
 エンストしたなら途方に暮れるだけですむ陸上を走る車輌とは違うのだ。

 梨々香は、植物由来のディーゼル燃料に対応するエンジンのセッティングに苦労していた。だから、エキュレイユの燃料に興味があった。
 聞かれるばかりでは、答えに詰まる。だから、自分の範疇の問いを海斗に投げた。
「ヘリはどんな燃料を使っているの?」
「あぁ、JET A-1、JP-8。どっちも同じもので、呼び名が違うだけ。
 軽油に10パーセントほどガソリンを混ぜても飛ぶよ」
「ケロシン系だね」
「あぁ、よく知ってるね」
「どこで手に入るの?」
「……?
 石油は、クマン、救世主、北アフリカで生産している。レムリアに入ってくるのは、北アフリカ産だね。
 北アフリカの油田は、生産量が多いから、東西地中海からレムリアまで席巻している」「ガソリンは?」
「もちろん!」
「支払いは?」
「通常はフルギア金貨だね」
 海斗がフルギア金貨を見せる。彼にとっては虎の子の1枚で、これが全財産に近い。
 梨々香が「これと交換しない?」と金貨を見せる。
 海斗が驚く。
「桜金貨か!
 初めて見るけど、有名だよね。
 それ1枚で1200リットル買えるよ!」
 梨々香は「金貨」とは呼んでいたが、「桜金貨」との表現を初めて聞く。
「この金貨は流通しているの?」
「いや、滅多に見ない。
 俺は見たことがない。
 しかし、使える。
 受け取る商人は、大喜びだ。
 本物かどうか、疑うだろうけど……」

 梨々香は、彼女と海斗の話を移住委員会の職員が立ち聞きしていることに気付いていた。
 どうするか、判断に困ったが、彼女は振り向いた。
「聞きたいこと、ある?」
 梨々香の無茶振りに、彼女は慌てた。
 その慌てぶりがおもしろく、逆に梨々香が尋ねる。
「燃料がほしいの。
 どうやったら買えるの?」
 海斗が答える。
「シャララ油田産とエルフィール油田産がある。量にもよるけど、まぁ、おもしろい商談になるね。
 俺はパレルモに住んでいたんだけど、突然の大商いは大荒れになる。
 下手すりゃ、クマンだって参戦しかねない。継続して必要なんだよね。空前の大きな商売になるね」
 梨々香は少し考える。
「どうしたらいいの?」
 海斗の答えは明確だった。
「北アフリカの商都カルタゴに行けばいい。
 カルタゴにないものはない」
 彼女が重ねて問う。
「飛行機で行ける?」
 海斗はおもしろくなってきた。
「カルタゴには、アフリカ最大の空港がある。あんたたちのデッカイ4発機ならズラ湾経由で行けるさ」

 燃料の取得は喫緊の課題であり、買えるとなればすぐにでもほしい。
 花山海斗は、自分でも理解できない状況に置かれていた。
 簡易だが、決して粗末ではない部屋に通され、褐色の飲み物とプリンのような純白のスイーツでもてなされている。
 突然やって来た若者への待遇じゃない。

「豆乳で作ったカフェオレと杏仁豆腐です。
 召し上がってください」
 20歳代後半と思える女性から、勧められる。
 海斗は緊張していたが、カフェオレを飲み、杏仁豆腐をスプーンで口に運ぶ。適度な甘さが心地よい。
 女性が話す。
「燃料がほしいのです。
 入手可能な場所があると……」
 同じ話の繰り返しは嫌だった。
「大量に必要なら、カルタゴまで行くしかない。
 だけど、飛行機1機分の燃料程度なら、ズラ湾の飛行場で給油できる。
 ここからだと、3500キロある。
 ズラ湾には、レムリア最大の飛行場がある。それと、ズラ湾はレムリア最大の商都でもある。
 スポットで燃料がほしいなら、ズラ湾にいる油商人と話してみればいいよ」
 彼女は、移住にあたっての重要な問題を知っていた。巨大移住船は、船体こそ大きな改造を受けていないが、小さな改造は多くあり、複数ある燃料タンクは船のディーゼルを動かすためにA重油、車輌用軽油、車輌用ガソリン、ケロシン系航空機燃料の4種類があった。
 航空ガソリンは、タンクローリーに積んでいる。
 だが、マダガスカルにたどり着くために、A重油以外も使ってしまっていた。残るは、ごくわずか。
 大量のタンクを積んではいないので、船の燃料タンクを流用していた。
 だから、船の上部構造物は撤去しても、船体自体は燃料タンクとしてすぐの解体はできない。
 そして、燃料を買いに行くためのタンカーはない。
 燃料をマハジャンガまで運んでもらうための交渉もしなければならない。
 燃料があり、購入ができるとしても、輸送手段や貯蔵方法など乗り越えるべき問題が多い。
 ただ、燃料の入手が可能なことを知っただけでも、収穫は大きい。

 移住委員会の動きは早かった。
 200万年後のヒトと不完全ながら意思疎通ができることがわかり、この世界の事情に通じた複数の人物を引き込みたいと考えた。
 だが、200万年後のヒトは、過酷な状況で生きているからなのだろうか、例外なく強烈な個性がある。金貨で動くとは思えないが、金貨に価値があるなら対価で報いるしかない。

 梨々香は、忙しいのに移住委員会に呼び出された。担当外の小型機の開梱・整備に駆り出され、彼女の仕事とはまったく無関係の質問にも答えなければならない。
「鮎原さん、海斗という男性とかなりの時間、話をしたとか?
 彼をどう思います」
 梨々香は何を答えるべきか、考えた。
「イケメンだと思います。
 でも、残念ですが亭主持ちなんで……。
 オジサンだけど……」
 書記をしている若い女性がクスリと笑う。
 男性は、笑わなかった。
「それは主観だから……。
 人物について……」
 梨々香が微笑む。
「人物評も基本的に主観でしょう。
 ちょっと変わっているけど、お互い様。
 事情通だと思う……。知識がある、のではなく、世慣れしている感じがした……。
 あと、若いけど自立しているようにも……」
 梨々香は、不審に感じた。
 男性はそれを察する。
「実は、リクルートを考えている。
 学者さんは、公的機関に所属しているようだから、パイロットに目を付けた。彼は、民間人ぽいから……。
 職業選択の自由とか、あるのかわからないけど……。社会制度がわからないから……」
 梨々香も同意する。
「彼の知識は一般的なものかもしれないけど、そうだとしても私たちの役に立つと思います。
 それと、リボルバーと大きなナイフを持っているから……」
 男性も同意する。
「奴隷とかではないだろうね……」
 梨々香が絶句する。
「奴隷……?」
 男性が頷く。
「社会制度がわからないから……。
 奴隷制、封建制、絶対王制、専制、独裁制……、どんな社会なのかわからない……。
 おぞましい社会かもしれない……。
 できれば、自由なヒトがいい」

 エリシアが海斗に近付く。
「美人だね。
 タイプ?」
 海斗が呆れる。
「探られた。
 いろいろね」
 エリシアは、危険な考えが自分の心に生まれていることを自覚していた。
「あの4発機を操縦したい。
 私の祖母は、ブルマンで最初のパイロットだった。大型の双発機を操縦して、アフリカを飛び回ったんだ。
 バァちゃんが双発機なら、私は4発機だ。実現すれば、バァちゃんを越えられる」
 花山海斗が苦笑いする。
「じゃぁ、あんたの孫は6発機になる」
 エリシアが空を見る。
「バァちゃんは余計だった。
 私は飛びたいだけ。だけど、バァちゃんの血が私を重力から解き放とうとしているんだ」
 海斗は別のことを考えていた。
「俺の爺さんは、ほら吹きだったらしい。
 誰も爺さんのことを知らない世界に行きたい。ここは、そういう場所のように思う。生きていく術が見つかれば、レムリアでなくて、マダガスカルでもいい。
 任務が終了するまでの契約だ。
 任務が終われば、レムリアで降ろしてもらう約束になっている」

 探検船キヌエティでは、花山海斗とエリシアが問題を起こしたことになっていた。
 船内には一等航海士を中心とする、カルタゴやズラ湾で乗船させたパイロットや整備員に反感を抱くグループがいた。
 実際は、新規採用のパイロットや整備員に問題があるのではなく、命令違反を犯して上陸し、飲食を行って食中毒となった乗員を解雇処分とした船長への反発が根底にある。
 船長に刃向かえば反乱とされかねないが、船長が新規採用した乗員をいたぶる分には責を問われない。

 DUKWは陸上を100キロ北に走って、東海岸に出ていた。DUKWは母船と合流。
 隆太郎と調査員の2人は、飛行甲板上で武装した乗員に取り囲まれている。
 突然来訪した2人だが、キヌエティ側はまったく気にしていない。曲芸飛行士の迷惑行為程度の認識だった。

 探検船キヌエティは歴史ある調査船だが、この3代目には大きな問題があった。
 2代目までは王冠湾の調査船だったが、3代目からはバンジェル島中央政府が所有することになった。
 3代目の建造にあたっては、バンジェル島議会の有力議員であり、同時に造船工廠の代表理事が関与している。
 この議員の息子が一等航海士なのだ。一等航海士は、船長と副長が船を下りれば、自動的に自分が船長になるものと考えていた。
 だから、船長派の一掃を画策していた。
 古手乗員の誰もが、この企みに気付いている。
 王冠湾は独自に2隻の調査船を保有しており、伝統あるキヌエティの名を惜しみはしたが、気持ちよく中央政府に譲った。

 飛行機工場では、秘密裏に運んできた飛行機の話で持ちきりだった。単純に興味本位の部分もある。
 工場長が「やっぱりね。おかしいと思っていたんだ。置いてくるはずがない」と微笑む。
 工場長室で、数人が集まり、貴重な菓子をつまんでいる。
 梨々香が「大きいヘリコプターなの?」と尋ね、品質管理主任が「いいや、単発機だよ。全長350メートルもある巨船だから、隠せたんだろうね」と答える。
 事務長が「その2機を組み立てるのに、また私たちが駆り出されるのかな?」と不満げな声を出すと、工場長が「パイロットが足りないって話を聞いたよ。ベルの小型ヘリが何機もあるようだし……」と情報を披瀝する。
 工場長は別の情報も持っていた。
「移住船の船員たちは、陸には上がらないらしい。移住委員会は、船の入手を考えているとか。
 いまのままじゃぁ、動きようがないからね」

 移住委員会は、200万年後にヒトの社会があることを想定していたが、どんな社会かは皆目わからなかった。
 それと、移住の手段が巨大な客船をベースにした船だったわけだが、移住後の長距離移動については答えがあったわけではなかった。
 航洋船が運べない以上、航空機に頼るほかなく、その準備を10年の歳月をかけて行ってきた。
 移住反対派が存在するので、航空機の修復は高知空港の格納庫で秘密裏に続けられていた。
 公表されている固定翼機は、個人所有を除くと多発機4機と単発機2機。
 しかし、この6機で足りるはずはなく、双発機パイロット養成用練習機としてビーチクラフト・キングエアを複数機分解して持ち込んでいた。
 回転翼機では、飛行学校が保有していたベル206Aを可能な限り運び込んだ。これ以外に解体パーツを集成すれば、数機を完成させられる。
 個人所有だが、小型ヘリコプターのMD500カイユースが1機ある。
 実際、高知空港には飛行機の形をした残骸が残るのみで、飛行可能な機体は2機しか残さなかった。

 探検船キヌエティには、一等航海士の策動によって調査の中止命令が届いていた。
 一等航海士は「搭載ヘリコプター1機消息不明、多数の科学者が行方不明」とバンジェル島に報告したが、実際には行方はわかっていたし、全員が無事であることは確かだった。
 その事実を知る半田辰也とDUKWのスタッフは船員食堂に軟禁され、船長と一等航海士の関係は険悪になっていた。
 副長は船長の顔色を見ながら、権力者の息子である一等航海士に忖度する曖昧な態度だった。
 反乱に加わらず、権力者に媚びを売る算段だ。

 探検船キヌエティは、アデン湾の出口にある国際共同管理地ソコトラ島に向かっている。
 一等航海士の報告による、バンジェル島からの命令だ。この島で、行方不明者の捜索に関する会議が行われる。

「エンペラーエアは、飛べますよ。
 高高度での燃料の状態が不安だから、低い高度を飛ぶことになります。
 軽油にガソリンと植物由来燃料を混ぜても飛ぶでしょう。
 安全の保証はできませんけどね」
 パイロットはそう主張するが、同意するクルーはいない。それに、彼自身、飛ぶ気はない。飛べるか否かを答えているだけ。
 別のパイロットが「いかれてる」と呟く。
 航法士が「悪魔のカクテルだね」と呆れる。
 整備士が「自殺行為だ」と制止し、飛行場の責任者も「いくら何でも無茶だ」と反対する。

 だが、老パイロットが志願する。
「私が飛ぼう。
 このままでは、先が見えない。
 海斗という若者によれば、ソコトラ島まで飛べば、いろいろとわかるらしい。
 燃料が必要だし、燃料がなければ早晩立ち行かなくなる。部品をかき集めて高知で作った簿外の飛行機1機と老人の生命1つで、我々の運命が変わるなら、賭けてもいいと思う」

 老パイロットの質問に、花山海斗は丁寧に答える。それを、エリシアや科学者たちが聞いている。
 一通り老パイロットの質問に答えると、海斗が尋ねる。
「ご老人、まさか1人で飛ぶ気じゃ?」
 老パイロットは、隠しても仕方ないと考えた。
「航空燃料がないのだ。
 油田の発見に努めてはいるが、まだ見つけていない。植物由来の燃料でディーゼル車は動くが、そう遠くないうちにガソリン車と航空機は動かなくなる。
 何千キロも航海できる船はない。
 だから、飛行機に頼るしかない。
 ソコトラ島に、若者たちの未来を見つけに行く。
 危険な飛行になるが、勝算はある」
 エリシアが質問する。
「使う燃料に問題があるの?」
 老パイロットが答える。
「あぁ、お嬢さん。
 人造石油から得たナフサ類似物質に植物由来のディーゼル燃料を混ぜて使う。地上運転では上手くいっているし、タービン発電機の燃料としても使っている。
 だが、飛ぶとなると……。
 しかも、最短で3200キロもあり、全行程が洋上飛行になる」
 若い科学者が「どの飛行機を使うのですか?」と目を輝かす。
 老パイロットが上面をグレー、下面をホワイトで塗装したエンペラーエアを指差す。
「あれだ。
 あの双発機の機外に増加タンクを取り付けて飛ぶ」
 エンペラーエアは、ビーチクラフト製のいろいろな飛行機から、集成して造った特製機だ。

 エンペラーエアは、高知では哨戒機として使っていた。
 ビーチクラフト1900Dに準じた胴体だが、主翼の翼端にウィングレットがなく、水平垂直尾翼はT字ではない。水平尾翼は胴体後端にある。
 胴体下部に増加燃料タンクを増備することで、航続距離を3800キロまで伸ばしている。
 ただ、この機体は進空から10年。パーツはレストアしてあるが、製造から数十年を経ている。かなりお疲れ様な機体であることも事実だ。

 最初に手を上げたのは、科学者たちだった。
「何を躊躇う。
 ソコトラ島まで行くなら、便乗させてくれ。バンジェル島に戻る船を探すか、王冠湾の探検船に乗り換えるか、あそこならどうにでもなる」
「そうだな。
 確か、王冠湾の探検船ツブカルが向かっているはず。
 そっちに乗り換えればいい」

 その後も意見は出たが、総合すると「ソコトラ島に行くなら便乗させろ」だった。
 エリシアも「コパイが必要でしょ」と手を上げた。
 海斗は躊躇う。エキュレイユを放置できないからだ。
 結局、残る判断をする。

 マハジャンガのヒトたちは、探検船キヌエティのヒトたちに対して、尊敬とも、蔑みとも異なる、奇妙な目を向けている。
 使えるかどうは判然としない燃料で飛ばす飛行機に、平然と「便乗させろ」「コパイにしろ」と騒ぐ。
 正気ではない。

 老パイロットは、同行を志願した移住委員会の老委員と握手した。2人からは歓喜の念が漂う。
 笑いながら話す便乗者と、喜び勇んでコックピットに座る少女。
 仕方なく残ることが不満な仏頂面の少年。

 マハジャンガのヒトたちには、初めて出会った200万年後のヒトたちを理解できなかった。

 萱場隆太郎たちは、拘束されたわけではないが、探検船キヌエティにとどめ置かれている。
 これから、何日も海を見る以外にすることがないのだと考えると、憂鬱になる。
 全通飛行甲板と船橋の前後に背負い式の砲塔がある。船員から全長120メートル、1万総トンに達しないと伝えられた。
 同時に軍艦ではなく、200万年後では商船も武装していると説明された。

 萱場隆太郎、鮎原梨々香、サクラの家族は、集合住宅の一室を割り当てられた。
 移住船の上部構造物を流用した住宅で広くはないが、快適に生活できる。
 この新居への引っ越しは、梨々香とサクラの2人で行った。家族唯一の男手である隆太郎は、正体不明の船でどこかに向かっている。
 梨々香は心配で心を病みそうだった。サクラは塞ぎがちだ。

 隆太郎と移住委員会の調査員は、狭い部屋に軟禁されている。
 監禁ではない。
 室外に出られるし、航空機格納庫にも行ける。ポーターは飛行甲板上に露天繋止されている。
 機体は拿捕されていない。
 だが、見張りが必ずついてくるし、船内の誰とも会話ができない。
 説明では「ソコトラ島沖で、発船しろ。どこに行こうが自由だ」と言われた。
 調査員は「マハジャンガから3000キロ以上も離れているぞ。どうやって帰るんだ?」とやや狼狽している。
 隆太郎も同じことを思いながらも、どうもこの世界は意外と開けているんじゃないかと感じていた。
 だから、帰る手段があるだろう、と根拠はないがそう感じていた。
「船速は20ノット程度ですよね。
 4日もあれば、ソコトラ島に到着しますよ」
 調査員は、意外と暢気だ。
「萱場さんは知っているかどうか?
 200万年前のソコトラ島には、リュウケツジュという奇妙な樹木があってね。
 200万年後はどうなっているんだろうねぇ。
 興味がある……」
 隆太郎が少し呆れる。
「先生、マハジャンガには待っているヒトがいるでしょ?」
 調査員が天井を見る。
「女房と娘に嫌われているんだ。
 男親なんて、つまらないよ」
 それは、隆太郎には理解できなかった。
「嫌われている?」
「あぁ、萱場さんの奥さんは若いけど、できた女性だ。
 私の妻も学者でね。法学者なんだ。
 理屈っぽくてね。いや、完璧に屁理屈だ。
 娘も似ている。
 正直、帰りたい、との思いは薄いかなぁ」
 隆太郎はもちろん彼の気持ちとは違った。
「そう、ですか?
 俺は帰りたいですよ。
 だけど、俺がいなくても妻は生きていけるんです。もう少し、互いの距離を離さないと。べったりはよくないんで……」

 隆太郎が想定した通り、探検船キヌエティは4日後、ソコトラ島沖に達した。
 一等航海士に呼ばれ、飛行甲板に向かう。
「勝手に飛んで行ってくれ」

 半田辰也は偶然、その場にいた。飛行甲板には、ポーターと強行着船の2人、それと一等航海士と彼の手下だけ。
 一等航海士はニヤついている。イヤな笑い方だ。
 探検船キヌエティの飛行甲板から離船するには、特別のテクニックが必要だ。
 軽飛行機でも、離陸するには300メートルほどの滑走距離が必須。しかし、飛行甲板は120メートルしかない。
 機体が船尾からはみ出すほどの位置につき、全力でプロペラを回し、キヌエティが全速で風上に向かう。
 それで、ようやく離船できるのだ。

 決して若くはないパイロットと学者然とした男が見つめ合う。
 パイロットが何かを言った。
 学者然が頭を抱える。
 2人が乗り込む。大型の高翼機は、船尾側にあるがギリギリまで後退はしていない。向かい風だが微風、船速は巡航。
 離船なんてできるはずがない。

 辰也はアドバイスするためポーターに駆け寄ろうとしたが、一等航海士と手下に止められた。
 一等航海士の手を振り解こうとすると、殴られた。不意のことだったので、甲板に倒れ込んだ。
 一等航海士が辰也の胸を踏む。
「ジッとしていろ、ガキ!」

 ポーターのプロペラが回り始め、しばらくすると全力回転になる。
 辰也は見境をなくし、彼の胸から一等航海士の足を払い、拘束者を仰向けに転がす。
 だが、遅かった。
 大型の高翼機は、滑走を始めてしまった。

 だが、50メートルほどの滑走で浮き上がった。着船は曲芸だったが、離船は神業だった。

 一等航海士が呆気にとられている。
 彼が期待した、ポーターが波間に消える結果とはならなかった。
 辰也は、微笑んでいた。
「あのおっさん、スゲー腕だな」

「萱場さん、見て」
 調査員に促されて、左翼下を見る。
 隆太郎も驚く。
「あの船と同型ですね」
「降りられる?」
「無理ですよ。
 入港している空母に着艦したら、本格的に身柄拘束になりますよ」
「じゃぁ、仕方ないから、空港に降りましょう。萱場さんの操縦は、離陸で10年、着陸で20年、寿命が縮まるんで、普通に降りてください。
 お願いだから……」
 隆太郎が申し訳なさそうな声を出す。
「仕方なく、STOLしてるんです」
「そうかなぁ、楽しんでるとしか思えないのだけど」
 調査員が笑う。

 今度は、隆太郎が調査員よりも先に気付いた。
「先生、駐機場を見てくれ。格納庫の前。
 エンペラーエアが駐機している。
 あれは、高知のエンペラーエアだ!」
 調査員が地上を見ているが、同機を認めるのに手間取る。飛行機の数が多いからだ。
「あれか!
 高知じゃなくて、マハジャンガね。
 まさか、飛んで来たの?」
「泳いできたわけじゃないでしょう」
「よかったよ。
 仲間がいる」
「先生、降りますよ。
 管制塔の着陸許可が出ました」

 ポーターを指定された駐機場に止めると、隆太郎と調査員は徒歩でエンペラーエアに向かう。
 20分以上歩いて、ようやくエンペラーエアの胴体横に達する。
 老パイロットと若いコパイが待っていた。
「無事でよかった!」
 コパイは、探検船の乗員だった女性だ。どういうことなのか、隆太郎には理解できなかった。
「なぜ、ここへ?」
 挨拶をせず、疑問を口にしたのは、調査員だった。老パイロットが答える。
「知っての通り、燃料がいる。
 で、買い付けに来た。
 マハジャンガにやって来た、探検船の客は港に行ったよ。
 別の探検船が入港したそうだ」
 調査員が答える。
「その船、上空から見たよ。
 たぶん同型船だ。我々は、学者さんたちの船にいたんです。その船は、ソコトラ島の南にいます」
 老パイロットが質す。
「その探検船から?」
 調査員が少し呆けた顔になる。
「えぇ、その船から飛んで来ました。
 いや、逃げてきたのかな?
 う~ん、追い出された、のか?
 で、燃料は何とかなりそう?」
 老パイロットが微笑む。
「このお嬢さんが力になってくれた」
 エリシアの背中を押し、一歩前に出させる。
 そして、続ける。
「エンペラーエアは機内タンク満タンだし、胴体下の予備タンクも満タンにしてもらえる。
 これで、ハーキュリーズがここまで飛べば、直近で必要な量は確保できる。
 それと、タンカーが確保できれば、安定的に購入できるらしい。
 200万年後は、不完全な金本位制らしいから、代金の支払いは何とかなる」

 大消滅の少し前、日本政府は900トン弱の金を保有していた。
 関東にいたヒトたちは、地下に残された物資をサルベージする過程で、政府所管の金塊を発見する。
 合計すると200トンに達した。
 このときの金が、高知に移されていた。だが、銀はない。高知では通貨として、金は使われていないが、文明が存続する限り、金銀は普遍的な価値があると考えたから、200万年後にも運んだ。

 隆太郎たちがソコトラ島に到着してから、探検船キヌエティが同島沖に達するまで半日以上経過していた。
 夜明けまでソコトラ島沖に停泊し、明るくなってから入港する。

 探検船キヌエティは、一等航海士が実権を掌握しつつあった。
 船長は、命令違反による船員の離船と食中毒の発生を理由に統率力を疑われていた。それに加えて、隆太郎の強行着船によって、危機管理能力の疑いにつながっていた。
 どれも事実ではあるのだが、実際の責任は一等航海士にあった。
 船員の離船は一等航海士が黙認したことであり、隆太郎の強行着船時に船橋にいて操船指揮していたのは、一等航海士だった。
 船長は、半田辰也の帰還を知り、船長室から飛行甲板に向かう途中だった。
 何事においても、船に関することは船長の責任だが、トラブルの多くは一等航海士の船乗りとしての資質と能力不足、そして人間性に原因があった。

 船長には、一等航海士に抗う力は残っていない。何しろ、バンジェル島中央政府が一等航海士の報告を鵜呑みにしているのだから仕方ない。
 副長は空気。存在を感じない。

 ソコトラ島入港後、一等航海士の判断で、半田辰也、花山海斗、サリュー、アラセリ、エリシア、カプランの6人が解雇される。
 理由は、探検船キヌエティの任務が解かれたからだ。
 一等航海士の報告から、バンジェル島中央政府の所管官庁は任務遂行は不可能と判断した。
 乗船していた科学者たちは、行き場を失った。
 だが、同型船で王冠湾地方政府の所管である探検船ツブカルがソコトラ島に入港している。
 この船は、ペルシャ湾沿岸を調査する予定だった。
 キヌエティの科学者たちは、ツブカルの船長に面会を求める。
 そして、重大な事実を告げる。
「マダガスカルにヒトが住む街がある!
 遺跡じゃないぞ!」

 移住委員会の老委員がビールを買って、エンペラーエアに戻ってきた。
 老委員は隆太郎と調査員の無事をたいそう喜び、乾杯の音頭を取る。エリシアは飲酒を咎められたが、そんな制止を聞くほど善良な若者ではない。
 瓶を口に付け、喉を鳴らす。
 ソコトラ島の気候は、ビールが美味い。

 そこにツブカルの船長が尋ねてくる。
「マダガスカルのヒトですか?」
 エンペラーエアに同乗してソコトラ島までやって来たキヌエティの科学者数人もいる。
「私は探検船ツブカルの船長でアンナ=マーヤです。
 みなさんは本当にマダガスカルに住んでいるのですか?」
 老委員が答える。
「まぁ、燃料が手に入ると聞いて、これに飛んで来たんだけど……」
 船長は怪訝な顔をする。
「燃料?
 ですか……。
 ガソリン、ケロシン、重油?」
 老委員は少し警戒レベルを上げる。
「あれば、全部……」
 船長は機を見るに敏な女性だった。
「キヌエティは、バンジェル島中央政府が所管する探検船です。
 対して、ツブカルは王冠湾地方政府の所管です。
 ご存じかもしれませんが、王冠湾は最後の時渡り船ベルーガのヒトたちによって開かれた地域で、バンジェル島4島の中でも発言力は強いです。
 レムリアとの交易を最初に始めたのも王冠湾です。
 探検船は、船の性格上、非常に大きな燃料タンクを備えています。船舶ディーゼル用の重油、ジェット燃料、車輌用ガソリンと軽油も大量に積んでいます。
 どうでしょう?
 私たちをみなさんの街に招待していただけませんか?
 お礼に、燃料を運びましょう」
 老委員だけが興奮していた。高知でも歴史の好事家しかしらない事実を彼女が口にしたからだ。
 ウェーブピアサー高速船ベルーガは、200万年後に達していて、乗員たちは大きな街を築いたことを知る。
 老委員は深く静かに興奮していた。手が震えるが、感情の表現はそれだけ。顔には出さない。老獪な政治家だ。
「ご招待するような立派な街ではありませんが、燃料は喉から手が出るほどほしいのです。
 お届けいただければ、たいへん助かります。
 私の同行をお許しいただくことはできますか?」
 船長が快諾する。
「もちろんです」
 隆太郎が発言。
「俺の機も運んでいただけますか?」
 調査員は老委員だけでは危険に対処できないと考えた。
「私も同行させてください」

 大型機と小型機の駐機場は分けられていた。
 それぞれ機から離れないほうがいいとの判断から、ポーターとエンペラーエアの乗員は、それぞれの機に張り付く。
 エリシアは「その必要はない」と説明したが、マハジャンガ人は心配している。
 そのエリシアに半田辰也たちが下船時に預かった給料を届けにやって来た。
 最初に声を発したのはサリューだった。
「一等航海士のクソにクビにされたよ。
 エリシアの給料はタツヤが預かっている」
 辰也がエリシアに給料袋を渡す。
 アラセリが「レムリアにどうやって渡るか、考えないと……」と困惑の表情を見せるが、エリシアが給料袋を覗きながら即答する。
「レムリアには行かない。
 私はマダガスカルに渡る」
 アラセリが驚く。
「どういうことなの?」
 エリシアが微笑む。
「レムリアはもう古い。
 これからはマダガスカルだよ……」

 辰也はエンペラーエアの周囲を回っていた。
低翼で機体後部左側面に大きな貨物扉がある。
 ターボプロップ双発で、20人乗り。それだけで興味が湧いてくる。
 見たことのない型式で、マダガスカル行きが悪い選択ではないように感じる。
「俺もマダガスカルにする。
 アラセリ、この機を見ろよ。こんな機、見たことないぞ」
 アラセリは、自分の機のことを心配していた。
「私には、機があるんだ。
 それも、キヌエティの格納庫に……。
 何とかして、取り返さないと……」
 カプランが老パイロットに声をかける。
「腕のいい航空整備士兼航法士は、ご入り用じゃありませんか?」
 老委員が吹き出し、老パイロットが大笑いする。
「きみたちの貪欲さは、マハジャンガの若者にいい影響を与えるよ。
 受け入れがたいだろうが……」

 老委員と老パイロット、そして調査員は、ソコトラ島最大の街を詳細に観察した。
 島は発展していて、島の住民は2万を超えることも知る。空港と船舶港があり、空港には3000メートル級滑走路が2本、港には1万トン級貨物船4隻が同時に接岸できる。
 街には、食料品店、衣料品店、酒場、宿泊施設など、健全から猥雑まで都市にあるもののほとんどが存在する。
 そして、発展が続いている。時渡り直前の高知のように停滞していない。
 熱気があるのだ。

 老委員と老パイロットは、探検船ツブカルの食堂にいた。
「船長、お願いがあります。
 キヌエティの格納庫にあるターボマスタングMk.Bをこちらに移動してほしいのです。
 この飛行機は、アラセリという女性の個人所有です。引き渡し交渉をしていますが、なかなか合意に至らない状況です。
 ご尽力いただけると、ありがたいのですが……」
 船長が確認する。
「その女性と、みなさんの関係は?」
 老パイロットが答える。
「私たちは、パイロット不足で……。
 パイロット、航法士、整備士をキヌエティが解雇したとのことで、いい機会なので雇用させていただいたのです」
 船長が少し考える。
「実は、キヌエティの科学者ですが……。
 キヌエティが任務を中断して、バンジェル島に帰還することが決まりました。
 となると、科学者はキヌエティに乗船している理由がなくなります。
 本船はペルシャ湾沿岸の調査、実質的には偵察ですが……、が任務で、学術目的はありません。
 ですが、任務を変更してマダガスカルに向かうことになりました。科学者たちは、そのことを知りません。
 キヌエティの科学者たちは、ソコトラ島までやって来て、何もせずに帰りたくない、と考えているようで、ペルシャ湾でも見ておこうとの物見遊山的な気持ちもあるのでしょう、本船への移乗を申し出ています。
 認めるつもりです」
 老委員が答える。
「科学者のみなさんを含めて歓迎します。
 私たちは、いろいろな物資を求めています。正直に申し上げますが、私たちは孤立していたので、周辺の事情に疎いのです。
 みなさんから多くのことを学びたいのです」
 船長は疑念を持つ。
「孤立、ですか……?」
 老委員は顔色を変えず、また口籠もることもなかった。
「鎖国、をご存じですか?
 国を守るため、領域外との門戸を閉じて、交流しないことです」
 船長は、この説明を簡単に理解した。
「なるほど。
 数十年前までは、地域ごとに孤立していましたからねぇ。アトラス山脈東麓が、その鎖国を解いたのは、それほど古いことではないし……。
 不死の軍団は、誰とも、どことも交流していませんからね。
 よくわかります」
 老委員は、理解された理由が解せないが、この場は切り抜けたと感じた。

 時渡りをした8500人は、200万年後の社会の中に踏み込もうとしていた。
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