女の魅力

ざっく

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色気くらいあるわよ!

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何て馬鹿なことをしたんだろう。
現実逃避をしたくなるほどに後悔している。
酔っ払っていた。正常な判断力が無くなっていた。なんて恐ろしいんだお酒って。
自分で気がついていないほどに酔っていたようだ。
何と私は、「私にだって色気があるわよ!」とノーブラで電車に乗ってしまったのだ。
さらに、羽織っていた上着までバッグに押し込んで。
うん、さらに色気が出るかなあと。
……ブラウスが紺色であったことだけが救いだ。
今は6月。
だけど、冷え性で寒がりな私は、まだまだ長袖で過ごしていた。
だけど、周りには半袖もちらほらいて。
そう、このように半袖カッターシャツの筋肉隆々の目の前の男性のように。

なんと、半袖のシャツから伸びた太い腕が私の胸の間に挟まってしまっていた。

言い訳をさせてもらえれば、この時間の電車がこんなに混んでいるなんて知らなかった。
ただいま22時。
普段、真っ直ぐ帰れば、遅くとも20時だし、飲み会があれば終電の23時過ぎだから、この時間の電車に乗ったことがなかったのだ。
ガタンガタンと揺れる車内の中、私の胸は、彼の腕をふにょふにょと刺激し続けていた。
明らかに、私が押し付けている構図だ。
ちらりと視線だけで見上げれば、彼は私の事を気にもせずに、車内にぶら下がった広告を見ているようだった。
こんな形で、接触するだなんて。
後悔甚だしい。五分前の自分を呼びつけて正座させて数時間説教をしたい気分だ。
じっくり見ていないので何とも言えないが、多分彼は、私と同じ駅だ。
体が大きくて目立つので、なんとなく覚えていた。
短髪で怖い印象を抱かせるが、それをよく分かっているのか、あまり女性の近くで電車に乗ることはしていなかったように思う。
だけど、おばあちゃんがいた時には、さりげなく後ろにいて乗るのをサポートしていた姿が印象的だった。
太い眉に少し垂れた瞳。口はいつも引き結んでいるけれど、おばあちゃんにお礼を言われた時は、その口元が綻んで歯をのぞかせた。
別に、好きだったとかではない。そう、さっきまで彼氏はいたはずだし。
ただ、毎朝の電車で会う好みの男性。
声をかける気など全くなく、見かければ「今日もかっこいい~」と嬉しくなるくらいの相手。
偶然、お話しできたりしたらラッキーよねとか、今朝までなら思っていたはずだ。
おでこを前に倒せば、たくましい肩があって、頭を預けてしまいたい衝動に駆られる。
待て待て。それはさすがにダメだ。腕を胸の間に挟んでしまったことは不可抗力でも、もたれかかった時点で痴女の完成ではないだろうか。
どの時点で痴女と判定されるかは、やっぱり相手次第だろうか。ここで美人だったら痴女じゃなくてラッキーなんでしょ?それって差別!……なんてセクハラ認定されそうな上司みたいなことを考える。
ダメだ。格好良くったって可愛くたって、セクハラはセクハラで、痴漢は痴漢だ。
考えることを別の方向にやっても、たくましい腕は、存在感がありすぎて、やっぱり胸の感触に全神経が集まっていってしまう。
意識するなと思えば思うほど、その腕の存在感が大きくなって、羞恥に頬が酒以外の理由で染まった。
ガタン!
大きく電車が揺れて、体の角度が少し変わった。
相変わらず胸に挟まれた腕はそのままで、左胸が、彼のシャツにくっついてしまった。
押しつぶされるほどではない微妙な接触に、生理的な反応として、胸の先端がとがってしまう。
そのとがった先端に、さらに微妙な刺激が与え続けられて、荒い息が出そうになるのをこらえた。
自分の体が、おかしい。
胸なんて触ったからといって、気持ちよかったことなど一度もない。
女にだったら揉まれたことさえあると言うのに、彼の体で刺激を受けていると思えば思うほど、背筋を駆け上っていくしびれが止まらない。
何これ何これ。
勝手に触れさせて勝手に感じているだなんて。変態だ。これは、痴漢の上をいく。
どうにかしたくて身じろぎしても、感触が強くなるだけで、距離を作ることは無理だった。

車内に流れるアナウンスで、次の駅が近いことを知る。
次のドアが開くのは向こう側だ。だけど、その時に人の流れができる。それを利用して、体の角度を思い切り変える!痴女の手から彼を守るにはそれしかない。
ドアが開いて、人が流れたら自分がどう動くかをシミュレーションしながら、二度とこんなことはしないと決意した。
振り向いた先が女性でありますようにと祈りを捧げながら、ドアが開くのを待ち構えた。
……待ち構え過ぎた。
その前に、止まるための揺れがあると言うことを失念していたのだ。
軽いブレーキ音で電車が止まった途端、私は耐えきれずに目の前の腕にしがみついてしまった。
びくりと私の腕の中の腕が震えて、慌てて離した。
「ごっ、ごめんなさい。私---」
慌てて一歩下がったところには、人の流れができてしまっていた。馬鹿な私は押されてドアの方へと流されて体が傾いた。
「危ない」
彼がそう小さく叫んで、私の腕を引いた。
人の流れの中でこけそうになっていた私を軽く引き寄せて、彼が私をその胸の中に抱きとめた。
背中を大きな手に支えられて、汗のにおいと彼の熱さをが感じられるほどにくっついて、私の心臓が痛いほどにどくどくと激しく動いた。
プシュー。
気の抜けるような音がして、ドアが閉まったことに気がつく。
見渡せば、さっきよりも増えてしまった乗客で、私は二度と動けなくなってしまっていた。

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