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確認作業
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「さて、どうする?」
夜道で二人きりになった途端、大塚さんが私に聞いてきた。
「オレの部屋に来るか、藤川さんの部屋に呼んでくれる?」
その話は無くなったのかと思っていた。
誘った私が言うのもなんだが、あっさりと断られたものだと思っていたのだ。
驚く私に、「だけどね」と大塚さんは続ける。
「オレ、付き合ってもいない女性と寝たりするのって、性格的に無理なんだ。だから、やり逃げしないで、つきあってくれるなら?」
やり逃げって、女性にも適用される言葉なのか。
小さな言葉選びに引っかかりつつ、私は考える。
彼は、とても好みだ。
だけど………。
「ちょっと、電話してもいい?確認したくて」
私が返事を保留にすると、太い眉がくいっと上がった。
気に入らないと思われたかなと心配になりながらも、哲也に電話をした。
もしかしたら繋がらないかもと思っていたコール音は、案外あっさりと途切れた。
『真由美―?お前が邪魔するから、フラれたぞー』
いきなり哲也の明るい声がした。罪悪感という言葉を今度教え込んでおこうと思う。
「私のせいじゃないでしょ」
『彼女のいる状態で他の女性に声をかけるのがダメだってさ。あーあ』
それを私のせいにできるこいつの思考回路を組み替えたい。
頭痛を感じながらも、この話をぶった切って、本題に入った。
「哲也、私とあんたは別れたよね?」
『いや?なんで?』
………驚くことに、別れていなかったらしい。まさかと思って確認してよかった。
「良かった……」
思わず口を突いて出た言葉に、哲也の弾んだ声がした。
『オレはフラれたんだし、別れる必要ないだろ?』
アホな哲也の言葉に、私の声が自然と低くなった。
「必要性なんて関係ないのよ。いい?私よりも他の女を選んだあの瞬間に、私たちは別れてるの。その確認がしたかっただけ」
分かった?と念押しすると、気に入らなそうな声がしたが、『へいへい。仕方ないか』と反省の全く感じられない返事が聞こえた。
その頭にこぶしをぐりぐりとめりこませてやりたい。
『じゃ、またなー』
私が青筋を立てていると言うのに、軽い声がした。
「……またね」
しかし、これがこいつの友達としては付き合い安いところだったと思いながら、我慢して返事をして通話を切った。
「―――またね?」
そうして見上げると、不審感だらけの表情で大塚さんが私を見下ろしていた。
多分、哲也の声も漏れて聞こえていたんだろう。気持ちはわかる。
「大学からの友人なんです。まあ、こういうやつだったんで」
苦笑いで答えてから、私は少し緊張する。
唇を湿らせて、目を合わせて言いたいとも思ったが、きっと、それでは私は最後までいえないだろうと、少し目を伏せた状態でしゃべった。
「私は最初から別れたつもりだったんですけど、一応確認しないと、相手が相手なんで。二股になってしまったら笑えないから」
そう、付き合っていない人と寝ないと断言できるような人を、あんなちゃらんぽらんな馬鹿なやつのせいで間男にしてしまうわけにはいかない。
案の定、まだ別れていないなどとぬかしやがった。
「だけど、これでしっかりと彼氏はいません!」
「うん」
優しい返事に後押しされて、私は視線を上げる。
「だからっ……!えと……、私の部屋に来てください!じゃない、先にお付き合いしてください!」
両手拳を握って力説すると、驚いていた顔がふにゃっと笑み崩れた。
「はい。じゃあ、お邪魔します」
彼の手と、私の手が、絡まりあって恋人つなぎになった。
夜道で二人きりになった途端、大塚さんが私に聞いてきた。
「オレの部屋に来るか、藤川さんの部屋に呼んでくれる?」
その話は無くなったのかと思っていた。
誘った私が言うのもなんだが、あっさりと断られたものだと思っていたのだ。
驚く私に、「だけどね」と大塚さんは続ける。
「オレ、付き合ってもいない女性と寝たりするのって、性格的に無理なんだ。だから、やり逃げしないで、つきあってくれるなら?」
やり逃げって、女性にも適用される言葉なのか。
小さな言葉選びに引っかかりつつ、私は考える。
彼は、とても好みだ。
だけど………。
「ちょっと、電話してもいい?確認したくて」
私が返事を保留にすると、太い眉がくいっと上がった。
気に入らないと思われたかなと心配になりながらも、哲也に電話をした。
もしかしたら繋がらないかもと思っていたコール音は、案外あっさりと途切れた。
『真由美―?お前が邪魔するから、フラれたぞー』
いきなり哲也の明るい声がした。罪悪感という言葉を今度教え込んでおこうと思う。
「私のせいじゃないでしょ」
『彼女のいる状態で他の女性に声をかけるのがダメだってさ。あーあ』
それを私のせいにできるこいつの思考回路を組み替えたい。
頭痛を感じながらも、この話をぶった切って、本題に入った。
「哲也、私とあんたは別れたよね?」
『いや?なんで?』
………驚くことに、別れていなかったらしい。まさかと思って確認してよかった。
「良かった……」
思わず口を突いて出た言葉に、哲也の弾んだ声がした。
『オレはフラれたんだし、別れる必要ないだろ?』
アホな哲也の言葉に、私の声が自然と低くなった。
「必要性なんて関係ないのよ。いい?私よりも他の女を選んだあの瞬間に、私たちは別れてるの。その確認がしたかっただけ」
分かった?と念押しすると、気に入らなそうな声がしたが、『へいへい。仕方ないか』と反省の全く感じられない返事が聞こえた。
その頭にこぶしをぐりぐりとめりこませてやりたい。
『じゃ、またなー』
私が青筋を立てていると言うのに、軽い声がした。
「……またね」
しかし、これがこいつの友達としては付き合い安いところだったと思いながら、我慢して返事をして通話を切った。
「―――またね?」
そうして見上げると、不審感だらけの表情で大塚さんが私を見下ろしていた。
多分、哲也の声も漏れて聞こえていたんだろう。気持ちはわかる。
「大学からの友人なんです。まあ、こういうやつだったんで」
苦笑いで答えてから、私は少し緊張する。
唇を湿らせて、目を合わせて言いたいとも思ったが、きっと、それでは私は最後までいえないだろうと、少し目を伏せた状態でしゃべった。
「私は最初から別れたつもりだったんですけど、一応確認しないと、相手が相手なんで。二股になってしまったら笑えないから」
そう、付き合っていない人と寝ないと断言できるような人を、あんなちゃらんぽらんな馬鹿なやつのせいで間男にしてしまうわけにはいかない。
案の定、まだ別れていないなどとぬかしやがった。
「だけど、これでしっかりと彼氏はいません!」
「うん」
優しい返事に後押しされて、私は視線を上げる。
「だからっ……!えと……、私の部屋に来てください!じゃない、先にお付き合いしてください!」
両手拳を握って力説すると、驚いていた顔がふにゃっと笑み崩れた。
「はい。じゃあ、お邪魔します」
彼の手と、私の手が、絡まりあって恋人つなぎになった。
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