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グラン
始まり
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グランは、自分は何もかもを手に入れたのだと思った。
小さな頃から、自分が望めば周りが望むように動いてくれることは気が付いていた。
他の人間より優遇されている。
それは、自分の価値に他ならないし、自分は優秀だと思う。
その『力』の使い方に気が付いたのは、好きな人ができた時。
彼女と付き合いたいと思うのに、彼女には恋人がいた。
気に入らなかった。
だから、彼女に詰め寄ったのだ。
「あいつと別れて、俺と付き合え!」
――と。
最初は拒否していた彼女が、急に従順になった。
鏡を見ると、自分の瞳が金色に輝いていた。
これは……魅了の力だ。
なんてことだ。今まで自分が望むように動いていた人たちは、魅了の力で動いていただけだったのだ。
グランは歓喜した。
素晴らしい力だ。自分にこそふさわしい力。
それからは、上手にその力を使った。
女性は全て自分のことを好きになった。
普段は、それを困ったようにしつつも、魅了で自分の虜になるように扱った。
なんて気分がいいんだ。
魅了の力があることがばれないように、剣の腕を磨き、魔力を別の方向にも使えるようになった。
元々の顔のつくりもよかったので、グランは人気者になっていた。
金は魅了すれば好きなだけ手に入る。
だったら、後は地位と名誉が欲しい。
だから、冒険者になった。
そこそこ強くて見た目のいい男たちとパーティを組み、冒険の旅に出た。
――が、ランクはなかなか上がらなかった。
最初は薬草集めからちまちまと。
魔物を倒そうとしても、なかなか魅了の術にはまってくれないし、何より大けがを負って死ぬ危険がある。
イライラして、冒険者なんてやめようと思っていた時、優秀な薬師の噂を聞いた。近隣の町にまで噂になるほど優秀で、若い女だという。
薬師……ランクの高い治癒術師は、なかなかパーティに入ってくれない。
だが、薬師なら?
グランは、仲間に自分の魅了の力を打ち明け、協力するように言った。
計画は、大成功だった。
まずは、居もしない魔物を倒したと言って、その薬師がいるという町に入った。
グランの魅了によって、数人が信じてしまえば、後は簡単だ。
その数人が、「魔物を倒してくださった勇者」だと、町中に触れ回ってくれる。
仲間たちも、どんなに戦いが大変だったのかを語る。
自分たちは、このスキルスの町で救世主になった。
そんな中、噂の薬師に会いに行った。
彼女は本当に若く、父親を亡くしたばかりだという。
彼女が作ったという回復薬を使ったら、本当にあっという間に回復した。
今まで高価な回復薬はあまり使ったことがなかったが、これを大量に勝手に生産してくれるものか。
素晴らしい。
グランは、魅了をかけつつ、彼女を絶賛した。
「一人で薬屋をやっていっているの?すごいね。こんなに可愛い子が」
にっこり微笑むと、彼女は頬を染めて俯く。
魅了なんてかけるまでもなかったかもしれない。
その薬師――キャルは、自分から言い出すのだ。
「一緒に旅に連れて行って欲しい」
そして、グランは歓喜しながら困ったように微笑む。
「それには、冒険者にならないといけないんだよ?キャル、君にできるだろうか?」
キャルは優秀だ。
勝手に冒険者登録して、旅支度を整え、ついて行ける状態にまでしてきた。
グランたちは、これで回復薬自動製造機を手に入れたというわけだ。
実際、とても役に立ってもらった。
キャルがいれば、いつでも自分たちは最善の状態で戦える。
戦闘中であっても、すぐに元の状態まで回復するのだ。
そうして、短期間でグランはAランクにまで上り詰めた。
小さな頃から、自分が望めば周りが望むように動いてくれることは気が付いていた。
他の人間より優遇されている。
それは、自分の価値に他ならないし、自分は優秀だと思う。
その『力』の使い方に気が付いたのは、好きな人ができた時。
彼女と付き合いたいと思うのに、彼女には恋人がいた。
気に入らなかった。
だから、彼女に詰め寄ったのだ。
「あいつと別れて、俺と付き合え!」
――と。
最初は拒否していた彼女が、急に従順になった。
鏡を見ると、自分の瞳が金色に輝いていた。
これは……魅了の力だ。
なんてことだ。今まで自分が望むように動いていた人たちは、魅了の力で動いていただけだったのだ。
グランは歓喜した。
素晴らしい力だ。自分にこそふさわしい力。
それからは、上手にその力を使った。
女性は全て自分のことを好きになった。
普段は、それを困ったようにしつつも、魅了で自分の虜になるように扱った。
なんて気分がいいんだ。
魅了の力があることがばれないように、剣の腕を磨き、魔力を別の方向にも使えるようになった。
元々の顔のつくりもよかったので、グランは人気者になっていた。
金は魅了すれば好きなだけ手に入る。
だったら、後は地位と名誉が欲しい。
だから、冒険者になった。
そこそこ強くて見た目のいい男たちとパーティを組み、冒険の旅に出た。
――が、ランクはなかなか上がらなかった。
最初は薬草集めからちまちまと。
魔物を倒そうとしても、なかなか魅了の術にはまってくれないし、何より大けがを負って死ぬ危険がある。
イライラして、冒険者なんてやめようと思っていた時、優秀な薬師の噂を聞いた。近隣の町にまで噂になるほど優秀で、若い女だという。
薬師……ランクの高い治癒術師は、なかなかパーティに入ってくれない。
だが、薬師なら?
グランは、仲間に自分の魅了の力を打ち明け、協力するように言った。
計画は、大成功だった。
まずは、居もしない魔物を倒したと言って、その薬師がいるという町に入った。
グランの魅了によって、数人が信じてしまえば、後は簡単だ。
その数人が、「魔物を倒してくださった勇者」だと、町中に触れ回ってくれる。
仲間たちも、どんなに戦いが大変だったのかを語る。
自分たちは、このスキルスの町で救世主になった。
そんな中、噂の薬師に会いに行った。
彼女は本当に若く、父親を亡くしたばかりだという。
彼女が作ったという回復薬を使ったら、本当にあっという間に回復した。
今まで高価な回復薬はあまり使ったことがなかったが、これを大量に勝手に生産してくれるものか。
素晴らしい。
グランは、魅了をかけつつ、彼女を絶賛した。
「一人で薬屋をやっていっているの?すごいね。こんなに可愛い子が」
にっこり微笑むと、彼女は頬を染めて俯く。
魅了なんてかけるまでもなかったかもしれない。
その薬師――キャルは、自分から言い出すのだ。
「一緒に旅に連れて行って欲しい」
そして、グランは歓喜しながら困ったように微笑む。
「それには、冒険者にならないといけないんだよ?キャル、君にできるだろうか?」
キャルは優秀だ。
勝手に冒険者登録して、旅支度を整え、ついて行ける状態にまでしてきた。
グランたちは、これで回復薬自動製造機を手に入れたというわけだ。
実際、とても役に立ってもらった。
キャルがいれば、いつでも自分たちは最善の状態で戦える。
戦闘中であっても、すぐに元の状態まで回復するのだ。
そうして、短期間でグランはAランクにまで上り詰めた。
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