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西田浩一の視界
帰り道
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「あー、終わった・・・」
他の部員はもうみんな帰った。
浩一は、部長から日誌まで任されていて、いつも帰りが一番遅い。
武道場からは、校舎を通って帰るのが一番早い。校舎の中を通らないと、迂回することになるのだ。
人気のない廊下を歩いていると、
「うっ・・・わあ!」
ついさっき聞いたばかりの声が、また聞こえた。
「またこけてるのか」
呆れた声を隠すこともできなかった。相川が、階段下で尻もちをついていた。こんな時間まで何をしていたのか。
「西田、先輩?」
確認するような声に、少し驚いた。
「そう。見えていないのか?」
「恥ずかしながら、眼鏡がないと見えなくてですね」
そうか、と改めて思った。浩一自身が視力がいいものだから、目が悪い人のことがいまいちよく分からない。
どこまで悪くてどれだけ見えているかにもよるが、相川はずいぶん悪い部類に入るらしい。
「ああ、そうか。・・・・・・家はどこだ?」
この状態で家に帰れないだろうと思って声をかければ、思ったよりもはっきりとした返事が返ってきた。
「いえ!そこまでお世話にはなれません!」
気持ちだけは勇ましいなと思う。
「何度もこけておいて何言ってるんだ。同じ方向のやつがいたらついて行ってもらうから、言え」
本当は、他の部員はもう帰った後だったが、安心させるために言った。
まあ、別に家の場所など誤魔化しても構わないだろうと思っていたら、なんと、本気で同じ方向だった。
しかも、浩一の通学路真っただ中だ。
昇降口まで連れていって、靴を探してやった。
「ここで待ってろ」
相川は、さっきからほとんど単語でしかしゃべらない浩一に何も文句も言わずにおとなしくついてきていた。
これが、浩一には驚きだった。
大抵は、「もう少し言いようがない?」と怒られるか、怖がられるかなのだが、相川は特に気にした様子もなく、おとなしく言うことを聞いていた。
そうしないと帰れないというのもあるのかもしれないが、一緒にいて楽な相手だなと、会ったばかりなのにおかしなことを思った。
「よし、行くぞ。オレ、チャリ通だから、後ろに乗れ」
「は、はい!全力を尽くします」
「・・・・・・まあ、落とさないように気をつけるよ」
初めて緊張したような声を出した相手に、ああ、良くこける子だったなと思った。
「ここだ。座れ」
自転車を持ってきて声をかけると、なんと、スカートをまくって荷台をまたごうとした。
慌てて止めて、横座りにさせた。
男子高校生を何だと思っているんだ。あんなきわどいところまで見せられて、目に焼き付いたじゃないか、どうしてくれると、嬉しいが悩ましい。
横座りをして、自分につかまらせるのは、想像以上に密着度が上がって困った。
そういえば、女子にしがみつかれるのなんか、初めてじゃないか?
やばい、困ったなと思っていると、背中から笑い声が聞こえた。
「なんだか青春ドラマみたいです」
呑気なセリフが来た。
「あほか」
軽く肩の力が抜けた。軽くため息を吐いて、自転車をこぎ始めた。
「行くぞ」
「は、はい!」
そうはいっても、小さな体で一生懸命捕まられるのは、男子高校生には酷だなと思った。
何もしないと買い被られているのか、何もできないと舐められているのか、何も考えていないのか……少ししか話してない相手だが、何も考えて無いやつだなと確信してしまった。
他の部員はもうみんな帰った。
浩一は、部長から日誌まで任されていて、いつも帰りが一番遅い。
武道場からは、校舎を通って帰るのが一番早い。校舎の中を通らないと、迂回することになるのだ。
人気のない廊下を歩いていると、
「うっ・・・わあ!」
ついさっき聞いたばかりの声が、また聞こえた。
「またこけてるのか」
呆れた声を隠すこともできなかった。相川が、階段下で尻もちをついていた。こんな時間まで何をしていたのか。
「西田、先輩?」
確認するような声に、少し驚いた。
「そう。見えていないのか?」
「恥ずかしながら、眼鏡がないと見えなくてですね」
そうか、と改めて思った。浩一自身が視力がいいものだから、目が悪い人のことがいまいちよく分からない。
どこまで悪くてどれだけ見えているかにもよるが、相川はずいぶん悪い部類に入るらしい。
「ああ、そうか。・・・・・・家はどこだ?」
この状態で家に帰れないだろうと思って声をかければ、思ったよりもはっきりとした返事が返ってきた。
「いえ!そこまでお世話にはなれません!」
気持ちだけは勇ましいなと思う。
「何度もこけておいて何言ってるんだ。同じ方向のやつがいたらついて行ってもらうから、言え」
本当は、他の部員はもう帰った後だったが、安心させるために言った。
まあ、別に家の場所など誤魔化しても構わないだろうと思っていたら、なんと、本気で同じ方向だった。
しかも、浩一の通学路真っただ中だ。
昇降口まで連れていって、靴を探してやった。
「ここで待ってろ」
相川は、さっきからほとんど単語でしかしゃべらない浩一に何も文句も言わずにおとなしくついてきていた。
これが、浩一には驚きだった。
大抵は、「もう少し言いようがない?」と怒られるか、怖がられるかなのだが、相川は特に気にした様子もなく、おとなしく言うことを聞いていた。
そうしないと帰れないというのもあるのかもしれないが、一緒にいて楽な相手だなと、会ったばかりなのにおかしなことを思った。
「よし、行くぞ。オレ、チャリ通だから、後ろに乗れ」
「は、はい!全力を尽くします」
「・・・・・・まあ、落とさないように気をつけるよ」
初めて緊張したような声を出した相手に、ああ、良くこける子だったなと思った。
「ここだ。座れ」
自転車を持ってきて声をかけると、なんと、スカートをまくって荷台をまたごうとした。
慌てて止めて、横座りにさせた。
男子高校生を何だと思っているんだ。あんなきわどいところまで見せられて、目に焼き付いたじゃないか、どうしてくれると、嬉しいが悩ましい。
横座りをして、自分につかまらせるのは、想像以上に密着度が上がって困った。
そういえば、女子にしがみつかれるのなんか、初めてじゃないか?
やばい、困ったなと思っていると、背中から笑い声が聞こえた。
「なんだか青春ドラマみたいです」
呑気なセリフが来た。
「あほか」
軽く肩の力が抜けた。軽くため息を吐いて、自転車をこぎ始めた。
「行くぞ」
「は、はい!」
そうはいっても、小さな体で一生懸命捕まられるのは、男子高校生には酷だなと思った。
何もしないと買い被られているのか、何もできないと舐められているのか、何も考えていないのか……少ししか話してない相手だが、何も考えて無いやつだなと確信してしまった。
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