霞んだ景色の中で

ざっく

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西田浩一の視界

嫉妬

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 金曜日、あの後は、相川は練習を見に来なかった。
 土日も、相川はいなかった。
 休日に来るほど好きではないということか?
 そんな小さなことで安心しそうになる自分が嫌だ。
 ・・・安心ってなんだ。不安に思っているのか?
 ああ、もう分からない。分からなくて、イライラしていた。

 月曜日、武道場に相川の姿を見つけられなかった。
 絆創膏がなくなってしまっていたら、あの大勢の中から見つけられていないだけかもしれない。
 そう考えると、土日もか?
 もやもやしたものを抱えながら、部活を終えた。

 「お疲れ~」
 部室で日誌をつけていると、さっさと他の部員は帰っていく。
片付けの確認が終わって、日誌書いて、週末の練習試合の準備をして・・・副部長、すげえな。あの大川部長とペア久組まされて、よく1年間も我慢したなと思う。
 この雑務の多さは、絶対に無理だ。
 強張った方を人回ししてから、部室に鍵を閉めて、校舎へ向かった。

 一人だからか、ぺったんぺったんと足音が良く響く。
 昇降口に、女子が一人立っていた。
 柔らかそうな髪を、一つにして、肩に垂らしていた。小さいなと思ってみていると、その女子がくるっとこちらを向いた。
 途端、見開かれる瞳。
 同時に、浩一も驚いていた。
 相川だった。
 眼鏡も絆創膏もない顔で、いつもと違う髪型をして昇降口で人を待っているように見える。

 はっきり言って、かわいかった。

 何をしているのか聞こうとして・・・・・・相川が、手に持っていた包みを体の後ろに隠すように動かしたのが見えた。
 瞬間、悟ってしまった。
 何をしているのかなんて、聞かなくてもわかっているじゃないか。
 あの位置からこちらを視認できたようだから、コンタクトでも入れているのだろう。普段とは違うおしゃれをして、誰かに渡すような包みを持って昇降口で立っているだなんて。
 荒垣は、今日は時間差で帰るらしく、まだ校舎内にいるだろう。
 「女子怖い」と言っていた荒垣に同情はするが、何故だか、その荒垣へのいら立ちが湧き上がってきて、その不快さに顔をしかめた。
 荒垣はよくできた後輩だ。本人が望んでもいないことだ。
 だから、一人でも多くの追っかけを追い払った方がいい―――。
 自分でも、言い訳だと気がついていた。
 「待ち伏せか?しかも・・・差し入れという名の、気を引くためのプレゼントか」
 靴を履き替えて、相川に視線を向けると、泣きそうな顔で微動だにしていなかった。
 ショックだということを隠そうともしない表情に、胸が痛んだ。
 だけど、嫉妬心に煽られた口が止まらなかった。

 「迷惑だ」

 最低だ。
 浩一が言うべき言葉ではない。浩一に言われる必要なんかない言葉だ。
 足早に相川に背を向けて、校舎を出た。
 自己嫌悪で泣きそうだ。でかい図体をして何をしているんだか。

 すでに後悔だらけだが、今戻れば、もしかしたら、荒垣と顔を合わせるかもしれない。
 最悪、相川が荒垣に包みを渡しているところを目撃するかもしれない。
 そうなったら、泣く。失恋して男泣き―――絶対に嫌だ。

 今は、ちょっと心の整理を付けたい。
 昇降口で相川を見た瞬間からはっきりした想いと、同時に理解したいきなりの失恋に、浩一は打ちひしがれながら帰った。
 明日、謝ろうと思いながら、とぼとぼと浩一は帰途についた。

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