3 / 66
第一章 黒い悪魔の逃亡
第一話 伯爵は偉いが所詮は女王様の犬
しおりを挟む
時は遡り、シンフォニアの王都ダン・エイルからずっと東、魔法王国バルセ・ルナとの国境の地キャンベル。
この地は十八歳の若き銀髪の伯爵エドガー・クルーゼ・キャンベルが急死した父の後を継ぎ治めている。
その日、エドガーが国境の砦から領主の館に戻るといつもはいないはずのメイドが出迎えた。
「お帰りなさいませ。エドガー様」
「ただいま。今日はどうしたんだい?」
「はい。近衛騎士様からの手紙を預かりお渡しするために残っていました」
メイドはそう言うと持っていた手紙をエドガーに渡した。
「近衛騎士から?」
近衛騎士は王都を守るエリートである中央軍の中で更にエリートである王族を守るため居城に務める近衛隊の兵士である。シンフォニア王国では近衛隊に入隊した者のみ騎士の称号と共に紅を基調とした騎士服とマントが与えられる。
騎士は一代限りの名誉貴族だがそれ故に騎士同士の結束は強く実力が高いため軍部の上層部の殆どは近衛騎士出身である。
エドガーは手紙を受け取ると自室へと行き椅子に座り手紙を読むと深い溜息を吐いた。
暫くどうするか考えているとドアがノックされ返事をする間もなく開きながら用件を伝えてきた。
「エドガー、バルセ・ルナへの工作成功したって。これで暫くは大丈夫だね」
部屋に入ってきた黒髪に紅い眼の男か女か分からない中性的な顔立ちをした人物にエドガーは呆れながら言う。
「いくら俺の護衛者だからって勝手に入ってくるな。アッシュ」
「えぇぇ、いいじゃん。僕とエドガーの仲でしょ」
「誤解を招くような事言うな。ただでさえリディアが俺とお前の仲を疑ってるんだぞ」
「リディアが?」
リディアとはエドガーの妹である。
「ああ、最近じゃリディアのせいで家中の者も疑ってる」
「でも僕、男だよ」
「半分はな」
そう言ってエドガーはアッシュを睨んだ。
エドガーとアッシュは幼馴染みで互いのことをよく理解しているが根本的なことを互いに理解していない何故ならアッシュはキャンベル一謎の人物だからだ。
エドガーが生まれてすぐ先代のキャンベル伯エルヴィンが拾ってきた赤子がアッシュである。しかもその赤子は毎日ころころと性別の変わる不思議な赤子だった。普通なら気味悪がるがエルヴィンはエドガーと同じように育てろと厳命した。それは成長しても同じだった。かといってアッシュを養子にするでもなく、女として生きることを強要しエドガーの婚約者にすることもなかった。
十八になったっらすべてを教えると二人に言ったエルヴィンだったが去年の夏バルセ・ルナとの小競り合いで運悪く流れ弾が当たり急死してしまい全ては謎のままになり今に至る。故にアッシュにつて分かる事と言えば性別を自由に変えることが出来るそれだけである。
「それでどうしたの? 嫌そうな顔をして」
「顔に出てたか」
そう言ってエドガーは持っていた手紙をアッシュに渡した。
キャンベル伯爵へ
私の叔父の息子レオナルドが国立騎士学校に在学していて近々校外学習でキャンベル領のステラの森へ行くらしいわ。最近は何かと物騒で心配だから私がいいと言うまで誰にも見付からないよう厳重に彼を保護しなさい。
S
「何これ?」
「この手紙は近衛兵が持って来たらしい」
「王宮でエドガーに命令出来るレオナルドって従弟がいる人物、一人しかいないね」
「ああ。おまけにイニシャルで勅命って事にしている」
二人の頭に浮かんだSという人物はこの国の女王シェリア・ルーシェ・ダン・エイル・シンフォニアである。そして手紙の内容とイニシャルだけを残した意味もすぐに浮かんだ。
「すごい命令だね。保護を名目に誘拐なんて」
「ああ、バレたら終わりだ。断ろうにもウチは昨年の不作で国からの援助を受けてるから断りづらいし、あの女王だ。支援を打ち切る可能性もある」
「やるしかないね」
「ああ、悪いが協力してくれ」
「うん。まずは校外学習の日を調べて、次は森の下見、最後に監禁する場所」
「保護と言え保護と」
「分かった、保護ね。保護。保護した後は女王と大公の動きを見ないとね。それとエドガー」
「何だ?」
「相手は大公の息子だ。エドガーは顔を見られたら拙いでしょ。これは僕がやる」
エドガーは言い返そうとしたが、すぐに冷静になり、俯いて言った。
「任せた」
アッシュは頷くと部屋を出て行った。
数日後、ステラの森にシンフォニア騎士学校の学生が校外学習に来た。
森の前に、黒髪の紅い眼をした美少女がいた。
「初めまして。本日、ステラの森を案内させていただく事になりました。フェリスです」
騎士学校には女性が少ない、だからフェリスに少しでも近づこうと、男達は必死にアプローチする。引率の教師までもが・・・・・・
少女のような顔をした綺麗な紅髪の少年が冷めた目でその様子を見ていた。
王族特有の紅い髪。あの子かな?
フェリスが学生の一人に尋ねる。
「彼は?」
「ああ、あの顔で男なんだ。レオナルド・レーデ・カトリーヌ。なんとカトリーヌ大公の息子さ」
「へぇ」
それからも、フェリスは男達に囲まれて歩いた。
目的地の山菜がよく採れる泉の近くでフェリスが男達から解放された。
教師は名残惜しく山菜の説明をして学生達は渋々聞いた。レオナルドだけ真面目に聞いていた。
自由時間になりフェリスがレオナルドに近づいて誰にも聞かれないように小声で尋ねた。
「どうして男の振りをしているの? お嬢さん」
レオナルドは驚いてフェリスを見る。
「二人っきりでお話ししない?」
少年改め、少女は頷いて大人しくフェリスについて行き、森の奥に向かった。
周りに誰もいない事を確認して少女は尋ねた。
「どうして女だと判った」
「僕は嘘を見破るのが得意なんだ」
「説明になってない」
「説明しようがないからね」
少女は嘆息をして言った。
「もう良い。それより、この事は黙っていてくれ」
フェリスは答えない。黙って歩き、太い切り株の前に来た。
切り株には不自然に置かれた剣が二振り置いてあり、フェリスはそれを取ると剣を一振り抜いた。
「黙っててもいいけど、その代わり僕に付いて来てもらえる」
「私を誘拐するって事は盗賊じゃないな。何処の間者だ?」
少女は剣を抜きフェリスを睨む。それを見てフェリスは嘆息する。
「かったる」
そう言うと少女の前にフェリスの姿はなく、少女の剣は鍔から先がなかった。そして背後から少女の肩に剣が置かれた。
「断れば学生達を皆殺しにする」
あまりの実力の差に恐怖し、少女は震えながら言った。
「分かった」
「本当の名前は何?」
「レオナ・レーデ・カトリーヌ」
「それじゃあレオナ、付いて来て」
レオナは大人しく付いて行った。暫く歩くと車があった。
「これに乗って」
言われるまま車に乗ると、中で目隠しをされる。
「な、何を」
「目隠しだけだよ。大人しくしてたら何もしない」
不安はあったがレオナは従った。
フェリスは運転手に言う。
「僕の言ったとおりに目的地に行ってね」
「はぁ。しかし着くのが遅くなりますよ」
「構わないよ。こうする事で、彼女に目的地を悟らせないからね」
「なるほど。解りました」
「理解が早くて助かるよ」
こうしてカトリーヌ大公の娘は誘拐された。
王都の宿プリズムに泊まっていたエドガーはレオナを捕まえた報せを聞き女だった事に一瞬驚いたが、すぐに冷静になり王城アヴァロンへ向かった。
門の前に来ると見張りをする近衛兵にエドガーは話し掛ける。
「私はキャンベルを治める伯爵のエドガーだ。急な事で悪いが急ぎ陛下にお会いしたい」
「話は伺っています。迎えの方がいらっしゃるので暫くお待ち下さい」
辺境の伯爵があっさり通されるのにも驚くが近衛兵が迎えの者を丁寧に言う事に戸惑った。
暫くして迎えに来たのは、剣を帯剣し魔導拳銃を帯銃した金髪の美女だった。
「お久しぶりです。エドガー殿」
「お久しぶりです。ミシェル様」
ミシェルは王族の女性を守るために女性だけで編成された親衛隊の元隊長であり現在はシェリアの護衛と参謀をする世界でも唯一騎士服を身に纏う女官だ。
「それではシェリア様の下へ案内します」
「お願いします」
エドガーは女王の執務室へと案内された。
執務室には、王族特有の紅い髪をしたシンフォニア一とまで言われる美女が話し合いように儲けられたソファーに座っている。彼女がこの国の女王シェリアである。
「どうぞお掛け下さい」
ミシェルにそう言われ、緊張しながらエドガーは座った。
「それでは報告をお願いします」
「無事、保護しました。男性かと思いましたら彼は女性でした。何故男装していたかは、まだ分かっておりません」
報告を受けたシェリアの顔に驚きはなかった。
やっぱり女だったんだ。これで叔父は王位を狙いづらくなったわね。男だったら殺していたけど女だったら殺す意味がないわ。だけど、このまま男装していたら困るわね。そうだ。女だという事をばらして恩を売りましょう。そうねぇ、暫くしたら奴隷商人に売って、その後商人を殺す。殺しの理由は大公の娘を誘拐した犯人が抵抗したため殺しましたって事にしましょ。
考えが纏まりシェリアは初めてエドガーに声を掛けた。
「暫く保護しなさい」
「暫くとは、どれくらいでしょうか?」
「暫くは暫くよ。その時になったら指示するわ」
「・・・・・・畏まりました」
話しが終わり部屋を出るとエドガーは深く溜息を吐いた。
アッシュと合流するか。詳しくはそれから考えよう。あぁ、胃がキリキリする。
レオナの失踪はすぐに父親である大公、ジョルジュ・レーデ・カトリーヌに伝えられた。
ジョルジュはすぐに捜索隊を出し、旧知の仲である紅い翼の社長ザックス・ホーキンスに連絡し合いに向かった。
ジョルジュがフェニックス城に来ると誘拐の報告を受けてたため、案内人がすぐに社長室に通す。
案内人は社長室の前に立つとノックをし、すぐに返事が返ってきた。
「入れ」
案内人はドアを開け待機しジョルジュが中に入ると閉めて仕事に戻った。
社長室には黒い髪にヒゲを生やした男が椅子に腰掛けていた。
「来たか。ジョルジュ」
「ああ。まだ見付からないか?」
「ああ。ステラの森はそんなに広くない、道に迷っても二日あれば森を抜けられるだろう。しかしまだ見付からない。こりゃぁ殺されたか誘拐されたな」
「犯人の目星は付いている。素性不明の案内人だ。フェリスと名乗っていたが、おそらく偽名だろう」
「エリート騎士学校の教師と生徒が気付かなかったくらいだ。犯人は少数、それも凄腕だ」
「それで、どうする?」
「うぅぅん。レオナが生きていたら一人だけ、この依頼を成功できる奴がいる」
ジョルジュの顔が希望に溢れた。
「いるのか。そいつに頼む」
その顔を見たザックスは言えなかった。
紅い翼最強の問題児、気に入らなければ依頼人だろうと殺し気に入れば敵だろうと助ける。自己目的のためなら手段は選ばない、人質だろうと殺してしまう黒い悪魔。
ガレックの事を・・・・・・
この地は十八歳の若き銀髪の伯爵エドガー・クルーゼ・キャンベルが急死した父の後を継ぎ治めている。
その日、エドガーが国境の砦から領主の館に戻るといつもはいないはずのメイドが出迎えた。
「お帰りなさいませ。エドガー様」
「ただいま。今日はどうしたんだい?」
「はい。近衛騎士様からの手紙を預かりお渡しするために残っていました」
メイドはそう言うと持っていた手紙をエドガーに渡した。
「近衛騎士から?」
近衛騎士は王都を守るエリートである中央軍の中で更にエリートである王族を守るため居城に務める近衛隊の兵士である。シンフォニア王国では近衛隊に入隊した者のみ騎士の称号と共に紅を基調とした騎士服とマントが与えられる。
騎士は一代限りの名誉貴族だがそれ故に騎士同士の結束は強く実力が高いため軍部の上層部の殆どは近衛騎士出身である。
エドガーは手紙を受け取ると自室へと行き椅子に座り手紙を読むと深い溜息を吐いた。
暫くどうするか考えているとドアがノックされ返事をする間もなく開きながら用件を伝えてきた。
「エドガー、バルセ・ルナへの工作成功したって。これで暫くは大丈夫だね」
部屋に入ってきた黒髪に紅い眼の男か女か分からない中性的な顔立ちをした人物にエドガーは呆れながら言う。
「いくら俺の護衛者だからって勝手に入ってくるな。アッシュ」
「えぇぇ、いいじゃん。僕とエドガーの仲でしょ」
「誤解を招くような事言うな。ただでさえリディアが俺とお前の仲を疑ってるんだぞ」
「リディアが?」
リディアとはエドガーの妹である。
「ああ、最近じゃリディアのせいで家中の者も疑ってる」
「でも僕、男だよ」
「半分はな」
そう言ってエドガーはアッシュを睨んだ。
エドガーとアッシュは幼馴染みで互いのことをよく理解しているが根本的なことを互いに理解していない何故ならアッシュはキャンベル一謎の人物だからだ。
エドガーが生まれてすぐ先代のキャンベル伯エルヴィンが拾ってきた赤子がアッシュである。しかもその赤子は毎日ころころと性別の変わる不思議な赤子だった。普通なら気味悪がるがエルヴィンはエドガーと同じように育てろと厳命した。それは成長しても同じだった。かといってアッシュを養子にするでもなく、女として生きることを強要しエドガーの婚約者にすることもなかった。
十八になったっらすべてを教えると二人に言ったエルヴィンだったが去年の夏バルセ・ルナとの小競り合いで運悪く流れ弾が当たり急死してしまい全ては謎のままになり今に至る。故にアッシュにつて分かる事と言えば性別を自由に変えることが出来るそれだけである。
「それでどうしたの? 嫌そうな顔をして」
「顔に出てたか」
そう言ってエドガーは持っていた手紙をアッシュに渡した。
キャンベル伯爵へ
私の叔父の息子レオナルドが国立騎士学校に在学していて近々校外学習でキャンベル領のステラの森へ行くらしいわ。最近は何かと物騒で心配だから私がいいと言うまで誰にも見付からないよう厳重に彼を保護しなさい。
S
「何これ?」
「この手紙は近衛兵が持って来たらしい」
「王宮でエドガーに命令出来るレオナルドって従弟がいる人物、一人しかいないね」
「ああ。おまけにイニシャルで勅命って事にしている」
二人の頭に浮かんだSという人物はこの国の女王シェリア・ルーシェ・ダン・エイル・シンフォニアである。そして手紙の内容とイニシャルだけを残した意味もすぐに浮かんだ。
「すごい命令だね。保護を名目に誘拐なんて」
「ああ、バレたら終わりだ。断ろうにもウチは昨年の不作で国からの援助を受けてるから断りづらいし、あの女王だ。支援を打ち切る可能性もある」
「やるしかないね」
「ああ、悪いが協力してくれ」
「うん。まずは校外学習の日を調べて、次は森の下見、最後に監禁する場所」
「保護と言え保護と」
「分かった、保護ね。保護。保護した後は女王と大公の動きを見ないとね。それとエドガー」
「何だ?」
「相手は大公の息子だ。エドガーは顔を見られたら拙いでしょ。これは僕がやる」
エドガーは言い返そうとしたが、すぐに冷静になり、俯いて言った。
「任せた」
アッシュは頷くと部屋を出て行った。
数日後、ステラの森にシンフォニア騎士学校の学生が校外学習に来た。
森の前に、黒髪の紅い眼をした美少女がいた。
「初めまして。本日、ステラの森を案内させていただく事になりました。フェリスです」
騎士学校には女性が少ない、だからフェリスに少しでも近づこうと、男達は必死にアプローチする。引率の教師までもが・・・・・・
少女のような顔をした綺麗な紅髪の少年が冷めた目でその様子を見ていた。
王族特有の紅い髪。あの子かな?
フェリスが学生の一人に尋ねる。
「彼は?」
「ああ、あの顔で男なんだ。レオナルド・レーデ・カトリーヌ。なんとカトリーヌ大公の息子さ」
「へぇ」
それからも、フェリスは男達に囲まれて歩いた。
目的地の山菜がよく採れる泉の近くでフェリスが男達から解放された。
教師は名残惜しく山菜の説明をして学生達は渋々聞いた。レオナルドだけ真面目に聞いていた。
自由時間になりフェリスがレオナルドに近づいて誰にも聞かれないように小声で尋ねた。
「どうして男の振りをしているの? お嬢さん」
レオナルドは驚いてフェリスを見る。
「二人っきりでお話ししない?」
少年改め、少女は頷いて大人しくフェリスについて行き、森の奥に向かった。
周りに誰もいない事を確認して少女は尋ねた。
「どうして女だと判った」
「僕は嘘を見破るのが得意なんだ」
「説明になってない」
「説明しようがないからね」
少女は嘆息をして言った。
「もう良い。それより、この事は黙っていてくれ」
フェリスは答えない。黙って歩き、太い切り株の前に来た。
切り株には不自然に置かれた剣が二振り置いてあり、フェリスはそれを取ると剣を一振り抜いた。
「黙っててもいいけど、その代わり僕に付いて来てもらえる」
「私を誘拐するって事は盗賊じゃないな。何処の間者だ?」
少女は剣を抜きフェリスを睨む。それを見てフェリスは嘆息する。
「かったる」
そう言うと少女の前にフェリスの姿はなく、少女の剣は鍔から先がなかった。そして背後から少女の肩に剣が置かれた。
「断れば学生達を皆殺しにする」
あまりの実力の差に恐怖し、少女は震えながら言った。
「分かった」
「本当の名前は何?」
「レオナ・レーデ・カトリーヌ」
「それじゃあレオナ、付いて来て」
レオナは大人しく付いて行った。暫く歩くと車があった。
「これに乗って」
言われるまま車に乗ると、中で目隠しをされる。
「な、何を」
「目隠しだけだよ。大人しくしてたら何もしない」
不安はあったがレオナは従った。
フェリスは運転手に言う。
「僕の言ったとおりに目的地に行ってね」
「はぁ。しかし着くのが遅くなりますよ」
「構わないよ。こうする事で、彼女に目的地を悟らせないからね」
「なるほど。解りました」
「理解が早くて助かるよ」
こうしてカトリーヌ大公の娘は誘拐された。
王都の宿プリズムに泊まっていたエドガーはレオナを捕まえた報せを聞き女だった事に一瞬驚いたが、すぐに冷静になり王城アヴァロンへ向かった。
門の前に来ると見張りをする近衛兵にエドガーは話し掛ける。
「私はキャンベルを治める伯爵のエドガーだ。急な事で悪いが急ぎ陛下にお会いしたい」
「話は伺っています。迎えの方がいらっしゃるので暫くお待ち下さい」
辺境の伯爵があっさり通されるのにも驚くが近衛兵が迎えの者を丁寧に言う事に戸惑った。
暫くして迎えに来たのは、剣を帯剣し魔導拳銃を帯銃した金髪の美女だった。
「お久しぶりです。エドガー殿」
「お久しぶりです。ミシェル様」
ミシェルは王族の女性を守るために女性だけで編成された親衛隊の元隊長であり現在はシェリアの護衛と参謀をする世界でも唯一騎士服を身に纏う女官だ。
「それではシェリア様の下へ案内します」
「お願いします」
エドガーは女王の執務室へと案内された。
執務室には、王族特有の紅い髪をしたシンフォニア一とまで言われる美女が話し合いように儲けられたソファーに座っている。彼女がこの国の女王シェリアである。
「どうぞお掛け下さい」
ミシェルにそう言われ、緊張しながらエドガーは座った。
「それでは報告をお願いします」
「無事、保護しました。男性かと思いましたら彼は女性でした。何故男装していたかは、まだ分かっておりません」
報告を受けたシェリアの顔に驚きはなかった。
やっぱり女だったんだ。これで叔父は王位を狙いづらくなったわね。男だったら殺していたけど女だったら殺す意味がないわ。だけど、このまま男装していたら困るわね。そうだ。女だという事をばらして恩を売りましょう。そうねぇ、暫くしたら奴隷商人に売って、その後商人を殺す。殺しの理由は大公の娘を誘拐した犯人が抵抗したため殺しましたって事にしましょ。
考えが纏まりシェリアは初めてエドガーに声を掛けた。
「暫く保護しなさい」
「暫くとは、どれくらいでしょうか?」
「暫くは暫くよ。その時になったら指示するわ」
「・・・・・・畏まりました」
話しが終わり部屋を出るとエドガーは深く溜息を吐いた。
アッシュと合流するか。詳しくはそれから考えよう。あぁ、胃がキリキリする。
レオナの失踪はすぐに父親である大公、ジョルジュ・レーデ・カトリーヌに伝えられた。
ジョルジュはすぐに捜索隊を出し、旧知の仲である紅い翼の社長ザックス・ホーキンスに連絡し合いに向かった。
ジョルジュがフェニックス城に来ると誘拐の報告を受けてたため、案内人がすぐに社長室に通す。
案内人は社長室の前に立つとノックをし、すぐに返事が返ってきた。
「入れ」
案内人はドアを開け待機しジョルジュが中に入ると閉めて仕事に戻った。
社長室には黒い髪にヒゲを生やした男が椅子に腰掛けていた。
「来たか。ジョルジュ」
「ああ。まだ見付からないか?」
「ああ。ステラの森はそんなに広くない、道に迷っても二日あれば森を抜けられるだろう。しかしまだ見付からない。こりゃぁ殺されたか誘拐されたな」
「犯人の目星は付いている。素性不明の案内人だ。フェリスと名乗っていたが、おそらく偽名だろう」
「エリート騎士学校の教師と生徒が気付かなかったくらいだ。犯人は少数、それも凄腕だ」
「それで、どうする?」
「うぅぅん。レオナが生きていたら一人だけ、この依頼を成功できる奴がいる」
ジョルジュの顔が希望に溢れた。
「いるのか。そいつに頼む」
その顔を見たザックスは言えなかった。
紅い翼最強の問題児、気に入らなければ依頼人だろうと殺し気に入れば敵だろうと助ける。自己目的のためなら手段は選ばない、人質だろうと殺してしまう黒い悪魔。
ガレックの事を・・・・・・
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
異世界召喚は7回目…って、いい加減にしろよ‼︎
アノマロカリス
ファンタジー
『おぉ、勇者達よ! 良くぞ来てくれた‼︎』
見知らぬ城の中、床には魔法陣、王族の服装は中世の時代を感じさせる衣装…
俺こと不知火 朔夜(しらぬい さくや)は、クラスメートの4人と一緒に異世界に召喚された。
突然の事で戸惑うクラスメート達…
だが俺はうんざりした顔で深い溜息を吐いた。
「またか…」
王族達の話では、定番中の定番の魔王が世界を支配しているから倒してくれという話だ。
そして儀式により…イケメンの正義は【勇者】を、ギャルっぽい美紅は【聖戦士】を、クラス委員長の真美は【聖女】を、秀才の悠斗は【賢者】になった。
そして俺はというと…?
『おぉ、伝承にある通り…異世界から召喚された者には、素晴らしい加護が与えられた!』
「それよりも不知火君は何を得たんだ?」
イケメンの正義は爽やかな笑顔で聞いてきた。
俺は儀式の札を見ると、【アンノウン】と書かれていた。
その場にいた者達は、俺の加護を見ると…
「正体不明で気味が悪い」とか、「得体が知れない」とか好き放題言っていた。
『ふむ…朔夜殿だけ分からずじまいか。だが、異世界から来た者達よ、期待しておるぞ!』
王族も前の4人が上位のジョブを引いた物だから、俺の事はどうでも良いらしい。
まぁ、その方が気楽で良い。
そして正義は、リーダーとして皆に言った。
「魔王を倒して元の世界に帰ろう!」
正義の言葉に3人は頷いたが、俺は正義に言った。
「魔王を倒すという志は立派だが、まずは魔物と戦って勝利をしてから言え!」
「僕達には素晴らしい加護の恩恵があるから…」
「肩書きがどんなに立派でも、魔物を前にしたら思う様には動けないんだ。現実を知れ!」
「何よ偉そうに…アンタだったら出来るというの?」
「良いか…殴り合いの喧嘩もしたことがない奴が、いきなり魔物に勝てる訳が無いんだ。お前達は、ゲーム感覚でいるみたいだが現実はそんなに甘く無いぞ!」
「ずいぶん知ったような口を聞くね。不知火は経験があるのか?」
「あるよ、異世界召喚は今回が初めてでは無いからな…」
俺は右手を上げると、頭上から光に照らされて黄金の甲冑と二振の聖剣を手にした。
「その…鎧と剣は?」
「これが証拠だ。この鎧と剣は、今迄の世界を救った報酬として貰った。」
「今迄って…今回が2回目では無いのか?」
「今回で7回目だ!マジでいい加減にして欲しいよ。」
俺はうんざりしながら答えた。
そう…今回の異世界召喚で7回目なのだ。
いずれの世界も救って来た。
そして今度の世界は…?
6月22日
HOTランキングで6位になりました!
6月23日
HOTランキングで4位になりました!
昼過ぎには3位になっていました.°(ಗдಗ。)°.
6月24日
HOTランキングで2位になりました!
皆様、応援有り難う御座いますm(_ _)m
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
キャンピングカーで、異世界キャンプ旅
風来坊
ファンタジー
東京の夜を走り続けるタクシードライバー、清水翔。
ハンドル捌きと道の知識には自信があり、理不尽な客にも笑顔で対応できる――不器用ながらも芯の強い男だ。
そんな翔が、偶然立ち寄った銀座の宝くじ売り場で一人の女性・松田忍と出会う。
彼女との再会をきっかけに、人生は思いもよらぬ方向へ動き出した。
宝くじの大当たり、そして「夢を追う旅」という衝動。
二人は豪華にバスコンをカスタムしたキャンピングカー「ブレイザー」を相棒に、日本一周を計画する。
――だが、最初のキャンプの日。
雷の直撃が二人を異世界へと連れ去った。
二つの月が照らす森で、翔は持ち前の度胸と行動力を武器に、忍を守りながら立ち向かう。
魔力で進化したブレイザー、忍の「鑑定スキル」、そして翔の判断力と腕力。
全てを駆使して、この未知の世界を切り開いていく。
焚き火の炎の向こうに広がるのは、戦いと冒険、そして新しい絆。
タクシードライバーから異世界の冒険者へ――翔と忍のキャンピングカー旅が、今始まる。
エレンディア王国記
火燈スズ
ファンタジー
不慮の事故で命を落とした小学校教師・大河は、
「選ばれた魂」として、奇妙な小部屋で目を覚ます。
導かれるように辿り着いたのは、
魔法と貴族が支配する、どこか現実とは異なる世界。
王家の十八男として生まれ、誰からも期待されず辺境送り――
だが、彼は諦めない。かつての教え子たちに向けて語った言葉を胸に。
「なんとかなるさ。生きてればな」
手にしたのは、心を視る目と、なかなか花開かぬ“器”。
教師として、王子として、そして何者かとして。
これは、“教える者”が世界を変えていく物語。
世の中は意外と魔術で何とかなる
ものまねの実
ファンタジー
新しい人生が唐突に始まった男が一人。目覚めた場所は人のいない森の中の廃村。生きるのに精一杯で、大層な目標もない。しかしある日の出会いから物語は動き出す。
神様の土下座・謝罪もない、スキル特典もレベル制もない、転生トラックもそれほど走ってない。突然の転生に戸惑うも、前世での経験があるおかげで図太く生きられる。生きるのに『隠してたけど実は最強』も『パーティから追放されたから復讐する』とかの設定も必要ない。人はただ明日を目指して歩くだけで十分なんだ。
『王道とは歩むものではなく、その隣にある少しずれた道を歩くためのガイドにするくらいが丁度いい』
平凡な生き方をしているつもりが、結局騒ぎを起こしてしまう男の冒険譚。困ったときの魔術頼み!大丈夫、俺上手に魔術使えますから。※主人公は結構ズルをします。正々堂々がお好きな方はご注意ください。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる