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第二章 戦場に舞う天使の涙
第六話 知らない人についていくとろくな目に合わない
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ガレックを抱きかかえたまま座り動かないリッカを精霊以外の周りが訝しむ中リッカは突然目を開いて言う。
「うん! 充電完了! それで、今ってどういう状況?」
リッカの問いに早樹が答える。
「いつものように犯らせろって暴れようとするから私達が止めた所よ」
「ああ、いつもの病気ね」
まったく、バカ達(紅い翼の傭兵達)のせいで性格がだいぶ歪んでしまったわ。まぁ、記憶が戻れば以前の記憶と統合して・・・・・・ワイルドになるかも! そして私も遂に純情を捧げて・・・キャァァア、何言ってるのバカ! 私のバカ!
いきなり顔を赤くしてニヤけるリッカに周りは訝しみ精霊達はまたかと呆れる。
リッカ、ガレイクであるレンジの第三使徒リリカは長年レンジに会えなかった事ですっかり妄想癖になってしまった。
これ以上悪化しては拙いので水の精霊である雫が冷え切った両手でリッカの頬を挟む。
「冷たッ! 何すんのよ雫!?」
「エロい妄想禁止」
「そんな事考えてないわよ!?」
リッカは精霊達の疑いの眼差しにプイッと目を背け、たまたま目があったトトリに話し掛ける。
「トトリ、もう御飯出来そう?」
トトリが姉妹を見て姉妹は首を振る。
「いえ、まだです」
「簡単なのでいいわよ。野営なんだし」
そう言ってリッカは抱きかかえていたガレックを早樹に預けると調理中の姉妹に近付き切られていた食材を鍋にぶち込んだ。
「「「ちょっ!?」」」
「美味けりゃ何でもいいのよ。腹に入ればみんな一緒よ」
そう言ってリッカは少しだけ調味料を入れ味付けする。
「アク取りはキッチリね。味は薄味がいいわ。ガッ君薄味が好きだから。じゃあ後よろしく」
そう言ってガレックの下に戻るリッカの後ろ姿を見ながらアリスは呟く。
「勝手な人」
トトリは何も言わず苦笑いを浮かべるしかなかった。
ガレックの下に戻ったリッカは早樹に言う。
「それじゃあ代わりましょう」
「嫌です」
ニコニコ笑顔を浮かべて言う早樹にリッカは念話で話す。
『何でよ』
『私達の本来の主はレンジです。今はレンジの命で貴女と契約してるから精神世界に行けなくてレンジに会えませんから、せめて器であるこの子に触れていたいんです』
『じゃあ次は私だな』
『何言ってるのよ。私よ』
『いや私だろ』
他の精霊達も代われと騒ぎ出し険悪な雰囲気からガレックは目を覚まし現実逃避するように眼を閉じた。
「何寝てんのよ」
リッカはしゃがんでそう言いガレックにデコピンをする。
「イテッ、何すんだよ」
「おはよ。それより私達に言う事があるんじゃない? 勝手に国を出て、どんなに心配したと思ってるのよ」
「仕方ねぇだろ。あのままだと結婚させられそうだったし」
「「「「「結婚!?」」」」」
リッカと精霊達の声がハモり、あまりの剣幕に気圧されガレックは国を出た経緯を話す。
説明を聞いたリッカは呟く。
「潰すか」
「おいおい、何を潰す気だ? これくらいの事で止めろよ」
「これくらい?」
リッカはガレックを睨み睨まれたガレックは目を背ける。
これくらいですって? 貴方は本当はアルバ帝国の建国皇、断罪の戦神、私が仕える神にして夫、貴方が封じられて約千年、千年も耐えたのにポッとでのよく知りもしない女に奪われてたまるもんですか!
ちなみにレイジとリリカは婚約はしたが結婚はしていない。婚約の誓いで口付けを交わしただけである。
リッカと精霊が醸し出す険悪な雰囲気に晒されガレックは思う。
何で俺こんな雰囲気の真っ只中にいんの? つうかこいつら何なの? いつもいつもいつもいつも! そりゃあ美人だし、傍にいるだけで嬉しいよ。でもね。こいつら親だぜ。さすがに育ての親とは犯りたくねぇし・・・何で犯りたくねぇんだ? 据え膳だし喰っちまった方がいいんじゃねぇか。
ガレックの考えをレイジが否定する。
それは止めろ。まだ早い。
これまで何度もしたレイジの命令をガレックは無意識に受け入れる。
でも育ての親だし、さすがに拙いか。
ガレックは険悪な雰囲気の中口を閉じ耐える事を選んだ。
それから暫くして食事が出来アリスが言う。
「みんな出来たわよ」
アリスの声を聞きみんな集まり料理を見てガレックが言う。
「パンに鍋って」
「飯盒なんて使った事ないわよ」
「旅してたんなら使えるだろ」
ガレックの言葉にアリスは目を逸らしガレックがマリアを見るとマリアも目を逸らした。
「ちょっと待て、お前等どんな旅したんだ?」
「・・・・・・列車の旅」
「優雅だな! おいっ! それで、何でお前等捕まってんだよ!」
マリアとアリスは嫌そうにぽつりぽつりと話し始めた。
姉妹はアルバ帝国ジークタウンから列車に乗り海岸線に沿いに旅をしていた。
ずっと列車の中だと飽きるのでたまに列車を降り地方の特産品や珍味を食べる修行中の身でありながらガレックが言うように優雅な旅をしていた。
そんな姉妹が捕まる切っ掛けとなったのが今回の戦争であった。
列車の中で配られた新聞で姉妹は開戦を知りアリスがマリアに言う。
「クラフトの次ってダルマスカでしょ。どうするの?」
「さすがに行けないでしょ。無理に行く必要もないし」
「じゃあ、ここで引き返す?」
「シンフォニアまで行ってそこで引き返しましょう」
「東の三大国の一つシンフォニアね」
「ええ。賢者の末裔として行ってみたかったしね」
アルバ人にとってシンフォニア、特に巨城アヴァロンは特別である。何故ならアヴァロンを築城させたのは建国皇であり建国皇はアヴァロンで倒されたからだ。
「じゃあ駅に着いたらシンフォニア行きを探さないと」
「うん」
暫くして列車は駅に着き姉妹は迷いながらも無事シンフォニア行きを見付ける。
「じゃあ今日と明日はクラフトで過ごすとして三日後の昼シンフォニアに行こっか」
「賛成。じゃあさっさと切符買ってホテル見付けないと」
姉妹はすぐに切符を買い駅から近いホテルの部屋を借りる。ちなみにそのホテルはクラフトで一、二を争う高級ホテルだった。
そして翌日、運命の日。
それは楽しい一日のはずだった。
朝から観光地を巡り夕方になりホテルへ戻ろうとする帰り道、姉妹の目の前でお婆さんが引ったくりにあった。
姉妹はすぐに魔術を使い見事引ったくりを捕らえお婆さんに取られた物を返してあげた。それを見ていた一人の男が姉妹に声をかける。
「すいません」
「何ですか?」
「私新聞記者のダニーと申しますが、先程は見事でした。記事にしたいので取材よろしいですか?」
姉妹は眼を合わせてアリスが言う。
「えっと、どうするお姉ちゃん?」
「そうね、少しだけなら」
「ありがとうございます。ではこちらへどうぞ」
そう言ってダニーは近くのカフェへと案内する。
カフェで姉妹は紅茶をダニーはコーヒーを飲みながら取材をする。
「では改めまして私は新聞記者のダニー・ハウスと申します」
「初めまして私はマリア・イヴ・スカーレット。こちらは妹のアリスです」
「初めましてアリス・イヴ・スカーレットです」
「イヴ?」
「はい。私達は賢者イヴの末裔です」
「へぇ、賢者様の末裔。しかし我が国に賢者様の末裔がいるとは聞いた事がないのですが?」
「私達はアルバ帝国出身でクラフトには旅行で来てるんです」
本当は音楽の修行で見聞を広めるために来てるのだが説明がめんどくさかったのでマリアは旅行と言った。
「旅行ですか。羨ましいですね。旅行は二人だけですか?」
「はい」
「なるほど。なるほど」
それから当たり障りのない話しをして暗くなりダニーが姉妹に提案する。
「暗くなった事だし、よかったらホテルまで送りましょうか? 近くに車止めてるんですよ」
「それはちょっと」
「大丈夫ですよ。通り道ですし」
「ハァ、それならお願いします」
そう言って姉妹はダニーに付いて行き少し暗い場所にあるダニーの車の前に着きダニーは車の鍵を開けると後部座席のドアを開ける。
「さあ、どうぞ」
アリスが先に入り続いてマリアが入ろうとするとダニーはマリアの肩に手を置いて引き止め隠し持っていたナイフをマリアの首筋に当てる。
「騒ぐな。おい、お前等もういいぞ」
ダニーの声を聞き近くにいた男達が集まる。
「この女達は大切な商品だ。傷付けるなよ」
こうして姉妹は捕まり約一月後ガレックの奴隷となった。
話しを聞きガレックが姉妹に言う。
「有り得ないくらいバカだな」
「分かってるわよ!」
「ちょっと話したくらいで信用するか普通」
姉妹は涙目でガレックを睨む。
「まぁ、そのおかげで俺様に出会えたんだ。そこはラッキーだったな」
「何処がよ」
「ふん。まぁ、やった事がないのは分かった。今度飯盒の使い方教えてやる」
そう言ってガレックは鍋から具を取る。
雫はパンを食べながら言う。
「白い御飯が食べたかった」
「本当だね。いつもパンだったし」
「鍋にはやっぱり御飯よね」
「まったくだ」
風香、早樹の言葉にガレックが続きアリスが怒って言う。
「そんなに言うなら食うな!」
「まあまあ落ち着きなさい。それより、そろそろお互い自己紹介しましょうか。私の名前はリッカ・ベルカントよ。それでこの精霊達は私と契約してる精霊」
「風の精霊、風香」
「水の精霊、雫」
「火の精霊、夏希」
「土の精霊、早樹です」
早樹は次どうぞっとガレックを見るからガレックは仕方なく言う。
「シンフォニアの錬金術師ガレックだ。そんで、金髪がマリア銀髪がアリスだ」
アリスは扱いが雑すぎるので文句言おうと思ったが今は止めとこうと考え不機嫌そうにマリアはいつもと同じように返事をする。
「「よろしくお願いします」」
ガレックの視線を受けトトリが言う。
「同じくシンフォニアの錬金術師トトリ・ホーキンスです。この子はシャーリー」
「よろしくれす」
トトリの視線を受けアリーシャが答える。
「ダルマスカ王国第二王女アリーシャ・キース・ダルマスカです。こちらは護衛隊長のルドルフと親友の宮廷医師レヴィアです」
自己紹介が終わった所でリッカが言う。
「さて、今後の方針だけど、王女様、貴女をアルバ帝国の玄関口ジークタウンに送ろうと思うのだけどいいかしら?」
「いいも何も私たちの目的地がアルバ帝国ですから、こちらとしたら願ったり叶ったりなのですが・・・何故ですか?」
「詳しくは風香に聞いて、この子の頼みだから」
リッカは精霊達に念話する。
『レイジ様からの命で私の正体は極秘って事になったわ。だから風香、よろしくね』
『了解』
「じゃあ密約の話しをする前に、アリーシャ達はどうしてアルバ帝国を目指すの?」
「私はエルフです。ですから同胞が多くいるというアルバ帝国に向かおうかと・・・」
「つまり、密約を知らないって事ね。まぁ、密約は失敗したし、もう長い年月を経たから彼女もどうでもいいと考えてるでしょ。成功したら儲けってくらいかな」
「彼女とは?」
「アルバ帝国の大軍師レティシア・ミュゼ・クロノス」
「何故ここで彼女の名前が出るのですか」
「一つ不思議に思った事はないかい? 王とは神から任命された人を統べる者、どの国も王がいるなら国教がある。じゃあさ、ダルマスカの国教って何?」
アリーシャ達は何も言えなかった。何故ならダルマスカには国教がないからだ。
「国教もないのに王を名乗る。君達の建国王ジャクソン・キース・ダルマスカは誰に任命されたのか。答えはアルバ帝国の大軍師、時と叡智の女神レティシア・ミュゼ・クロノス。君達の国旗に描かれた砂時計は彼女を表している。では何故ジャクソンがレティシアから任命されるか。その答えはジャクソンの父、そして祖父に理由がある。ジャクソンの祖父は妖精王ジークハルト、そして父はアルバ帝国建国戦争の全ての責任を背負ったジークハルトの長男ジェームス。ジャクソンは帝国じゃ罪人の息子って事で命を狙われてたからね。適当な理由でレティシアが国外追放したんだ。多大な支援金を持たして」
「支援金?」
「アルバ帝国はミルケディアから撤退したとはいえ繋がりは持ってたかったからね。そこで直弟子であるジャクソンを使ったって訳」
「直弟子!?」
「そりゃそうだよ。ジャクソンを匿ってたのはレティシアだったんだから。それで、レティシアとジャクソンが交わした密約が国を建て来たるべき時に協力せよ。将来ミルケディア進軍の時の協力要請だね」
「どうして風香様はそんなに詳しいのですか?」
「実は昔ジャクソンと契約してたんだよ。だからジャクソンの末裔のピンチに協力したって訳」
「そうだったのですか!?」
「アルバ帝国の古株は私の事知ってるから私が話し付けるよ」
「お願いします」
「そう言うわけでガレック、彼女をアルバ帝国に送るから手伝ってね」
ガレックは舌打ちしていう。
「仕方ねぇ。手伝ってやるよ」
こうしてガレック達の旅の目的地はアルバ帝国ジークタウンなった。
「うん! 充電完了! それで、今ってどういう状況?」
リッカの問いに早樹が答える。
「いつものように犯らせろって暴れようとするから私達が止めた所よ」
「ああ、いつもの病気ね」
まったく、バカ達(紅い翼の傭兵達)のせいで性格がだいぶ歪んでしまったわ。まぁ、記憶が戻れば以前の記憶と統合して・・・・・・ワイルドになるかも! そして私も遂に純情を捧げて・・・キャァァア、何言ってるのバカ! 私のバカ!
いきなり顔を赤くしてニヤけるリッカに周りは訝しみ精霊達はまたかと呆れる。
リッカ、ガレイクであるレンジの第三使徒リリカは長年レンジに会えなかった事ですっかり妄想癖になってしまった。
これ以上悪化しては拙いので水の精霊である雫が冷え切った両手でリッカの頬を挟む。
「冷たッ! 何すんのよ雫!?」
「エロい妄想禁止」
「そんな事考えてないわよ!?」
リッカは精霊達の疑いの眼差しにプイッと目を背け、たまたま目があったトトリに話し掛ける。
「トトリ、もう御飯出来そう?」
トトリが姉妹を見て姉妹は首を振る。
「いえ、まだです」
「簡単なのでいいわよ。野営なんだし」
そう言ってリッカは抱きかかえていたガレックを早樹に預けると調理中の姉妹に近付き切られていた食材を鍋にぶち込んだ。
「「「ちょっ!?」」」
「美味けりゃ何でもいいのよ。腹に入ればみんな一緒よ」
そう言ってリッカは少しだけ調味料を入れ味付けする。
「アク取りはキッチリね。味は薄味がいいわ。ガッ君薄味が好きだから。じゃあ後よろしく」
そう言ってガレックの下に戻るリッカの後ろ姿を見ながらアリスは呟く。
「勝手な人」
トトリは何も言わず苦笑いを浮かべるしかなかった。
ガレックの下に戻ったリッカは早樹に言う。
「それじゃあ代わりましょう」
「嫌です」
ニコニコ笑顔を浮かべて言う早樹にリッカは念話で話す。
『何でよ』
『私達の本来の主はレンジです。今はレンジの命で貴女と契約してるから精神世界に行けなくてレンジに会えませんから、せめて器であるこの子に触れていたいんです』
『じゃあ次は私だな』
『何言ってるのよ。私よ』
『いや私だろ』
他の精霊達も代われと騒ぎ出し険悪な雰囲気からガレックは目を覚まし現実逃避するように眼を閉じた。
「何寝てんのよ」
リッカはしゃがんでそう言いガレックにデコピンをする。
「イテッ、何すんだよ」
「おはよ。それより私達に言う事があるんじゃない? 勝手に国を出て、どんなに心配したと思ってるのよ」
「仕方ねぇだろ。あのままだと結婚させられそうだったし」
「「「「「結婚!?」」」」」
リッカと精霊達の声がハモり、あまりの剣幕に気圧されガレックは国を出た経緯を話す。
説明を聞いたリッカは呟く。
「潰すか」
「おいおい、何を潰す気だ? これくらいの事で止めろよ」
「これくらい?」
リッカはガレックを睨み睨まれたガレックは目を背ける。
これくらいですって? 貴方は本当はアルバ帝国の建国皇、断罪の戦神、私が仕える神にして夫、貴方が封じられて約千年、千年も耐えたのにポッとでのよく知りもしない女に奪われてたまるもんですか!
ちなみにレイジとリリカは婚約はしたが結婚はしていない。婚約の誓いで口付けを交わしただけである。
リッカと精霊が醸し出す険悪な雰囲気に晒されガレックは思う。
何で俺こんな雰囲気の真っ只中にいんの? つうかこいつら何なの? いつもいつもいつもいつも! そりゃあ美人だし、傍にいるだけで嬉しいよ。でもね。こいつら親だぜ。さすがに育ての親とは犯りたくねぇし・・・何で犯りたくねぇんだ? 据え膳だし喰っちまった方がいいんじゃねぇか。
ガレックの考えをレイジが否定する。
それは止めろ。まだ早い。
これまで何度もしたレイジの命令をガレックは無意識に受け入れる。
でも育ての親だし、さすがに拙いか。
ガレックは険悪な雰囲気の中口を閉じ耐える事を選んだ。
それから暫くして食事が出来アリスが言う。
「みんな出来たわよ」
アリスの声を聞きみんな集まり料理を見てガレックが言う。
「パンに鍋って」
「飯盒なんて使った事ないわよ」
「旅してたんなら使えるだろ」
ガレックの言葉にアリスは目を逸らしガレックがマリアを見るとマリアも目を逸らした。
「ちょっと待て、お前等どんな旅したんだ?」
「・・・・・・列車の旅」
「優雅だな! おいっ! それで、何でお前等捕まってんだよ!」
マリアとアリスは嫌そうにぽつりぽつりと話し始めた。
姉妹はアルバ帝国ジークタウンから列車に乗り海岸線に沿いに旅をしていた。
ずっと列車の中だと飽きるのでたまに列車を降り地方の特産品や珍味を食べる修行中の身でありながらガレックが言うように優雅な旅をしていた。
そんな姉妹が捕まる切っ掛けとなったのが今回の戦争であった。
列車の中で配られた新聞で姉妹は開戦を知りアリスがマリアに言う。
「クラフトの次ってダルマスカでしょ。どうするの?」
「さすがに行けないでしょ。無理に行く必要もないし」
「じゃあ、ここで引き返す?」
「シンフォニアまで行ってそこで引き返しましょう」
「東の三大国の一つシンフォニアね」
「ええ。賢者の末裔として行ってみたかったしね」
アルバ人にとってシンフォニア、特に巨城アヴァロンは特別である。何故ならアヴァロンを築城させたのは建国皇であり建国皇はアヴァロンで倒されたからだ。
「じゃあ駅に着いたらシンフォニア行きを探さないと」
「うん」
暫くして列車は駅に着き姉妹は迷いながらも無事シンフォニア行きを見付ける。
「じゃあ今日と明日はクラフトで過ごすとして三日後の昼シンフォニアに行こっか」
「賛成。じゃあさっさと切符買ってホテル見付けないと」
姉妹はすぐに切符を買い駅から近いホテルの部屋を借りる。ちなみにそのホテルはクラフトで一、二を争う高級ホテルだった。
そして翌日、運命の日。
それは楽しい一日のはずだった。
朝から観光地を巡り夕方になりホテルへ戻ろうとする帰り道、姉妹の目の前でお婆さんが引ったくりにあった。
姉妹はすぐに魔術を使い見事引ったくりを捕らえお婆さんに取られた物を返してあげた。それを見ていた一人の男が姉妹に声をかける。
「すいません」
「何ですか?」
「私新聞記者のダニーと申しますが、先程は見事でした。記事にしたいので取材よろしいですか?」
姉妹は眼を合わせてアリスが言う。
「えっと、どうするお姉ちゃん?」
「そうね、少しだけなら」
「ありがとうございます。ではこちらへどうぞ」
そう言ってダニーは近くのカフェへと案内する。
カフェで姉妹は紅茶をダニーはコーヒーを飲みながら取材をする。
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「初めまして私はマリア・イヴ・スカーレット。こちらは妹のアリスです」
「初めましてアリス・イヴ・スカーレットです」
「イヴ?」
「はい。私達は賢者イヴの末裔です」
「へぇ、賢者様の末裔。しかし我が国に賢者様の末裔がいるとは聞いた事がないのですが?」
「私達はアルバ帝国出身でクラフトには旅行で来てるんです」
本当は音楽の修行で見聞を広めるために来てるのだが説明がめんどくさかったのでマリアは旅行と言った。
「旅行ですか。羨ましいですね。旅行は二人だけですか?」
「はい」
「なるほど。なるほど」
それから当たり障りのない話しをして暗くなりダニーが姉妹に提案する。
「暗くなった事だし、よかったらホテルまで送りましょうか? 近くに車止めてるんですよ」
「それはちょっと」
「大丈夫ですよ。通り道ですし」
「ハァ、それならお願いします」
そう言って姉妹はダニーに付いて行き少し暗い場所にあるダニーの車の前に着きダニーは車の鍵を開けると後部座席のドアを開ける。
「さあ、どうぞ」
アリスが先に入り続いてマリアが入ろうとするとダニーはマリアの肩に手を置いて引き止め隠し持っていたナイフをマリアの首筋に当てる。
「騒ぐな。おい、お前等もういいぞ」
ダニーの声を聞き近くにいた男達が集まる。
「この女達は大切な商品だ。傷付けるなよ」
こうして姉妹は捕まり約一月後ガレックの奴隷となった。
話しを聞きガレックが姉妹に言う。
「有り得ないくらいバカだな」
「分かってるわよ!」
「ちょっと話したくらいで信用するか普通」
姉妹は涙目でガレックを睨む。
「まぁ、そのおかげで俺様に出会えたんだ。そこはラッキーだったな」
「何処がよ」
「ふん。まぁ、やった事がないのは分かった。今度飯盒の使い方教えてやる」
そう言ってガレックは鍋から具を取る。
雫はパンを食べながら言う。
「白い御飯が食べたかった」
「本当だね。いつもパンだったし」
「鍋にはやっぱり御飯よね」
「まったくだ」
風香、早樹の言葉にガレックが続きアリスが怒って言う。
「そんなに言うなら食うな!」
「まあまあ落ち着きなさい。それより、そろそろお互い自己紹介しましょうか。私の名前はリッカ・ベルカントよ。それでこの精霊達は私と契約してる精霊」
「風の精霊、風香」
「水の精霊、雫」
「火の精霊、夏希」
「土の精霊、早樹です」
早樹は次どうぞっとガレックを見るからガレックは仕方なく言う。
「シンフォニアの錬金術師ガレックだ。そんで、金髪がマリア銀髪がアリスだ」
アリスは扱いが雑すぎるので文句言おうと思ったが今は止めとこうと考え不機嫌そうにマリアはいつもと同じように返事をする。
「「よろしくお願いします」」
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「さて、今後の方針だけど、王女様、貴女をアルバ帝国の玄関口ジークタウンに送ろうと思うのだけどいいかしら?」
「いいも何も私たちの目的地がアルバ帝国ですから、こちらとしたら願ったり叶ったりなのですが・・・何故ですか?」
「詳しくは風香に聞いて、この子の頼みだから」
リッカは精霊達に念話する。
『レイジ様からの命で私の正体は極秘って事になったわ。だから風香、よろしくね』
『了解』
「じゃあ密約の話しをする前に、アリーシャ達はどうしてアルバ帝国を目指すの?」
「私はエルフです。ですから同胞が多くいるというアルバ帝国に向かおうかと・・・」
「つまり、密約を知らないって事ね。まぁ、密約は失敗したし、もう長い年月を経たから彼女もどうでもいいと考えてるでしょ。成功したら儲けってくらいかな」
「彼女とは?」
「アルバ帝国の大軍師レティシア・ミュゼ・クロノス」
「何故ここで彼女の名前が出るのですか」
「一つ不思議に思った事はないかい? 王とは神から任命された人を統べる者、どの国も王がいるなら国教がある。じゃあさ、ダルマスカの国教って何?」
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「そりゃそうだよ。ジャクソンを匿ってたのはレティシアだったんだから。それで、レティシアとジャクソンが交わした密約が国を建て来たるべき時に協力せよ。将来ミルケディア進軍の時の協力要請だね」
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「実は昔ジャクソンと契約してたんだよ。だからジャクソンの末裔のピンチに協力したって訳」
「そうだったのですか!?」
「アルバ帝国の古株は私の事知ってるから私が話し付けるよ」
「お願いします」
「そう言うわけでガレック、彼女をアルバ帝国に送るから手伝ってね」
ガレックは舌打ちしていう。
「仕方ねぇ。手伝ってやるよ」
こうしてガレック達の旅の目的地はアルバ帝国ジークタウンなった。
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