LOVE CHILD

Riu ⊿

文字の大きさ
4 / 5

お母さんが柏木だったころ

しおりを挟む
―39年前柏木家―

「まぁかわいらしい」
「修次さんにそっくりねぇ」
「鼻筋が通って、きっとキレイな顔になるよこりゃぁ」

柏木家に長男の樹が誕生した。

「梢ちゃん、弟ですよ~」
「まだわかりませんよ~」
「2才差なんでしたっけ?」
「はい。梢は今年で2才になります。」


温かい家庭。そんな幸せはいつまでも続かず、
僅か長男樹の誕生から四ヶ月で二人の親夫婦は離婚をした。


―20年後京花大学―

「もしもし?あ、お母さん?うんうんわかった。その日は空けとく。ん、はーいじゃーねー」
「何電話?」
「あっうん。お母さんからなんか来週空けとけってさ、実家の家売り払うっぽくて」
「ふーん」
「あっ、話途中だったよね。なんだったっけ?」
「あーそうそう、今日新しいメンバー来るっぽくて」
「失礼します」
「あっ今来た彼なんだけど下橋樹くん」
「よろしくお願いします」
「もっとゆるくいこーよ」
「はい」

今入っているサークルは人数の少ない天文学部で、仲良くやらせてもらっている。
つい一週間前に二股欠けられていた彼氏に捨てられて、今も少し気分はブルーだ。

「こーずえ、今日樹くんの歓迎会来るよね?」
「え?あ、うん。行く行く」
「ってゆーかさ」
親友の知美が声を潜めて囁く。
「樹くんかっこよくない?イケメンだよね?私リアルイケメン初めてなんだけど!?」
「リアルイケメンて・・・」
「だって何気あんたも去年の準ミスでしょ!?」
「いや、それとこれ関係ないし」
「いやいやいや、こんな空見上げてるだけの地味部に華二つてすごくない?」
「ゆっちゃったね(地味部って)」
「いや事実だし」
「でも駆け巡るロマンスをながめてるんだよ!?」
「はい。出た梢の星オタク」
「オタクて・・・」
「!ヤバい部長睨んでる!」
ワラワラとおしゃべりを続ける。

「じゃ、後でね~」
「はーい」


知美とわかれて講義室に向かう。
「あれ?梢?」
呼ばれて振り返ると元彼が浮気相手だった女の子を連れて数人で固まっていた。
「あ・・・、大翔久しぶり」
「なんか可愛くなった?」
「そ、そうかな?気のせいじゃない?じゃね」
早く立ち去りたくて目をそらす。
「待てって冷たいなぁ元彼にひどくない?」
「えっ!?何々大翔の元カノって準ミスの柏木さん!?」
「え、じゃあお前が振ったっていう彼女ってえ!?まじかよ」
「よりもどす予定ねーの?」
「バーカ大翔は今梨乃ちゃんにぞっこんだろーが」
「まーなー」
大翔が自慢気に笑う。
あぁそういうこと、元カノ自慢したいのね。そう気づくと、馬鹿らしくなってそれ以上に何だか悔しくなって
「もう行ってもいいかしら?あなたと話す事ほど私にとって無駄な時間はないから」
ってニッコリと笑って丁寧にお辞儀して立ち去る。ふんだ。あんたみたいな屑なんか一生こっちが願い下げだっつーの!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

不倫の味

麻実
恋愛
夫に裏切られた妻。彼女は家族を大事にしていて見失っていたものに気付く・・・。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

いちばん好きな人…

麻実
恋愛
夫の裏切りを知った妻は 自分もまた・・・。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない

文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。 使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。 優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。 婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。 「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。 優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。 父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。 嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの? 優月は父親をも信頼できなくなる。 婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

処理中です...