オネエなエリート研究者がしつこすぎて困ってます!

まるい丸

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危うい瞳

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※主人公がモブに襲われます。未遂で終わりますが苦手な方はご注意ください。


 先月に手紙で振られた傷も癒えマリはまた婚活を再開していた。今度の相手は奥手だが誠実そうな人だ。もう2度デートを済ませて今日の夜一緒に舞台を見る約束をしている。


「ーちゃん、マリちゃん聞いてる?」


 今日の夜着ていくドレスを頭の中であれでもないこれでもないと考えてると聞き慣れた声が頭に鳴り響き現実に引き戻される。


「ぁあっ、すいません。ちょっと考え事してました。イザークさん何でしたっけ?」


「だ・か・ら、今日仕事終わったらディナーに行かない?お肉料理が美味しい所があるの。勿論あたしの奢りよ!」


 イザークはそう言って彼女に向かってウィンクした。


(うぅ、お店で肉料理なんてもう何年も食べてない。けど今日は先約がある。せっかく良い雰囲気の人を見つけたのに、この機会を逃したら私は一生独身になるかもしれない。それだけは無理!)


「ー今回は辞めときます。別の方を誘ってください」


「……そう。じゃあまた今度誘うわ。ところでマリちゃん、最近機嫌良いけど何かあったの?」


 断ったマリを人形のように綺麗な顔でしばらく見つめて彼は聞いてきた。


「別に何にもありませんよ。強いていえば給料が上がったのでそれで機嫌よく見えてたのかも」


 何の表情も浮かばない彼が少し怖くてつい早口になってしまう、視線を逸らし帳簿に目を通す。


 マリは彼に常々婚活の話を隠さずに話している。またデートする日にイザークに聞かれれば素直に喋っていた。しかし今回の人はイザークに聞かれても教える事はしなかった。マリは後3ヶ月もすれば26歳になる。その前に何としても結婚したかった。その為今回は以前にも増して本気だった。



「ー何か最近より一層冷たくなってる。流石にあたし寂しい」


 いつの間に忍び寄ってきたのかイザークはマリの側にいた。顔と顔の距離は10cmもない。

 彼の目はいつもの澄んだ瞳ではなく澱んでいた。しかもいつもは丸い瞳孔が縦長になっていた。頬笑でいるがいつもの様な柔和な雰囲気はなく表現できない妙な顔をしていた。マリは自分の顔がどんどん強張っていくのを感じた。


(怖い、この人が怖い)


「嫌っ!!」


 マリは恐ろしくて彼から距離を取りたくて、イザークの胸を両手で強く押してしまう。彼が後ろへよろめき会計台に腰をぶつける。


「あっあっ、ご、ごめんなさい。私…」


 彼から距離を取りたいが為に乱暴な事をしてしまい、咄嗟に手が出てしまった事に焦りマリは顔を青褪め口元を震える両手で押さえる。


「…大丈夫よ。あたしこそ驚かせてごめんなさい。また明日来るわね」

 

 下に向けた顔を持ち上げ彼女を見る。唇は弧を描いているが瞳は全く笑ってはいない。そんな彼は風のように店を後にした。



ーーー


「ーリさん、舞台面白かったですね!」


 隣に立つ男が楽しそうに笑ってマリに話しかける。


「はい!さすが今人気の演出家が手掛けるだけありますね」  


(嘘だ。本当は昼間のイザークとの出来事で頭が一杯になり舞台を観るどころではなかった。)


 マリは心の声を押し殺し愛想笑いを浮かべた。



「マリさん、まだ電車が来るまで時間あるし一杯のみません?」


 目の前の男がグラスを飲むジェスチャーをしてマリを誘う。本当はイザークの事を整理するため早く家に帰りたかったが、断ってしまうとノリの悪い女と思われて次の約束を取り付けられないと思い了承する事にした。


 舞台場からほど近くの酒場に入りカクテルを注文する。暫くして急にトイレに行きたくなり用を足して席へ戻るとグラスに残ったカクテルを飲む干した。


 そこからの記憶はまるでない。そして目を覚ますと其処は自分の部屋ではない見慣れない家具が広がる部屋だった。



「…どこよ、ここ」

 

 ずきずきと痛む頭を押さえながら重たい体を起こす。肌がスースーして胸元を見ると下着姿になっていた。  


 マリが困惑して辺りを見回していると酒場で一緒に飲んでいた男が部屋へと入ってきた。


「おっ、マリさん起きたみたいだね。じゃあ早速ヤろうか!」


 男は下衆な笑みを浮かべ彼女に近づいてくる。


「やめてください!一体どういうことなんですか!」


「うっさいな。静かにしてくれない俺うるさい女嫌いなんだよね」

 男はマリが座るベッドまできて彼女を下敷きにして跨ってくる。男の目はドロドロと溶けていて理性を感じずただ欲だけが浮かんでいた。


「お前みたいな対して可愛くもない行き遅れの女を抱いてやるだけありがたいと思え!結婚はしてやるから安心しな」


 男は暴れるマリの体を押さえつけいやらしい目つきで彼女体を舐め回した。そしてブラジャーを破き乱暴に揉みしだいてきた。


「痛い、嫌だぁ誰か助けて」

(少し口下手で時折不穏な視線をぶつけてくる男だと思っていたが、早く結婚したくて気のせいだと片付けてしまっていた。)


「うるせぇ、黙っとけ!」


 男は叫ぶ彼女の口を大きな手で押さえつける。


(嫌だぁ、こんな奴に好きにされたくない…) 


『マリちゃ~ん♡』

 呼吸がままならない中、頭にいつも彼女にしつこく構ってくるイザークの顔が浮かんだ。そして思わず彼の名前を発する。

 

「嫌だぁ、イザークさん助けてぇ」


 涙でぐちゃぐちゃになりながら男の指の隙間から必死に助けを叫んだ。


「はっ、誰も助けになんてこねぇ「それはどうかしら」

 

 耳馴染みのある声が真っ暗な部屋の隅から聞こえてきた。


「そこにいるのは誰だ!!」


「誰って、マリちゃんの未来の旦那よ。悪いけど彼女あたしのだから返してもらうわよ」


 イザークがそう言って黒い影から出てきた。月明かりに照らされた彼の白髪はキラキラと煌めき、その佇まいは神秘的でそれでいて妖しく輝いていた。


「何言ってんだよお前、コイツは俺と付き合ってるんだよ。今お楽しみ中なんだから邪魔すんな!!」


 男はイザークに唾を飛ばしながら怒号をあげ突進してきた。イザークはそんな男を片手でいとも簡単にいなし、男の顔を思いっきり蹴り上げた。


「誰が、コイツだって…マリちゃん泣いてるじゃねえかよ。よくも俺の大事な人を傷つけてくれたな。マリちゃんはそんな乱暴に扱っていい娘じゃねえんだよ!!」


 イザークは彼の蹴りを喰らい完全に伸びてる男に向かって、激しい怒り込めて落雷の様な声で吐き捨てた。


(イザークさんがオネエ口調じゃないの初めて聞いた…)


 マリは薄く途切れていく意識の中で呑気にそんな事を思った。

    
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