最強勇者を倒すため。ボクは邪剣に手を染める

はりせんぼん

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第4話 そして勇者は夢を見る その6

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「……シオン?」
 ルークは左を振り向いた。
 シオンがいた。そんな気がした。
 しかし、そこには闇があるばかり。

 シオンがルークの前から立ち去って数日が過ぎていた。
 そんなシオンがルークの横にいるはずがない。

 だが確かにあの一瞬。
 親友の気配をルークは感じていた。

「どうされましたかの」

 『剣聖』イーゲルブーアが声をかけてくる。
 その瞬間、シオンの気配は消えていた。まるで夢か幻のように。

 ……ぶっ殺すぞこのじじい。
 ルークは口の中で呟いた。
 イーゲルブーアは悪意の無い顔でルークを見ている。
 『剣聖』がルークの敵意を感じられないはずも無い。
 間違いなく気付いているだろう。

 それが、余計にルークの気に障る。

「何でも無い」

 不機嫌を隠さずルークは言う。
 言いながら、腰から下げた剣を抜く。

 このままこれを、イーゲルブーアの脳天にぶち込む。
 と、そんな妄想をしながら、ルークは剣を頭上に掲げる。

「【術技:閃乱舞億撃】」

 ダンジョンに光が満ちた。
 『勇者』が掲げた剣が凄まじい輝きを発する。
 光の塊が飛び出して、縦横無尽に飛び交った。

 ある光は直進し。
 ある光は円をつくり。
 ある光は螺旋を描き。

 壁を削り。
 床を貫通し。
 闇を切り裂き。
 その先に潜む魔物を残骸に変えて。

 『勇者』の【術技】は、轟音を立てながらダンジョンそのものを掘削する。

「お前らは残った素材の回収でもしていろ。行くぞ、ローケン」

 『勇者』の光が途絶えた時、ダンジョンの第八階層だったその場所は、巨大な一つの空洞になっていた。
 足元には深淵の闇に続くかのような巨大な洞穴。
 斜め下方に続くその穴は、ダンジョン下階層に続いている。

 第九階層も、さらにその先の階層もただの空洞に変えて。
 最終階層の主の居場所まで続く洞穴だった。

「なんで俺が?」

 ローケンが闇の中から顔を出す。
 しかめた顔は実に嫌そうだ。

「さあ? 誰でもいいんだが」

 ルークに共の者は必要ない。
 ダンジョンの構造自体を変える事すら出来る彼にとって、ダンジョンの罠も魔物も障害にもならない。
 ただ、横にいて気に障らないから声をかけた。それだけだった。

「まあ。雇われた分の仕事くらいはして行きなよ」

 階段状に削られた大穴をルークは下る。
 先の見えない闇に身を沈める時も、ルークの歩みに恐れの一つも感じられない。

 闇は奥に行く程色濃くなって、黒い色の淀みのようにすら見える。
 その中でも、【窓】はしっかりとルークの目に見える。
 そして、敵を示す【窓】は闇の中には一つも無い。

 だから、ルークはただ歩く。
 警戒する必要も無い。
 気に障る連中が居ない分、街中を歩くよりも気楽なくらいだった。

 ルークの姿が闇に消え。
 ローケンもいつの間にか消えていた。

 そして、第八階層をぶち抜いた巨大な空間に、『勇者』に置いて行かれた者たちが呆然と立っていた。
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