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2集 龍と番
2 (8.9 改稿)
しおりを挟むしかし、龍人にも多少の猶予は与えられている。
それこそが、皇宮に何人もの女性が集められている理由だ。
番の見つからない龍人は擬似的な番を作る事により多少狂うまでに本来より時間を要することがわかっている。
希少な番を探す事も大事だが、リミットの近い龍人の猶予も長くする事も大事であった。
狂えば龍王に殺される。だが、龍は番いの腹からしか生まれない。
だから個体数が減らないように、龍が滅びないように少しでも先延ばしにして番が見つかる様にするのだ。
本能で番を探す龍に擬似的な番など受け入れられないと本来はその通りだが、龍王が番が見つかるまで選ばれた女性をその龍にその女性が番だと暗示を掛ける。そうすると、狂うまでの時間が伸びるのだ。もちろん本当の番が見つかれば本能が理解するので暗示が解けて本来の形に収まるという。
龍自身も龍脈に触れていない人間の娘には番かどうか感じ取れないというのだから歯痒いだろう。
であるから、その成人の儀には番を探す以外に擬似的な番を選定するもう一つの役割があった。
こちらは、教養、容姿、芸事、などに優れた者を選び龍との相性が良さそうな者を擬似番として仕えさせる。
そうして徐々に数を減らしつつある龍もなんとか存続させてきた。
だがしかし。
それでは龍王自身はどうなるのか。
龍王と呼ばれるくらいの個体だ。もちろん他の龍人と比べるべくも無い程力の差は歴然としている。
恐らく龍王が本気になればこの世界が滅んでしまう力がある。
そんな龍王が狂えばどうなるか。そんな事誰が考えても直ぐに想像が付くだろう。
龍王の寿命は1万年。狂い出すまでのリミットは5千年だ。
ではその5千年の間に番いに出逢えない場合。その際は龍王自ら命を断つ。
龍王は唯一自分自身を殺す事が出来た。
だが、龍王が不在の時期が生まれれば、他の龍が狂った際に対処が出来なくなるのであくまで最終手段だ。
どの道そうなれば最悪龍は滅ぶかもしれない。
しかし、幸いにして今までの龍王は5千年の間に番を手にしている為そのような事は起こっていない。
今代の龍王もまたリミットまで2千年を残していた。
◇◇◇
どれくらいの時間が経ったんだろう……。
足の感覚は既に無かった。
凍傷にもなっているかもしれない。
自分の周りに雪が覆って降り積ってゆく。
小さな灯籠しかない場所で凍えるような寒さ。
「…あ、熱があるかも…ぼーとしてきたわ…」
これでは明日一日中高熱に苦しめられるかもしれない。
休む事なんて出来ないのに。
この家の娘のはずなのに使用人として扱われる自分が情けなかった。
妹とは違い与えられた部屋は使用人部屋。
学も芸事も何も与えられず、ひたすら家の雑用をする日々。
父親からは疎まれ、母からは化け物を見るような目で恐怖される。
妹には…姉妹として見てすらもらえない。
「私…成人の儀が終われば殺されてしまうのかな…怖いよ…」
泣いたら涙も凍って更に体温を奪われる。既に涙は枯れ果てているけれど…。
血のような紅玉の瞳で地面をひたすら見ながら、瞳を不安と恐怖で揺らしていた。
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