龍王の番

ちゃこ

文字の大きさ
10 / 33
4.皇宮へ

1

しおりを挟む
4.皇宮へ



「ここが、龍陽……」


 目を閉じていた麗華の耳に一緒に乗っていた使用人の少女が感動したように出した声が聞こえて来た。

 今回成人の儀に赴くのは瑞麗を除き、麗華含めた3人の少女であった。


 型が古い馬車なので悪路の所を通る時はお尻が跳ね肩なども打ち付けた。
 しかし、スピードは決して緩める事なく前を走る妹が乗る馬車を追いかけていた。


「きゃぁ!私龍陽は初めてなの!なんて荘厳なの…!」
「本当ね!雅国の都ももちろん栄えているけど龍陽とは比べ物にもならないくらい……!」
「こら、あんたたち!はしゃぐのもいいけど、私たちはもし選定に落ちたとしても瑞麗お嬢様の侍女として仕えるんだから気を引き締めなさいよ!」

「「はぁ~ぃ」」

 この4人の中でリーダー格の冬梅ドンメイが声をかけると2人の少女は大人しくなった。
 他2人は素香スーシャン林杏リンシンだ。今朝麗華に声を掛けたのが林杏であった。


 3人ともこの場にいる麗華の存在はまるっと無視しており、体調が悪そうな麗華を冬梅だけが時折鋭い瞳で見てきた。


「ちょっと。大げさに体調悪いフリなんかしちゃって。迷惑なんだけど」
「そうよ。風邪なんて移さないでよね。汚らわしいったら」
「あんたなんかもしかしたら門前払いかもね」
「あ、ありえる~!」


 クスクスと笑う3人。
 先程関所に着いて、通行する為に順番を待っていた。


「………」

「何とか言ったらどうなのよ。あんた、まさか選ばれるとでも思ってるわけ?はっ!あんたみたいな化け物龍の方々が選ぶわけ無いじゃない。その見た目でまず落選でしょうねぇ」

 心底蔑んだ視線を冬梅が寄越しながら吐き捨てた。


「そんなこと、思っていません…」

 弱々しく答える麗華にまたクスクスと笑う。

「よくわかってるじゃない。選定式ではあんた、私たちよりみすぼらしいんだから絶対に顔も上げないでよね」

「…はい」







「次!通行証を見せよ!」


 順番が来たようだ。
 瑞麗の乗る馬車の御者が宰相府の通行証を見せ、一瞬こちらの馬車を指差しながら門の兵士に対し話している。
 恐らくこちらの馬車も宰相府のものだと説明しているのだろう。


「よし、通れ!」


 兵士から許可が降りたのでゆっくり馬車が動き始めた。


「見て見て!龍陽を守る兵士の方。龍族の方だわ!凄く格好いい……」
「え!?うそ!本当だわ。なんて麗しいの」

 初めて間近で見た龍族に娘達はきゃあきゃぁとはしゃぐ。
 麗華もちらりと窓の外へ視線を投げかけて見ると、鎧を身に纏った偉丈夫がこちらを見た。

「!!?」

 その兵士は私の容姿を見て驚嘆したようだ。
 やはり、龍族からみてもこの容姿は奇異に映るのか。

「ちょっと!?あんた何顔上げてんのよ!下向いておきなさいよ!」

 グッ!!

「痛っ!!やめ…!」

 こちらを凝視している兵士の視線に気付いた冬梅が力任せに麗華の頭を掴んで馬車の床に押し付けた。

「ったく。迷惑だけはかけないでって言ってるじゃない。あんたがいるだけでこっちは不利なんだからね!?わかってんの!?」

「申し訳ありませ…!」

「御者のおじさん。今の内に通り過ぎちゃって」


「へいっ」


 麗華の頭を掴みながら御者に声をかけた冬梅はホッとした後に私を睨みつけた。



「余計な事は絶対しないでね」




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

王弟殿下の番様は溺れるほどの愛をそそがれ幸せに…

ましろ
恋愛
見つけた!愛しい私の番。ようやく手に入れることができた私の宝玉。これからは私のすべてで愛し、護り、共に生きよう。 王弟であるコンラート公爵が番を見つけた。 それは片田舎の貴族とは名ばかりの貧乏男爵の娘だった。物語のような幸運を得た少女に人々は賞賛に沸き立っていた。 貧しかった少女は番に愛されそして……え?

異母姉の身代わりにされて大国の公妾へと堕とされた姫は王太子を愛してしまったので逃げます。えっ?番?番ってなんですか?執着番は逃さない

降魔 鬼灯
恋愛
やかな異母姉ジュリアンナが大国エスメラルダ留学から帰って来た。どうも留学中にやらかしたらしく、罪人として修道女になるか、隠居したエスメラルダの先代王の公妾として生きるかを迫られていた。 しかし、ジュリアンナに弱い父王と側妃は、亡くなった正妃の娘アリアを替え玉として差し出すことにした。 粗末な馬車に乗って罪人としてエスメラルダに向かうアリアは道中ジュリアンナに恨みを持つものに襲われそうになる。 危機一髪、助けに来た王太子に番として攫われ溺愛されるのだか、番の単語の意味をわからないアリアは公妾として抱かれていると誤解していて……。 すれ違う2人の想いは?

召喚先は、誰も居ない森でした

みん
恋愛
事故に巻き込まれて行方不明になった母を探す茉白。そんな茉白を側で支えてくれていた留学生のフィンもまた、居なくなってしまい、寂しいながらも毎日を過ごしていた。そんなある日、バイト帰りに名前を呼ばれたかと思った次の瞬間、眩しい程の光に包まれて── 次に目を開けた時、茉白は森の中に居た。そして、そこには誰も居らず── その先で、茉白が見たモノは── 最初はシリアス展開が続きます。 ❋他視点のお話もあります ❋独自設定有り ❋気を付けてはいますが、誤字脱字があると思います。気付いた時に訂正していきます。

混血の私が純血主義の竜人王子の番なわけない

三国つかさ
恋愛
竜人たちが通う学園で、竜人の王子であるレクスをひと目見た瞬間から恋に落ちてしまった混血の少女エステル。好き過ぎて狂ってしまいそうだけど、分不相応なので必死に隠すことにした。一方のレクスは涼しい顔をしているが、純血なので実は番に対する感情は混血のエステルより何倍も深いのだった。

異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜

恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。 右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。 そんな乙女ゲームのようなお話。

【本編完結】召喚? 誘拐の間違いでは?

篠月珪霞
恋愛
「…え」 まず聞こえたのは、成功だー!!といういくつもの歓声。それ以降は幾人もの声が混じりあい、何を言っているのか分からなかった。 私、白井瑠璃は、いつものように、出勤するために自宅のドアを開けただけだった。 いつものように、起床し、準備して、仕事が終われば帰宅し、そうした普通の、変わりない毎日を過ごすはずだった。 過去形になったこの日を、きっと忘れることはない。

【完結】番である私の旦那様

桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族! 黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。 バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。 オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。 気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。 でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!) 大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです! 神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。 前半は転移する前の私生活から始まります。

【完結】2番目の番とどうぞお幸せに〜聖女は竜人に溺愛される〜

雨香
恋愛
美しく優しい狼獣人の彼に自分とは違うもう一人の番が現れる。 彼と同じ獣人である彼女は、自ら身を引くと言う。 自ら身を引くと言ってくれた2番目の番に心を砕く狼の彼。 「辛い選択をさせてしまった彼女の最後の願いを叶えてやりたい。彼女は、私との思い出が欲しいそうだ」 異世界に召喚されて狼獣人の番になった主人公の溺愛逆ハーレム風話です。 異世界激甘溺愛ばなしをお楽しみいただければ。

処理中です...