12 / 21
四章
動乱1
しおりを挟む「それでは皆さん。今日はお集まり頂きありがとうございます。是非楽しんで下さいませね」
今日は留学が半年を迎えたので公都の王宮にて宴が開催された。
レスティア主催の宴は腐っても大公家なので招待されているのは豪華な面子ばかりだ。
まず、今回の主役ローラン国の一行。
そして、ルベインの各有力貴族たちがその場に勢揃いしていた。
ちなみにこの場にいるルベイン側の貴族たちは皆、対敵国を意識していた。
公王からローランが和睦を切り捨てたと通達を受けていたからだ。
今ここにいるのはローランの未来の後継者たちだ。
何故このような馬鹿げた計画を立てておきながら、この国に後継者たちを送ってきたのか。
普通なら考えられない。
今から攻撃しようとしている国に対して大事な人物を預けようなど人質にしてくれと言っているようなものである。
ルベインからしてみれば、それは逆に不可解な事であった。
単に考えが及んでいないだけなのか、はたまた何かの罠なのか。
まぁ、レスティアの想像ではバレていないと思って堂々と工作するためにわざと油断を誘っているのではないかと思っている。
で、なければ本物の馬鹿だ。
ローランにも一応今回の絵を描いた者がいるだろう。
その人物がどのような動きを見せてもこちらは冷静に対処するだけだ。
そして、今回のこの宴の目的は。
こちらが隙を見せるパフォーマンスを起こすのだ。
相手もそろそろこの国にも慣れ、準備も万端だろう。
今回泳がせていたネズミの尻尾も切るつもりだ。
-------さぁ、ゲームを始めましょう。
「おい、レスティア。ちゃんと飲んだか?」
「えぇ。大丈夫ですわ。ダグラス」
「わかっているとはいえ、俺は反対だぜ」
ダグラスがレスティアに小声で話しかけてきた。
ダグラスの心配はわかる。
わかるが、今回は必要な事だ。
ルベインが対外的に被害者である事を主張せねば今回のこの絵は完成しない。
「恐らく狙ってくるならば、今夜ですわ。そのチャンスを見逃すなんて愚の骨頂でしてよ」
「そうだが・・・だからってなぁ・・・お前に少しでも害があるとなりゃ俺は賛成出来ねぇ・・・」
そっとダグラスはレスティアの腰を引き寄せてくる。
「ふふ。ありがとうございます」
いつもの調子で受け答えするとダグラスは珍しく少し怒っていた。
「俺は本気なんだぜ。お前の命令なら俺は何だってしてやるが、だがお前自身に何かあるのなら俺はそれだけは許容出来ねぇ。大丈夫だとわかっていても、もし、万が一お前に何かあったら俺はやつらを殺してやる。それだけは覚えておけ」
そんなダグラスの言葉に目を丸くしてレスティアはポカンとした。
さすがのレスティアもここまで言われれば彼の本心に気付く。
「わ、わかりましたわ・・・」
ちょっと顔が赤くなるレスティアは扇子で顔を隠した。
「おい、ちょっとその顔見せろ。貴重すぎるわ」
「蹴られたいの?」
しかし、一瞬で甘いムードは四散する。
実に残念な事だ。
「まぁ大丈夫でしてよ。2,3日寝込むくらいでしょうから」
「それが心配なんだよ・・・」
理解はしているが、ということだろう。
「では目覚めたら、一つダグラスの為に時間を使ってもいいですわよ」
「!!本当か!?」
「え、ええ。私で良ければ」
「良いに決まってる!おし、休暇申請しとくか」
あまりの喜びようにレスティアは呆気に取られた。
この男、本当に私が好きなんだな。
と自惚れるほどわかりやすい。
さてさて、そろそろゲームを進めませんと。
先ほどから今回のゲームのディーラーがこちらを意識しすぎてチラチラ視線が動いていますわ。
招待客を掻き分けてこちらに向かってくる娘。
エリーゼ・モーガン。
「レスティア様!今宵は招待ありがとうございます!とっても素敵な宴ですね」
「あら、エリーゼ嬢。楽しめていて?嬉しいわ」
「はい!」
「ところで、もう学院には馴染めまして?」
レスティアは今のエリーゼの学院での境遇を聞いているのでもちろん揶揄する意味で言葉を選んでいた。
エリーゼはその言葉に少しムッとした様子を一瞬見せたが、直ぐに笑顔に戻りにこにこと笑う。
この娘。
以前とはどこか様子が違う?
以前はもっと感情をコントロール出来ない様子であったが。
「はい。学院の皆さんには本当に良くして頂いてます!ローランの学園とは全く違うのでびっくりしました」
「そうでしょうね。得る物も多いのではないかしら。将来のお役に立てれば嬉しいですわ」
にこやかに会話が弾む。
やはり今日はこの娘、どこか様子が以前とは違うようだ。
こんなに理知的に話せる娘だっただろうか。
「ありがとうございます。ジオラルド様にも本当に今回連れて来てもらって良かったとお話してたんですよ」
「あら、そうなのね。それは良かったわ」
そうなのだ。
今日ジオラルドとエリーゼはこの場で会話をしていた。
暫く疎遠であったようであるからよほど嬉しいのだろう。
「私国に帰ればジオラルド様と結婚するんです」
「あら、そうなの?そんなお話は聞いた事がないけれど」
突然エリーゼは俯いてボソリと呟く様に言った。
「この国に来る前、殿下に結婚して欲しいと言われたんです。ですから、重圧もありますが色々頑張らなくちゃと思いまして・・・」
「そうですわね・・・。ジオラルド皇太子殿下は父上の跡をお継ぎになるでしょうから、エリーゼ嬢が王妃になりますのね。おめでとうございます」
レスティアからの言葉に一瞬エリーゼは固まった。
しかし、気を持ち直したのかにこにこ笑う。
「はい。ありがとうございます。それで・・・レスティア様は公王様になりますし立場は全然違いますが、私と一献祝い酒を共にして頂けたらと・・」
これは誰かの入れ知恵があるな。
そうレスティアは確信した。
恐らく一人で行動する場合、エリーゼにここまでの芸当は無理だ。
祝い酒とは考えたものだ。
この場合、相手も同じ杯を口にするので祝い酒という事もあり断れない。
考えましたわねぇ・・・。
内心レスティアはうっそりと笑う。
こうでなくては面白くない。
「ええ。もちろんかまいませんわ。そこの者。祝い酒を用意して頂戴」
レスティアはわざと自分で声をかけ用意させる。
祝い酒で使用される酒も全てルベインで用意させた物だ。
ある意味これはこちら側も相手に成功させなければならないので気を使う。
暫くして給仕に運ばれて来たグラスを受け取る。
祝い酒はお互いに注ぎあって同じグラスで呷るのだ。
通常は上の階級の者からだが、祝い事のメインが下の者の場合は逆になる。
今回はエリーゼの祝いという事なので、エリーゼからだ。
「では、エリーゼ嬢。こちらを」
「あ、ありがとうございます。頂きます」
そうして、エリーゼは一気に酒を呷った。
少し唇から零れたのでエリーゼはハンカチで口元を拭う。
「失礼しました。では私からも・・・」
「頂くわ」
エリーゼが緊張したような面持ちでグラスに酒を注ぐ。
それをレスティアが冷静に観察している事にも気が付かずに。
「・・・どうぞ」
「ありがとう。では」
レスティアは、チラっとダグラスの方を見た。
視線の先にはダグラスがじっとこちらを見つめている。
悪い気はしないわね。
------ぐっ・・・!
レスティアは一気に酒を呷った途端呻く。
パリーン!!
とグラスを取り落とす音が響く。
「うっ・・・!!」
「レスティア様!?」
「キャーーーーーー!!」
エリーゼが血相を変えて叫びながら近寄ってきた。
周りも何事かとざわざわする。
そんな中、エリーゼは倒れこむレスティアの耳元にこんな言葉を呟いた。
「・・・・・私をコケにするからだよ。・・・ばいばーいおばさん?」
その言葉を最後にレスティアは意識を失った。
22
あなたにおすすめの小説
『紅茶の香りが消えた午後に』
柴田はつみ
恋愛
穏やかで控えめな公爵令嬢リディアの唯一の楽しみは、幼なじみの公爵アーヴィンと過ごす午後の茶会だった。
けれど、近隣に越してきた伯爵令嬢ミレーユが明るく距離を詰めてくるたび、二人の時間は少しずつ失われていく。
誤解と沈黙、そして抑えた想いの裏で、すれ違う恋の行方は——。
『婚約破棄されたので北の港を発展させたら
ふわふわ
恋愛
王立学園の卒業舞踏会。
公爵令嬢アリアベルは、王太子カルディオンから突然の婚約破棄を告げられる。
「真実の愛を見つけた」
そう言って王太子が選んだのは、涙を流す義妹ヴィオレッタだった。
王都から追い出され、すべてを失った――
はずだった。
アリアベルが向かったのは、王国の北にある小さな港町。
しかし彼女の手腕によって港は急速に発展し、やがて王国最大の交易港へと変わっていく。
一方その頃、王太子と義妹は王都で好き勝手に振る舞っていたが――
やがてすべてが崩れ始める。
王太子は国外追放。
義妹は社交界から追放され修道院送り。
そして気づいた頃には、北の港こそが王国の中心になっていた。
「私はもう誰のものでもありません」
これは、婚約破棄された令嬢が自分の人生を取り戻し、
王国の未来を変えていく物語。
そして――
彼女の隣には、いつしか新しい王太子の姿があった。
婚約破棄から始まる、逆転ざまぁロマンス。✨
【完結済】王女に夢中な婚約者様、さようなら 〜自分を取り戻したあとの学園生活は幸せです! 〜
鳴宮野々花@書籍4作品発売中
恋愛
王立学園への入学をきっかけに、領地の屋敷から王都のタウンハウスへと引っ越した、ハートリー伯爵家の令嬢ロザリンド。婚約者ルパートとともに始まるはずの学園生活を楽しみにしていた。
けれど現実は、王女殿下のご機嫌を取るための、ルパートからの理不尽な命令の連続。
「かつらと黒縁眼鏡の着用必須」「王女殿下より目立つな」「見目の良い男性、高位貴族の子息らと会話をするな」……。
ルパートから渡された「禁止事項一覧表」に縛られ、ロザリンドは期待とは真逆の、暗黒の学園生活を送ることに。
そんな日々の中での唯一の救いとなったのは、友人となってくれた冷静で聡明な公爵令嬢、ノエリスの存在だった。
学期末、ロザリンドはついにルパートの怒りを買い、婚約破棄を言い渡される。
けれど、深く傷つきながら長期休暇を迎えたロザリンドのもとに届いたのは、兄の友人であり王国騎士団に属する公爵令息クライヴからの婚約の申し出だった。
暗黒の一学期が嘘のように、幸せな長期休暇を過ごしたロザリンド。けれど新学期を迎えると、エメライン王女が接触してきて……。
※10万文字超えそうなので長編に変更します。
※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。
【完結】婚約者を奪われましたが、彼が愛していたのは私でした
珊瑚
恋愛
全てが完璧なアイリーン。だが、転落して頭を強く打ってしまったことが原因で意識を失ってしまう。その間に婚約者は妹に奪われてしまっていたが彼の様子は少し変で……?
基本的には、0.6.12.18時の何れかに更新します。どうぞ宜しくお願いいたします。
婚約を奪った義妹は王太子妃になりましたが、王子が廃嫡され“廃嫡王子の妻”になりました
鷹 綾
恋愛
「お姉様には、こちらの方がお似合いですわ」
そう言って私の婚約者を奪ったのは、可憐で愛らしい義妹でした。
王子に見初められ、王太子妃となり、誰もが彼女の勝利を疑わなかった――あの日までは。
私は“代わり”の婚約者を押し付けられ、笑いものにされ、社交界の端に追いやられました。
けれど、選ばれなかったことは、終わりではありませんでした。
華やかな王宮。
厳しい王妃許育。
揺らぐ王家の威信。
そして――王子の重大な過ち。
王太子の座は失われ、運命は静かに反転していく。
離縁を望んでも叶わない義妹。
肩書きを失ってなお歩き直す王子。
そして、奪われたはずの私が最後に選び取った人生。
ざまあは、怒鳴り声ではなく、選択の積み重ねで訪れる。
婚約を奪われた姉が、静かに価値を積み上げていく王宮逆転劇。
死に物狂いで支えた公爵家から捨てられたので、回帰後は全財産を盗んで消えてあげます 〜今さら「戻れ」と言われても、私は隣国の皇太子妃ですので〜
しょくぱん
恋愛
「お前のような無能、我が公爵家の恥だ!」
公爵家の長女エルゼは、放蕩者の父や無能な弟に代わり、寝る間も惜しんで領地経営と外交を支えてきた。しかし家族は彼女の功績を奪った挙句、政治犯の濡れ衣を着せて彼女を処刑した。
死の間際、エルゼは誓う。 「もし次があるのなら――二度と、あいつらのために働かない」
目覚めると、そこは処刑の二年前。 再び「仕事」を押し付けようとする厚顔無恥な家族に対し、エルゼは優雅に微笑んだ。
「ええ、承知いたしました。ただし、これからは**『代金』**をいただきますわ」
隠し金庫の鍵、領地の権利書、優秀な人材、そして莫大な隠し資産――。 エルゼは公爵家のすべてを自分名義に書き換え、着々と「もぬけの殻」にしていく。
そんな彼女の前に、隣国の冷徹な皇太子シオンが現れ、驚くべき提案を持ちかけてきて……?
「君のような恐ろしい女性を、独り占めしたくなった」
資産を奪い尽くして亡命した令嬢と、彼女を溺愛する皇太子。 一方、すべてを失った公爵家が泣きついてくるが、もう遅い。 あなたの家の金庫も、土地も、働く人間も――すべて私のものですから。
私は私で幸せになりますので
あんど もあ
ファンタジー
子爵家令嬢オーレリーの両親は、六歳年下の可憐で病弱なクラリスにかかりっきりだった。
ある日、クラリスが「オーレリーが池に落ちる夢を見た」と予言をした。
それから三年。今日オーレリーは、クラリスの予言に従い、北の果ての領地に住む伯爵令息と結婚する。
最後にオーレリーが皆に告げた真実とは。
婚約破棄をされ、父に追放まで言われた私は、むしろ喜んで出て行きます! ~家を出る時に一緒に来てくれた執事の溺愛が始まりました~
ゆうき
恋愛
男爵家の次女として生まれたシエルは、姉と妹に比べて平凡だからという理由で、父親や姉妹からバカにされ、虐げられる生活を送っていた。
そんな生活に嫌気がさしたシエルは、とある計画を考えつく。それは、婚約者に社交界で婚約を破棄してもらい、その責任を取って家を出て、自由を手に入れるというものだった。
シエルの専属の執事であるラルフや、幼い頃から実の兄のように親しくしてくれていた婚約者の協力の元、シエルは無事に婚約を破棄され、父親に見捨てられて家を出ることになった。
ラルフも一緒に来てくれることとなり、これで念願の自由を手に入れたシエル。しかし、シエルにはどこにも行くあてはなかった。
それをラルフに伝えると、隣の国にあるラルフの故郷に行こうと提案される。
それを承諾したシエルは、これからの自由で幸せな日々を手に入れられると胸を躍らせていたが、その幸せは家族によって邪魔をされてしまう。
なんと、家族はシエルとラルフを広大な湖に捨て、自らの手を汚さずに二人を亡き者にしようとしていた――
☆誤字脱字が多いですが、見つけ次第直しますのでご了承ください☆
☆全文字はだいたい14万文字になっています☆
☆完結まで予約済みなので、エタることはありません!☆
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる