上 下
1 / 16

シーサイドパレス

しおりを挟む
僕が高校生の頃

昭和が平成に変わった頃


茅ヶ崎の東海岸に

シーサイドパレスという名の

マンションがあった


当時、父が勤務していた会社の

社宅として用意されていた

しかし、そこに暮らす者はなく

希望をすれば、誰でも泊まれた


そして、そこは夏休みともなると

僕と『J』、『S』の悪友3人組の

溜まり場となっていた


時間とお金の許す限り

僕らはそこに滞在した


昼はボディボートと日焼けを楽しみ

夜はベランダへ出て、ウイスキーを飲んだ


境目の分からない、真っ暗な海と空

誰かの打ち上げたロケット花火の音

頬に感じた、ぬるい潮風


映画のワンシーンのような

シチュエーションの中

毎夜、僕らはしょうもない

明日を語りあった(笑)


「明日こそっ!!ナンパしようぜっ!」

 だいぶ酔った『J』が言った

「おう!!」

 『J』の熱に圧倒された僕が答えた

「・・・そだね」

 一応、付き合うように『S』も言った


だけど、憧れは憧れのまま・・・


砂浜で体育座りをした

3人の少年達・・・

ビーチに素敵な女の子を見つけても

彼女たちに声をかけるでもなく

ただ、夏の日差しに肌を焼かれていた


でも、正直に言うと・・・

負け惜しみとかではなく

当時の僕はナンパとかには

あまり、興味がなかった

僕には好きな女の子がいた


「松岡 文香」


『J』達とふざけてはいても

彼女のことばかり考えていた


4月に出会った彼女

僕はすぐに夢中になった
しおりを挟む

処理中です...