不老ふしあわせ

くま邦彦

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第三章 和二一族( 太康十年・西暦二八九年)

避けられない戦い

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 スサノオは、ミカヘタインがクマノクスビを暗殺しようとしていることが分かっていた。クマノクスビもそのことは分かっていた。そのために、いざというときは逃げる算段も立てていた。しかし、スサノオはクマノクスビの秘密がばれることが心配だった。
 切られても死ななければ、クマノクスビは化け物扱いにされてしまう。そうなれば、国王として淡海国を治めることもできなくなる。それがスサノオは心配だったのだ。
「もし、私が族長の命令に従わなければ日高三国は内戦に陥ります」
「それも仕方がないことだ。飛騨から兵を送ってきたら、儂が坂田で食い止める。お前は今すぐタカシレウクを出雲国から追い出せ」
 スサノオにそこまで言わせて迷っている場合ではない。
 クマノクスビは決心した。すぐに館に引き返し、出雲国を攻める準備に入った。重臣たちを集めて決心を伝えると皆は賛同してくれた。同胞を攻めるということは、日高三国が誕生して以来初めてのことである。
 クマノクスビは反対する重臣が出ると思っていたが、タカシレウクの数々の愚行を知っているので、やむを得ないことだと納得してくれたようだ。族長のミカヘタインについても、聡明な族長だが義父の行いを諫めるどころか、国替えをなかったことにしようとしたことで、族長の資格はないと判断したようだ。
 クマノクスビはまず、石見国の王シラウキに連絡した。出雲国へは石見国から入るために許可を求めたのだ。そして、西から東へタカシレウクを追い出す作戦である。その後は若狭国まで追い上げれば他国に害を及ぼすことはない。
 また、クマノクスビは石見国に入る際に、内海に面する国々を通らなければならない。この国々は日高三国に属していないため、やはり許可を求めなければならない。大軍を率いて通れば、攻め込んできたと勘違いされけるのは間違いない。
 重臣からは、そうした国々に連絡を入れれば、こちらの動きが出雲国に漏れるのではと心配する者もいた。クマノクスビは漏れても良いと思っていた。攻撃することが分かれば、タカシレウクの気持ちも変わるかもしれないという期待があったからだ。戦えば被害を被るのは、いつも住民だ。できることなら、戦いは避けたい。
 今回は、ワニ一族の兵士も参加させることにした。彼らの力を借りて、できるだけ早く決着をつけたいのである。ワニ一族の超能力を実際に見ておきたいという気持ちもある。ただ、淡海国で作った丸薬が本当に超能力を発揮させられるかどうかは、誰にも分からない。
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