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第三章 和二一族( 太康十年・西暦二八九年)
狗南国
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クマノクスビが徐熊といい、かつては蘇奈国の王であったことはトッカラムとタケトモにとっても、初めて聞かされた秘密であった。
「父上、それでは我々は徐晋様と血が繋がっているということですか」
「そうだ。そしてもう一つ、お前たちに伝えておかなければならないことがある」
徐晋は先ほどから、思いもかけなかったクマノクスビの告白で、頭の中はかなり混乱してきた。この上、さらにクマノクスビが伝えなければならないことがあると聞いて覚悟した。
「耶馬一国の王、文高も儂の子孫になる」
時間はかかったが、クマノクスビは三人に、不老不死の秘薬を飲んでからの二百五十年間について丁寧に説明した。
三日後、疲れもとれた徐晋がトッカラムの返書を持って、耶馬一国に帰る時が来た。
クマノクスビはタケトモと四天王の八人を伴って、徐晋と一緒に耶馬一国へ行くことにした。正式に日高三国と耶馬一連合とが同盟を結ぶ前に、狗南国の動きを止めておきたいと考えていた。戦えば、蘇奈国と耶馬一国の兵士だけで事足りるが、無益な戦いはできるだけ避けたい。そのために、ここでもワニ一族の超能力を借りることにした。圧倒的な戦力を見せつければ、狗南国も野望は諦めるに違いない。
そして、クマノクスビにはもう一つ考えがあった。それは日高三国と耶馬一連合の同盟に、ワニ一族を加えたかった。今は淡海国の一部を借りて生活している一族だが、戦力の点から見れば日高三国と耶馬一連合の戦力よりはるかに破壊力はすさまじい。この一族を含めた同盟が倭の統一に欠かせないと考えていた。
そのためには、耶馬一連合の国々にワニ一族の超能力を知らしめねばならない。狗南国の攻略はちょうどよい機会であった。
一行は摂津から内海は通らずに木の国を経由して弓矢国から蘇奈国の港に入った。クマノクスビにとって久しぶりの故郷であるが、休む間もなく耶馬一国に向かった。
大王の館には文高をはじめ、連合の王たちも集まっていた。前もって徐福の方から、ワニ一族が狗南国を攻略するところをぜひ見てほしいと連絡してもらっていたからである。
ただ、今回の戦いは狗南国を破滅させるのが目的ではなく、戦いを思いとどまらせることである。そして、その破壊力を文高と連合の王たちに認めさせるためである。
作戦は次の日、早朝に実行された。タケトモと四天王の八人は、耶馬一国の将軍の案内で狗南国の陣地に向かった。国境近くにおよそ千人の兵士を終結させているということだった。
森の中で見通しは悪いが、陣地の三里(約一キロ余り)手前でヤツミミが兵士たちの動きをとらえた。
「兵士はみな陣地の内にいます。一里まで近づいても大丈夫です」
しばらく進むと、今度はワシノメが、「陣地は高さ一丈(二メートル余り)ほどの柵で囲まれています」と、木々の間から見届けた。
しかし、文高と連合の王たちには何も聞こえないし、何も見えない。
敵に気づかれないように、ようやく陣地が見えるところまで近づく。
「今から、陣地の柵を壊し内に火を放ちます。援護射撃で矢も射ますが、できるだけ兵士たちを殺さないように注意させます。皆さんは、この場を動かないようにお願いします」
そう言うと、タケトモは四天王に攻撃の命令を下した。
「父上、それでは我々は徐晋様と血が繋がっているということですか」
「そうだ。そしてもう一つ、お前たちに伝えておかなければならないことがある」
徐晋は先ほどから、思いもかけなかったクマノクスビの告白で、頭の中はかなり混乱してきた。この上、さらにクマノクスビが伝えなければならないことがあると聞いて覚悟した。
「耶馬一国の王、文高も儂の子孫になる」
時間はかかったが、クマノクスビは三人に、不老不死の秘薬を飲んでからの二百五十年間について丁寧に説明した。
三日後、疲れもとれた徐晋がトッカラムの返書を持って、耶馬一国に帰る時が来た。
クマノクスビはタケトモと四天王の八人を伴って、徐晋と一緒に耶馬一国へ行くことにした。正式に日高三国と耶馬一連合とが同盟を結ぶ前に、狗南国の動きを止めておきたいと考えていた。戦えば、蘇奈国と耶馬一国の兵士だけで事足りるが、無益な戦いはできるだけ避けたい。そのために、ここでもワニ一族の超能力を借りることにした。圧倒的な戦力を見せつければ、狗南国も野望は諦めるに違いない。
そして、クマノクスビにはもう一つ考えがあった。それは日高三国と耶馬一連合の同盟に、ワニ一族を加えたかった。今は淡海国の一部を借りて生活している一族だが、戦力の点から見れば日高三国と耶馬一連合の戦力よりはるかに破壊力はすさまじい。この一族を含めた同盟が倭の統一に欠かせないと考えていた。
そのためには、耶馬一連合の国々にワニ一族の超能力を知らしめねばならない。狗南国の攻略はちょうどよい機会であった。
一行は摂津から内海は通らずに木の国を経由して弓矢国から蘇奈国の港に入った。クマノクスビにとって久しぶりの故郷であるが、休む間もなく耶馬一国に向かった。
大王の館には文高をはじめ、連合の王たちも集まっていた。前もって徐福の方から、ワニ一族が狗南国を攻略するところをぜひ見てほしいと連絡してもらっていたからである。
ただ、今回の戦いは狗南国を破滅させるのが目的ではなく、戦いを思いとどまらせることである。そして、その破壊力を文高と連合の王たちに認めさせるためである。
作戦は次の日、早朝に実行された。タケトモと四天王の八人は、耶馬一国の将軍の案内で狗南国の陣地に向かった。国境近くにおよそ千人の兵士を終結させているということだった。
森の中で見通しは悪いが、陣地の三里(約一キロ余り)手前でヤツミミが兵士たちの動きをとらえた。
「兵士はみな陣地の内にいます。一里まで近づいても大丈夫です」
しばらく進むと、今度はワシノメが、「陣地は高さ一丈(二メートル余り)ほどの柵で囲まれています」と、木々の間から見届けた。
しかし、文高と連合の王たちには何も聞こえないし、何も見えない。
敵に気づかれないように、ようやく陣地が見えるところまで近づく。
「今から、陣地の柵を壊し内に火を放ちます。援護射撃で矢も射ますが、できるだけ兵士たちを殺さないように注意させます。皆さんは、この場を動かないようにお願いします」
そう言うと、タケトモは四天王に攻撃の命令を下した。
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