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第1章 バツイチ男と彼女の事情
第6話 婚約破棄
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ちょっと気になるフレーズが出て来た所で、一旦話を中断し、ホテルにあったバスローブっぽい物を羽織って、二人でソファに移動した。
備え付けの電気ポットでお湯を沸かし、コーヒーの準備をする。
「あ、私やります!お砂糖とミルクはどうしますか?」
「ありがとう。じゃあ、ミルクだけ入れて貰えるかな?」
営業などをしていると、コーヒーを飲む機会が割と多い。
元々ブラック派だが、以前飲みすぎて、胃を壊しそうになった事から、ミルクだけは入れるようにしている。
コーヒーを入れている後ろ姿を見て、こういうのいいなーと思ってしまう。
独り身に染み渡る光景だな。くっ…。
「お待たせしました。どうぞ。」
シズクちゃんは、コーヒーをテーブルに置き、俺の隣に座る。
「いただきます」とコーヒーに口をつけ、話の続きを聞こうと思いながら、また煙草を咥えて気付いた。
「あ、ごめんね。今更だけど煙草大丈夫?」
「はい。気にしないでください。」
微笑みながら答えてくれた。うん、良い子だ。
最近では喫煙者への当たりが厳しい。ちゃんとルールを守って吸っても、あからさまに嫌な顔をする人もいるのだ。…まぁいいか。
煙草の煙を長く吐き出し、続きを聞いてみる。
「さっきの話の続きだけどさ、まぁ一番気になるのは…」
「元婚約者、ですよね?」
そうそう。
元彼とかじゃないんだよ。
これって結構、大事になったんじゃないか?
婚約者って事は、もう二人だけの問題じゃなくて、周りも巻き込んでの別れだっただろうし。
「相手の人は、私の会社に出入りしていた営業さんだったんです。何度かお誘いは受けてて、でも私あまりお付き合いってした事が無かったので、男の人と二人でって抵抗があって、お断りしてたんです。」
シズクちゃんが語ってくれた話は、二人が出逢う切っ掛けと、付き合う事になった経緯だ。
一見よくある話だ。俺も営業だからその手の話題はよく聞く。
でも、付き合う事になった経緯は、なんて言うか、どんな顔をして良いのか分からなかった。
だから極力表情に出さずに、頷いて聞いていた。
それは好きになるのも無理は無い。ある意味反則だろ。
「それから一年付き合って、婚約したのが半年前だったんです。」
早く家族が欲しかったんです、だって。
そりゃね、分からんでもないよ。
そのまま上手く行けば、幸せになれただろうね。
「でも、三ヶ月前にある女の人に会ったんです。その人から圭一さん…あ、婚約者の名前です。圭一さんとはどう言う関係なのか?と詰め寄られまして。」
あー、そう言う事か。
寝耳に水だよな。圭一さんよ、お前は間違った。その女にも好きだー、とかお前だけだーとか言ってたんだろ。
「結局その女の人とは仲良くなったから良いんですけど、その時に色々彼の事を聞いて、この人とは家族になれないなと。それでその女の人と二人で、どういう事なのかと聞きに行って、婚約破棄をしますって。」
仲良くなっちゃった!被害者同士ってやつだな。
婚約破棄は、まぁそうなるよな。
親戚やら向こうの両親やらに話をして、正式にこの話は無かった事になったそうだ。
彼女は淡々と語っているが、この話は付き合い始めから含めて、思い出すのも辛い話しだろう。
俺はこの話を聞いても、慰めて上げられる言葉を持ち合わせていない。
だから彼女の肩を抱き寄せて、髪を撫でてあげる。
「大変だったね。」
そんな言葉しかかけて上げられないが、今まで何の関係も無かったからこそ、色々吐き出せるんだろうと思い、黙って聞いてあげた。
話しをしてると、多分だけどこの子は周りを心配させまいと、色々我慢してたんじゃないかな。
シズクちゃんは、俺が髪を撫でてきた事にピクっと震え、俺を見つめてきた。
その瞳には涙が浮かんでいた。
そして抱きついて来たかと思うと、震えながら泣き出した。
それはもう、堰を切ったように泣き出した。
うんうん。泣きたいだけ泣けば良い。
俺には何も出来ないけど。聞く事しか出来ないけどね。
この子と今後どうなるのか、今日だけなのか、それは分からないけど、俺には多分シズクちゃんを幸せにして上げる事が出来ないから、せめて笑っていられる様に接して上げよう。そう思ったんだ。
バスローブの色が、彼女の涙で濃くなっていく。
備え付けの電気ポットでお湯を沸かし、コーヒーの準備をする。
「あ、私やります!お砂糖とミルクはどうしますか?」
「ありがとう。じゃあ、ミルクだけ入れて貰えるかな?」
営業などをしていると、コーヒーを飲む機会が割と多い。
元々ブラック派だが、以前飲みすぎて、胃を壊しそうになった事から、ミルクだけは入れるようにしている。
コーヒーを入れている後ろ姿を見て、こういうのいいなーと思ってしまう。
独り身に染み渡る光景だな。くっ…。
「お待たせしました。どうぞ。」
シズクちゃんは、コーヒーをテーブルに置き、俺の隣に座る。
「いただきます」とコーヒーに口をつけ、話の続きを聞こうと思いながら、また煙草を咥えて気付いた。
「あ、ごめんね。今更だけど煙草大丈夫?」
「はい。気にしないでください。」
微笑みながら答えてくれた。うん、良い子だ。
最近では喫煙者への当たりが厳しい。ちゃんとルールを守って吸っても、あからさまに嫌な顔をする人もいるのだ。…まぁいいか。
煙草の煙を長く吐き出し、続きを聞いてみる。
「さっきの話の続きだけどさ、まぁ一番気になるのは…」
「元婚約者、ですよね?」
そうそう。
元彼とかじゃないんだよ。
これって結構、大事になったんじゃないか?
婚約者って事は、もう二人だけの問題じゃなくて、周りも巻き込んでの別れだっただろうし。
「相手の人は、私の会社に出入りしていた営業さんだったんです。何度かお誘いは受けてて、でも私あまりお付き合いってした事が無かったので、男の人と二人でって抵抗があって、お断りしてたんです。」
シズクちゃんが語ってくれた話は、二人が出逢う切っ掛けと、付き合う事になった経緯だ。
一見よくある話だ。俺も営業だからその手の話題はよく聞く。
でも、付き合う事になった経緯は、なんて言うか、どんな顔をして良いのか分からなかった。
だから極力表情に出さずに、頷いて聞いていた。
それは好きになるのも無理は無い。ある意味反則だろ。
「それから一年付き合って、婚約したのが半年前だったんです。」
早く家族が欲しかったんです、だって。
そりゃね、分からんでもないよ。
そのまま上手く行けば、幸せになれただろうね。
「でも、三ヶ月前にある女の人に会ったんです。その人から圭一さん…あ、婚約者の名前です。圭一さんとはどう言う関係なのか?と詰め寄られまして。」
あー、そう言う事か。
寝耳に水だよな。圭一さんよ、お前は間違った。その女にも好きだー、とかお前だけだーとか言ってたんだろ。
「結局その女の人とは仲良くなったから良いんですけど、その時に色々彼の事を聞いて、この人とは家族になれないなと。それでその女の人と二人で、どういう事なのかと聞きに行って、婚約破棄をしますって。」
仲良くなっちゃった!被害者同士ってやつだな。
婚約破棄は、まぁそうなるよな。
親戚やら向こうの両親やらに話をして、正式にこの話は無かった事になったそうだ。
彼女は淡々と語っているが、この話は付き合い始めから含めて、思い出すのも辛い話しだろう。
俺はこの話を聞いても、慰めて上げられる言葉を持ち合わせていない。
だから彼女の肩を抱き寄せて、髪を撫でてあげる。
「大変だったね。」
そんな言葉しかかけて上げられないが、今まで何の関係も無かったからこそ、色々吐き出せるんだろうと思い、黙って聞いてあげた。
話しをしてると、多分だけどこの子は周りを心配させまいと、色々我慢してたんじゃないかな。
シズクちゃんは、俺が髪を撫でてきた事にピクっと震え、俺を見つめてきた。
その瞳には涙が浮かんでいた。
そして抱きついて来たかと思うと、震えながら泣き出した。
それはもう、堰を切ったように泣き出した。
うんうん。泣きたいだけ泣けば良い。
俺には何も出来ないけど。聞く事しか出来ないけどね。
この子と今後どうなるのか、今日だけなのか、それは分からないけど、俺には多分シズクちゃんを幸せにして上げる事が出来ないから、せめて笑っていられる様に接して上げよう。そう思ったんだ。
バスローブの色が、彼女の涙で濃くなっていく。
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