Rest feather

司馬楽 みちなり

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第2章 Birthday

第25話 告白

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 一時的に俺の家に避難する事になった雫の着替えや、生活必需品をある程度纏め、大きめのキャリーバッグに詰め込んだ。

「しばらくの間、よろしくお願いします。」

 頬を赤らめて、雫が頭を下げる。
 なんだこれ?避難だよ?
 若干嬉しそうに見えるのは気の所為と言う事にしておこう。

「シンちゃん、雫の事よろしくね。雫ヤリすぎちゃだめよ?」

「ス、スス、スミレさん!何を言ってるんですか!」

「フフっ。あまり考え過ぎないで、楽しんで来なさい?」

「ちょっと、スミレさん?これ避難だよね?もう少し緊張感持とうよ。」

「シンちゃん、こんな状況だからってずっと緊張してたら胃に穴があいちゃうよ?」

「大将も余裕だな…」

 もうこの夫婦は肝が据わってるって言うか、肝がコンクリートで固められてるんだろう。

 動じないんじゃない。あまり気にしてないんだ。

 まぁ今はそんな態度が、雫の為にも有難い。
 俺も肝を据えよう。

「まぁいいや。そういう事なら雫、毎日いっぱいしような?」

「ななな…シンさん!?………エヘへ」

「あらあら、若いわね~。」

「菫、じゃあ俺達も頑張ろうか!」

「龍ちゃん!大好き!」

 混沌としてきた。

 こんな軽口を叩くのも、雫の為だよな。
 川口家は雫の事が良くわかっているんだな。

 だよな?そうだよな?

 いやいや、大将?スミレさん?
 なんで抱き合ってるの?

 もういい、家に帰ろう。

「あ、雫ちゃん!明後日に師匠が帰って来るからさ、店においで?」

 帰る間際、大将から声をかけられた。

 雫を連れて、俺のマンションに到着した。
 賃貸だが、割とセキュリティもしっかりしてるし、安心して過ごせばいいと雫を部屋に案内する。

 ウチにはあまり物がない。だから逆に都合がいい。

 適当に荷物を置いて貰って、一応部屋の中を案内した。

「本当に物が無いですね…あ、ごめんなさい!」

「ははっ。なんで謝るの?広くて良いだろ?ベッドは一つしかないから、一緒に寝る?」

「あ、一緒に寝たいです!シンさん、キッチン見ても良いですか?」

 キッチンも大して物がないんだよなぁ~。

「食材とか殆ど無いから、ここに居る間は外に食べに行こうか?」

「お世話になりっぱなしなので、ご飯は私が作ります!」

「あ、え?いいの?」

「はい!料理好きなんで!」

 という事で、雫に料理を任せるようになった。

 近くにあるスーパーに食材を買いに行く。

 レジ袋を持って、二人で歩いていると、雫が寂しそうな顔をしている事に気付いた。

「どうした?何か思い出した?」

「はい。お姉ちゃんとも良くこうやって買い物に行きました。一人になって気付く事って多いですよね。やっぱり家族っていいな~って。」

「そうだね。俺も家族居ないからな。たまに寂しくて、この世に一人なんじゃないかって気持ちになる。だから無理をして結婚までして。でもやっぱり家族は愛し合ってないとダメなんだって思ったよ。雫はちゃんと愛し合える人と一緒になりなよ?」

「私、人を本気で好きになるのが怖くなって、シンさんとこんな関係を続けさせて貰ってますけど、やっぱりちゃんと人を好きになりたい。私はシンさんが好きです。恋人になりたいのか、家族になって欲しいのか、今は自分の気持ちが良くわからないですけど…」

 雫の告白に、俺はどうする事も出来ない。

 今じゃないんだ。
 この状況を乗り越えて、普通の関係を築いて、それから自分の気持ちに向き合って…

 俺達は最初から身体の関係になってしまったから、気持ちがついて行っていない。

 身体の関係をもつと、感情も引っ張られやすい。
 寂しい思いをしている雫は特にそうだと思う。後悔しないようにして欲しい。

 寂しいから傍にいる人を好きになるのではなくて、好きだから傍にいたいと思う人を選んで欲しい。

「今はまだ、無理に色々と答えを出す必要はないさ。多分、自然と答えは出るんじゃないかな?」

「そう…ですね。」

「腹減った!今日は何を作ってくれるのかな?その後、雫も食べていいよね?」

「私は食べ物じゃないですよ?でも、私がシンさんを食べちゃうかも知れませんけどね?」

 今は現状をどうにかする。

 考えるのはそれからだ!それ迄はいつも通り!

 あ、どうにかしてくれるのは川口家か…
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