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第4章 幸せの形
第47話 今更な話
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なんで今更こいつに会う事になったんだ?
目の前の人物は、震えながら顔を伏せている。
それはそれとして…
俺はじろりと横の女を睨んだ。
「おいマヤ、その反応は俺とこいつの関係を知ってて連れてきたな?」
「ええ?何の事かな~?」
チッ!惚けやがって。
目の前の奴を見ると、否応なく不快になる。
顔にも出ているだろう。
すぅー、はぁ。
俺は深呼吸して、一度何もない所に目線を移し、煙草を取り出した。
「どうぞ…」
藤田某は、俺が咥えた煙草に火を付けた。
こんな状況でも仕事は怠らないとは…
思わず苦笑いして、近くのソファに座った。
「二人とも座れよ。マヤ、なんでこいつが先輩なんだ?」
「ユウキさんは中学の時の先輩だよ?つい最近久しぶりに見つけたんだよね~。」
見つけたってなんだよ。
「それで、花蓮さんは高校の時の先輩なんだよ。」
こいつの口から花蓮の名前が出てくるのかよ。
なんなんだこいつは。
花蓮と言う名前を聞いて、ユウキはビクリと肩を揺らした。
「なんで花蓮の名前が出てくるんだ?花蓮の話はしてないだろ。」
「あら、うっかり!」
このクソオッパイが!
「ふへへへ、まぁいっか。花蓮さんは上得意様だからね。それに昔凄いお世話になったからさ、これはサービスです!」
「はぁ?訳わかんねぇよ。」
「ねえシン、ユウキさんって高校中退してるんだよ。」
いきなりなんだ?俺はあれ以来、花蓮もこいつも見かけてすらいない。
「花蓮さんの婚約者だったのは知ってるよね?ある時さ、花蓮さんの家に行ったんだって。ユウキさん、話していい?」
ユウキは苦渋に満ちた表情で俺に向き直った。
「いいわ。話してあげる。山口先輩、最後にあった日を覚えてますか?」
忘れる訳がない。今でもたまに夢に見る程だ。
「俺が停学になった翌日だな。車で…」
「そうです。あの後花蓮の部屋に行って、頂くつもりでした。」
「ああ、花蓮もそうするつもりだと言ってたな。」
「実際、途中まではしてましたけどね。キスは拒まれた。」
一体何が言いたいんだ。なんで震えてるんだよ。
「結局最後まではしませんでした。いや、出来なかった。」
「はぁ?なんで?」
なんだそりゃ?あの時俺は花蓮が他の男に抱かれる道を選んだことに絶望したんだ。
その道を進む事を勝手に決めた花蓮に失望したんだよ。なのに何だそれは?
「ここからは私が話すよ。ユウキさんトラウマになってるみたいだからね。詳しくは知らないけど、こういう事らしいよ?」
マヤが話した内容は、俺でも震えが来そうな話だった。
あの日、花蓮と事に及ぼうとし、意気揚々と初めたが、花蓮は冷たい視線をずっと向けながら、ユウキの尊厳を踏み躙るような言葉を淡々と告げていた。
一々俺を引き合いに出し、どれほど自分がダメな人間だと思い知らせ、心を折った。
「あんな視線を向けられたのは、初めてでした。彼女の身体も全く反応しなくて、密室に二人でいるのが怖かった。僕も縮み上がってしまいました。」
その後、ユウキは心を病んで引き籠もってしまう。
そのまま高校を中退し、女性恐怖症にまでなった。
今女性と話せるのは、男として接していないかららしい。
花蓮…お前何を言ったんだ?一人の男をここ迄変える程にその存在ごと否定し、踏みにじったのか?
いや、でも待て。
それで大丈夫だったのか?
「マヤ、お前その後の花蓮を知ってるんだよな?」
「まぁね。その後花蓮さんに婚約者は出来なかったよ?だってそりゃそうでしょ?婚約者になった相手をペシャンコに叩き潰すような相手を嫁に出来ないじゃない?父親が何度か探してたみたいだけどね、断られ続けて諦めたみたいよ?」
おいおい、そこまで酷かったのか?
「なんだよそりゃぁ…俺は今まで何を…」
「しょうがないじゃん?花蓮さんは裏切りは裏切りってシンに説明しようとしなかったんだから。それに、ユウキさんがそれでも押し倒して来るなら、抱かれてたって言ってたし。」
「それにしたって…それでも父親はまだ諦めてないだろ?」
「いや、だから諦めたって言ったじゃん?て言うかもういないし。」
「は?いないって、どういう事だ?」
「病気でね。成人病だよ?進行が早くてね?気付いた時には手遅れだったって。よっぽど食生活が乱れてたんじゃない?ふへへ…」
まてまてまてまて!
何笑ってるんだ!?もしかしてそれも花蓮の…
いや、これ以上はダメだ。
考えるな!感じろ!…何をだ?
「あのなぁ、今更それを聞かされて俺はどうすればいいんだよ。もう遅いだろ。」
「遅いと思う?花蓮さんは、いつまでも愛してるんじゃないの?」
なんだよ突然こんなさ。本当に今更だろ。
何年経ってると思ってんだよ。
大体さ、俺はもう人を愛せないんだよ。
「お前さ、なんでそんなに詳しいの?ただの後輩なんだろ?」
「なんでかな?多分、調べるのが上手かったりするんじゃないの?カズト君の事とか?」
「お前ぇ!!お前か!はぁ~、マジかよ…」
「オホホホ。」
「変な笑い方しやがって。…まて!」
「なにさ~。」
「『ぐっち』で俺に絡んできてたのも、もしかして…」
「さて!それじゃあ今日はお暇しましょうかね~。」
「マヤ!ちょっとまて!」
「いやいや、シンと飲むのが楽しいのは本当だよ?来週は『ぐっち』に来てよね?」
マヤはVIPルームを出て行った。
ダメだ、頭が混乱を極めている。どうすべー。
て言うか、ユウキと俺を二人にするなよ…
「山口先輩!あれから色々考えたんです。あんな恐ろしい人を惚れさせるなんて、先輩は凄い人だって。だからずっと憧れてました。」
ああ?なんだよ、その潤んだ瞳は。
次から次に混乱させるな。
頭の処理能力が限界に達した。
もういいや。帰ろう。
俺は片手でこめかみを抑え、大きな溜息をひとつつき、一言告げその場を後にした。
「勘弁してくれ…」
目の前の人物は、震えながら顔を伏せている。
それはそれとして…
俺はじろりと横の女を睨んだ。
「おいマヤ、その反応は俺とこいつの関係を知ってて連れてきたな?」
「ええ?何の事かな~?」
チッ!惚けやがって。
目の前の奴を見ると、否応なく不快になる。
顔にも出ているだろう。
すぅー、はぁ。
俺は深呼吸して、一度何もない所に目線を移し、煙草を取り出した。
「どうぞ…」
藤田某は、俺が咥えた煙草に火を付けた。
こんな状況でも仕事は怠らないとは…
思わず苦笑いして、近くのソファに座った。
「二人とも座れよ。マヤ、なんでこいつが先輩なんだ?」
「ユウキさんは中学の時の先輩だよ?つい最近久しぶりに見つけたんだよね~。」
見つけたってなんだよ。
「それで、花蓮さんは高校の時の先輩なんだよ。」
こいつの口から花蓮の名前が出てくるのかよ。
なんなんだこいつは。
花蓮と言う名前を聞いて、ユウキはビクリと肩を揺らした。
「なんで花蓮の名前が出てくるんだ?花蓮の話はしてないだろ。」
「あら、うっかり!」
このクソオッパイが!
「ふへへへ、まぁいっか。花蓮さんは上得意様だからね。それに昔凄いお世話になったからさ、これはサービスです!」
「はぁ?訳わかんねぇよ。」
「ねえシン、ユウキさんって高校中退してるんだよ。」
いきなりなんだ?俺はあれ以来、花蓮もこいつも見かけてすらいない。
「花蓮さんの婚約者だったのは知ってるよね?ある時さ、花蓮さんの家に行ったんだって。ユウキさん、話していい?」
ユウキは苦渋に満ちた表情で俺に向き直った。
「いいわ。話してあげる。山口先輩、最後にあった日を覚えてますか?」
忘れる訳がない。今でもたまに夢に見る程だ。
「俺が停学になった翌日だな。車で…」
「そうです。あの後花蓮の部屋に行って、頂くつもりでした。」
「ああ、花蓮もそうするつもりだと言ってたな。」
「実際、途中まではしてましたけどね。キスは拒まれた。」
一体何が言いたいんだ。なんで震えてるんだよ。
「結局最後まではしませんでした。いや、出来なかった。」
「はぁ?なんで?」
なんだそりゃ?あの時俺は花蓮が他の男に抱かれる道を選んだことに絶望したんだ。
その道を進む事を勝手に決めた花蓮に失望したんだよ。なのに何だそれは?
「ここからは私が話すよ。ユウキさんトラウマになってるみたいだからね。詳しくは知らないけど、こういう事らしいよ?」
マヤが話した内容は、俺でも震えが来そうな話だった。
あの日、花蓮と事に及ぼうとし、意気揚々と初めたが、花蓮は冷たい視線をずっと向けながら、ユウキの尊厳を踏み躙るような言葉を淡々と告げていた。
一々俺を引き合いに出し、どれほど自分がダメな人間だと思い知らせ、心を折った。
「あんな視線を向けられたのは、初めてでした。彼女の身体も全く反応しなくて、密室に二人でいるのが怖かった。僕も縮み上がってしまいました。」
その後、ユウキは心を病んで引き籠もってしまう。
そのまま高校を中退し、女性恐怖症にまでなった。
今女性と話せるのは、男として接していないかららしい。
花蓮…お前何を言ったんだ?一人の男をここ迄変える程にその存在ごと否定し、踏みにじったのか?
いや、でも待て。
それで大丈夫だったのか?
「マヤ、お前その後の花蓮を知ってるんだよな?」
「まぁね。その後花蓮さんに婚約者は出来なかったよ?だってそりゃそうでしょ?婚約者になった相手をペシャンコに叩き潰すような相手を嫁に出来ないじゃない?父親が何度か探してたみたいだけどね、断られ続けて諦めたみたいよ?」
おいおい、そこまで酷かったのか?
「なんだよそりゃぁ…俺は今まで何を…」
「しょうがないじゃん?花蓮さんは裏切りは裏切りってシンに説明しようとしなかったんだから。それに、ユウキさんがそれでも押し倒して来るなら、抱かれてたって言ってたし。」
「それにしたって…それでも父親はまだ諦めてないだろ?」
「いや、だから諦めたって言ったじゃん?て言うかもういないし。」
「は?いないって、どういう事だ?」
「病気でね。成人病だよ?進行が早くてね?気付いた時には手遅れだったって。よっぽど食生活が乱れてたんじゃない?ふへへ…」
まてまてまてまて!
何笑ってるんだ!?もしかしてそれも花蓮の…
いや、これ以上はダメだ。
考えるな!感じろ!…何をだ?
「あのなぁ、今更それを聞かされて俺はどうすればいいんだよ。もう遅いだろ。」
「遅いと思う?花蓮さんは、いつまでも愛してるんじゃないの?」
なんだよ突然こんなさ。本当に今更だろ。
何年経ってると思ってんだよ。
大体さ、俺はもう人を愛せないんだよ。
「お前さ、なんでそんなに詳しいの?ただの後輩なんだろ?」
「なんでかな?多分、調べるのが上手かったりするんじゃないの?カズト君の事とか?」
「お前ぇ!!お前か!はぁ~、マジかよ…」
「オホホホ。」
「変な笑い方しやがって。…まて!」
「なにさ~。」
「『ぐっち』で俺に絡んできてたのも、もしかして…」
「さて!それじゃあ今日はお暇しましょうかね~。」
「マヤ!ちょっとまて!」
「いやいや、シンと飲むのが楽しいのは本当だよ?来週は『ぐっち』に来てよね?」
マヤはVIPルームを出て行った。
ダメだ、頭が混乱を極めている。どうすべー。
て言うか、ユウキと俺を二人にするなよ…
「山口先輩!あれから色々考えたんです。あんな恐ろしい人を惚れさせるなんて、先輩は凄い人だって。だからずっと憧れてました。」
ああ?なんだよ、その潤んだ瞳は。
次から次に混乱させるな。
頭の処理能力が限界に達した。
もういいや。帰ろう。
俺は片手でこめかみを抑え、大きな溜息をひとつつき、一言告げその場を後にした。
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