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1章 意味も無く死にそして転生
1.3 とりあえず街に向かう話
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リーダーと思わしき男が前に出てくる。
「あんたが1人で討伐したのか?」
「そうだが?」
言葉が分かるな。神がそうしてくれたのだろうか。
「なんということだ! 我々は街道沿いに出現したメガネパルの討伐依頼を受け来たパーティーで、騎馬騎士隊という。私はその隊長をしている」
「はぁ・・・じゃあこの死体は任せていいか? どうしようか困っていたのだ」
「なんと! 所有権を放棄するのか!?」
異世界であるが為に話が噛み合わず、相手が困惑するだけになってしまう。
俺は咄嗟に、別の地から来た旅の者という話をし、それに納得した隊長から色々と聞くことができた。
まずこのイノシシの名前は、ネパルという猛獣らしい。
猛獣は大きさに合わせて、ネパル・メガネパル・ギガネパル・テラネパルと、名前の頭に区別を付けて分類されているそうだ。
分け方がなんかコンピューター用語なのが気になるが、まあそこは良しとしよう。
ネパルの段階で馬と同等のサイズのようだが、メガネパルになると象以上のサイズ、ギガネパルになると教科書で見た恐竜サイズと、どんどんでかくなり、テラネパルになると勝てるのは神獣という存在位だそうで、街が襲われた時は住人は全て避難し、ただ通り過ぎるのを待つのだとか。
この世界では動物を獣としてとらえていて、家畜として扱っているのはただの獣、人より強く狩猟者が狩猟を依頼される猛獣、人の言葉を使い猛獣よりも強い存在で上位の狩猟者が討伐を依頼される魔獣、神の領域と言われる不思議な力を使える、人が絶対に勝てない存在である神獣。
神獣以外の獣の討伐依頼を受けるのが狩猟者であり、騎馬騎士隊というダサいパーティー名を名乗ったこいつらは、狩猟組合で依頼を受けてやってきたそうだ。
死体を引き渡そうとしたのに驚かれたのも、こういった猛獣は食料はもちろん、あらゆる部位が加工品としても利用されていて、メガネパル程の体躯になるとそれなりに高値で売れるそうだ。
依頼料自体は少額で、狩猟者は獣を市場に出品し、その売値で生計を立てているという事だった。
そしてのその死体の所有権は討伐した者にこそあり、大金になる物の所有権を手放そうとした俺に、彼等は驚いていたというわけだ。
金になるのなら話は別だ。こいつらが来た街に運んでもらい、売却して金にしよう。
「なるほど。メガネパルを売却するために街に案内しろ。案内と売却の仲介をするのなら、売値の2割を渡そうか」
「あ・・・ああ。分かった」
メガネパルをもらう事が出来なくなり、明らかに落胆と不満の顔に変わっている。
自分達が倒せていたら、もっと懐に金が入っていたわけだから当然だろうが。
大金が手に入らないとなると、露骨に態度を変えてきたな。
別の世界に来ても、人間というものは変わらないのだな。
「メガネパルの為に荷馬車を引いてきたのですが、思ったより大きかったので、これでは入りませんね。伝令を街に向かわせ、新しい荷馬車を・・・」
「時間の無駄だ」
騎馬騎士隊が持ってきている荷馬車を観察し、ある程度構造を理解した後に、ゲネシキネシスを発動する。
出来あがったものには、ゴムのタイヤとスプリングを加えておいた。
実験成功だな。とりあえず知っていれば、既存の物質も創造出来る事が分かった。
メガネパルの死体に手をかざし、サイコキネシスを発動して持ち上げようとする。
すると、今回はそれほど集中しなくても、簡単に持ち上げる事が出来た。
何となくだが、メガネパルを止めた時より力が増していて、使うのが楽になっている感じがする。
俺に与えられた力は、使えば使うほど強化されていくのだろうか。
メガネパルを持ち上げて荷馬車に移し、馬を繋げるよう合図を送る。
集中して作業をしていたので気付かなかったが、騎馬騎士隊の面々は口を大きく開けて、目が飛び出さんとばかりに驚いているのに気が付いた。
「何もない所に荷馬車が・・・。メガネパルが中に浮いて・・・。対象を浮遊させる魔法なら見た事があるが、魔法陣が出現していないので魔法ではない・・・という。もう訳が分からなくなってきた」
混乱している隊長の言葉が飛んでくる。
失敗したな。むやみに力を使うべきではなかったか。
異端の存在として認識され、厄介ごとに巻き込まれるとやっかいだな。
なるべく人前で力を使わない方がいいだろう。
「俺の故郷で使われていた力だ。あまり詮索して欲しくないな」
「はぁ・・・」
人の口に戸は建てられない。
俺の人生経験から得たのか、俺は不利益をもたらす人間を見分ける感が鋭い。
その感が、こいつらは面倒を起こすと警告を発している以上、こいつらと無用な関わりを持つ必要はないだろう。
だが先程の魔法という発言。
より厄介な人間に関わらない為にも、こいつ等と街に行き、この世界の情報を収集する必要もある。
それまでは最低限、こいつ等と関わる必要があるだろう。
それに神の言う世界を救うというのが、何を指しているのか確認する必要もあるだろうしな。
「荷馬車を馬に繋ぎました。あなたはどうされますか?」
「メガネパルの上に座っているさ」
メガネパルの上に飛び乗り、胡坐をかいて出発するのを待つ。
やがて荷馬車は速度を上げて、草原の中を街道を目指し駆けて行く。
「ここから街まではどれくらいかかる?」
「太陽が傾き、赤みを帯びる前位ですかな」
1日は24時間の概念がないのか。
太陽を見るってずいぶん原始的だが、動物が生きるには正しい時間の認識の仕方なのかもしれないな。
顔を上げると、遠方に街道が見えてきた。
「あんたが1人で討伐したのか?」
「そうだが?」
言葉が分かるな。神がそうしてくれたのだろうか。
「なんということだ! 我々は街道沿いに出現したメガネパルの討伐依頼を受け来たパーティーで、騎馬騎士隊という。私はその隊長をしている」
「はぁ・・・じゃあこの死体は任せていいか? どうしようか困っていたのだ」
「なんと! 所有権を放棄するのか!?」
異世界であるが為に話が噛み合わず、相手が困惑するだけになってしまう。
俺は咄嗟に、別の地から来た旅の者という話をし、それに納得した隊長から色々と聞くことができた。
まずこのイノシシの名前は、ネパルという猛獣らしい。
猛獣は大きさに合わせて、ネパル・メガネパル・ギガネパル・テラネパルと、名前の頭に区別を付けて分類されているそうだ。
分け方がなんかコンピューター用語なのが気になるが、まあそこは良しとしよう。
ネパルの段階で馬と同等のサイズのようだが、メガネパルになると象以上のサイズ、ギガネパルになると教科書で見た恐竜サイズと、どんどんでかくなり、テラネパルになると勝てるのは神獣という存在位だそうで、街が襲われた時は住人は全て避難し、ただ通り過ぎるのを待つのだとか。
この世界では動物を獣としてとらえていて、家畜として扱っているのはただの獣、人より強く狩猟者が狩猟を依頼される猛獣、人の言葉を使い猛獣よりも強い存在で上位の狩猟者が討伐を依頼される魔獣、神の領域と言われる不思議な力を使える、人が絶対に勝てない存在である神獣。
神獣以外の獣の討伐依頼を受けるのが狩猟者であり、騎馬騎士隊というダサいパーティー名を名乗ったこいつらは、狩猟組合で依頼を受けてやってきたそうだ。
死体を引き渡そうとしたのに驚かれたのも、こういった猛獣は食料はもちろん、あらゆる部位が加工品としても利用されていて、メガネパル程の体躯になるとそれなりに高値で売れるそうだ。
依頼料自体は少額で、狩猟者は獣を市場に出品し、その売値で生計を立てているという事だった。
そしてのその死体の所有権は討伐した者にこそあり、大金になる物の所有権を手放そうとした俺に、彼等は驚いていたというわけだ。
金になるのなら話は別だ。こいつらが来た街に運んでもらい、売却して金にしよう。
「なるほど。メガネパルを売却するために街に案内しろ。案内と売却の仲介をするのなら、売値の2割を渡そうか」
「あ・・・ああ。分かった」
メガネパルをもらう事が出来なくなり、明らかに落胆と不満の顔に変わっている。
自分達が倒せていたら、もっと懐に金が入っていたわけだから当然だろうが。
大金が手に入らないとなると、露骨に態度を変えてきたな。
別の世界に来ても、人間というものは変わらないのだな。
「メガネパルの為に荷馬車を引いてきたのですが、思ったより大きかったので、これでは入りませんね。伝令を街に向かわせ、新しい荷馬車を・・・」
「時間の無駄だ」
騎馬騎士隊が持ってきている荷馬車を観察し、ある程度構造を理解した後に、ゲネシキネシスを発動する。
出来あがったものには、ゴムのタイヤとスプリングを加えておいた。
実験成功だな。とりあえず知っていれば、既存の物質も創造出来る事が分かった。
メガネパルの死体に手をかざし、サイコキネシスを発動して持ち上げようとする。
すると、今回はそれほど集中しなくても、簡単に持ち上げる事が出来た。
何となくだが、メガネパルを止めた時より力が増していて、使うのが楽になっている感じがする。
俺に与えられた力は、使えば使うほど強化されていくのだろうか。
メガネパルを持ち上げて荷馬車に移し、馬を繋げるよう合図を送る。
集中して作業をしていたので気付かなかったが、騎馬騎士隊の面々は口を大きく開けて、目が飛び出さんとばかりに驚いているのに気が付いた。
「何もない所に荷馬車が・・・。メガネパルが中に浮いて・・・。対象を浮遊させる魔法なら見た事があるが、魔法陣が出現していないので魔法ではない・・・という。もう訳が分からなくなってきた」
混乱している隊長の言葉が飛んでくる。
失敗したな。むやみに力を使うべきではなかったか。
異端の存在として認識され、厄介ごとに巻き込まれるとやっかいだな。
なるべく人前で力を使わない方がいいだろう。
「俺の故郷で使われていた力だ。あまり詮索して欲しくないな」
「はぁ・・・」
人の口に戸は建てられない。
俺の人生経験から得たのか、俺は不利益をもたらす人間を見分ける感が鋭い。
その感が、こいつらは面倒を起こすと警告を発している以上、こいつらと無用な関わりを持つ必要はないだろう。
だが先程の魔法という発言。
より厄介な人間に関わらない為にも、こいつ等と街に行き、この世界の情報を収集する必要もある。
それまでは最低限、こいつ等と関わる必要があるだろう。
それに神の言う世界を救うというのが、何を指しているのか確認する必要もあるだろうしな。
「荷馬車を馬に繋ぎました。あなたはどうされますか?」
「メガネパルの上に座っているさ」
メガネパルの上に飛び乗り、胡坐をかいて出発するのを待つ。
やがて荷馬車は速度を上げて、草原の中を街道を目指し駆けて行く。
「ここから街まではどれくらいかかる?」
「太陽が傾き、赤みを帯びる前位ですかな」
1日は24時間の概念がないのか。
太陽を見るってずいぶん原始的だが、動物が生きるには正しい時間の認識の仕方なのかもしれないな。
顔を上げると、遠方に街道が見えてきた。
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