異世界の無法者<アウトロー> 神との賭け・反英雄の救済

さめ

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2章 少女との出会いそして同行

2.1 狩猟組合に入って依頼を受ける話

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 目が覚めるが、目を開けずに手を動かして周りの感触を確かめる。

 昨日のベッドの感触がする。

 どうやら夢落ちではなく、俺はまだこの世界にいるようだ。

 安心して目を開くと、窓から入る日差しが眩しい。

 起き上がって窓から外を見る。すでに街は活動を始めていた。

 寝巻から昨日創造した服に着替え、メニューから選んだ朝食を紙に書いて入れると、程無くして朝食が部屋に届けられた。

 受け取る時にマスクを付けていたが、特に怪しまれるようすもなかったのは幸いだったな。

 食事を終えて食器を回収してもらい、お腹が落ち着くのを待ってから、部屋を出て受付に鍵を預ける。

「メガネパルのステーキは如何でしたか? 昨日新鮮な肉を入荷しまして」

「おいしかった・・・よ」

 あれメガネパルの肉だったのか。それ俺が仕留めたやつなんだが。

 ホテルを出て、露店や街並みを観察しながら狩猟組合に向かう。

 看板や会話に聞き耳を立てると分かってきたのは、現地の言葉や文字が俺の脳内で自動的になじみのある言語に変換されていることだ。

 なじみ深い言語だからこそ、サービスやマスクなど日本語以外が混じっているのだと思う。

 ということは俺が使っても自動的に変換されてるみたいだから、話し言葉として今まで通りに喋っていいってことか。



 などと考えている内に、狩猟組合に到着した。

 西部劇に出てくるような、木で出来た飲み屋のような建物だな。

 中に入ると、丸テーブルと椅子がいたるところに置かれ、ちらほら武装した奴等がパーティーで固まっている。

 酒場も兼任しているのか、昼間っから酒を飲んでるパーティーも居る始末だ。

 入ってからいくつかの視線を感じる。まあ気にしなければいい話だが。

 受付が見えて奥に進むと、1人の剣士風の男が足をかけようとしてきた。

「何の真似だ?」

「ここで仕事したいなら、俺達に登録料を払ってもらおうか?」

 この男のパーティーメンバーであろう、テーブルを囲んでいる剣士風の3人もニヤついている。

 絡んできた男も含めて、男3人の女1人のパーティーのようだな。

「そんな必要があるとは聞いてないが」

「うるせえな! さっさと払えよ!」

 男は立ち上がり完全に進路を塞ぎ、他のメンバーも立ち上がり俺を囲んでくる。

「大人しく金を寄こしな」

 イライラするな。新人狩りでもしているのだろうか。

 ともあれ話しても無駄な奴等には、これ以上の言葉は必要ない。

 立塞がる男の股間に蹴りを加え、絶叫と同時に頭に父にやられたダブルスレッジハンマーを加え、うつ伏せに倒れた後、後頭部を踏みつけて意識を完全に奪う。

 あっけに取られている他の3人にも、連帯責任として攻撃を加える。

 後ろに立っている男には胸部へ肘を入れて吹き飛ばし、壁に叩きつけて気絶させる

 右に居る男には裏拳を顔面に入れ、意識を飛ばして膝から崩れ落ちさせる。

 最後に女が残ったが、既に戦意を損失していた。

「ご・・・ごめんなさい。許して・・・」

 涙目で許しを乞う女。俺にはそれがとても哀れに見える。

「今回が初めての事ではないのだろ? お前らは相手にそう言われた時に、今までどうしてきたんだ?」

「そ・・・それは・・・」

「答えが出たな」

 かなり力を込めて、女の顔面に右ストレートを放つ。

 拳は顔にめり込み、イスとテーブルを巻き込んで女は吹き飛ばされていき、壁を背にして仰向けに気絶した。

 顔を見ると歯がいくつか無くなっており、鼻を中心にして拳の形に凹んでいる。

 相手が悪かったな。俺は女だからと言って手加減しない。

 それにこうなったのも、お前達は自分より強い者を相手にする事を考えていなかっただけだ。

 周りは驚いているが、昨日隊長に聞いた通り騒ぎにはなりそうにないな。

 この国の今の状態は、もしかしたら俺にとって都合がいいのかもしれない。

 倒れている男を踏み歩き、受付まで行く。

 受付に座っている受付嬢に登録したいと申し出ると、ただただ唖然とするばかりで返事がない。

 しょうがないので、刀を抜き受付嬢の顔の前に刃を向ける。

「これで、受け付けする気になったか?」

「ひぃ! すいません! では狩猟者証の発行を致します!」

 家賃を回収に来た大家を、父が包丁を使って言う事を聞かせてたからな。

 あれがこんな形で役に立つとは。

 受付嬢はカウンターに置いてある、魔法陣が描かれた大理石の台を指差し、そこに手を置くように言ってきた。

 魔法陣に手を置くと、魔法が発動して魔法陣が輝き始める。

 受付嬢が金属のカードを魔法陣に置くと、カードが着色されてランクと数字が印字される始める。

 輝きが失われる頃には、金色に輝くカードだけが残った。

「ランクはゴールド!? レベルは13!?」

 受付嬢がカードを手に取り驚愕している。

「それは凄いのか?」

「凄いも何も、現状の最高ランクとレベルですよ!」

「現状?」

「この上にプラチナランクがありますが、それは狩猟で功績が認められないとなれないのです」

 なるほど。実績を上げなければ、到達できないランクという事か。

 あの隊長は確か、登録時はその人間の強さを魔法陣で読み取り、自動的に判定されると言っていたな。

 つまり俺は功績の無い狩猟者の中で、最も高い地位にいるという事か。

「これならどんな依頼も受けられるって事か?」

「はい・・・。プラチナランクの依頼なんて、ここでは1回も見た事ありませんし、ゴールドですら滅多にありません。シルバーの物はそれなりにありますが」

「依頼はどうやって受ける?」

 受付嬢は依頼が貼り付けられている掲示板を指差し、そこに貼られている依頼を受け付けに持ってきて欲しいと言った。

 持ってきた依頼書を、受付で狩猟者証に魔法陣で記録し、受注となるとそうだ。

 掲示板に張り出されている依頼とは別に、貴族や商人などから、実績を上げている狩猟者もしくはそのパーティーへ、名指しで依頼が来ることもあるそうだ。

 その場合は別途高額な依頼料が支払われるので、狩猟した獣の売却額と合わせるとかなり報酬が増えるのだとか。

 なので狩猟者やパーティーは名声を挙げようと、より強者を倒すために日々精進しているそうだ。

 とりあえずの仕組みは分かったものの、ややパーティを前提にした話が続いているのが気になる。

「あの・・・お1人で活動されるのですか? パーティーの登録はしないので?」

 疑問に思ったタイミングで、都合よく受付嬢に聞かれる。

「1人で問題ないと思うが」

「そうですね・・・ゴールドの13ですからね・・・」

 この反応からすると、本来はパーティーを組むのが普通なのだろうな。

「最後に名前を印字致しますので、お名前をお伺いしたいのですが」

 名前・・・。ルシファーはまずいだろうな。

 堕天使の名前を名乗っても、良い結果になるようには思えない・・・。

「あの? どうされました?」

「あ! ルシファーです」

 しまった! 急かされて思わず言ってしまった!

「ルシファー様ですね」

 ええ・・・。普通に受け入れられたな。

 この世界ではキラキラネームでは無いのだろうか。

 別の魔法陣で、名前が狩猟者証に印字される。

 狩猟者証を受け取り、掲示板に目を通すと、依頼書には最低ランクとレベル、推奨人数が書かれている。

 1番高いランクとレベルの依頼書を探し出すと、1つの依頼書に行きついた。

 バビロア南東に出没した、大型化したディパーグの討伐依頼。

 最低1人はランクシルバー、レベル10以上。推奨人数は4人か。

 なかなかの強敵のように見えるが、純粋にここが高ければ売値も高いだろうか。

 詳細は・・・森林を出て農地にまで姿を現しているのが目撃されている。人が襲われる前に討伐したいと、付近の農村からの依頼。

 狩猟報酬は銀貨1枚で、狩猟目安日数は移動も含めて3日か。

 依頼遂行に対する、報酬の安さも聞いていた通りか。

 獣市での売却額を報酬にする事で、依頼自体は気軽に出せる方式なのか。

 これなら人に害する獣の情報が、依頼という形で集まりやすいという訳だな。

 依頼書をはがし、受付嬢に手渡す。
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