異世界の無法者<アウトロー> 神との賭け・反英雄の救済

さめ

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7章 復活と使者そして仲間

7.4 新たな使いに会った話

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「凄い・・・洞窟の中なのに少し明るい」

「この神緑の森から連なる一連の土地は、人間の土地とは違う常識が存在するのだ」

 洞窟の壁や天井は僅かに光を帯びており、オリービアの目でもでも充分なほど先を照らしている。
 これほど神秘を感じる場所ならばと希望が湧いてくるが、そのはやる気持ちを抑え、オリービアは洞窟の奥へと歩みを進めた。

 やがて洞窟の奥に一層明るい空間が見えてくる。
 巨大なドーム状の空間で、上部がくり抜かれたように穴が開いており、そこからさす光がスポットライトのように、中心を照らしだしていた。
 その光が当たる場所には、円陣を組むように花が存在している。

「ここが陽光の洞窟の最奥、そして我ら神狼族が子を産む神聖な場所だ」

 オリービアが周りを見渡しても、草花があるのは光が当たっているところだけだった。
 万能の薬草があるとすれば、そこにしかない。
 恐る恐る光の差す場所に近づき、このような環境でも色鮮やかに咲き誇る花々を観察する。

 どんな見た目なのかも分からない、そもそもあるのかすら分からない。
 そんな不安を閉じ込めるように、慎重に目的の物を探す。

「これは・・・」

 オリービアはとある植物に目を止める。
 それは、ティグリスの大森林で採取した薬草と形は相違ないが、色が金色の草であった。

「これです! これに違いありません!」

「何だこれは!?」

 ガルムが草花を荒らさないよう、慎重にその金色の草に近づく。

「見覚えはないのですか?」

「ない。こんな物が、ここにあるなど聞いた事もない」

「でも、実際にここにありました」

「どうなっているのだ。我と母上が逃れた後、新たに芽吹いたとでも言うのか・・・」

「とにかく、万能の薬草というのが存在するのでしたら、これ以外には考えられません。ガルムさんが言った”人間の土地とは違う常識”に、賭けるしかないです」

 オリービアは慎重に、根ごと金色の草を抜き取り、湿らせた布に包み鞄にしまう。

「戻りましょう!」

「主が待っている」

 これが万能の薬草に間違いないと、確信を持ったオリービアは、ルシファーを助けられると思い自然と笑みがこぼれる。
 そんな様子を、ガルムも安堵した気持で見守っていた。



 洞窟の出口に差し掛かると、オリービアとガルムは異変に気づく。

 荷馬車が見えると、そこにはオートボウガンを撃つサラーの姿があった。

「サラーちゃん!」

「どうしたのだ!?」

「おねえちゃん! ガルムさん! あいつが来たです!」

 サラーが空を指差す。
 そこには翼を広げ、ローブで顔を隠したガブリエルによく似た存在があった。

「あいつ? あ~ガブリエルのことかよ。俺はガブリエルじゃね~よ」

 その存在が独特な抑揚で言葉を発する中、オリービアはサラーの元に駆けつけ剣を抜き、ガルムは技の発動準備をする。

「良く頑張ったわね、サラーちゃん」

「あたしと・・・おにいちゃんは大丈夫です。ルルさんが・・・守ってくれたです」

 ルルの姿が見当たらない事にやっと気づく。
 サラーの目線の先、そこには血だらけで倒れているルルの姿があった。

「ルルさん!」

「うるさいな~。殺してはいね~よ。こいつがいきなり攻撃してきたから、ちょいと痛めつけただけなんだがね~」

「よくもルルさんを!」

「おいおい、話を聞かずに飛び掛かってきたから、痛めつけただけなんだけどな~」

 悪びれるようすも無く、ただただ面倒そうにローブの存在は頬をかいた。

「あなたは誰ですか! ガブリエルの仲間ですか?」

「俺か? 俺はウリエルだ」

 ウリエルはフードを取り、ローブの前を開く。露になった姿がオリービア達の目に入った。
 髪は燃えるように赤いロングストレートで、非常に美しい女性の顔と、大きな胸持っていた。

 俺と言う言葉遣いから、男だと思っていたオリービア達は一瞬驚いてしまう。

 ローブの下には青みがかった、おそらく神鉄で出来た薄い鎧を着ているが、大きな胸
の輪郭に沿って体に密着しているようだ。
 右手に持った剣も神鉄でできているようで、太陽光を反射して青く輝いている。
 
「何ですかその胸は! いいですか! ルシファー様は、女性をそういうもので判断したりはしません!」

「奥方には緊張感と言うものがないのか!?」

「おにいちゃんが居ないから・・・ガルムさんが突っ込みをするようになってしまったです」

 ウリエルは地上に降り立ち、楽しそうに大笑いした。

「おめえら面白いね~! ガブリエルに怪我させたって言うから、どんな奴らかと思ったが、創造主から聞いてたより面白い連中だな~」

「私達に何の用ですか?」

「それな~。創造主からの命で、ここいらで仕事しに来たんだが、近くにあんたらが居るって聞いてね~。会いに来たんだよね~」

「会いにきた?」

 オリービアは、ルシファーとガブリエルの会話を思い出す。
 あの話がかみ合わない感じ、それと同じ物をウリエルから感じる。

 ガブリエルとはまた違った危険な雰囲気、それをずっと感じ続けていた。

「こうしてお会いしたのですから、もういいじゃないですか。帰られたらどうですか?」

「そう思ったんだけどさ、そういう訳にはいかなくなったんだよね~」

 ウリエルは剣をガルムに向ける。

「俺も神獣と闘ってみたくてな~。ガブリエルからなかなか強かったって聞いてるし、最後に残った神狼族と闘ってみたいんだよね~」

「奥方よ、ウリエルは我をご指名のようだ」

「ガルムさん!」

 ガルムは目配せを行い、自分が闘っているうちにルシファーに万能の薬草を処方しろと、オリービアに伝えようとした。
 その意図を察し、オリービアは黙って徐々に荷馬車に近づいて行く。

「そうだ、その万能の薬草なんだけどね~、すり潰して水と一緒に飲ませればいいんだってさ。それと、安心しな~。俺は荷馬車で寝ている男には、手を出さないから」

「何でこの薬草の事を? それにルシファー様をさらいに来たのでは?」

「俺はただ会いに来たのと、ついでに神獣と闘いたいだけだから。まだ理解してないのかね~。薬草は何で知ってるかって言うと」

「奥方よ!」

 ガルムが強引に話を遮り、ウリエルに飛びかかって行く。

「おっと! いいね~! そうこなくっちゃな~!」

 ウリエルは後ろに跳び、荷馬車から離れて戦闘を開始した。
 その行動は、ルシファーの治療の邪魔にならないよう配慮したように見え、オリービアとサラーは呆気に取られる。

 だが直ぐに我に返り、オリービアはサラーにルルのようすを見るように頼み、自分はルシファーの治療のため荷馬車に入った。

「ルシファー様・・・どうかこれで」

 外で戦いの音がする中、オリービアはウリエルの言っていた通りに万能の薬草をすり潰し、水と一緒にルシファーに与えた。
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