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46 アイラ王女
しおりを挟む「ゴホン……皆の者、聞いてくれ。聖女の力と言うのは皆も知っていると思うが――」
(はぁー。早く終わらないかしら)
侯爵の手を取ってせっかくこの場に立ったのに、王太子が長々と話を始めてしまった。
今日の主役は私なのよ?
それに聖女の力?そんなもの、これっぽっちも興味はない。
でもクレイ様と結ばれるためには、聖女にならないといけないから、こんな面倒なことをしてあげているだけ。
「――そこで今から聖女の力を国王陛下に使っていただきたい」
(はいはい。面倒だけどしかたないわね。えーっと……)
侯爵から言われた手順を思い出す。
(バレないように上手く腕輪を起動させて、光ったらあの液体を国王に吹き掛ければいいよのね)
そうすれば国王の病は治り、私は聖女となってクレイ様と結婚することができるのだと侯爵は言っていた。
(うふふ、みんなバカよね。聖女なんて存在しないのに。まぁ私を聖女様だと崇めればいいわ)
私は生まれながらに高貴な人間だ。これまでの人生、私が望めば手に入らないものはなかった。
だけど唯一手に入らなかったもの。それがクレイ様だ。
結婚が決まっても、彼を諦めることができなかった。だから嫁がされた家から逃げ出して、何とかこの国までたどり着いたのだ。
そして運良く侯爵と出会い、ようやくここまで来られた。
やっとだ。やっと手に入れることができる。
美しい私には美しい男が相応しい。これまで見てきた男の中で、クレイ様が一番だ。だから私の伴侶になるのは彼しかいない。
(とうとうクレイ様が私のものに……)
「それでは披露を……え?」
(さぁて、まずは手をかざして……ってなんだか騒がしいわね)
それっぽく見せようと、そっと目を瞑り手を翳していたのに、なにやら騒がしい。目を閉じているからか、余計に周囲のざわめきがうるさく感じた。
(何?この場の主役は私よ?今いいところなんだから、少し静かにしなさ……)
『あれは誰だ!?』
『ヴェールを被っていたのはこのためなのか?』
『ペンゼルトン公爵夫人?』
(公爵夫人?それは私のことで)
『なんて美しい銀髪なのかしら』
(は?銀髪?)
私は思わず瞑っていた目を開け辺りを見回す。すると……
(な、なんで……どうして……)
振り向いた先には、こちらに向かってくる女が一人。
女は碧色のドレスを身に纏っていた。そのドレスは先ほどクレイ様の隣に立っていた貧相な女と同じ。
そしてドレスよりも目をひいたのは、神々しく輝く銀の髪。歩く度に揺れるその髪に、周囲からはため息が溢れる。
その事実に激しく苛ついた。
(どうしてあの女が!私が、私が聖女なのに!)
「っ!あ、あんた……」
私の前に立ちはだかった女。
それは私が愛する男の、ただのお飾りにしか過ぎない女だった。
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