5 / 176
一章 異世界漂着
4話 逃げるのも戦いの内さ
しおりを挟む
地面はさっきとは打って変わって歩きやすい土ではなく、登山家が好みそうな岩の地面だった。少し前まで雨が降っていたのか、表面が滑る。
足裏に力を注ぎながら、慎重に、ゆっくりと歩く。
滑らないように心掛けて丁寧に歩いていると、どこからか人の声が聞こえた。
立ち止まり、聴覚の神経を最大限に引き上げる。
音の発生場所は西側。
西の方角に向くと、Hk416の上部レールに装着したブースターと呼ばれるホロサイトの倍率を上げるためのスコープを起こし、レンズに目を密着させた。
木々の隙間を縫ってレンズに野営地のような場所が映る。しかし、先程の悍ましい野営地とは違い、先にある野営地には人が何人か居た。顔や肌の色も自分と同じだし、仲間のキャンプ地だろう。
銃を下げると、あちらへ向かうためにジャングルのように入り組んだ森へ飛び込んだ。
枝が進撃を阻み、革製の鞘からサバイバルナイフを引き抜いて薙ぎ払う。
「自然は大好きだけど、ここまでくるとイライラするな」
そんな文句も、枝が断ち切られる音にもみ消されていく。
腕時計を見るとここに入ってから既に20分以上が経過していた。早く出ないと日が暮れて、今度こそはロシア軍に拉致されるかもしれない。
邪魔な枝を払いながら前進する事しばらく、ようやく深い森から抜け、野営地の前に辿り着いた。
到着したので早速そこらに立っていた兵士に話し掛けるが、妙な違和感に身を包まれた。
その違和感の正体は、目の前の兵士にあった。
歩哨の兵士は何時代なんだよという甲冑を身に着けていて、傷だらけの手には本でしか見た事のないような槍を持っていた。
どんなに貧乏な戦闘員でも、こんな時代遅れ過ぎる身なりはあり得ない。
敵の策略に落ちたのかと考えつつも疲れがだいぶ蓄積していたので、相手からの返答を待った。しかし眼前の兵士は目を鋭くしており、場違いな格好の自分を警戒していた。
兵士の警戒心を緩和しようとHk416の弾倉を引き抜き、敵ではない事を自分なりに証明した。これで柔らかくなってくれると助かるが、すぐにその考えは甘かったと思い知らされる。
槍の鋭い先端を顔の前に持って来られる。金属の尖った部分は錆だらけで、一部が欠けていた。かなりの数の生物を殺しているのだろう。もしかすると、コイツがあの野営地で虐殺を働いたのかもしれないと思う程だ。
「まあまあ、落ち着いて」
左手で槍を下げるように促す仕草をしつつ、右手はホルスターに収めているガバメントに伸ばす。
その行動が彼の怒りに火を点けたのか、槍を突っ込んできた。
間一髪のタイミングで下へ回避し、転がり回った後ガバメントを勢いよく引き抜いて立ち上がった。
この男は危険だと、射殺しようと思ったが―――気が付けば大勢の兵士に包囲されていた。襲って来た兵士はもちろんの事、かなりの刃渡りがある剣や手作り感満載のクロスボウを携えた兵士が立っている。テントからも続々と新たな兵士が出現していた。
数十人をたったの数発しか入らないガバメントで仕留めるのは不可能だ。
逃げるが勝ち、というやつだな。
足裏に力を注ぎながら、慎重に、ゆっくりと歩く。
滑らないように心掛けて丁寧に歩いていると、どこからか人の声が聞こえた。
立ち止まり、聴覚の神経を最大限に引き上げる。
音の発生場所は西側。
西の方角に向くと、Hk416の上部レールに装着したブースターと呼ばれるホロサイトの倍率を上げるためのスコープを起こし、レンズに目を密着させた。
木々の隙間を縫ってレンズに野営地のような場所が映る。しかし、先程の悍ましい野営地とは違い、先にある野営地には人が何人か居た。顔や肌の色も自分と同じだし、仲間のキャンプ地だろう。
銃を下げると、あちらへ向かうためにジャングルのように入り組んだ森へ飛び込んだ。
枝が進撃を阻み、革製の鞘からサバイバルナイフを引き抜いて薙ぎ払う。
「自然は大好きだけど、ここまでくるとイライラするな」
そんな文句も、枝が断ち切られる音にもみ消されていく。
腕時計を見るとここに入ってから既に20分以上が経過していた。早く出ないと日が暮れて、今度こそはロシア軍に拉致されるかもしれない。
邪魔な枝を払いながら前進する事しばらく、ようやく深い森から抜け、野営地の前に辿り着いた。
到着したので早速そこらに立っていた兵士に話し掛けるが、妙な違和感に身を包まれた。
その違和感の正体は、目の前の兵士にあった。
歩哨の兵士は何時代なんだよという甲冑を身に着けていて、傷だらけの手には本でしか見た事のないような槍を持っていた。
どんなに貧乏な戦闘員でも、こんな時代遅れ過ぎる身なりはあり得ない。
敵の策略に落ちたのかと考えつつも疲れがだいぶ蓄積していたので、相手からの返答を待った。しかし眼前の兵士は目を鋭くしており、場違いな格好の自分を警戒していた。
兵士の警戒心を緩和しようとHk416の弾倉を引き抜き、敵ではない事を自分なりに証明した。これで柔らかくなってくれると助かるが、すぐにその考えは甘かったと思い知らされる。
槍の鋭い先端を顔の前に持って来られる。金属の尖った部分は錆だらけで、一部が欠けていた。かなりの数の生物を殺しているのだろう。もしかすると、コイツがあの野営地で虐殺を働いたのかもしれないと思う程だ。
「まあまあ、落ち着いて」
左手で槍を下げるように促す仕草をしつつ、右手はホルスターに収めているガバメントに伸ばす。
その行動が彼の怒りに火を点けたのか、槍を突っ込んできた。
間一髪のタイミングで下へ回避し、転がり回った後ガバメントを勢いよく引き抜いて立ち上がった。
この男は危険だと、射殺しようと思ったが―――気が付けば大勢の兵士に包囲されていた。襲って来た兵士はもちろんの事、かなりの刃渡りがある剣や手作り感満載のクロスボウを携えた兵士が立っている。テントからも続々と新たな兵士が出現していた。
数十人をたったの数発しか入らないガバメントで仕留めるのは不可能だ。
逃げるが勝ち、というやつだな。
10
あなたにおすすめの小説
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました!
【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】
皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
ファミ通文庫大賞 一次選考通過
スティールスキルが進化したら魔物の天敵になりました
東束末木
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞、いただきました!!
スティールスキル。
皆さん、どんなイメージを持ってますか?
使うのが敵であっても主人公であっても、あまりいい印象は持たれない……そんなスキル。
でもこの物語のスティールスキルはちょっと違います。
スティールスキルが一人の少年の人生を救い、やがて世界を変えてゆく。
楽しくも心温まるそんなスティールの物語をお楽しみください。
それでは「スティールスキルが進化したら魔物の天敵になりました」、開幕です。
2025/12/7
一話あたりの文字数が多くなってしまったため、第31話から1回2~3千文字となるよう分割掲載となっています。
アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~
うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」
これしかないと思った!
自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。
奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。
得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。
直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。
このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。
そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。
アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。
助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。
神々の間では異世界転移がブームらしいです。
はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》
楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。
理由は『最近流行ってるから』
数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。
優しくて単純な少女の異世界冒険譚。
第2部 《精霊の紋章》
ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。
それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。
第3部 《交錯する戦場》
各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。
人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。
第4部 《新たなる神話》
戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。
連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。
それは、この世界で最も新しい神話。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します
名無し
ファンタジー
毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる