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一章 異世界漂着

23話 衛生兵は居ないのか!

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 猟奇的な笑みを浮かび上げた男が俺の生命活動を絶とうとしたその時、一発の銃声が森に響き渡った。

 「ああ……負けちまった……か」

 不意を突かれた男は膝から崩れ落ちて、瞼が開いたまま息を引き取った。

 「レベッカ……」

 隣を振り向くと、震える手でガバメントを握ったレベッカの姿。銃口からは火薬の匂いが漂っている。

 「勝手に使って、すみません……」

 ガバメントを力なく渡してくるが、そんなものは受け取らずに彼女の手を握った。

 「無駄に喋るな」

 意味のない行為だと分かりつつも、鋼鉄の鎧に覆われた背中を擦る。手には流血の真っ赤な液体が付着する。

 「どうすればいいんだ……」

 お釈迦になった狂人は「死ぬ事はない」と言っていたが嘘の可能性もあるし、本当だとしても苦痛で辛い思いをするのは明白だ。
 それに何より、苦しむレベッカを見たくない。
 頭を悩ませていると、彼女が大人しく待っている馬に指を真っすぐ伸ばした。

 「背中のバッグに、解毒液が入っているので、取ってきてもらえませんか」
 「お安い御用だ! 少し辛抱してくれ!」

 自分の痛みなんてすっかり忘れ、ご主人様を不安そうに眺める馬へ駆けて行った。
 それらしき解毒液を急いで運んで来た。瓶の中に紫の液体がたっぷりと詰められている。見た目はどちらかといえば毒みたいだ。

 「おい持って来たぞ」

 蓋を外して言う。香りは臭いが癖になる不思議な匂いだ。

 「ありがとうございます……」

 地面に手を付け、汗を垂らしながらレベッカが立ち上がった。

 「おいおい、無理は……」

 するなよ、と言い掛けた時。

 「あっ……」

 膝の力が抜け、頭から真下へ倒れそうになった。危ないと、すぐにレベッカを支えた。

 「向こうに行くぞ」

 レベッカを肩に担ぎ上げて、近くの丈夫な木へ移動を始める。

 「ちょっと……!? お、下ろして……」
 「黙れ、お前は怪我人だ。じっとしてろ」

 異性と密着するのは破廉恥だが、今はそんな事を気にする余裕はない。いや、気にしてはいけないのだ。
 到着すると、木を背もたれにして下ろした。
 顔は青ざめ、呼吸は非常に荒くなっている。早く治療しなければ。

 「薬はある。何をすればいい?」

 薬は液状だ。飲めばいいのか目に差せばいいのか、使用方法が分からない。

 「あの……脱衣しますので、背中に塗ってくれないでしょうか?」

 使用方法を聞いて、驚愕。
 この薬って、そんな使い方だったのか……別に塗るのが嫌ではない。だが、相手が相手だ。かなりの度胸を試される。

 「知り合ったばかりの赤の他人の肌を触るのが嫌だという事は承知しています……しかし体が」

 顔をほんのり赤くしながら懇願するレベッカを見て、俺は覚悟を固めた。
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