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一章 異世界漂着
38話 国民を苦しめる悪法
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病院の診察室へ担ぎ込んだあと、廊下の椅子に不安を覚えながら座っていた。
致命傷となる傷は無さそうだったが、外傷は酷いものだ。最悪の場合、一生治る事のない障害を背負う可能性だってある。
そう考えると、リンチをしていた集団に怒りが湧いてきた。
そして同時に、もっと早く着いていたらあそこまでの傷を負わされてはいなかっただろうと後悔の念が押し寄せた。
連中の残虐さと自分のちっぽけな力に心を痛めていると、診察室へ通じる扉がガラリと音を立てて開いた。
そこから、包帯やガーゼが目立つレベッカがゆっくりと歩いて来た。
「おい大丈夫か!」
椅子が壊れる程の勢いで立ち上がり、詰め寄る。
間近で見る治療の痕跡を受け、さらに心が痛めつけられた。
「何て奴らだ……」
両腕には10枚以上の絆創膏が貼られている。出血が酷かったのか、一部の絆創膏は薄い赤に変色していた。
レベッカを椅子へ座らせると、事情を聞いた。
「何であんな事になったんだ?」
「分かりません……ただ、あちらが言うには容姿が気に食わないとかで」
その言葉を聞いた途端、思わず病院の壁を殴ってしまった。
「何だよそれは、見た目でかよ!」
怒りは収まらず、何の罪もない床を蹴りまくる。
「お、落ち着いてくださいっ」
「おっと、悪い悪い……」
周囲の患者や看護師も暴れる自分を凝視していたので、慌てて大人しくした。
こちらも椅子に座ると一度深呼吸をし、精神を安定させる。今さっきは感情的になりすぎた。
「それにしても、理不尽だな……というかお前、結構強い騎士なんだろ? じゃああんな奴らやり返せよ」
「気持ちとしてはそうしたいですが、それは一生叶いません」
悔しく、悲しそうな表情でレベッカが語り出す。手は拳の形だ。それもかなりの力が加わっている。
「この帝国には、『転生人優先保護法』という法律があります」
「具体的にはどんな?」
「簡潔に言えば、転生人には何が何でも優しく接しましょうというものです」
こんなのは法律と言えない。単純に狂った寝言だ。
「だから……」
「ええ、言いたい事は分かります。その法律があるせいで、どんなに酷い仕打ちを受けても抵抗できないのです。……いや、やってはいけません」
「もしも、やると?」
「私が処罰され、死ぬまで暗い牢屋の中で過ごす可能性があります。特に今の皇帝は転生人にベッタリなので、それだけでは済まないかもしれませんが」
正当防衛を阻む理不尽な法律の存在を説明されている内に、さらなる怒りが重なった。
自分も他国の事はあまり強く言えないが、外から来た連中を優先的に保護し、自国民に弾圧を加える国家は実に劣悪だ。
家族よりも見知らぬ人間を優先する奴が居てたまるかよ。
致命傷となる傷は無さそうだったが、外傷は酷いものだ。最悪の場合、一生治る事のない障害を背負う可能性だってある。
そう考えると、リンチをしていた集団に怒りが湧いてきた。
そして同時に、もっと早く着いていたらあそこまでの傷を負わされてはいなかっただろうと後悔の念が押し寄せた。
連中の残虐さと自分のちっぽけな力に心を痛めていると、診察室へ通じる扉がガラリと音を立てて開いた。
そこから、包帯やガーゼが目立つレベッカがゆっくりと歩いて来た。
「おい大丈夫か!」
椅子が壊れる程の勢いで立ち上がり、詰め寄る。
間近で見る治療の痕跡を受け、さらに心が痛めつけられた。
「何て奴らだ……」
両腕には10枚以上の絆創膏が貼られている。出血が酷かったのか、一部の絆創膏は薄い赤に変色していた。
レベッカを椅子へ座らせると、事情を聞いた。
「何であんな事になったんだ?」
「分かりません……ただ、あちらが言うには容姿が気に食わないとかで」
その言葉を聞いた途端、思わず病院の壁を殴ってしまった。
「何だよそれは、見た目でかよ!」
怒りは収まらず、何の罪もない床を蹴りまくる。
「お、落ち着いてくださいっ」
「おっと、悪い悪い……」
周囲の患者や看護師も暴れる自分を凝視していたので、慌てて大人しくした。
こちらも椅子に座ると一度深呼吸をし、精神を安定させる。今さっきは感情的になりすぎた。
「それにしても、理不尽だな……というかお前、結構強い騎士なんだろ? じゃああんな奴らやり返せよ」
「気持ちとしてはそうしたいですが、それは一生叶いません」
悔しく、悲しそうな表情でレベッカが語り出す。手は拳の形だ。それもかなりの力が加わっている。
「この帝国には、『転生人優先保護法』という法律があります」
「具体的にはどんな?」
「簡潔に言えば、転生人には何が何でも優しく接しましょうというものです」
こんなのは法律と言えない。単純に狂った寝言だ。
「だから……」
「ええ、言いたい事は分かります。その法律があるせいで、どんなに酷い仕打ちを受けても抵抗できないのです。……いや、やってはいけません」
「もしも、やると?」
「私が処罰され、死ぬまで暗い牢屋の中で過ごす可能性があります。特に今の皇帝は転生人にベッタリなので、それだけでは済まないかもしれませんが」
正当防衛を阻む理不尽な法律の存在を説明されている内に、さらなる怒りが重なった。
自分も他国の事はあまり強く言えないが、外から来た連中を優先的に保護し、自国民に弾圧を加える国家は実に劣悪だ。
家族よりも見知らぬ人間を優先する奴が居てたまるかよ。
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