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一章 異世界漂着

63話 自動小銃の正体とは

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 腹と心が満たされるまで食事や談笑を満喫すると、居酒屋を退店して今度はマフムードの工房へ足を運んだ。
 目的は自動小銃に関する事だ。彼なら何か分かるかもしれないと、ここに来たのだ。
 武器の製造所へ通されると、さらにその奥にある事務所へ案内され、ソファに腰を下ろした。

 「これは、セルゲイのものじゃないんだな?」

 水の入ったコップを手にしながら質問するマフムード。

 「ああ、正真正銘、敵が持ってたやつだ」
 「そうか……鹵獲したという事は分かった。これを少し分解してもいいか?」
 「別にいいよ、俺のじゃないし」
 「じゃあ、ちょっと分解してみるよ」

 マフムードが一旦離席し、色々な工具が保管されている棚へ進んだ。
 しばらくの間棚をガサゴソと漁り、工具箱を持ちながら帰って来た。そしてソファに再び腰掛けると、六角レンチやドライバーなどを駆使してAKの分解を開始した。
 武器職人を務めるマフムードの作業速度は滑らかで、あっという間にストック、レシーバー、バレル、サイトとそれぞれに分別してしまった。細かいパーツも紛失しないようにと、小さな箱に詰めてある。
 手際のよさに感激を覚えつつも訊ねる。

 「何か分かりそうか?」
 「ああ、一つだけ分かった事があるよ」

 メタルでなされた上部のレシーバーを差し出される。その裏側にはアラビア語の小さい刻印が彫られていた。

 「何か書いてあるな」
 「それは、『アスラム帝国製』って書いてるんだ」
 「アスラム帝国?」

 聞き慣れない単語に疑問を呈すと、彼がどこか暗い表情で説明を始めた。

 「正確には、俺達と同じテロ組織だ。ほら、アスラム国って聞いた事ないか? 略称はASILだ」

 イスラム国、という組織名を耳にした途端、昔ニュースで見た内容が脳裏に蘇った。
 ASは国家を自称しているが、人質への斬首や無差別攻撃など、残酷な行為を厭わないので、ほとんどの国家からテロ組織に認定されている。現在ではASは壊滅状態に追い込まれているが、残党もそれなりに存在するため、シリアで未だに活動を継続中だ。
 ……日本人のジャーナリストが斬首されたニュースを視聴した時は、子供ながらに衝撃と恐怖を覚えた。

 「アスラム国がここに居るのか?」
 「断定はできないが、その可能性が高そうだな。俺もあとでモハちゃんに伝えておくよ」

 そう宣言し、マフムードが銃を元の見た目に戻そうと、組み立て始めた。分解の手際も素晴らしいが、その逆もスピーディーであり、1分も経たない内に完成した。

 「これは念のために回収するよ」 

 マフムードが自分で組み立てたAKを抱えてそう言い残すと、部屋から退いて行った。
 用がなくなったので沿パレスチナ自治国という摩訶不思議な未承認国家を出国し、帰路に着く。この路地裏を通り抜ければ家はすぐそこだ。

 「あ、着いた」

 愛しの我が家が視界に映り込む。
 寝たい一心で家まで猛ダッシュし、ドアを豪快に開けて自宅へ飛び込んだ。

 「ただいまーっ! ……ってそうだ、居ないんだったな」

 日米転生人による隊舎の改修工事は丁度昨日に終了し、しばらくここで共に生活していたレベッカとシェリーさんは本来の住処へと帰った。奇想天外で様々なトラブルが発生したが、何だかんだで楽しかったなと身に染みる。
 まあそんな感傷に浸るのは置いておくとして、嫌な予感がする。それも些細な事ではなく、大規模な出来事だ。
 例えば、テロとか。
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