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二章 異世界ライフ
69話 魔獣を鹵獲する中東のヤバい転移者
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「お、来たぞ」
やはり恐ろしい姿の魔獣が、一気に姿を現す。数は3体。数だけなら前回よりも遥かに小規模だが、質は上級そうだ。
建物を潰し回っている魔獣には翼が生えており、人を襲う魔獣は全身が鉄板のように固そうで、3匹目の魔獣は大きくて鋭い爪を操る。見た目もその能力も、前回の粗末な魔獣とは比べ物にならない。
市民の悲鳴と逃げる足音が響き渡る中、砲声が街を切り裂き、翼を備える魔獣が何らかの攻撃によって粉砕された。
「おいおい、マジかよ……ヒズベラヤバすぎるだろ」
道路側に顔を少し出してみると、ソ連の自走砲――――2S3アカ―ツィヤが魔獣に砲撃を繰り返していたのだった。
何かもう、本当に中東の紛争地帯みたいだ。だって、中世ヨーロッパ風の異世界でソ連の自走砲が見られるとは誰も想像できないだろう。
何発かの砲弾が発射され、次は体全体が装甲のような皮膚で覆われた魔獣を爆散させた。
「あの……ここって、本当に帝国ですよね?」
真顔になったレベッカが、困惑した声でそう言った。
「まあ、多分、そうかな……」
何も知らない一般人がこの光景を目撃したら、確実に中東と見間違える筈だ。
自走砲から再び鉄の塊が最後の1匹に向けて飛び出す。
真っすぐ放たれた砲弾は魔獣を撃破……したかのように思ったが、今度のは変わった砲弾だった。
「網……?」
爆発音を立たせたかと思えば、砲弾からネットが展開し、鉤爪を持つ魔獣を包み込んだのだ。しかしそれでも魔獣は暴れ続けているので、近くに居た戦闘員が銃弾を打ち込み、その魔獣を眠らせた。
え、眠らせる……? 麻酔銃が使われたという事は分かったが、まさか……。
「よっしゃー! 鹵獲成功だ!」
自走砲のハッチから搭乗員が下車し、喜びの声を響かせる。
俺の予想は、敵中してしまった。
始末するのは普通に分かる。だが、魔獣を鹵獲するのは常識的に考えて理解不能だ。しかも鹵獲を行った集団がヒズボラとは。
ターバンを身に着けた戦闘員が魔獣の頭にチェーンが付いた鉄製の輪を装着すると、自走砲の後ろにそれを連結させた。
「鹵獲成功!」
「戦力アップだぜ!」
さっきまでの悲惨な状況はどこへ行ったのやら。
捕らわれてもなお眠り続ける魔獣は自走砲に引き摺られ、鹵獲に喜ぶ戦闘員は魔獣や自走砲の上で踊っている。
その内、街中は軍事パレードの如く賑やかな空間となった。
ヒズボラの戦闘員やそれに影響を受けた聖騎士らが道路を勇敢な様子で行進し、先頭には例の魔獣をどこかへ引き摺って行くあの自走砲が走っていた。
「ヒズベラ、こえー……」
ヒズベラの戦力に驚嘆と恐怖を覚えながら、レベッカの手を引いて路地裏を脱した。
明るい雰囲気のパレードは継続する。
「うわ、MBTもかよ」
行進する戦闘員の間に、旧ソ連の主力戦車であるT-54が3台も走行。
もう1つ驚きなのが、さらにその後ろに今なお改良が加えられているT-72がいた事だ。T-54はともかく、T-72に関しては現代でも色々な国家が運用している歴戦の戦車だ。しかも、爆発反応装甲が取り付けられている。
ヒズベラさん、もうアンタが正規軍でいいよ、と思う程である。
数十分続いたパレードはやがて幕を閉じ、死んだ魔獣の肉体の破片や建物の瓦礫を回収する人達の姿が多くなった。
「なあレベッカ、魔獣って鹵獲するようなモンなのか?」
ヒズベラの予測不能な行動に驚愕を未だ覚える俺に、
「いや、あんなのできるのはあの人達だけですよ……」
怪訝な表情でレベッカは返答した。
やはり恐ろしい姿の魔獣が、一気に姿を現す。数は3体。数だけなら前回よりも遥かに小規模だが、質は上級そうだ。
建物を潰し回っている魔獣には翼が生えており、人を襲う魔獣は全身が鉄板のように固そうで、3匹目の魔獣は大きくて鋭い爪を操る。見た目もその能力も、前回の粗末な魔獣とは比べ物にならない。
市民の悲鳴と逃げる足音が響き渡る中、砲声が街を切り裂き、翼を備える魔獣が何らかの攻撃によって粉砕された。
「おいおい、マジかよ……ヒズベラヤバすぎるだろ」
道路側に顔を少し出してみると、ソ連の自走砲――――2S3アカ―ツィヤが魔獣に砲撃を繰り返していたのだった。
何かもう、本当に中東の紛争地帯みたいだ。だって、中世ヨーロッパ風の異世界でソ連の自走砲が見られるとは誰も想像できないだろう。
何発かの砲弾が発射され、次は体全体が装甲のような皮膚で覆われた魔獣を爆散させた。
「あの……ここって、本当に帝国ですよね?」
真顔になったレベッカが、困惑した声でそう言った。
「まあ、多分、そうかな……」
何も知らない一般人がこの光景を目撃したら、確実に中東と見間違える筈だ。
自走砲から再び鉄の塊が最後の1匹に向けて飛び出す。
真っすぐ放たれた砲弾は魔獣を撃破……したかのように思ったが、今度のは変わった砲弾だった。
「網……?」
爆発音を立たせたかと思えば、砲弾からネットが展開し、鉤爪を持つ魔獣を包み込んだのだ。しかしそれでも魔獣は暴れ続けているので、近くに居た戦闘員が銃弾を打ち込み、その魔獣を眠らせた。
え、眠らせる……? 麻酔銃が使われたという事は分かったが、まさか……。
「よっしゃー! 鹵獲成功だ!」
自走砲のハッチから搭乗員が下車し、喜びの声を響かせる。
俺の予想は、敵中してしまった。
始末するのは普通に分かる。だが、魔獣を鹵獲するのは常識的に考えて理解不能だ。しかも鹵獲を行った集団がヒズボラとは。
ターバンを身に着けた戦闘員が魔獣の頭にチェーンが付いた鉄製の輪を装着すると、自走砲の後ろにそれを連結させた。
「鹵獲成功!」
「戦力アップだぜ!」
さっきまでの悲惨な状況はどこへ行ったのやら。
捕らわれてもなお眠り続ける魔獣は自走砲に引き摺られ、鹵獲に喜ぶ戦闘員は魔獣や自走砲の上で踊っている。
その内、街中は軍事パレードの如く賑やかな空間となった。
ヒズボラの戦闘員やそれに影響を受けた聖騎士らが道路を勇敢な様子で行進し、先頭には例の魔獣をどこかへ引き摺って行くあの自走砲が走っていた。
「ヒズベラ、こえー……」
ヒズベラの戦力に驚嘆と恐怖を覚えながら、レベッカの手を引いて路地裏を脱した。
明るい雰囲気のパレードは継続する。
「うわ、MBTもかよ」
行進する戦闘員の間に、旧ソ連の主力戦車であるT-54が3台も走行。
もう1つ驚きなのが、さらにその後ろに今なお改良が加えられているT-72がいた事だ。T-54はともかく、T-72に関しては現代でも色々な国家が運用している歴戦の戦車だ。しかも、爆発反応装甲が取り付けられている。
ヒズベラさん、もうアンタが正規軍でいいよ、と思う程である。
数十分続いたパレードはやがて幕を閉じ、死んだ魔獣の肉体の破片や建物の瓦礫を回収する人達の姿が多くなった。
「なあレベッカ、魔獣って鹵獲するようなモンなのか?」
ヒズベラの予測不能な行動に驚愕を未だ覚える俺に、
「いや、あんなのできるのはあの人達だけですよ……」
怪訝な表情でレベッカは返答した。
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