93 / 176
二章 異世界ライフ
86話 ナンパトラブル
しおりを挟む
「では、さっさと運びましょう」
「だな。マッハで終わらそうぜ」
俺達は馬車から降りると、弾薬がたっぷりと詰められた箱を持って駐屯地に進んだ。
駐屯地に置かれた簡易的な検問所に差し掛かると、歩哨に声を掛けられた。
「弾薬輸送の方ですか?」
「おう、そうだよ」
「わざわざすみません。入ってくださって構いませんよ。木箱は倉庫の隣に置いてください」
歩哨の許可を貰い駐屯地内部へ歩く。
国防軍の兵士達は冒険者が珍しいのか、俺ら2人をまじまじと見つめてくる。
「落ち着かないな」
「まあ、国防軍は排他的ですからね」
なるほど、国防軍は保守という訳か。
「それよりも倉庫ってどこだろうな」
「さあ、分かりません……そこら辺の人に聞いた方が」
レベッカがそう提案した時、後ろからいやらしく、野太い声が。
「やあお嬢さん、俺がやってやろうか?」
背後を振り返ると、タンクトップ姿の鍛え抜かれた筋肉が目立つ大柄な男が立っていた。良心で声を掛けたのではなく、明らかに女を狙っている。いわゆるナンパとかいうやつだろう。
「あ、いえ、やっぱり大丈夫です」
苦笑しながらレベッカが俺を守るかのようにして前に立ち塞がる。
「いいじゃんか、今は暇だし。向こうに行って俺と一緒に銃で的撃ちゲームでもしようよ」
強引に誘って、彼女の細い腕をぎゅっと掴んで引き寄せるナンパ公務員。
「悪い。こっちは仕事の最中なんで、今は遊ぶ余裕はない」
少し怖いが、レベッカが被害に遭うよりかはマシだと、そいつに断りの言葉を突き付けた。
「はあ? 何お前?」
単細胞の標的が俺に変わったようだ。
脅されつつ、服が破けそうな程の強い力で胸倉を掴まれる。
「こいつの仕事仲間さ」
怯える様子を見せないよう冷静に返答する。
「んなもん知らねーよ」
「そうは言われてもな、仕事が……」
「ごちゃごちゃうっせーな!」
解放されたかと思えば、地面に叩き付けられた。背中に衝撃が加わり、苦痛が体内で生じる。
「全くクソガキが……じゃ、行こうか」
「あ、ちょ……せ、セルゲイ君が」
「セルゲイ、こいつの名前か?」
襟を掴まれて無理やり立ち上がらされた。
「いてて……おいおい、何もそんなに暴力で解決しなくていいだろ?」
背骨付近を土が付着した手で擦りながら言い返す。骨折はしていないだろうが、ヒビぐらいは入っていてもおかしくない痛覚。
「なァんだクソガキ? またやられたいのか?」
表情がさっきの不良から一変、完全な犯罪者へと変わった。今のナンパ公務員なら、躊躇せず俺を殺すだろう。
流石に命の危険を感じて、懐にいつも忍ばせてあるガバメントに手を添える。
しかしその動きが誤りだったようで――――
「何か隠してんのか?」
手を払いのけられると、懐に丸太の如く太い腕を突っ込まれ、愛銃のガバメントが引きずり出された。
「何だいこれ? 銃か?」
ナンパ野郎は乱雑にガバメントを触っており、適当な手付きで分解までやろうとしている。ガバメントの分解は覚えてしまえば簡単だが、何も知らない素人がそれを行うのは厳しいだろう。
「使い方分かんねーや。もう返す!」
「お、おい……!」
自分の腕では分解できない事が分かると、何と宝物のような存在であるガバメントをこちらの顔面目掛けて投擲してきたのだ。
最も固い部分――――金属製のスライドが額に直撃し、脳が揺れる感覚を覚えながら徐々に倒れていった。
「セルゲイ君――――!」
ああ、レベッカが何か叫んでいる。耳には流れて来るが、脳内での処理が追い付かない。
瞼がどんどんと勝手に下がっていき、俺の意識は故障したパソコンみたいにプツリと切れた。
「だな。マッハで終わらそうぜ」
俺達は馬車から降りると、弾薬がたっぷりと詰められた箱を持って駐屯地に進んだ。
駐屯地に置かれた簡易的な検問所に差し掛かると、歩哨に声を掛けられた。
「弾薬輸送の方ですか?」
「おう、そうだよ」
「わざわざすみません。入ってくださって構いませんよ。木箱は倉庫の隣に置いてください」
歩哨の許可を貰い駐屯地内部へ歩く。
国防軍の兵士達は冒険者が珍しいのか、俺ら2人をまじまじと見つめてくる。
「落ち着かないな」
「まあ、国防軍は排他的ですからね」
なるほど、国防軍は保守という訳か。
「それよりも倉庫ってどこだろうな」
「さあ、分かりません……そこら辺の人に聞いた方が」
レベッカがそう提案した時、後ろからいやらしく、野太い声が。
「やあお嬢さん、俺がやってやろうか?」
背後を振り返ると、タンクトップ姿の鍛え抜かれた筋肉が目立つ大柄な男が立っていた。良心で声を掛けたのではなく、明らかに女を狙っている。いわゆるナンパとかいうやつだろう。
「あ、いえ、やっぱり大丈夫です」
苦笑しながらレベッカが俺を守るかのようにして前に立ち塞がる。
「いいじゃんか、今は暇だし。向こうに行って俺と一緒に銃で的撃ちゲームでもしようよ」
強引に誘って、彼女の細い腕をぎゅっと掴んで引き寄せるナンパ公務員。
「悪い。こっちは仕事の最中なんで、今は遊ぶ余裕はない」
少し怖いが、レベッカが被害に遭うよりかはマシだと、そいつに断りの言葉を突き付けた。
「はあ? 何お前?」
単細胞の標的が俺に変わったようだ。
脅されつつ、服が破けそうな程の強い力で胸倉を掴まれる。
「こいつの仕事仲間さ」
怯える様子を見せないよう冷静に返答する。
「んなもん知らねーよ」
「そうは言われてもな、仕事が……」
「ごちゃごちゃうっせーな!」
解放されたかと思えば、地面に叩き付けられた。背中に衝撃が加わり、苦痛が体内で生じる。
「全くクソガキが……じゃ、行こうか」
「あ、ちょ……せ、セルゲイ君が」
「セルゲイ、こいつの名前か?」
襟を掴まれて無理やり立ち上がらされた。
「いてて……おいおい、何もそんなに暴力で解決しなくていいだろ?」
背骨付近を土が付着した手で擦りながら言い返す。骨折はしていないだろうが、ヒビぐらいは入っていてもおかしくない痛覚。
「なァんだクソガキ? またやられたいのか?」
表情がさっきの不良から一変、完全な犯罪者へと変わった。今のナンパ公務員なら、躊躇せず俺を殺すだろう。
流石に命の危険を感じて、懐にいつも忍ばせてあるガバメントに手を添える。
しかしその動きが誤りだったようで――――
「何か隠してんのか?」
手を払いのけられると、懐に丸太の如く太い腕を突っ込まれ、愛銃のガバメントが引きずり出された。
「何だいこれ? 銃か?」
ナンパ野郎は乱雑にガバメントを触っており、適当な手付きで分解までやろうとしている。ガバメントの分解は覚えてしまえば簡単だが、何も知らない素人がそれを行うのは厳しいだろう。
「使い方分かんねーや。もう返す!」
「お、おい……!」
自分の腕では分解できない事が分かると、何と宝物のような存在であるガバメントをこちらの顔面目掛けて投擲してきたのだ。
最も固い部分――――金属製のスライドが額に直撃し、脳が揺れる感覚を覚えながら徐々に倒れていった。
「セルゲイ君――――!」
ああ、レベッカが何か叫んでいる。耳には流れて来るが、脳内での処理が追い付かない。
瞼がどんどんと勝手に下がっていき、俺の意識は故障したパソコンみたいにプツリと切れた。
10
あなたにおすすめの小説
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました!
【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】
皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
ファミ通文庫大賞 一次選考通過
スティールスキルが進化したら魔物の天敵になりました
東束末木
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞、いただきました!!
スティールスキル。
皆さん、どんなイメージを持ってますか?
使うのが敵であっても主人公であっても、あまりいい印象は持たれない……そんなスキル。
でもこの物語のスティールスキルはちょっと違います。
スティールスキルが一人の少年の人生を救い、やがて世界を変えてゆく。
楽しくも心温まるそんなスティールの物語をお楽しみください。
それでは「スティールスキルが進化したら魔物の天敵になりました」、開幕です。
2025/12/7
一話あたりの文字数が多くなってしまったため、第31話から1回2~3千文字となるよう分割掲載となっています。
アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~
うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」
これしかないと思った!
自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。
奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。
得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。
直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。
このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。
そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。
アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。
助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。
神々の間では異世界転移がブームらしいです。
はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》
楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。
理由は『最近流行ってるから』
数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。
優しくて単純な少女の異世界冒険譚。
第2部 《精霊の紋章》
ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。
それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。
第3部 《交錯する戦場》
各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。
人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。
第4部 《新たなる神話》
戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。
連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。
それは、この世界で最も新しい神話。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します
名無し
ファンタジー
毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる