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二章 異世界ライフ
109話 ガザの聖戦士再び参上
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ワニが上がると同時に建物全体が大きく軋み、屋根も壁も崩れ落ちた。とうとう建物は崩壊してしまい、野ざらしの状態へとなった。
ほんの数分前まで部屋があった場所には大勢の人間がぐったりと横たわり、怪我人を安全な所へ運ぶ者の姿も捉えた。無事な人は各自武装してワニと対峙する。
「アイツ――――!」
崩壊した天井の瓦礫の近くに額から微かな鮮血を垂らすレベッカが居た。彼女は震える手で剣のグリップを握っている。あれは無理をしているに違いない。さらに何の悪戯か、ワニはレベッカ達が居る訓練場に狙いを定めた。
あっちには少なくても20人は居る。ワニが突っ込めば大惨事だ。
「こっちだ怪獣野郎!」
銃を奴の蹄が生えた足に撃ち付け、こちらにワニをおびき寄せる作戦を実行した。
「アヴァカンはレベッカの所に行け!」
「わ、分かった!」
俺の命令を素直に聞いてくれた彼女はリボルバー片手にワニを睨み付けるレベッカの元へと駆けて行った。
廊下だった場所には俺とワニだけだ。本音はさっさと逃げたいが、それをやってしまうとワニのジェノサイドが始まる。だから易々と退く訳にはいかないのだ。
「さあ、ワニ君、俺が相手してやるから」
強がって脅すが、内心は恐怖の感情で埋め尽くされている。
ワニが豪速で突進し、俺は間一髪のタイミングで身を躱す。
「あぶっねー……」
ズボンの右裾が鉤爪に擦れ破けているのを見て、思わず冷や汗を流した。
「どうしたものか……」
眼前ではワニが手足に力を込めて待機している。少しでも動けば、奴も再び突撃してくるだろう。ならば早撃ちでいこうかと思ったが、下水道でコイツと戦った際、銃弾は皮膚を貫けなかった。つまるところ、単純の銃撃では無意味だ。
「……」
ワニの青く輝く眼球を睨みながら無言で立ち尽くすが、油断はしていない。むしろ警戒心をこれでもかという程高めている。
訓練場の人達も槍とか剣とかを手にワニへ力強い眼光を突き刺しているが、やはり誰も動じない。それはそうだ。この機会に攻撃しても返り討ちに遭うだけだ。せめて、対戦車ミサイルでも欲しいところだが……ん? 何か、バイクのエンジンの音が聞こえてくるぞ。1台ではなく、複数台だ。
「は?」
次に目の前で起こった光景を受けて、俺は険しい雰囲気の中思わず間抜けな声を漏らしてしまった。
迷彩服とヘルメット、防弾ベストを装備して、ロケットランチャーを肩に掛けた謎のバイカー集団が乗り込んで来たのだ。
その光景はあまりに奇妙だったらしく、人間はおろかワニですらも困惑の表情を浮かべる有様だ。
兵士達が下車するとバイクを盾にし、ロケットランチャーを素早く用意してワニへと一斉に発射を実行した。
弾頭は人間の目では負えない速度で飛翔していき、ワニの体の至る部位に命中。だがしかしその弾頭には殺傷能力は存在せず、白いガスが噴き出すとワニは地面にひれ伏し、暴虐を秘めた瞳に瞼を下ろすのだった。
「……どういう事?」
色々な事が起こり過ぎて脳内の処理が追い付かない。
ある1人の兵士がロケットランチャーをそこらに投げ捨てると俺の方に歩み寄って来た。ヘルメットとその下に被っている黒いバラクラバを外す。現れたのは何とラマスの最高指導者ことモハちゃんだった。
「モハちゃん?」
「やあセルゲイ」
「何でここに居るんだよ?」
「いやな、城の方から凄い音が聞こえたから、仲間と一緒にここまでやって来たんだ」
「なるほど……ビックリしたけど助かった。ありがとう」
「礼はいらない。これがガザの指導者の役割だからな」
至って冷静に淡々とそう告げる彼は本当の英雄だ。
ふと、昏睡状態のワニに目を向けた。
「あれ、どうするんだ?」
「まあ、鹵獲するしかないな」
ヒズベラに続き、ラマスまでこんな訳の分からない猛獣を兵器として利用するのか……。合理的な判断ではあるが、いまいち受け入れられないような。
「じゃあ、俺らは帰るぞ」
「うん、本当に助かったよ」
手を振りながら別れる。モハちゃんはバイクに跨るとハンドルを握り、エンジンを唸らせながら城を出て行った。ワニに関してだが、コレはどこからか現れたラマスの戦車により回収された。
「あ、そうだ! 早く行かないと!」
モハちゃんの登場ですっかり忘れていたが、大事な相棒が怪我を負っているんだった。
ほんの数分前まで部屋があった場所には大勢の人間がぐったりと横たわり、怪我人を安全な所へ運ぶ者の姿も捉えた。無事な人は各自武装してワニと対峙する。
「アイツ――――!」
崩壊した天井の瓦礫の近くに額から微かな鮮血を垂らすレベッカが居た。彼女は震える手で剣のグリップを握っている。あれは無理をしているに違いない。さらに何の悪戯か、ワニはレベッカ達が居る訓練場に狙いを定めた。
あっちには少なくても20人は居る。ワニが突っ込めば大惨事だ。
「こっちだ怪獣野郎!」
銃を奴の蹄が生えた足に撃ち付け、こちらにワニをおびき寄せる作戦を実行した。
「アヴァカンはレベッカの所に行け!」
「わ、分かった!」
俺の命令を素直に聞いてくれた彼女はリボルバー片手にワニを睨み付けるレベッカの元へと駆けて行った。
廊下だった場所には俺とワニだけだ。本音はさっさと逃げたいが、それをやってしまうとワニのジェノサイドが始まる。だから易々と退く訳にはいかないのだ。
「さあ、ワニ君、俺が相手してやるから」
強がって脅すが、内心は恐怖の感情で埋め尽くされている。
ワニが豪速で突進し、俺は間一髪のタイミングで身を躱す。
「あぶっねー……」
ズボンの右裾が鉤爪に擦れ破けているのを見て、思わず冷や汗を流した。
「どうしたものか……」
眼前ではワニが手足に力を込めて待機している。少しでも動けば、奴も再び突撃してくるだろう。ならば早撃ちでいこうかと思ったが、下水道でコイツと戦った際、銃弾は皮膚を貫けなかった。つまるところ、単純の銃撃では無意味だ。
「……」
ワニの青く輝く眼球を睨みながら無言で立ち尽くすが、油断はしていない。むしろ警戒心をこれでもかという程高めている。
訓練場の人達も槍とか剣とかを手にワニへ力強い眼光を突き刺しているが、やはり誰も動じない。それはそうだ。この機会に攻撃しても返り討ちに遭うだけだ。せめて、対戦車ミサイルでも欲しいところだが……ん? 何か、バイクのエンジンの音が聞こえてくるぞ。1台ではなく、複数台だ。
「は?」
次に目の前で起こった光景を受けて、俺は険しい雰囲気の中思わず間抜けな声を漏らしてしまった。
迷彩服とヘルメット、防弾ベストを装備して、ロケットランチャーを肩に掛けた謎のバイカー集団が乗り込んで来たのだ。
その光景はあまりに奇妙だったらしく、人間はおろかワニですらも困惑の表情を浮かべる有様だ。
兵士達が下車するとバイクを盾にし、ロケットランチャーを素早く用意してワニへと一斉に発射を実行した。
弾頭は人間の目では負えない速度で飛翔していき、ワニの体の至る部位に命中。だがしかしその弾頭には殺傷能力は存在せず、白いガスが噴き出すとワニは地面にひれ伏し、暴虐を秘めた瞳に瞼を下ろすのだった。
「……どういう事?」
色々な事が起こり過ぎて脳内の処理が追い付かない。
ある1人の兵士がロケットランチャーをそこらに投げ捨てると俺の方に歩み寄って来た。ヘルメットとその下に被っている黒いバラクラバを外す。現れたのは何とラマスの最高指導者ことモハちゃんだった。
「モハちゃん?」
「やあセルゲイ」
「何でここに居るんだよ?」
「いやな、城の方から凄い音が聞こえたから、仲間と一緒にここまでやって来たんだ」
「なるほど……ビックリしたけど助かった。ありがとう」
「礼はいらない。これがガザの指導者の役割だからな」
至って冷静に淡々とそう告げる彼は本当の英雄だ。
ふと、昏睡状態のワニに目を向けた。
「あれ、どうするんだ?」
「まあ、鹵獲するしかないな」
ヒズベラに続き、ラマスまでこんな訳の分からない猛獣を兵器として利用するのか……。合理的な判断ではあるが、いまいち受け入れられないような。
「じゃあ、俺らは帰るぞ」
「うん、本当に助かったよ」
手を振りながら別れる。モハちゃんはバイクに跨るとハンドルを握り、エンジンを唸らせながら城を出て行った。ワニに関してだが、コレはどこからか現れたラマスの戦車により回収された。
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