129 / 176
三章 異世界verの中東戦争

121話 暗殺者の登場

しおりを挟む
 「よし、大丈夫かな……」

 左右にも前方にも知り合いが居ない事を確認すると、一旦路地裏に身を隠した。
 息を吐いたり吸ったりして呼吸と気分を落ち着かせる。
 俺が今向かおうとしている場所はどこにでもある本屋だ。
 では何故、こんなにも警戒しながら移動を続けているのというと――――男性なら誰もが一度は欲しがるアノ本を、手に入れたいからだ。
 隠れ家から出て行く時、レベッカやザッハールが一緒にと提案してきたがこんな行動に女二人を連れ回す訳にはいかないのできっぱりと断った。男ならばカセムが居るがアイツは仕事のため家を離れているのだ。だから危険を承知しつつ一人でここまで来た。

 「さて、行くか。永遠にここに居る訳にはいかないし」

 精神の安定を覚えると、路地裏から出て街の本屋へと足を進ませた。
 人混みに倒されぬよう歩く事数十分、目的地である本屋に到着した。
 最後にもう一度誰も潜んでいないかを確かめると、足早に店へ駆け込んだ。

 「あとは買うだけだな」

 幸いにも本屋にはそれ程客が入店しておらず、例の本は案外買いやすい雰囲気だ。
 18という数字を目印に店内を歩き回ると最奥にまさしくその文字が刻まれた黒い幕が垂れていた。その幕を通れば……世に存在する男達の楽園が広がっているだろう。
 息を呑んで垂れ幕を捲れば、そこは俺の望む宝庫であった。
 水着を着た……あるいはそれすらも捨てた金髪や銀髪のお姉さんの姿が印刷された薄い本が棚に所狭しと詰められている。

 「ど、どれにしよっかな」

 これだけの薄い本があると選ぶのに時間を食ってしまう。

 「う~ん、これにするか」

 顎に手を置いて悩む事しばらく、俺は素敵な笑顔を浮かべるエルフの女性が写った本を手に取った。格好は水着も下着もなし、つまり生まれたままの姿である。これを選んだ理由は何となくアヴァカンに似ているなと思ったからだ。
 本来は成人を超えてからでないと購入してはいけない刺激的な本を片手にカウンターへ向かうと、さっさと会計を済まして退店。
 店から出るとまずは安堵の息。だがこれで安心するのはまだ早い。むしろ、人によっては今からが本番といえる。
 このタイミングでザッハールとかレベッカとかアヴァカンなんかの女性陣に見つかってしまったらビンタと絶縁宣言を受けるだろう。
 未成年拝読禁止の本を手持ちの鞄の奥底に押し込むと、辺りを見渡しながら帰宅を始めた。
 商人も市民も軍人も、全ての人間が今の俺には敵として捉えてしまう。
 絶対に見つからないように……と脳に命令を送りながらとぼとぼと歩いている時、背中に身内のものではない冷たく殺意が混じった残忍な視線が突き刺さった。
 すぐさま後ろを振り返ってみるが、大量に行き交う市民しか視界には映らない。だがしかし、気のせいではない。明らかに何者かが俺を狙い、この命を刈り取ろうとしているのだ。
 敵の正体を暴こうと考えた俺はそこらにあった路地裏に咄嗟に入った。先は行き止まりで道も細いし、敵も隠れられないだろう。
 そして、奴が姿を現した空気を肌で感じ取り、素早く背後を振り向いた。

 「お前が俺を追ってたのか?」

 追跡していた敵の姿は昨日のパソコンで見たビデオに映っていたサーベルの人物とよく似た者だった。サーベル以外にも手術で使うような小型のナイフを何本も専用のホルスターに挟んでいる。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

第2の人生は、『男』が希少種の世界で

赤金武蔵
ファンタジー
 日本の高校生、久我一颯(くがいぶき)は、気が付くと見知らぬ土地で、女山賊たちから貞操を奪われる危機に直面していた。  あと一歩で襲われかけた、その時。白銀の鎧を纏った女騎士・ミューレンに救われる。  ミューレンの話から、この世界は地球ではなく、別の世界だということを知る。  しかも──『男』という存在が、超希少な世界だった。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

スティールスキルが進化したら魔物の天敵になりました

東束末木
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞、いただきました!! スティールスキル。 皆さん、どんなイメージを持ってますか? 使うのが敵であっても主人公であっても、あまりいい印象は持たれない……そんなスキル。 でもこの物語のスティールスキルはちょっと違います。 スティールスキルが一人の少年の人生を救い、やがて世界を変えてゆく。 楽しくも心温まるそんなスティールの物語をお楽しみください。 それでは「スティールスキルが進化したら魔物の天敵になりました」、開幕です。 2025/12/7 一話あたりの文字数が多くなってしまったため、第31話から1回2~3千文字となるよう分割掲載となっています。

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します

名無し
ファンタジー
 毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。

処理中です...