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三章 異世界verの中東戦争

129話 拿捕成功と襲来、そして撃破

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 タンカーを拿捕し捕虜となった船員達を確保した後、荷物を沢山積む事が可能な倉庫に訪れた。

 「これは何だか闇を感じるような……」

 この船舶は帝国国防軍保有のものだが、貴族が好むような宝石や飾り付けがなされたドレス、挙句の果てには金塊までもが倉庫に大量に積載されていた。

 「ああ実際、国防軍とそれに関わる連中は闇だらけさ」

 ハーフィズはどこか憤った表情で足元に散らばる宝石を蹴り飛ばす。

 「セルゲイは知らないかもしれねえが、この国の国防軍は本来、宗教組織や王族とは関わってはいけないんだ」
 「でも本当は――――」
 「密接に、絡み付いている訳だ」

 これは汚職、だな。そういえば俺の国も政治家が敵国に自軍の極秘情報を渡したり逆にその敵国から核ミサイルのデータを受け取ったりしていた事があった。

 「このお宝達は、どうすんだ?」

 近くにあった金塊を持ちながら尋ねる。初めて触るがやっぱりとても重い。

 「これを売り払って、難民に売り払う。そしてこの船はその内国防軍に返す予定さ」

 今までの態度とは打って変わって真面目な表情だ。それ程までに国防軍が憎いのだろう。

 「人の事は言えないが、国防軍は悪逆の――――」

 ハーフィズが帝国軍への怒りの言葉を続けようとした時、強烈な揺れと何かの呻き声が船体を襲った。

 「何だっ!?」

 バランスを保ちながら銃を構え周囲を睨むハーフィズ。すると、彼の所持しているトランシーバーが鳴った。

 「ハーフィズ! 外に危ねぇ生き物が……上がって来そうだ!」

 通信機から発せられる野太い声は途切れた。甲板ではかなり緊迫した状況が漂っていそうだ。

 「河に何か居るみたいだな……おいセルゲイとジャミーレ、甲板に行くぞ!」
 「ええ、早く行きましょう。この揺れ、どう見ても兵器ではないわ」

 彼女の言った事はごもっともだ。船体を揺らすのは人が作った道具ではなく、生き物だ。この前もダンジョンや石室で似たような出来事を体験したから何となく分かる。
 転倒に気を付けつつ廊下に出て、階段を駆け上がり、鋼鉄の分厚い扉を開けて甲板に飛び出ると――――

 「さ、魚だって?」

 ナマズが、フーセの戦闘員達を襲っていた。
 だがそのナマズは魚というにはあまりに巨大で、強く、鍛え抜かれた生物だ。
 体調はここから見積もって10メートル程。体重も相当なものだろう。
 隊員らは必死で苛烈な銃撃をナマズに浴びせる。血は滲んでいるものの死んでくれる気配は毛頭ない。

 「隊長! こいつ全然死にやしません!」

 カラシニコフを乱射する青年がハーフィズに叫び掛ける。

 「小銃では勝ち目はなしか……!」

 今の武器で討伐するのは不可能だと判断したハーフィズはライフルを投げ捨て、物陰に隠れるとトランシーバーで誰かと通話を始めた。

 「俺だ! すぐ来てくれ!」

 物凄い剣幕で叫んでいるが、

 「なっ、今は無理……!? チッ、そうか、分かった。こちらだけで何とかする。ただし応援だけはしておいてくれよ」

 トランシーバーをチェストリグにぶち込むと彼は小走りでこっちに戻った。

 「残念だが増援は期待しない方がよさそうだ。俺達だけでこのナマズを殺さないとな」

 暴れ回る巨大ナマズに視線を刺しながら説明する。

 「とは言ってもどうやって殺すんだよ?」
 「撃ってみた感じだと、私の銃でも無理そうだわ」

 俺とザッハールで抗議を掛けると、ハーフィズは冷静にこう返答した。

 「タンカーコイツを乗っ取った時、寝室を仮の武器庫にしたんだが、そこにRPGを置いてる。それさえ取ってきたらこのバカナマズに勝てるかもしれねぇ」
 「寝室、か。分かった、すぐ取って来る!」

 揺られる船体。 
 足場が不安定だ。
 甲板からは多種多様な銃声が響く。
 内部は震動のせいで物が散乱し、もはや足の踏み場が見当たらない。
 そんな状況の中、俺は一刻も早くロケットランチャーを入手しようと寝室へ急ぐ。
 転倒に注意しながら壁に手を這わせて早歩きで移動。

 「あった、ここか」

 そしてようやく、武器庫代わりの寝室を見つけて瞬時に入った。
 寝室にはベッドが三つ置かれていて、余ったスペースに銃や弾薬が保管されていた。

 「これか?」

 純白のベッドの上に細長い箱があったのでそれを開けた。予想通り、中にきちんと目的の品――――RPG-26が眠っている。

 「ナイスだぞ、俺」

 不安な心情を抱える自分を褒め称えると、弾頭を装填してロケットランチャーを担いだ。
 ここからは先程とは逆の行動をする訳だが、揺れはいつにも増して激しくなっていた。

 「ヤバいなこれ……」

 危機感を募らせながらも何とか歩き続け、甲板へ出られる扉に辿り着く。
 バン! と扉をタックルで豪快に開けると甲板は悲惨な状況に変わっていた。
 死者や傷者こそ見つからないが、巨大ナマズの体躯が乗り上げているのだ。あともうちょっとで完全に乗っ取られる。
 この状態が続くとこちらの敗北……いや、壊滅は必然だと感じ取り、咄嗟にしゃがんでRPGをヤツにへと向けた。
 照準器とナマズの頭部がしっかりと噛み合った瞬間、弾頭を弾いた。
 爆発の轟音とそれの炎にナマズは包み込まれる。
 血液と肉片が辺りに飛散。俺の顔にも少しこびり付く。

 「……終わった、な」

 戦車を粉砕できる兵器の前では流石のナマズも耐えられなかったようで、その巨躯は消え失せた。残ったのは破片となった肉だけだ。
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