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三章 異世界verの中東戦争

135話 跳弾の失敗

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 如何に超人的な能力を有する彼でも跳弾は避けられないと知った俺はザッハールにその事を小声で伝えた。

 「よく考えたわねセルゲイ――――跳弾なんてできるかどうか分からないけど、努力はするわ」
 「おう、それは任せたから、俺はお前さんを援護してやる」

 ハンドガンに新たなマガジンを込め直すと、路地の闇を利用して奴に接近。サルマトは未だにどこから攻撃されたのか分かっておらず、俺の存在には気が付いていない。

 「む、横に来ていたのか」

 だがしかし悔しいが彼は一流の暗殺者だ。真横に滑り込んだと同時に冷酷な眼差しが向く。

 「ザッハール、今がチャンスだ!」
 「任せてちょうだい!」

 彼女の勢いある返事の声が響くと発砲される。
 弾は跳弾を狙ったためかサルマト自身ではなく壁に着弾した。そして狙い通り跳弾を引き起こしたが、彼に直撃する事はなかった。やはり意図的な跳弾は難しいのだろう。
 次は俺の番だ。

 「銃が無理なら――――」

 鞘から愛用のサバイバルナイフを抜いて。

 「これしかないよな」

 再びサルマトの太ももを抉った。柄までしっかり埋もれる程だ。

 「ぐっ――――この野郎、姑息な手段を」

 奴がナイフを肉体から引き抜くと恐ろしい形相で睨み付けて来た。
 腹に強烈な横蹴りを喰らい、俺の体は後ろの壁に激突する。
 背中に鈍い痛みと衝撃。腰にもかなりの負担が襲ったがここで倒れる訳にはいかんと、根性だけで立ち上がる。

 「セルゲイ、いくよ!」

 ザッハールによる精密な射撃が行われる。
 今度も跳弾を狙った撃ち方だが、運がいいのかそれとも彼女の腕前が左右したのか、弾丸はサルマトの腕を掠った。

 「ナイスだザッハール! その調子で頼む!」
 「選抜射手の実力、舐めないでよね!」

 コツを掴んだみたいで、再び跳弾でサルマトを傷付けた。

 「なるほどなぁ……お前らの作戦、そういう事か」

 サルマトは尖った眼光をザッハールに刺しながら静かに呟く。どうやら俺達の攻略法が勘付かれてしまったようだ。

 「跳弾とは、中々いい方法だな。正直、ビックリだよ。まさかこの俺が二回も被弾するなんてな。ただ、そちらの思惑が分かればこっちのもんだ……!」

 不敵な笑みを浮かべると、奴は懐から赤い筒状の物体を取り出しそれを地面に勢いよく叩き付けた。
 これは何の真似だと戸惑っていると、白煙が漂い始めた。

 「ゴホッ! これ、煙幕か!?」

 ただ眼前が煙に塗れるだけではなく、喉や目も痛覚に覆われる。
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