異世界に飛ばされた俺は最強だけどクーデレの可愛い姫騎士に拾われて嫁にすることを決めたが、結婚どころか恋愛すら厳しそうな件

三章 異世界verの中東戦争

149話 救援

　冷気が蔓延り、不潔で不自由な牢屋。
　俺とアヴァカンはレタニヤフに味方するイスラエル兵によってここに閉じ込められた。

　「あのオッサン、子供相手に酷い事するなぁ」

　部屋の壁にある古い鏡で自分の顔を確かめながら愚痴を漏らす。
　あの野郎、本気で暴行してきたので頬が赤く腫れている。

　「チクショー、一段落したら慰謝料取ってやるからな」

　頬を撫でながら文句を言う。
　錆だらけのベッドを見ると、その上で涙を流し続けるアヴァカンが居た。小さな泣き声も聞こえる。
　隣に座り、彼女の方へ振り向く。

　「ごめんね……ごめんね、セル坊。私のせいで」

　俺がアヴァカンの身代わりになってレタニヤフからの暴力を受けた事がよほど悔しいらしく、ずっとこの調子だ。

　「だから言ってるだろ、ちょっと痛いだけって」
　「痛い痛くないの問題じゃないわよ……」
　「逆にお前はアイツの暴力を受けたかったのか？」
　「それは違う……でも、セル坊が叩かれるのはもっと嫌よ……」
　「おいおい、俺の言葉忘れたのかよ？」

　彼女の背中を擦りながら言う。

　「何とかしてやるって何回か言っただろ？　それを実行しただけだよ」
　「そうは言っても……」
　「ま、ずっと泣いててもしょうがないし、今は休もうぜ」

　未だ癒えぬ頬を撫でつつベッドに寝転がり、何となく天井を見つめていると石の破片が無数に顔に降り注いできた。

　「何だ何だ？　また敵襲か？」

　建物が揺られるのを感じるのは何度目だろうか。最近、物騒な出来事が多すぎる。
　すると今度は兵士達の慌てた声と外からの銃声、砲声が鼓膜に漂流してきた。
　外が見える鉄格子を覗く。その先に広がっている光景が網膜に焼き付いた瞬間、俺は勝利を確信した。
　何故なら、フーセの軍勢が堂々とこちらに迫って来ていたから。
　自走砲に戦闘ヘリ、戦車、装甲車と何でもござれ状態だ。兵士も非常に多く、ここから観測しただけでも５００人は確実に居る。
　次第に戦闘が行われる空間は段々と迫り、今や収容所内でけたたましい銃声が響く。

　「セル坊、これ……」

　ようやく泣き止んだアヴァカンが顔を上げる。目元はすっかり赤く腫れ、その声には安心が含まれている。

　「助かったと思っていいみたいだな」

　一時はどうなる事かと思ったが、仲間が助けに来てくれて本当によかったと、心の底から安堵を覚えた。