搾取される側だったので異世界では搾取する側になろうと思います ~貸し出した利ざやで世界最強~

きよらかなこころ

文字の大きさ
3 / 6

魔法使いの爺さん

しおりを挟む
 ダルアーに経験値を貸し出して、回収してを初めてから2ヶ月程経過した。

 ダルアーから取得した経験値は既に1712に達している。

 スキルの効果自体は単利なのだが、回収する度に俺の経験値は増えそれを全て貸し付けているので、実際には複利と変わらない。

 そのせいでダルアーの総取得経験値の10%程の経験値を2ヶ月で徴収してしまったのだ。

 このペースで貸し付けて行くと30日も経たない内にダルアーの総取得経験値は0になってしまう。

 さすがにそれは不味いと思ったので、一端ダルアーから徴収するのは止めておいた。

 だが、そうなると経験値の取得元が無くなってしまう。

 人様の大切に貯めた経験値を搾取することに多少の罪悪感を感じない訳ではないが、俺はもう搾取されるのは嫌なのだ。

 搾取される側に回るくらいなら、こっちが搾取する側に回ってやる。

 家の外に出て、経験値を貸し付ける相手を探す必要があるな。

 だが、俺はまだ2歳児。

 自由に外を歩き回るのは親の許可がいる。

 とりあえず、外に出る件はエミリアと話してみるか。

「ママ、僕お外に出たいんだけど」

「あら、じゃあ一緒にお外に出ましょうか」

「違うんだ。僕一人でお外に出たいんだよ」

「だめよ。まだ危ないわ」

「えー、じゃあいつになったらお外に出ていいの?」

「そうね、3歳になるまで我慢しなさい」

「3歳になったらお外に出ていいの?」

「3歳になったらね」

「わかった」

 ふむ、どうやら3歳になったら外に出てもいいようだ。

 しかし、3歳になるまでまだ10ヶ月程かかるぞ。

 家で運動していても経験値は僅かしか手に入らないし、さてどうしたものか。

 そんな事を思っていたら、ある日、魔法使いの爺さんがやって来た。

「おお、お主がシンゴか。ワシはお主の爺ちゃんのローレンスじゃ」

 ローレンスと名乗った爺さんは、エミリアの父で俺の爺さんになるらしい。

 爺さんがいるなんて初めて知ったぞ。

 エミリアとオライアスの会話にも出て来なかったしな。

「新しく見つかったダンジョンを攻略していたら、3年ほど経っていたのじゃ」

 どうやら、ローレンスは冒険者で世界のダンジョンを攻略して回っているらしい。

 数年に一度くらいしか連絡が来ないようで、エミリアが最後に会ったのも結婚する前とのことだ。

 危険な事をしていて何時死ぬかも分からないので、俺の前では爺さんの話はしたことがなかったようだ。

 そしてこのローレンスはかなりの経験値を持っていた。

 名前 ローレンス
 総取得経験値 1,099,742

 身内から経験値を搾取するのに抵抗のあった俺だが、ローレンスから経験値を搾取するのには抵抗を覚えなかった。

 こんだけ経験値があるんだ、ちょっとくらい頂いても良いだろう。

 俺はローレンスに経験値を全て貸し付けた。

 ついでに魔法も教えてくれないかなと思った俺はローレンスに頼んでみた。

「じいちゃん、魔法教えて」

「おお、シンゴは魔法使いになりたいのか。よしよし、爺ちゃんが教えてやろう」

 俺達は早速庭に出て、ローレンスから魔法の指導を受けた。

「よいか先ずは体内の魔力を感じるんじゃ」

「体内の魔力?」

「ふむ、言葉で説明するのは難しいの。シンゴ、じいちゃんの手を握ってごらん」

 俺はローレンスの手を握った。

 すると、次の瞬間、握った手から何か不思議なものが流れこんでくる感覚を得る。

「今シンゴの身体に少量の魔力を流しておる。わかるか?」

「うん、何か流れている感じがする」

「よし、じゃあ魔力を流すのを止めるからぞ」

 ローレンスの手から魔力が流れて来るのが止まった。

「シンゴ、体内に魔力が流れる感じはわかったな。次はその魔力を自分で体内で動かすのじゃ」

 俺はローレンスに言われた通り、さっき体内で魔力が流れていた感覚を思い出し、その感覚が再現するように魔力を動かす。

 すると、体内の魔力が循環するように体中を回り出した。

「じいちゃん、出来たよ」

「おお、本当か。こんなにも早くできるとは、シンゴは天才じゃの。よし、次はその魔力を体内に放出するのじゃ」

「放出ってどうやるの?」

「イメージじゃ、魔力を体内から放出するイメージでもって魔力を放出するのじゃ。慣れれば全身から放出できるが、先ずは手のひらから放出するイメージでやってみるのが簡単じゃぞ」

 イメージか。俺は手の平から魔力が放出するイメージを持って魔力の放出を試みた。

 すると、体内にあった魔力が吸い出されるように手のひらから飛び出していった。

 飛び出して行った魔力はすぐに霧散して消えてなくなった。

「おお、これもすぐに出来るようになるとは、シンゴは本物の天才じゃ!」

 ローレンスは何か喜んでいるが、俺は魔力が抜けて放出した瞬間からかなり怠かった。

「じいちゃん。何か怠い」

「体内の魔力を放出して少なくなったせいじゃな。よいかシンゴ、魔力がなくなると怠くなると覚えておくとよいぞ」

「体内の魔力が空っぽになったら?」

「空っぽになると気を失うから気をつけるのじゃぞ。今日はもう止めておいた方がいいの」

 なるほど、そう言えばローレンスに経験値を貸し付けているからレベルが1なんだった。

 レベル3くらいの経験値は残して、体内の魔力量を高めよう。

「爺ちゃん、明日からも魔法を教えてくれる?」

「ああ、シンゴが一通り魔法の基礎を覚えるまではここにおるぞい」

 次の日からも俺はローレンスに魔法の手ほどきを受けた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

扱いの悪い勇者パーティを啖呵切って離脱した俺、辺境で美女たちと国を作ったらいつの間にか国もハーレムも大陸最強になっていた。

みにぶた🐽
ファンタジー
いいねありがとうございます!反応あるも励みになります。 勇者パーティから“手柄横取り”でパーティ離脱した俺に残ったのは、地球の本を召喚し、読み終えた物語を魔法として再現できるチートスキル《幻想書庫》だけ。  辺境の獣人少女を助けた俺は、物語魔法で水を引き、結界を張り、知恵と技術で開拓村を発展させていく。やがてエルフや元貴族も加わり、村は多種族共和国へ――そして、旧王国と勇者が再び迫る。  だが俺には『三国志』も『孫子』も『トロイの木馬』もある。折伏し、仲間に変える――物語で世界をひっくり返す成り上がり建国譚、開幕!

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

処理中です...