10 / 56
第9話 さようなら、学園生活
しおりを挟む
まあさすがにこんな騒ぎになってしまったからでしょうか。
先生方が官憲の……というか、あれは王城の騎士隊ですね。
やはり王族に対しての忖度と申しましょうか、あまりここでの騒ぎが周囲に漏れては学園としても困るでしょうから……。
それもこれも私の選択が誤りであったと言われればそうなのですが、こんなに大事になるなんて誰が想像したでしょうか。
いいえ、それも見越して行動しろと父である公爵ならば言いそうですけれど。
「ちょ、ちょっと何よ! やめて! わたしは王太子妃になるのよ!!」
「カリナ! カリナに触れるな無礼者! 私は王太子だぞ……!!」
「殿下!」
生徒会のメンバーが次々に騎士隊と共に退出していきます。
誤解のないように言っておきますが、騎士たちは大変紳士でしたよ。
丁寧に、彼らに傷などつけないようやんわりと連れ出しただけです。
おそらくはそのまま王城に向かい、事情聴取の上で判断が下されるのでしょう。
「あら、ウーゴ様そちらにいらしたの? 殿下たちと共に行かれずともよろしいのかしら」
「うっ、あっ、ぼ、僕は……」
「まあ、今回の件で後ほどまたお目にかかることになるかと思いますが……とりあえずは私も当事者としてこの場を退出したいと思います。それでよろしいかしら?」
ウーゴ様は顔色を無くしたまま壇上でぽつんと立っておられるのですが、どうなさるのかしら。
もう式典のご挨拶も何もありませんし、生徒会長である殿下もここにおられませんし。
会計であるウーゴ様にできることは、一度ご自宅に戻られて家族に説明をしてから王城に向かうことでしょうか?
私も勿論そのようにいたしますけれど。
ですから言葉の後半は、まだこの場に残る王城から派遣されたであろう騎士たちに向けてのものです。
混乱が生じた際に鎮めるために幾人か残っているのでしょう。
もしくは、私も王城に今すぐ連れて行かれるのかしら?
「ワーデンシュタイン公爵令嬢に関しましては、一度公爵家へお戻りいただきたいとのことです。本日は殿下、並びに生徒会の者たちの聴取からとなります」
「そうですか」
「後日改めて書状にてご連絡いたしますが、それでよろしいでしょうか」
「ええ、勿論。お役目ご苦労様です」
とりあえず、私がすべきは父との話し合いということですね。
あの様子では殿下がどれほど理解しておられたか不明ではありますが、殿下と私は未来の王家を担う者として、多くの者の目に晒されておりました。
それはただ注目を浴びていたということではなく、監視の目もあったのです。
この学園の大半は貴族位の令息、令嬢。
小さな国家の、未来の運営する姿を描いてそれを理解し、則した行動を取れるかどうかという点でも我々は常に評価されていたのです。
そういう意味で、私たちの行動はつぶさに観察され、また報告もされていたはずなので……勿論全てということは無いでしょうが、それでも大半のことは知られていると考えていいのでしょう。
(その内容がお父様にも伝わっているかどうか、だけれど……伝わっているわよね。だからこそアトキンス嬢のことを潰すかどうか、私に判断を委ねたのだから)
今から帰宅することを考えると、とても気分が落ち着きません。
とはいえ、これからのことを決めなければいけないのも事実です。
私は小さく息を吐き出すと、コリーナ様の前に立ちました。
「また後日、いろいろと落ち着いたらお茶会にお誘いしてもよろしいかしら」
「ええ、待っていますわ。……気落ちなさらないで。わたくしたちがお友だちなのは、変わらないわ。立場は……多少変わってしまいますけれど」
「……ええ」
コリーナ様とは同じ公爵令嬢として、幼い頃から親しくしておりました。
彼女は卒業後、しばらくしたら隣国の公爵家へ嫁ぐことが決まっています。
それまでに全てを片付けなければ、次はいつ会えるのか……。
(さようなら、最後の学生生活)
こんな終わり方をするなんて思っていなかったから、とても残念だわ。
先生たちにも感謝と謝罪のご挨拶をして、私はレオンにエスコートされる形で講堂を後にしました。
先生方が官憲の……というか、あれは王城の騎士隊ですね。
やはり王族に対しての忖度と申しましょうか、あまりここでの騒ぎが周囲に漏れては学園としても困るでしょうから……。
それもこれも私の選択が誤りであったと言われればそうなのですが、こんなに大事になるなんて誰が想像したでしょうか。
いいえ、それも見越して行動しろと父である公爵ならば言いそうですけれど。
「ちょ、ちょっと何よ! やめて! わたしは王太子妃になるのよ!!」
「カリナ! カリナに触れるな無礼者! 私は王太子だぞ……!!」
「殿下!」
生徒会のメンバーが次々に騎士隊と共に退出していきます。
誤解のないように言っておきますが、騎士たちは大変紳士でしたよ。
丁寧に、彼らに傷などつけないようやんわりと連れ出しただけです。
おそらくはそのまま王城に向かい、事情聴取の上で判断が下されるのでしょう。
「あら、ウーゴ様そちらにいらしたの? 殿下たちと共に行かれずともよろしいのかしら」
「うっ、あっ、ぼ、僕は……」
「まあ、今回の件で後ほどまたお目にかかることになるかと思いますが……とりあえずは私も当事者としてこの場を退出したいと思います。それでよろしいかしら?」
ウーゴ様は顔色を無くしたまま壇上でぽつんと立っておられるのですが、どうなさるのかしら。
もう式典のご挨拶も何もありませんし、生徒会長である殿下もここにおられませんし。
会計であるウーゴ様にできることは、一度ご自宅に戻られて家族に説明をしてから王城に向かうことでしょうか?
私も勿論そのようにいたしますけれど。
ですから言葉の後半は、まだこの場に残る王城から派遣されたであろう騎士たちに向けてのものです。
混乱が生じた際に鎮めるために幾人か残っているのでしょう。
もしくは、私も王城に今すぐ連れて行かれるのかしら?
「ワーデンシュタイン公爵令嬢に関しましては、一度公爵家へお戻りいただきたいとのことです。本日は殿下、並びに生徒会の者たちの聴取からとなります」
「そうですか」
「後日改めて書状にてご連絡いたしますが、それでよろしいでしょうか」
「ええ、勿論。お役目ご苦労様です」
とりあえず、私がすべきは父との話し合いということですね。
あの様子では殿下がどれほど理解しておられたか不明ではありますが、殿下と私は未来の王家を担う者として、多くの者の目に晒されておりました。
それはただ注目を浴びていたということではなく、監視の目もあったのです。
この学園の大半は貴族位の令息、令嬢。
小さな国家の、未来の運営する姿を描いてそれを理解し、則した行動を取れるかどうかという点でも我々は常に評価されていたのです。
そういう意味で、私たちの行動はつぶさに観察され、また報告もされていたはずなので……勿論全てということは無いでしょうが、それでも大半のことは知られていると考えていいのでしょう。
(その内容がお父様にも伝わっているかどうか、だけれど……伝わっているわよね。だからこそアトキンス嬢のことを潰すかどうか、私に判断を委ねたのだから)
今から帰宅することを考えると、とても気分が落ち着きません。
とはいえ、これからのことを決めなければいけないのも事実です。
私は小さく息を吐き出すと、コリーナ様の前に立ちました。
「また後日、いろいろと落ち着いたらお茶会にお誘いしてもよろしいかしら」
「ええ、待っていますわ。……気落ちなさらないで。わたくしたちがお友だちなのは、変わらないわ。立場は……多少変わってしまいますけれど」
「……ええ」
コリーナ様とは同じ公爵令嬢として、幼い頃から親しくしておりました。
彼女は卒業後、しばらくしたら隣国の公爵家へ嫁ぐことが決まっています。
それまでに全てを片付けなければ、次はいつ会えるのか……。
(さようなら、最後の学生生活)
こんな終わり方をするなんて思っていなかったから、とても残念だわ。
先生たちにも感謝と謝罪のご挨拶をして、私はレオンにエスコートされる形で講堂を後にしました。
応援ありがとうございます!
8
お気に入りに追加
4,372
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる