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第8話 騎士とは何かご存じですか
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「あれは……公爵家の護衛騎士だ。名前をレオンと言って、義姉上の専属騎士になる」
イザークがいつの間にか復活を遂げていたらしく、アトキンス嬢に説明していました。
ええ、ええそうです。
レオンは確かに私の専属騎士です。
年齢も違いますし、護衛騎士ですもの。
学園内ではその姿を見ないのは当然のこと。
ですが公爵令嬢ともなればその身柄は常に護衛対象です。
それは高位貴族の令嬢子息であれば当然のことですし、学園側も理解してくれている話です。
「その通りです、私の護衛騎士であるレオンは仕事をしたまでですので」
「俺は殿下の護衛……」
「候補ですわよ、エルマン様」
そうです。
護衛騎士というのは誰でもなれるわけではありません。当たり前ですが。
一定の礼儀作法など、教養に加えて騎士としての実力試験を受けて始めて認可されるのです。
その上で見習いの期間を過ごし、ようやく正式な騎士となれるわけですが……確かにエルマン様は武人の名門であるモレノ伯爵家の出自ではありますが、学生の身分ですもの。
教養の面では貴族家出身ということで免除になるでしょうし、いずれ試験を受けてお父上にでも師事なされば殿下の護衛騎士として正式に拝命することもできたでしょう。
ただし、現段階ではただの貴族家出身の学生にしか過ぎませんので、よって先ほどの行為は越権、もしくは単なる暴力行為になるでしょう。
将来そうなるだろう……という希望的観測の元で越権行為をしたのならばそれは愚かとしか言いようがありませんし、そうでないならばそも基本的に何も理解できていない段階で騎士にはなれないことでしょう。
「あなたはモレノ家の次男に過ぎません。そして、身分としては学生でしかございません」
「……あ?」
私のその言葉に、エルマン様はきょとんとした顔をしてから私を睨み付けてきました。
正論を言われると腹を立てる方が多い中、特にエルマン様は考えるよりも行動をしたがる殿方でしたから……そのような短慮さではやはり騎士には不向きと思います。
別に彼が私に対して失礼だから差別をしている、などという低俗な理由ではございません。
この国で〝騎士〟は人々の規範となるべく、教養や振る舞いを常に気をつけ、そして主人を守り、その命令があれば民のために命を捧ぐ……そのような存在なのです。
殿下の指示なく行動し、その理由が殿下の恋人を貶しめたかもしれない程度の根拠も証拠もなにもない状態での一方的な思い込み。
そのような人間が信頼に足るとでも?
それならば適材適所として考えるに、しっかりと指示をこなすこと優先の一兵士の方が動きやすいだろうと思うのです。
「騎士の実力試験を受けているわけでもなく、また試験資格も得ておりませんもの。当然ですが試験に合格していない以上、騎士見習いでもありませんから。現時点では」
「俺はいずれ騎士になる! そう決まって……」
「決まってはおりませんわ。そうなってくれたら嬉しいと周囲は期待していたでしょうが」
モレノ家には優秀な嫡男がおられるし、エルマン様も剣筋は良いとの話でした。
武人になる道も望んでのことと伺っておりましたので、跡取りがいて次男も王太子殿下の護衛騎士になれるのであれば万々歳……といったところでしょうか。
何もなければおそらく、そのようになっていたでしょう。
だからそれについてモレノ家の皆様を非難するつもりはございません。
まさか本人が、受験資格も得ないまま『なれる』からという理由だけで暴挙に出るなんて想像できないではありませんか。
「あっあの! レオン様、ロレッタ様は私に酷いことをして……それを殿下やエルマン様が咎めてくださっただけなんです! ですから彼は悪いことなんて……!!」
「それが何か?」
「え?」
「私にとって守るべき対象はロレッタ・ワーデンシュタイン公爵令嬢です。彼女を害そうする者があれば、切って捨てるのが私の役目です」
「あらいやだ、殺傷沙汰はごめんよレオン」
「……主人がこのように申しておりますので、ねじ伏せただけです」
レオンは優秀なのだけれど、少しばかり乱暴なのよねえ。
イザークがいつの間にか復活を遂げていたらしく、アトキンス嬢に説明していました。
ええ、ええそうです。
レオンは確かに私の専属騎士です。
年齢も違いますし、護衛騎士ですもの。
学園内ではその姿を見ないのは当然のこと。
ですが公爵令嬢ともなればその身柄は常に護衛対象です。
それは高位貴族の令嬢子息であれば当然のことですし、学園側も理解してくれている話です。
「その通りです、私の護衛騎士であるレオンは仕事をしたまでですので」
「俺は殿下の護衛……」
「候補ですわよ、エルマン様」
そうです。
護衛騎士というのは誰でもなれるわけではありません。当たり前ですが。
一定の礼儀作法など、教養に加えて騎士としての実力試験を受けて始めて認可されるのです。
その上で見習いの期間を過ごし、ようやく正式な騎士となれるわけですが……確かにエルマン様は武人の名門であるモレノ伯爵家の出自ではありますが、学生の身分ですもの。
教養の面では貴族家出身ということで免除になるでしょうし、いずれ試験を受けてお父上にでも師事なされば殿下の護衛騎士として正式に拝命することもできたでしょう。
ただし、現段階ではただの貴族家出身の学生にしか過ぎませんので、よって先ほどの行為は越権、もしくは単なる暴力行為になるでしょう。
将来そうなるだろう……という希望的観測の元で越権行為をしたのならばそれは愚かとしか言いようがありませんし、そうでないならばそも基本的に何も理解できていない段階で騎士にはなれないことでしょう。
「あなたはモレノ家の次男に過ぎません。そして、身分としては学生でしかございません」
「……あ?」
私のその言葉に、エルマン様はきょとんとした顔をしてから私を睨み付けてきました。
正論を言われると腹を立てる方が多い中、特にエルマン様は考えるよりも行動をしたがる殿方でしたから……そのような短慮さではやはり騎士には不向きと思います。
別に彼が私に対して失礼だから差別をしている、などという低俗な理由ではございません。
この国で〝騎士〟は人々の規範となるべく、教養や振る舞いを常に気をつけ、そして主人を守り、その命令があれば民のために命を捧ぐ……そのような存在なのです。
殿下の指示なく行動し、その理由が殿下の恋人を貶しめたかもしれない程度の根拠も証拠もなにもない状態での一方的な思い込み。
そのような人間が信頼に足るとでも?
それならば適材適所として考えるに、しっかりと指示をこなすこと優先の一兵士の方が動きやすいだろうと思うのです。
「騎士の実力試験を受けているわけでもなく、また試験資格も得ておりませんもの。当然ですが試験に合格していない以上、騎士見習いでもありませんから。現時点では」
「俺はいずれ騎士になる! そう決まって……」
「決まってはおりませんわ。そうなってくれたら嬉しいと周囲は期待していたでしょうが」
モレノ家には優秀な嫡男がおられるし、エルマン様も剣筋は良いとの話でした。
武人になる道も望んでのことと伺っておりましたので、跡取りがいて次男も王太子殿下の護衛騎士になれるのであれば万々歳……といったところでしょうか。
何もなければおそらく、そのようになっていたでしょう。
だからそれについてモレノ家の皆様を非難するつもりはございません。
まさか本人が、受験資格も得ないまま『なれる』からという理由だけで暴挙に出るなんて想像できないではありませんか。
「あっあの! レオン様、ロレッタ様は私に酷いことをして……それを殿下やエルマン様が咎めてくださっただけなんです! ですから彼は悪いことなんて……!!」
「それが何か?」
「え?」
「私にとって守るべき対象はロレッタ・ワーデンシュタイン公爵令嬢です。彼女を害そうする者があれば、切って捨てるのが私の役目です」
「あらいやだ、殺傷沙汰はごめんよレオン」
「……主人がこのように申しておりますので、ねじ伏せただけです」
レオンは優秀なのだけれど、少しばかり乱暴なのよねえ。
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