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第35話 価値のあるなし
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「ははは、痺れを切らして乗り込んできたか! そうか」
「もうお父様。笑い事じゃありませんのよ? 侍女たちが困ってしまっていたではありませんか」
「なあに、年若い連中にも困った客人への対応を覚えさせようと思ってな」
「それにしたって、王族相手では対応に困るのも仕方ありませんわ」
「ふむ……まあお前なら上手くやると思っていたから安心していたのさ」
「まあ! 都合の良いことを仰って!」
案の定、殿下が面会を申し込んでいたのは大分前からのようです。
具体的に言いますと、なんとあの事件から二週間経たずといったところでしょうか。
どうやらアトキンス嬢の学習状況は芳しくなく、それでいて王太子でなくなった殿下に対し『仕方ないから結婚してあげる』とさも殿下には相手が見つからないだろうみたいな物言いをなさっているそうで……。
不敬に問おうと思えば問える案件ですが、殿下は殿下でやらかしてまで彼女のことを妻に娶りたいと大勢の前で宣言をしてしまった手前今更彼女に対して厳しくできるわけもなく。
かといって、学園での言動をきちんとさえすれば最低限保証されるであろう爵位と領地を考えれば、下位貴族の礼儀作法と勉強ですら追いつかない彼女を妻に迎えられるわけもない……ということで、何故か父に助けを求めているんだとか!
(……どうして助けてもらえると思ったのかしら?)
これまで強気で過ごせたのはワーデンシュタイン公爵家の後ろ盾あってのこと、ということを再確認した……とのことらしいのですが。
(それはあくまで私と婚約していたからであって、殿下個人に対してワーデンシュタイン公爵家に思うところはないのよね。むしろ今はマイナスなのでは……)
呆れてしまって思わず言葉も出ない私に、お父様は楽しそうに笑っていました。
でもよくよく見てみると、お父様は笑顔ですが目が笑っていません。
どうやら怒っておられるようです。
「……殿下は、他に何をおっしゃっていたのですか?」
「ワーデンシュタイン公爵家が後ろ盾になってかの御方がそれなりの地位を持てるようロレッタ、お前を秘書官としてよこせといってきた」
「はあ?」
思わず淑女らしからぬ声が出てしまいましたが、それも仕方のないことだと思います!
さすがに婚約の解消を撤回したいだとか、そのような夢見がちな発言はないだろうと思っておりましたが……それでも、それもおかしいでしょう!
なんで一貴族となる方の秘書官に、次期公爵がつくのですか!
そも役職をお持ちですらないのに! 爵位も決まっていない、領地もどうなるか不明な方の何を秘書として補えと!?
呆れを通り越して混乱する私に、お父様はヒラヒラと手を振りました。
「そんな阿呆なことを聞くためにわざわざ時間を取る必要も無いし、その愚かしさを説明してやる義理もない。だから会う価値も、返事をする価値すらない」
「……なるほど、そういうことでしたか」
「まあ、陛下にはこちらから苦情申し上げておいたからね。おそらくすぐなくなるさ」
「もしかして出かけてらしたのは……」
「ああ、王城だとも」
にやりと笑うお父様は、どこまでも殿下に対して厳しく接するようです。
私も、残っていた情が吹き飛んでしまいそうですもの。
「……ねえお父様。もしよろしければ私、聞きたいことがあるんですの」
「何かな」
お父様は優しい笑みを浮かべて私を見ています。
先ほどまでの怒りの表情はすでになりを潜めていて、私に対するその眼差しはどこまでも優しく、そして試しているような気がしました。
「一体いつから、仕組まれていたんですの?」
「もうお父様。笑い事じゃありませんのよ? 侍女たちが困ってしまっていたではありませんか」
「なあに、年若い連中にも困った客人への対応を覚えさせようと思ってな」
「それにしたって、王族相手では対応に困るのも仕方ありませんわ」
「ふむ……まあお前なら上手くやると思っていたから安心していたのさ」
「まあ! 都合の良いことを仰って!」
案の定、殿下が面会を申し込んでいたのは大分前からのようです。
具体的に言いますと、なんとあの事件から二週間経たずといったところでしょうか。
どうやらアトキンス嬢の学習状況は芳しくなく、それでいて王太子でなくなった殿下に対し『仕方ないから結婚してあげる』とさも殿下には相手が見つからないだろうみたいな物言いをなさっているそうで……。
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(……どうして助けてもらえると思ったのかしら?)
これまで強気で過ごせたのはワーデンシュタイン公爵家の後ろ盾あってのこと、ということを再確認した……とのことらしいのですが。
(それはあくまで私と婚約していたからであって、殿下個人に対してワーデンシュタイン公爵家に思うところはないのよね。むしろ今はマイナスなのでは……)
呆れてしまって思わず言葉も出ない私に、お父様は楽しそうに笑っていました。
でもよくよく見てみると、お父様は笑顔ですが目が笑っていません。
どうやら怒っておられるようです。
「……殿下は、他に何をおっしゃっていたのですか?」
「ワーデンシュタイン公爵家が後ろ盾になってかの御方がそれなりの地位を持てるようロレッタ、お前を秘書官としてよこせといってきた」
「はあ?」
思わず淑女らしからぬ声が出てしまいましたが、それも仕方のないことだと思います!
さすがに婚約の解消を撤回したいだとか、そのような夢見がちな発言はないだろうと思っておりましたが……それでも、それもおかしいでしょう!
なんで一貴族となる方の秘書官に、次期公爵がつくのですか!
そも役職をお持ちですらないのに! 爵位も決まっていない、領地もどうなるか不明な方の何を秘書として補えと!?
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「そんな阿呆なことを聞くためにわざわざ時間を取る必要も無いし、その愚かしさを説明してやる義理もない。だから会う価値も、返事をする価値すらない」
「……なるほど、そういうことでしたか」
「まあ、陛下にはこちらから苦情申し上げておいたからね。おそらくすぐなくなるさ」
「もしかして出かけてらしたのは……」
「ああ、王城だとも」
にやりと笑うお父様は、どこまでも殿下に対して厳しく接するようです。
私も、残っていた情が吹き飛んでしまいそうですもの。
「……ねえお父様。もしよろしければ私、聞きたいことがあるんですの」
「何かな」
お父様は優しい笑みを浮かべて私を見ています。
先ほどまでの怒りの表情はすでになりを潜めていて、私に対するその眼差しはどこまでも優しく、そして試しているような気がしました。
「一体いつから、仕組まれていたんですの?」
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