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第37話 国王陛下の思惑
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「お前は同世代で考えれば教師たちから褒められることも多く、殿下からすれば賢く振る舞う第二妃を彷彿とさせたのだろうな。王妃が彼女を嫌っていることは有名だ、隠しもしない」
「それでも成り立つのですか」
「成り立つさ。彼女たちの意見は、それこそ陛下の意見も必要ない。陛下たちの婚姻と出産、それらはこの国のために貴族たちが望み、そしてそれを『国が』認めたものなのだからね」
「……」
「陛下と王妃、そして第二妃。この三人は正しく政略結婚で結ばれた夫婦であり、そこに情はあれども愛はない。政略結婚であろうと愛は芽生えることもあるが……あの三人にあるのは、それぞれの思惑だな」
「思惑」
私は繰り返すしかできませんでした。
貴族の令嬢として、公爵家の人間として、結婚も仕事の一つであると私自身、これまで学んできておりますが……それでも、私の両親はそこに愛を見出したのです。
私もそれを知っていたからこそ、殿下との間に……と夢を見ていた時期もありました。
(まさか嫌われていた理由がそんなだったなんて!)
しかし確かに王妃様と第二妃様の不仲は有名な話だ。
だからといって、私が王妃様から嫌がらせをされたことはなかったけれど……本心ではどうだったのか、今なってはわからない。
少なくとも〝ワーデンシュタイン公爵家〟の娘であった私には、王妃様にとって価値があった。
でもアベリアン殿下からすれば、最初から与えられていた装飾品の一つのような価値でしかなかったのかもしれない。
「長子優遇ゆえに、アベリアン殿下に対しては他国から姫君を、年齢が離れていてもいいから迎えてはどうだという話もあった。それこそ、マルス殿下の婚約者候補の少女なども名前に挙がっている。なに、十歳差程度ならばよくある話だ」
「……はい」
「あちらが応じてくれるならば、暫定的な婚約者として国内の有力貴族の娘を据えることも、穏便に解消することも可能であった。ロレッタ、このように言うといやな響きを持つかもしれないが……我らの結婚は、愛があるだけではだめなのだ」
「はい」
「愛だけでは家族を養えない。愛があるのは確かに素晴らしいことだが、愛だけでは領民を食わせてやれない」
お父様のその言葉に、私も深く頷きました。
私たちの結婚は、家の繋がりを強くして……そして、互いの家を富ませること。
富ませることによって、それを領民に、民に還元するのです。
(『愛があれば貧しくてもいい』だったかしら?)
世間で人気のお芝居の中で言われた台詞に、そんなものがありました。
そうです、私のことをまるでそこに出てくる『悪役令嬢だ』とアトキンス嬢たちが笑っていた、あのお芝居です。
真実の愛を貫けるのであれば、身分を捨てることだって厭わない……そんな純真な娘に王子は心打たれて、悪逆非道な振る舞いをする婚約者を断罪し、そして周囲に祝福されるままに二人は結ばれる……感動的なお話ですわね。
でもそれはあくまで、お話の中にある出来事だから感動的に終わることができたのです。
「たとえ普通の暮らしをしている民であっても、愛だけで食べていくのは大変だろう? だが、愛すらもない政略結婚で必要なのは、信頼だ」
「……殿下と私の間には、それが築けなかった」
「いいや、そも陛下と王妃、そして第二妃の間にもない。だからこそ陛下は今回のことを考えられたのだ」
信頼すら築けなかった政略結婚。
表向きは保たれた、貴族たちの均衡。
陛下は、もしもアベリアン殿下が学び、私と信頼を築く姿勢を見せたなら……他国の姫君についても話をして、より良い道を模索されるつもりだったそうなのです。
そうでなければ、王妃と第二妃……というよりはその生家を押さえる良い機会とし、貴族たちの派閥をまた動かそうと。
私は、最初からいずれにせよアベリアン殿下との婚約について白紙に戻される予定であったと……。
呆れてものが言えませんが、国政を担う方々はそうして迂遠な手段を選ぶことで、民に迷惑をかけないようにしているのかもしれません。
私の視線にお父様は軽く肩を竦めました。
「少々意地の悪い話だと相談された際には思ったが、わたしはそれに乗っかることにした」
「どうしてですか?」
にやりと、お父様が笑いました。
その顔は、とても楽しそうです。
「お前が、恋しい男と結ばれるにはそれしかないと思ったからだ」
「それでも成り立つのですか」
「成り立つさ。彼女たちの意見は、それこそ陛下の意見も必要ない。陛下たちの婚姻と出産、それらはこの国のために貴族たちが望み、そしてそれを『国が』認めたものなのだからね」
「……」
「陛下と王妃、そして第二妃。この三人は正しく政略結婚で結ばれた夫婦であり、そこに情はあれども愛はない。政略結婚であろうと愛は芽生えることもあるが……あの三人にあるのは、それぞれの思惑だな」
「思惑」
私は繰り返すしかできませんでした。
貴族の令嬢として、公爵家の人間として、結婚も仕事の一つであると私自身、これまで学んできておりますが……それでも、私の両親はそこに愛を見出したのです。
私もそれを知っていたからこそ、殿下との間に……と夢を見ていた時期もありました。
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しかし確かに王妃様と第二妃様の不仲は有名な話だ。
だからといって、私が王妃様から嫌がらせをされたことはなかったけれど……本心ではどうだったのか、今なってはわからない。
少なくとも〝ワーデンシュタイン公爵家〟の娘であった私には、王妃様にとって価値があった。
でもアベリアン殿下からすれば、最初から与えられていた装飾品の一つのような価値でしかなかったのかもしれない。
「長子優遇ゆえに、アベリアン殿下に対しては他国から姫君を、年齢が離れていてもいいから迎えてはどうだという話もあった。それこそ、マルス殿下の婚約者候補の少女なども名前に挙がっている。なに、十歳差程度ならばよくある話だ」
「……はい」
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「はい」
「愛だけでは家族を養えない。愛があるのは確かに素晴らしいことだが、愛だけでは領民を食わせてやれない」
お父様のその言葉に、私も深く頷きました。
私たちの結婚は、家の繋がりを強くして……そして、互いの家を富ませること。
富ませることによって、それを領民に、民に還元するのです。
(『愛があれば貧しくてもいい』だったかしら?)
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そうです、私のことをまるでそこに出てくる『悪役令嬢だ』とアトキンス嬢たちが笑っていた、あのお芝居です。
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でもそれはあくまで、お話の中にある出来事だから感動的に終わることができたのです。
「たとえ普通の暮らしをしている民であっても、愛だけで食べていくのは大変だろう? だが、愛すらもない政略結婚で必要なのは、信頼だ」
「……殿下と私の間には、それが築けなかった」
「いいや、そも陛下と王妃、そして第二妃の間にもない。だからこそ陛下は今回のことを考えられたのだ」
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「お前が、恋しい男と結ばれるにはそれしかないと思ったからだ」
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